ソング(3)

 こんにちはー。

 説明入れるの忘れちゃったんですけど、ご新規さんで、こちらの話を初めて読まれた方。
 うちの話は原作と設定が違ってて、
 青木さんは薪さんのストーカーで、雪子さんから薪さんの情報を仕入れていて、この時の食事はそのお礼。
 雪子さんは女神で食いしん坊。薪さんとは親友。
 薪さんは男爵。 

 ごめんなさい、説明苦手で……
 でも最初から読んでくださいとはとても言えないテキスト量なんで、ご質問、あれば受け付けます。(*・`ω´・)ゞ  



 

ソング(3)






 長い睫毛がふんわりと揺れ、光線の具合で化粧を施したようにも見える薄い瞼が亜麻色の瞳を一瞬隠す。つややかなくちびるが小さく開き、透き通るアルトの声が不思議そうに語尾を上げた。
「うちの連中が、雪子さんの誕生祝を?」
 大きな眼をゆっくりと瞬いた薪に、うん、と雪子は頷いた。第九の室長室である。
「今井くんから電話があって。いつも差し入れしてもらってるから、そのお礼にって」
 場所は渋谷、と雪子は彼らに言い含められた通りに地名だけを告げ、店の名前や詳細については「明日のお楽しみだって」と言葉を結んだ。

「薪くんも来てくれるでしょ?」
「すみません。僕はちょっと」
「そんなこと言わないでよ。あたし、薪くん以外、第九に気安く話せる人いないんだから」
「大丈夫ですよ。自分から誘っておいて、相手に気まずい思いをさせるような常識の無い人間はうちにはいません。それに」
 柄にもなく不安がる雪子を安心させるように薪はにっこりと笑い、しかし次の瞬間、がらりと表情を変えて見せた。
「もしも雪子さんに不快な思いなんかさせたら僕が黙ってないことくらい、みんな分かってますよ」
 ふ、と笑ったきれいな顔の冷酷なこと。先刻、雪子に向けたやさしい笑みとは雲泥の差だ。部下たちの気苦労が偲ばれる。
 でも、と尚も言い募る雪子に、薪は天使に戻ってニコリと微笑みかけ、
「雪子さんのお世話は、青木が責任を持ってしますから」
 その企ては何度も失敗しているのに、薪は相変わらず頑固だ。雪子は作戦を変えることにした。

「あたしは薪くんに来てもらいたいの」
 ぱん、と手を合わせて勢いよく拝み倒す。薪のような理屈人間に、くどくどと理由を並べ立てるのは愚の骨頂だ。
「お願い」
 滅多なことでは使わなかった女の武器、もとい薪相手には身長が合わなくて使えなかった上目使いのお願い攻撃を繰り出してきた雪子に、薪は開いていたファイルをぱたりと閉じた。俯けて、黒髪で隠れた面で雪子はほくそ笑む。もらった。
「分かりました。明日の夜、7時に渋谷駅ですね」
「ありがとう!」
 約束さえ取り付ければ長居は無用。薪の気が変わらないうちに退散するが上策だ。「じゃあよろしくね」と雪子は友人に手を振り、室長室を後にした。モニタールームで帰り支度をしていた岡部に会釈し、新人が淹れてきたコーヒーを「ごめんね」と片手を上げて断り、報告書のファイリングをしていた今井にこっそりと親指を立てる。

 廊下を抜けてラウンジに出ると、そこで残る3人が待っていた。
「さすが先生。お見事です」
「こちら、お約束の叙々苑の食べ放題券です」
 宇野から報酬を受け取って、にんまりと笑う。彼女の絶大なる食欲の前に友情は脆い。
「俺の叙々苑……」
「役に立ってよかったじゃないか」
 チケットが白衣のポケットに落とし込まれるのを名残惜しげに見送る曽我の肩を、尖った肘で小池が突く。曽我は当初の目的を見失いかけている。

「さあて。明日が楽しみだ」
 悪ガキそのものの顔で笑い合う3人の様子に、雪子は持ち前の好奇心が疼いたが、裏事情は知らないに越したことはないと判断して訊くのをやめた。薪は鋭い。もし雪子が彼らの計画の全容を知っていたら、彼に見抜かれてしまう恐れがある。自分には明日、薪を指定の場所まで連れて行くと言う仕事が残っている。そこまで成し遂げて任務完了だ。残りの成功報酬は、Pホテルのケーキバイキングのチケットだ。万が一にも失敗は許されない。
「会場の地図は明日、先生の携帯に送ります」
「OK。そこに薪くんを連れて行けばいいのね」
「そうです。よろしくお願いします」
「任せて」
 雪子の頼もしい返事に、3人はぐっと拳を握る。雪子は自分たちに勝利をもたらす女神のようだと誰もが思った。えらく食い意地の張った女神だが。

「なんだ、おまえら。先生となんの相談だ?」
 鞄を持った岡部が通りかかり、打ち合わせ中の彼らに声を掛けた。ぎくりと肩を強張らせたのは小池と曽我のコンビ。彼らだけならこの作戦は発覚していたかもしれない。しかしそこには、クールガイの名も高い宇野がいた。
「先生の誕生祝に、食事にでも行こうかと話してたんですよ」
「おお。じゃあおれもご相伴に」
「先生の好みに合わせて、Cホテルのフレンチですけど?」
「う。あ、いや、遠慮しとく」
 Cホテルと聞くと、岡部は急に焦り出し、両手を振って逃げるように帰って行った。彼は堅苦しいテーブルマナーが必要なディナーは苦手なのだ。

