Promise of the monster(1)

 こんにちは。
 最近、放置プレイが日常化しております法十ですが、どちらさまもお見捨てなきよう、お願いいたします。

 そんな中で、7万拍手ありがとうございました(〃▽〃)
 みなさまの優しいお気持ちに支えられて、仕事も長男の嫁もがんばることができます。ありがとうございます。


 とか言いつつ、今日から公開しますこちらのお話、
 モンスター後日談 その2 (まだやってるのかとか言われそう)
 薪さんと滝沢さんのドキドキデートです。(やめろ)
 
 題名は、モンスターとの約束。
 
 さすがに後日談を拍手のお礼にはできないので(てか内容的に無理)、お礼SSは次の機会に。
 本日も広いお心でお願いします。




Promise of the monster(1)


 目前の壁はどこまでも続いている。
 遥か遠くに見える曲がり角までずっと、レンガを模したタイルが微妙に色を変えながら、連綿と連なっている。威圧的で不愛想なその壁は、来る者を拒むような閉塞感と、囚われた者を物理的に拘束する高さを持つ。

「なんで僕が」
 塀を見上げて眉間に皺を寄せ、薪は低い声で呟いた。
「こんな朝っぱらから」
 週末の時間割はウィークディの2時間遅れ、日曜の7時は早朝だ。おまけに薪は休暇中、それも1年に1度あるかないかの連続休暇の最終日ときた。襟元に巻いたマフラーに向かって、愚痴をこぼすのも無理はない。
「寒いし」
 白いカシミヤのコートの肩が竦められ、マフラーの隙間から白い息が吐き出される。やがて薪が立ち止まったのは、コンクリート製の大きな門柱の前。左右の柱には棒を携えた屈強な2名の番兵が、直立不動の姿勢で立っている。その物々しい警戒態勢と、彼の恋人曰く「白い服を着ると雪の妖精のよう」な彼の姿は、まるで釣り合いが取れていない。

 今朝、このコートを薪に用意したのも、何を隠そう同居中の恋人なのだが、彼は薪がコートを羽織ると同時に、感極まったように抱きついてきた。
「きれいです。まるで妖精みたい」
 そう言いながら着たばかりのコートを脱がせようとするから、思いっきり蹴り倒してやった。着せたいのか脱がせたいのかどっちなんだ、と訊いたら、「着せてから脱がせたいんです」と訳の分からない答えが返ってきたので、もう一度蹴り飛ばした。彼が床に転がると同時に玄関を閉めてザカザカ歩き、吉祥寺の駅に着いたところで気が付いた。「行ってきます」のキスをするのを忘れた。

 薪のそんな、休日ならではの浮ついた気分を、門柱の文字が一気に落ち込ませる。黒地に金の文字で記された、笑うことを許されない施設名。
『東京拘置所』である。

 細い手首を飾る銀色の腕時計が約束の時間を示すと、門を塞いでいた鉄柵がゆっくりとスライドした。中から出てきた制服姿の男たちに、薪は軽く頭を下げる。彼らも職務に勤しんでいるのだ。不満をぶつける相手は彼らではない。
 その相手は、彼らの後に続いて現れた。どこから調達したのか今年流行の型のスーツに身を包み、ピカピカの革靴を履いて、てかあの靴、ウェストンじゃないか。偏見を持ってるわけじゃないけど、真面目に働いてる自分が買えないような高級ブランド靴を、この建物から出てくる人間に履かれるのはなんか悔しい。

 休暇返上命令の電話は、昨夜遅くに掛かってきた。
『明日一日、滝沢くんとデートしてあげてよ』
 悪ふざけだと思ったから、物も言わずに切った。10秒もせずに2回目のベルが鳴る。
『僕の電話を無言で切るとは、いい度胸だね』
 不機嫌な上司の声に、薪はぬけぬけと、
「すみません、中園さん。電波障害のようです」
『その言い訳が使えないように家の電話に掛けたんだけど』
「子機を使ってるので」
『口の減らない子だね』
「減らないように気を付けてるんです。一つしかありませんから」
 脱力必至のオヤジギャグで返す。案の定、怒る気力を削がれた中園が、溜息交じりに言葉を継いだ。
『いいから聞きなさいよ。明日、滝沢くんが仮釈放になる』
「ええっ?」
 滝沢が殺人罪で投獄されたのは3年前。彼が奪った複数の人命は検察に死刑を求刑させるに十分な罪だったが、検察側の証人として法廷に立つことと引き換えに、無期懲役の実刑判決が下りた。仮釈放などと、そんな温情が受けられるような男ではないのだ。

