Revenge of the monster(2)

 こんにちはー!
 絶賛放置プレイもいい加減にしろですみませんっしたー!

 先週の月曜日、お義母さんの手術、そのまま入院、片道1時間の病院へ毎日通いまして。
 金曜日の昼に退院が決まったのですが、お義母さんが一刻も早く家に帰りたいってんでその日のうちに荷物まとめて退院手続きを済ませて夕方帰ってきて、土曜日はお見舞いに来てくれた人たちのところへ挨拶に行って、
 もー、日曜日はなんもしたくない(笑)

 そんなわけで、薪さんとは対照的に、この時間までパジャマ姿でおります、しづです。
 だらだらしながらお送りします、モンスターの逆襲、後編です。
 




Revenge of the monster(2)






「――はい。あ、ちょっと待ってください」
 電話の相手に断りを入れ、青木は寝室を出た。リビングの掛け時計は九時を指している。
「今日はちょっとバタバタしてて。連絡できなくてすみませんでした」
 電話の相手は岡部だった。

 事件の後、青木は岡部に伝言を頼まれた。
『自分の考えを押しつけて悪かったと、薪さんに伝えてくれ』
 青木はにっこり笑って、それを断った。薪は岡部の気持ちをちゃんと解っているし、それでも岡部の気が済まないと言うなら自分で伝えればいい。これは彼らの問題で、青木が間に入ることではないと思った。
 伝言を断られた岡部は、じゃあ代わりに、と青木にもう一つの頼みごとをした。薪に知られないように、薪の様子を毎日知らせて欲しい。岡部には薪のポーカーフェイスは通じないから、顔を合わせていれば彼の精神状態はほぼ分かる。しかし、今回は顔を見ることができない。だからおまえが視て教えてくれと、そう頼まれた。
 この時間は薪のバスタイム。いつもはその間に報告を済ませていたのだ。よんどころない事情で、いま彼は眠っているが。
 定時連絡が途絶えたから不安になって、自分から電話を掛けてきたのだろう。岡部の心配性には、つい失笑させられる。まったく顔に似合わない。

 青木はリビングのソファに腰を下ろし、ちらっと寝室のドアを見やった。そこに人の気配がないことを確かめる。それでも念のため、声は潜めることにした。
「薪さんはよく眠ってます。――や、体調は悪くないです。むしろ絶好調っていうか本気になった薪さんはやっぱりすごいっていうか、なんでもないですごめんなさい、これから道場はカンベンしてください」
 ハイスペックな捜査官相手の会話は時として命懸けだ。

「はい、残念ながら。すっかり元通りで」
 青木は帰宅してから薪と交わした会話のいくつかを思い出し、苦笑した。
「ああなっちゃったらもう、オレには見守ることしか」

 イタズラ心と可愛い意地悪。いつも通りの薪だった。あまりにも“いつも通り”すぎた。それを演技と気付かせないスキルまで、完璧な「いつもの薪さん」だった。
「もっと正直になってくれれば、こっちも対処のしようがあるんですけど……あ、いいんです。そういう人だって分かってますから」
 身体の傷は比較的早く癒える体質の薪は、その釣り合いを取るかのように心の傷は長引く。彼がいかに平静を装っても青木は知っている。小説のページをめくる彼の指先が、時折止まっていること。少食の彼が、青木の前では旺盛な食欲を見せようと無理をしていること。夜中、何度も何度も寝返りを打つ彼の眠りがひどく浅いこと。
 それらはすべて、薪の中に巧妙に匿われている。隠蔽工作に長けた彼の悲しいスキル。

「身体の方はすっかり治ってることを確認しましたので、来週には出勤できると思います。薪さんもその方が気が紛れると、え? いや、無体な真似なんかしてませんよ。そりゃ久しぶりだったからほんのちょっと飛ばしちゃいましたけど、決して薪さんが嫌がるようなことは、ていうかあの人、最初のうちはなんだかんだ言いますけど途中からエンジン掛かると逆にこっちが攻め立てられ、うごぉっ!!」
『どうした?』と尋ねる岡部の声が、青木の携帯電話から漏れ聞こえる。返答がないことに焦ったらしい彼は、繰り返し青木の名前を呼び続けた。

「壁に掛けておいた時計が落ちて、青木の頭を直撃したんだ。局地的な地震かな」
 突然、電話の相手が変わったことに岡部はひどく驚いたらしい。狼狽えた声で、
『まままま薪さんっ』
 岡部さん。ま、多過ぎです。
『青木はどうしたんですか』
 薪にジロリと睨まれて、青木はあり得ない放物線を描いて落ちてきた掛け時計を抱えたまま、ローテーブルの下に負傷した頭部を突っ込んだ。電話を返してください、なんて言ったら本震以上の余震が来る、ぜったい。

