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真冬の夢(2)

 今日、地元のスーパーに買い物に行ったら、七夕飾りをやってました。サービスカウンターで短冊を配ってて、「願い事を書いてください」とあったので。

『薪さんが幸せになれますように』 と書いてきました。(切実)
 恥とか世間体とか、しばらく前からわたしの中には存在しなくなったみたいです。





真冬の夢(2)






 薪の家に行く途中、青木は花屋に寄った。
 色とりどりの花の中から、白い百合の花を選んだ。冬の時季は少々値がはるが、雪子の情報によると百合は薪の好きな花だ。きっと喜んでくれるだろう。
 薪の笑顔を想像すると、つい顔が笑ってしまう。おかげで花屋に「デートですか?」と冷やかされた。
 はい、と答えた。まだそんな仲ではないが、今日のところは付き合ってくれそうだ。

 電話では、今日の予定はないと言っていた。付き合ってくださいと言ったら「用意して待ってる」と答えてくれた。
 起きたばかりみたいだったから、まずはカフェで朝食を摂って映画でも観て、街をぶらついて、夕食は薪の好きな和食にしよう。それとも、薪の方でどこか行きたい所があるだろうか。今日は天気が良いし、薪と一緒ならどこへ行ってもきっと楽しい。

 コンビニの角を曲がると、薪のイメージそのままに、四角四面で真っ白な建物が見えてくる。
 マンションの目隠しと景観の両方を兼ねた常緑樹の垣根の前で、薪は青木の到着を待っていてくれた。
 カーキ色のブルゾンの下に、赤っぽいチェックのシャツと白いインナー。黒い細身のジーンズをすらりと着こなして、ところどころ破れた灰緑色のキャップを目深に被っている。
 何を着てもさまになるな、と思うのは惚れた欲目だろうか。

「おはようございます、薪さん。お休みの日にすいません」
「気にするな。で? 現場はどこだ?」
 せかせかと歩き出しながら、薪はおかしなことを言い始める。
「マルヒの写真は? なんで車で来なかったんだ? って、なんだおまえ、その花。カモフラージュならもう少しマシなものを」
 なんだか、激しい誤解をしているようだ。
「あの、なんの話ですか?」
「なんのって……張り込みだろ?」
 ……なんでそうなるんだろう。
 捜査に関することならこんなことは絶対にないのだが、それ以外のこととなると、薪は割合取り違いや思い込みが多い。

「おまえが言ったんだろ、スーツはやめろって。なるべく警察関係者に見えない格好で来いって」
 たしかに警察官には見えないが、大人の男性にも見えない。まるで少年だ。
「なんで第九が張り込みなんかするんです?」
 第九本来の仕事以外のことを押し付けられたりしたら青筋を立てて怒るくせに、どうしてそんな勘違いをするんだろう。薪の思考回路はいまひとつわからない。
「捜一から協力要請がきたんじゃないのか? おまえ、仕事だって言っただろ?」
 室長に対して反論して良いものかどうか迷うところだが、ここは本当のことを言わないと先に進めない。
「オレ、仕事だなんて一言も言ってませんけど」
「言っただろ!?」
「言ってませんよ」
「だって電話で……あ?」
 亜麻色の大きな瞳が忙しくあちらこちらにさまよって、どうやら自分の勘違いに気付いたらしい。
 薪は口に手を当てて、しばらく黙り込んだ。
 さあ、どう出るかが楽しみだ。

「まぎらわしいんだよ!」
 ……やっぱり逆ギレですか。
 
「休みの日に部下が電話をかけてくれば、仕事だと思うだろう、普通。おまけに服装の指示までしてきて。おまえが悪い!」
 結局、青木のせいになるのだ。
「休日に遊びに行くのに、スーツもないだろうと思っただけです」
「あそび?」
 帽子のつばに隠れた眉が、おもいきり顰められるのが見えたような気がした。
 しかし、ここでめげてはいけない。

「どこかで朝メシ食ってから、映画でも観ます?」
「なんで僕が休日におまえと映画見なきゃならないんだ!」
 怒鳴りつけられる。
 いつものスーツ姿なら震え上がるところだが、今日の薪は服装のせいで高校生以下にしか見えない。まるで子供が癇癪を起こしているようで、なんとも可愛らしい。
「わかりました。それじゃあ、遊園地にでも行きますか?」
 青木が笑顔で切り返すと、薪は毒気を抜かれたようにため息をついた。
「何が解りましたなんだ……馬鹿馬鹿しい。帰る」
「待ってくださいよ、薪さん」
 薪の目の前に、百合の花束を突き出して行く手をふさぐ。
 思わず足を止めて、薪はその芳香に目を細めた。

「この花だけでも受け取ってください。せっかくきれいに包んでもらったんですから」
 花束を抱いて、少しだけ微笑う。
 棘だらけだった薪の雰囲気がやさしくなって、亜麻色の大きな瞳が青木を見た。
 
「朝メシだけなら付き合ってやる。何が食いたい?」
「ほんとですか?」
 やはりこの花で正解だった。あとで雪子には天外天のランチをご馳走しよう。
 青木は百合の向こう側の亜麻色の瞳に、にっこりと笑いかけた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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