『どんな手を使ったものか、僕にも分からないけど。仮釈放は本当だ』
「あの男は危険です。釈放なんて、羊の群れに狂犬を放つようなものですよ」
『僕もそう思う。そこで、条件を付けた』
 中園が付けた条件と言うのが、監視役の同行だ。不自然な仮釈放が通ったことから、刑務所内の職員は買収あるいは恐喝されている可能性がある。監視役は警察庁の職員から選ぶことに決めた。
 そこで白羽の矢を立てられたのが、薪だ。
 滝沢の元上司であり、3年前の事件でも共同戦線を張った仲だ。お世辞にも友好的な関係ではないが、ターゲットをよく知っていると言う点では、薪以上の人材は警察庁にはいない。
 滝沢の仮釈放が動かせないなら、これが最善の策だ。薪に選択肢はなかった。連休最後の日だろうと、2ヶ月ぶりのデートがキャンセルされようと文句は言えない。が、その元凶にまで物分かりの良い公僕の顔をすることはない。

 敵意剥き出しの薪の視線に、滝沢はにやりと笑って、
「ご苦労」
 えらっそーに! なにが『ご苦労』だっ!

 怒りのあまり目の前が真っ赤になる。脳の血管が切れるかと、いや、2、3本は切れたに違いない。
 たちまち膨れ上がった悪感情を声に出そうと薪の口が開きかけた時、職員の一人が警帽を脱いで、薪に向かって頭を下げた。
「ご協力ありがとうございます、薪警視長」
 舌の上から羽ばたこうとしていた極めつけの罵詈雑言を、薪は慌てて飲み込む。さっきも言ったように、この男以外の人間に罪はないのだ。

 咄嗟のことで切替えが間に合わず、ああ、いえ、などと曖昧な返事をした薪に、初老の男は握手を求めてきた。薪がポケットから右手を出すと、やや強引に両手で包まれた。コートのポケットよりも暖かい手だった。
「看守長の宮部と申します。お会いできて光栄です」
「えっ、看守長?」
 これは驚いた。看守長が見送りとは。
 囚人の釈放時には、現場の担当刑吏官が立ち会うのが通例だ。看守長が顔を出すのはよほどの大物か、ここに入ってもなんら社会的地位を脅かされないくらいの権力者に限られる。法曹界の首領を裏切った滝沢にそこまでの力があるはずはないのに、何故。

「薪。早くしろ」
「ああ、悪い」
 て、なんで僕が謝るんだ!
 殴ってやりたかったが、刑吏官たちの前だ。殴るなら人目に付かないところだ。

 職員たちの敬礼を背中に受けて、二人並んで歩き出す。後ろで門が閉まったのを確認してから薪は、冷静な監視役の仮面をかなぐり捨てて隣の男に食いついた。
「滝沢。仮釈放なんておまえ、いったいどんな手を使ったんだ」
 問われて滝沢は、焦るどころか鼻白みもせず。早朝の街を物珍しげに見回しながら、昔とちっとも変らない不敵な笑みを浮かべた。

「誠心誠意真面目に勤め上げた。その努力が認められたんだ」
「嘘を吐け。賄賂で看守を抱き込んでたくせに。おまけに看守長の見送りなんて、おまえ、小菅でどういう立場なんだ」
「いや、彼はおまえを見に来たんだ。おまえの写真がいたくお気に入りの様子だったから」
 写真と聞いて、薪の額に青筋が立つ。2ヶ月前、面会室で受けた屈辱は忘れられない。もちろん、見せられた写真のことも。
「まさかこないだのゴスロリ」
「あれよりもっと刺激的な写真だ。肌色の多いやつ」
 だからどこからそういう写真を手に入れてくるんだっ!

 思わず顔を歪めると、滝沢が嬉しそうに笑った。滝沢は薪が嫌な顔をすると喜ぶのだ。
「この場で撃ち殺してやろうか」
「好きにするといい」
 できもしないことを、と心の声が聞こえてくるような滝沢の口調にカッとなる。ポケットに忍ばせた拳銃を、コートごと相手の腹に押し付けた。
「今日はライターじゃない」
 ぎろりと下から睨み上げる。滝沢はニヤニヤ笑いを止めて、すうっと目を細くした。
「仮釈放中の囚人に不穏当な動きがあった場合、僕の判断で射殺してもよいとの許可を得ている。死にたくなかったら言動には気をつけろ」

 舐められてたまるか。馴れ合ってたまるか。
 こいつは殺人犯だ。それも、僕の仲間を殺したやつだ。一生許さない。

 滝沢は素直に両手を上げて、悪かった、と謝罪した。
「すまん。久しぶりのシャバで、ちょっと浮かれた」
 それはとても人間らしい感情だと思えた。3年も塀の中にいたのだ。外の空気を吸えるのは今日の一日だけ。籠の中の鳥に、たった一日許された自由。

「『ローマの休日』ならぬ『小菅の休日』か」
 薪がぼそりと呟くと、滝沢はなんとも言えない表情で両手を広げ、大仰に肩を竦めて見せた。
「おまえって男は。どうして見かけはティーンエイジャーなのに、言うことはオヤジなんだ?」
「やっぱコロス」
 ほんの少しでもほだされそうになった自分がバカだった。
 薪が苦々しく吐き捨てると、滝沢は声を立てて笑った。




