モンスター(21)

 義妹がインフルエンザに罹りました。
 流行ってるみたいですね~。みなさんは大丈夫ですか?
 わたしは元気です。今年も「バカは風邪ひかない」を身をもって証明してます☆

 さてさて、お話の続きです。



モンスター(21)





 今井から、荒木が姿を消したと連絡を受けた二人は、彼の生家に急行した。情報センターからはこの場所が一番近かったからだ。
 荒木のアパートには今井を、自宅には小池を、母親の入院先には曽我を向かわせた。確証が無かったため詳しい事情は説明できなかったが、一刻も早く荒木の居場所を確定する必要がある、とだけ告げて職員たちを追い立てたのだ。

「どうやら決まりだな」
 荒れ果てた廃屋の中で、岡部は呟いた。
 この家は荒木の生母の名義になっていた。彼女は10年前、長男の和也が死んで半年後に離婚。それからは一人暮らしだったが、7年前に病に倒れた。精神的なショックから不摂生な生活を送っていたせいで病気と闘う体力を失くしていた彼女は、それから死ぬまで入院生活を余儀なくされた。つまり、この家はずっと空き家だったのだ。
 荒木の母親が死んだのはつい最近のことだった。そのため、データバンクには未だ記載されていなかった。病院に赴いた曽我からの情報で、それが分かったのだ。

 岡部の手には、失踪当日に薪の胸を飾っていたネクタイが握られていた。それには夥しい量の血が付いており、見下ろせば、腐って害虫だらけの床板にも赤黒い血が染み込んでいるのだった。
「まさか……本当に荒木が」
 ゾウリムシが集団で這い回る床に、引き毟られたように散らばっている亜麻色の髪の毛を見ても、青木はまだ信じられなかった。あの無邪気に笑う若者が、こんな恐ろしいことを。荒木がいつも薪を見ているのは恋情からだと思っていたが、それは青木の誤解で、実際は犯行の機会を狙っていたのだろうか。

「青木。これを見ろ」
 障子も畳も朽ち果てた部屋でたった一つ、最近ここに持ち込まれたと思われるものがあった。それは一枚の写真であった。そこには、大きなつば付きの帽子を被った黒髪の女性が、2人の少年と一緒に微笑んでいた。家の庭先で撮ったものらしく、レンガを並べて仕切った花壇には、ピンク色のガーベラが見事に咲き誇っていた。
「岡部さん。これ、薪さんが密会してた女の人じゃ」
「裏を見てみろ」
 ――お母さんとお兄ちゃん。
 子供の字で、そう書かれてあった。今はもう、その2人ともこの世にはいない。

「じゃあ、薪さんが会ってたのは荒木のお母さんの生霊……」
「この状況で冗談が出るか。おまえも図太くなったもんだ」
 え、と青木が首を傾げると、岡部は突然無表情になった。
「おまえってホント刑事に向いてないのな」
 溜息交じりにぼやいて、青木の手からパシリと写真を取り上げる。
「あれは荒木の嘘……いや」
 岡部は取り返した写真の、表面と裏面を代わる代わる見ていたが、やがて「そうか」と呟き、なんともやりきれない貌をした。

「どういうことですか」
「ここの日付を見ろ」
 写真の裏に書かれた日付には青木も気付いていたが、撮影日だと思って特に言及しなかった。たまたま何年か前の今日、この写真が撮られたと言うだけのことで――。
 あっ、と青木は思わず声を上げた。先刻、端末の画面を見たときにどうして気付かなかったのだろう。
 今日は、荒木の兄の命日だ。