「さすが宇野」
「まあな」
 2年近くも一緒に仕事をしているのだ。岡部の鬼門はリサーチ済みだ。
「宇野って真面目そうな顔して、意外と策士だよな」
「人聞きの悪いこと言うなよ。俺はただ」
「ねえ。これって岡部さんには内緒にしておいた方がいいのよね?」
「あ、はい。お願いします」
 いいけど、と雪子は豊満な胸の前で腕を組み、太陽のように笑った。
「Cホテルのディナー券、追加でお願いね」
 まだ食う気か。
「もちろんペアでね」
 しかも2食分か。

 それじゃ明日ね、と上機嫌で去って行く白衣の美女の後ろ姿に、悪童3人組は、彼女と結婚した男は彼女の食費を稼ぐだけで人生が終わってしまうだろうと、未だ見ぬ未来の花婿にいたく同情したのだった。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Hさまへ

Hさま。


お返事、大変遅くなってすみません。
みんな防衛省が悪いのよー。(←ちゃんと写真を撮っておかない自分が悪い)


>お義母さんの入院のこと

Hさんには、いつもお気遣いいただいてありがとうございます。
そちらは徐々に慣れて来まして。
まだ急変してどうこうとなる段階ではないので、落ち着いて構えることにしました。

ただ、こないだね、
人事不省と言うのでしょうか、意識が朦朧として動けなくなってしまって、何を言っても伝わらない感じで、慌てて病院へ連れて行ったのです。
原因は脱水症状でした。
あんなんなっちゃうなんて、びっくりしましたー!
それまでにも脱水で倦怠感を訴えることが多かったんですが、お義母さん、足が悪いので、トイレに行くのが面倒だって言って、水分を摂ってくれなかったんですよ。
今回のことでさすがに懲りたみたいでね、今はよく、水やイオン飲料を飲んでます。そのせいか、わりと調子もいいみたいです。

暑くなるので、Hさんも脱水には注意してくださいね!


>しづさんのストレスから体調を崩されたとうかがって心配しておりました。

言われてみれば、胸が痛いの、何処行ったんだろう??
あの当時のストレスより、今のストレスの方が遥かに大きいはずなんですけど。防衛省のせいで毎日泣きそうだし!
親知らずの薬を飲んでた間だけだったんですよね……やっぱり薬のせいだったんじゃないかと、つい疑ってしまいます。


Hさんも、逆流性食道炎に苛められたんですね。
実は、うちのオットもやりました。
神経細いくせに社長業なんてやるから(^_^;

あれはねえ、暴飲暴食しないとか食べ物に気を付けるとか、医者に行くと言われますけど、そういうことじゃないんですよね。
モロにストレスですよね。
かと言って、現代社会でストレスから逃れるのは無理な相談ですものね……。
うまく付き合うしかないんでしょうね。

ふてぶてしい、大いに結構だと思いますよ。
子供の純粋さって、色んなことを知らないから保ててるわけで。世の中を知るほどに、言葉は悪いですけど、ふてぶてしくならなきゃ生きていけませんて。
それが大人ならではの強さとしなやかさなんだと思いますよ。



>青木くんの(突き抜けた)ポジティブさを分けてもらいたいくらいです。

あれはただのバカって今井さんに言われちゃってますけど(笑)

そうですね。薪さんのお相手にはいいかもですね。
でも多分、部下は苦労してると思う(笑)

Hさまへ

Hさん。

「レスいりません」と言われましたが、一言だけ。

そういう風に感じる方は、昔からたくさんいましたよ~。
だから、声に出さないだけで、今もきっと、Hさんの他にもいると思いますよ。
Hさんだけじゃないですから。あんまりご自分を責めないでくださいね。


わたしは骨まであおまきすとですけど、鈴薪さんも多く書いてます。
それは、今の薪さんを作ったのが鈴木さんだから。
鈴薪さんの延長上に青薪さんがある、と考えているからです。



その辺、原作はすごくよくできてるなーって思う。
ジェネシスの頃の薪さんはまだ、知識だけが突出した偏った人間だったでしょう。それが鈴木さんと出会ったことで、人間的な成長を得ることができ、同時に彼の友情により、あの過酷な過去をも乗り越えることができた。
第九の薪さんは、その鈴木さんを自らの手で殺してしまい、犯罪被害者でありながら加害者にもなってしまった。そこで出会ったのが、被害者にも加害者にも平等に寄り添える青木さんだったと。

原作薪さんは、その時その時、一番必要とする性質を持った人と出会ってるの。
岡部さんもきっとそう。
鈴木さんを亡くした直後のあの時期には、控え目な青木さんじゃダメ。ちょっと強引な岡部さんじゃないと、薪さんに弾かれちゃったと思う。

当たり前だけど、先生、さすがだよねー。

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
一言感想 「どひゃー……」
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