「青木は口を利けない状態だ。なにか伝言があれば僕が預かろう」
 何もありません、と岡部は震える声で言った。歯がカチカチ言うほど震えて、分かります、岡部さん。今夜は寒いですよね。オレも身体の震えが止まりません。
「そうか。じゃ、僕からひとつ」
 ひいーっ、と岡部が息を吸う音がした。悲鳴のようにも聞こえたが気のせいだろう。

「いつもおまえには感謝してる。これからもよろしく頼む」
 背中を向けた薪の表情は、青木には分からなかった。でもその肩はやさしく開かれて、声は穏やかな波のように響いていた。

「うん? ああ、分かった。青木に伝えておく」
 じゃあな、と電話を切った薪が、ゆっくりとこちらを振り向く。差し出されたスマートフォンを青木がおずおずと受け取ると、薪の口元が意地悪く吊り上がった。
「岡部からの伝言。明日の朝6時に道場だそうだ」
「ええー……」
 これはあれか、休日の早朝の予定を入れることで青木に夜更かしをさせない、つまりこれ以上薪の身体に負担を掛けまいとする岡部の作戦か。
 警戒しすぎです、と青木は心の中で岡部に弁解する。いくら青木だって、そこまでケダモノ君ではない。

「さて。メシだメシ」
「あ、はい」
 シチューを温め直して、少々遅くなった夕食を摂った。冷蔵庫の中には青木の好きなポテトサラダも作ってあって、適度な運動でお腹を空かせた青木の食欲をますます増進させた。夜の九時以降のハイカロリー食は身体に毒だと言うが、青木は薪の手料理が食べられるなら寿命の2、3年は気にしない。

 薪が2杯目のシチューを自分用に装うのを見て、青木はスプーンを止めた。また強がって、と思う気持ちが青木を口うるさい保護者にする。
「寝る前にそんなに食べたら胃もたれしますよ。1杯でやめておいた方が」
 薪は、表面張力を振り切りそうな青木のシチュー皿をじっと見た。とばっちりを恐れた青木が口を噤むと、涼しい顔でシチューを掬う。
「誰かさんのおかげで、ハラ減って眼が覚めたんだ。飢え死にしそうだ」
「はいはい」
 夜中にお腹痛くなっても知りませんよ、と心の中で呟きながら、青木は素直に返事をする。後で救急箱の消化薬を確認しておこう。
「食事がすごく美味しく感じる。セックスって本当に身体にいいんだな」
「はいはいは、えっ」
 きわどいセリフに、思わずスプーンを咥えた薪のくちびるを見てしまった。下唇に付いたシチューを赤い舌先がペロッと舐める、その動きに先刻の記憶が呼び覚まされる。あのくちびると舌がくれる刺激を、その極上の快楽を、擒と言ってもいいくらいに青木の身体は覚えてしまっている。
 亜麻色の瞳が悪戯っぽく輝いた。その抗い難い誘惑。

「食べ終わったら2回戦、しようか」
「だ、ダメですよ。明日はオレ、5時起きで」
「そうだったな。じゃ、風呂の中で」
 いい、それいい!
 浴室なら鏡もあるし掃除も簡単だし、いやいやちょっと待て。
「ダメですってば。時間に遅れたりしたら岡部さんにどんな目に遭わされるか、――っ!」
 意味なくシチュー皿を掻き混ぜる青木の耳に、一足先に食事を終えた薪が息を吹きかけた。浴室とかクローゼットとかキッチンとか、寝室以外の場所での行為にエロチズムを感じる青木の性癖を、薪は見抜いている。

「待ってるから。風呂で」
「……お風呂で?」
「カラダ、洗いっこしよ」
「……はい」


 翌日。道場で待ちぼうけを食らった岡部が10時過ぎにのこのこと現れた青木を、足腰が立たなくなるまで締め上げたことは言うまでもない。



(おしまい)


(2015.10)

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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きゃは~!!

薪さんエロ……青木で遊んでますねぇ。
ええと、したってことは大事なところの傷も癒えたんですね?良かったです。本当に良かったです(号泣)(そこ?)
そして青木くん、今回最後までアホ…ごめんなさい、てか口滑りすぎだ(笑)
ほんとにこのふたりはもう。可愛いですゥ。最高のバカップル!(°▽°)あ、すいません、私が変態です。

でもこの薪さん、生きる気になってる感じがしました。ただ誘惑して遊んでる?いやなんとなく生きてる、って。

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なみたろうさんへ

なみたろうさん。

>青木で遊んでますねぇ。

逆襲ですもん(笑)
でも結局は青木さんの逆襲を受けることになるの、ほら、青木さんこそ本物のモンスターですからww


>良かったです。本当に良かったです(号泣)(そこ?)