「命日とくれば墓だ。荒木はそこで薪さんを殺す気なんだ」
 行くぞ、と機敏に身を翻し、岡部は外へ駆けて行く。青木も慌てて後を追った。
「でも岡部さん。お墓には不特定多数の人が出入りします。そんな場所で犯行に及ぶでしょうか。発信機みたいに、これもミスリードじゃなんじゃ」
「違う。これは荒木がおれたちに残したメッセージだ」
 どうしてそんな真似を、と青木は訊いたが、岡部は答えなかった。今は問答をしている場合ではない。青木も口を引き結んで素早く車に乗り込み、ハンドルを握った。シュッとシートベルトを引き、エンジンを掛けて、
「……お墓ってどこにあるんですか?」
「おまえ、ホント刑事に向いてないわ」
 突き出された岡部のスマートフォンの画面に、山本からのメールが届いていた。添付ファイルを開くと、荒木の実家およびアパートの地図、その近くの青果市場、彼の母親が入院していた病院など、彼に関する詳細なデータが表示された。岡部がその中から選び出したのは、代々木にあるS霊園のアクセス図だった。
「いつの間に」
「おれには薪さんみたいに天才的な推理力は無いがな。頼りになる仲間はたくさんいるんだ」


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Hさまへ

Hさま。

こんにちは~。
毎日寒いですねえ。


>今回のお話「モンスター」起承転結の結はいつでしょうか?

ごめん、もうちょっと、もうちょっとですから!
薪さんにとって、辛い時間が長くてすみません。あと少しだけ、我慢してくださいね。

でも実は「結」は次の話に持ち越しだったりして(・∀・) ←鬼過ぎ。


>これが噂の「鬼切り」ですね!

うわははは! 
そうなんだ、こういうの鬼切りって言うんだwww

いや、いっつも「ぐおお」てとこでぶった切ってすみません。
ここで切ったら面白い、て神の声がするんですよ。あれ、鬼の声だったのかしら(笑)

HMさまへ

HMさま。

>ちゃんと服を着て待機します

あはははは!(>▽<)
素直だな~、Hさん。かわいい♪

や、わたしも最近、下腹の肉がシャレにならないことになってきて。
春が来て薄着になる前に、ダイエットしなきゃ(^^;


>シーズン01だけじゃなく、プロフィールを見たいから新装版1~6も買っちゃいました。

あらあらあら☆
Hさんたら、すっかり白泉社の戦略に踊らされて(笑) ←先頭きって踊ってるやつが何を言うか。
わたしもですよ~。しかも、セブンネットで予約するとポストカードのおまけつき、なんて言われたら、もう全巻セブンネットですよ~。
売り上げ伸びたら連載も延びるかも、とか、ファンて愚かな生き物だよねえ(笑)


>鈴木さんがとても優しくて素敵な人で、薪さんを支えてくれた人だってわかった

でしょうでしょうでしょう!(←鬼の首を獲ったよう)
鈴木さん、やっぱり素敵な人だったでしょう!
あの薪さんが心を許していた人ですから、A級の男だったに違いないと予想していましたが、期待以上の王子っぷりでしたよね!



>なんども「秘密」を読んで、そのたびに気づくことがあって飽きません。
>かわらないのは薪さんが幸せになれますようにという願いだけです。

分かります~。
特に2つ目の、変わらない願いについては、心から同意です。
人それぞれ薪さん像は違うと思いますが、でもみんな、それだけを願って、薪さんに夢を見ているんだと思います。


>薪さんとの出会いのきっかけをくれたしづさんに感謝しています。

こちらこそ。
こんな拙いものに心を動かしてくださって、原作を購入していただいて、
なにより、薪さんのことをそんなに好きになってくださって、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

Aさまへ

Aさま。

>やっぱり薪さんを救出するのは岡部さんの役目ですね^^

いつまでナイトやってるんでしょうねえ。
そろそろ青木さんに引き継がせないと、と思うんですけど、わたしが岡部さん大好きなので、つい彼においしい役を宛がってしまうんですよね。


>救出後の薪さんを癒すのが青木の役目ですからね(#^.^#)

そうだ、そうです、その通り!
青木さんの役目は別にあるんですよね。刑事として役に立たなくてもいいんです!(本当のいいのか、それで)


>身体の傷が癒えるまで

そうですねえ。しばらくは無理でしょうねえ。
でもまあもともとうちの二人って、3ヶ月に1ぺんくらいしかしてないから(・∀・) 余裕でショww
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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書いてます。
60Pを超えました(笑)
7/18 推敲やってます。
あと20ページ。
7/20 推敲の結果、70Pになりました。←バカじゃないの。
2回目の推敲に入りました。
こんにちは(^^
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