*****




 この下、新装版のプロフ関連です。
 ネタバレいやんな方は読まないでくださいね☆






 ふっふっふ。
 山本さんのプロフ、ご覧になりました?
 学生結婚、子持ちで子供は女の子! 当たったー♪
 でも、子供は2人いるんですね。しかも親と同居。そこは外したわー。
(うちの山本さんの家族構成は、男爵シリーズ「天国と地獄8」と雑文「シングルズ」に書いてあります。よろしかったらどうぞ)

 そして鈴木王子。来ましたねー!
 わたしも最後だと思ってた~。紅白の大トリ的なスタンスで。
「完全なアウトドア人間で、ダイビングやスキーに薪さんを連れて行った」とありました。
 澤村さんの介護でどこへも行けなかったであろう薪さんに、色んな経験をさせてあげたのが鈴木さんなんですね。やっぱり鈴木さんは薪さんの3人目の親。そんな人を殺めてしまった薪さん……(;;)

 残るプロフも2名様となりました。 
 11は滝沢さんとして、最後、誰なんだろう。警察長官とか?(いらねえ) まさか貝沼?(もっといらねえ
 個人的には、本編には名前だけしか出てこなかった黒田さんor斉藤さんとか興味あるんですけど、あっさりシーズン0への引きで、澤村さんと薪パパ&ママだったりしてw
 

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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滝沢と2人きりなんて、何されるかわからないですね!薪さん。
青木は許せるんでしょーか、2人きり笑
この先きっと何か起こりそうで、すごい楽しみです!!
残りの2巻、まだ滝沢が出ていないようですね。(いらな…あ、なんでもないです笑)
でも、滝沢がもしもトリで出てきたらなんかショックです…
新装版はまだ最初の3冊しか買えてないのですが、残りの2巻楽しみです☆

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わたくしも…

着せてから脱がせるのが良いかと…(青木に激しく同意)
白いコートの薪さんを妄想して、ポーッとなってしまいました。

滝沢と居る時の薪さん、結構好きです。
ぷりぷり怒って可愛い…(*^o^*)
この後、どうなるのでしょうか…拳銃持ったデート…ww
楽しみです!!!(≧∇≦)

山本さんの妻娘有り設定、ピッタリでしたね!凄いです、きっと公式でも美人なはずです。
そして、残り2巻で澤村さんのプロフ来たら、黒プロフ過ぎてホラーになりますね(笑)最後に滝沢、澤村プロフで真っ黒な締めだったらどうしましょう。

杏桜さんへ

杏桜さん。


>滝沢と2人きりなんて、何されるかわからないですね!薪さん。

本当に、危険ですよね!
でもまあ、拳銃持ってるから大丈夫じゃないでしょうか。


>青木は許せるんでしょーか、2人きり笑

いいとこ突きますねえ。
彼は稀代のヤキモチ妬き設定ですから。もちろん、許せないですよww


>滝沢がもしもトリで出てきたらなんか

そうなんですよお。
トリは鈴木さんだと思ってましたからね。
トリってちょっと、重要な人が務めるのが普通じゃないですか。
11巻は滝沢さんとして、トリはちょっとねえ。

だからね、どうせならプロフィールじゃなくて、第九の見取り図とか!
薪さんのお部屋大公開とか!
どっちかって言うとその方がいいなっ(^^)

BON子さんへ

BON子さん。

いつも大爆笑をありがとうございます!
でも、こうしてコメントいただくと、意外とまともな方なんですよね。(失礼)
要するに、薪さんだけがBON子さんを狂わせるのだと、よーく分かります。薪さんて、罪。



>着せてから脱がせるのが良いかと…(青木に激しく同意)

あ、ごめん。
やっぱまともじゃなかった。←おい。


>滝沢と居る時の薪さん、結構好きです。
>ぷりぷり怒って可愛い…(*^o^*)

この二人、すっごく書きやすいんですよ~。
薪さんにズケズケ言える人って、貴重だと思うんです。でもって薪さんも過敏に反応して物を投げちゃったりするから。
滝沢さんて、美味しい役どころですよねw
原作では亡くなってしまって、残念です。


>山本さんの妻娘有り設定、ピッタリでしたね!

いるような気がしてました。←ウソウソ。
いや、実はこれ、単なるギャグで。
「シングルズ」という話を書いた時に、クリスマスイブを一人で過ごさなきゃいけない淋しい独男の小池さんと曽我さんの哀れを強調するため、山本さんに美人の奥さんと娘さんを作ったと言う。なので、予想でも何でもないんです(^^;


>最後に滝沢、澤村プロフで真っ黒な締めだったらどうしましょう。

なるほど、
10~12巻は死者のプロフてことで(・∀・)
編集部に花輪でも送りますか(笑)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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