そこかい!(笑・笑)
や、大事ですけどねww


>口滑りすぎ

2ヶ月ぶりだし、すごく嬉しかったんですよ、きっと。
滑った振りして惚気てたりしてね(^^


>でもこの薪さん、生きる気になってる感じがしました。

そうですねえ。
わたし的には、あと一押しですかねえ。

いつまでもウジウジしてる薪さんだからこそ、わたしの筆も止まらないわけで。
ダメな子ほどかわいいって、真理だよねえ(苦笑)

Aさまへ

Aさま。


>薪さん、無理してないですよね?

どうなんでしょう。微妙かな。
この人、ちょっと無理してるくらいが普通なので、このくらいは無理のうちに入らないような。(なにその不幸体質)


>後悔したからその気持ちが溢れたのかな。この大サービスは^^

ああ、そうかも。
そんなことでもないと青木さんにやさしくできない薪さんて、どうなんだろう(^^;


>今月のメロディは岡部さんメインのようですね!

あら、わかりませんよ!
メロディの予告程当てにならないものはこの世にありませんからね。
もしかしたら、
青木家を訪れた嫁のことで町内中持ちきりになってワタワタする青木母の話かもしれないし!(ねえよ)
「薪ちゃんは今度いつ来るの?」攻撃に追い詰められた青木さんが、舞ちゃんと一緒に薪さんとスカイプする話かも(あり得ない)、根負けした薪さんが、あの日夕飯をご馳走になったお返しに今度は彼らを自宅に招く話かもしれないですよ!(正気か)

楽しみ楽しみ♪

Sさまへ

Sさん。

お返事おそーくなってごめんなさい。
現場の監督員さんが異動して、後任の方との打ち合わせが詰まってしまって。
人事異動の季節は何かと忙しいです。Sさんの方は、お変わりありませんか?


お義母さんへのお見舞い、ありがとうございます。
おかげさまで、介護が必要なほど弱らずに退院することができました。
認知症の方も、薬が効いてるみたいで。日にち、分かるときもあるようになりましたよ。今の薬ってスゴイ。


>こんなに笑わせてくれるお話upしてくださって本当にありがとう。

いえいえ~、
こちらこそありがとうございます。Sさんに笑ってもらえるの、うれしいです(^^)


>薪さん、元気になってよかった、よかった。

はい。ご心配お掛けしました。


>あ、でもね

そうなんですよね……心の傷の方が、時間掛かりますよね……。
やっぱり人生の先輩だからかな、Sさんの言葉は、言い方はとってもやさしいのに重みがあって、いつも深く頷かされます。


>最初のころの、鈴木さんのために復讐しに来た女の子の時もそうだけど、薪さんてわかってても、こと貝沼事件関係の事となると、自ら罠にはまりに行くのね。それが十字架だと思ってるから。

うん、そう。
裁かれなかったから消化しきれてないって言うか、ほら、裁判で実刑とかになれば、それを受けることで罪と向き合えるでしょう? 罰を受けても罪は消えないかもしれないけど、そのことに対して自分も代償を支払った、という意識は生まれるから、先に進むことはできると思うのね。そうやって自分の罪悪感と折り合いを付けないと、更生もできないと思う。
でも薪さんの場合はそれがなかったから、罪悪感の消しようがなくて、自分の中で抱え込むうちにどんどん大きく育ってしまって。結果、自ら罠に嵌りに行っちゃー周りの人間に迷惑かけて。
この辺少しね、けじめ付けないといけないなあって。


>だからこそ、青木くんがいるんだなと、これは原作でも私は思いました。

そうそうそうそう!
青木さんの愛を受けることで薪さんはこの世に踏み留まれるようになるし、
青木さんの幸せに尽力することで、薪さんの十字架は軽くなっていくわけですよ。


>大きな愛って必要なんだよね、人には。

うん。必要。
お母さんの愛情がないと子供が生きられないように、大人も本当は誰かの愛がないと生きられないんじゃないかな。
だからわたし、思うんですよ。
生きてるってことは、それだけで本当は誰かに愛されてるってことなんじゃないかなって。
例え自覚が無くても、きっと。


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
一言感想 「どひゃー……」
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