ソング(5)

 ご無沙汰です!
 コメントのお返事、遅くなってすみませんでした!

 がんばれコール、ありがとうございました(〃▽〃)
 おかげさまで、無事に市の検査が終わりました。
 こちらは大した指摘もなく、手直しも微々たるもので、ひとまずホッとしました~。

 
 月末は防衛省が来るので、週末にかけて忙しくなるかもしれませんが、とりあえずは、
 お話の続きです。
 お待たせいたしました! どうぞ! (←待っててくれた人がいるといいなあ、という希望的観測)



ソング(5)






 平衡感覚を侵されそうな曽我の歌が終わり、続く小池は、薪とは逆に流行のナンバーをしっかりと押さえていた。最近は、どの店に行っても彼女たちの歌が流れている。自然と耳が覚えてしまっているから、聞いている方も一緒に楽しめる。――はずなのだが。

「なんだろう。この微妙な違和感」
「そりゃー女の子の歌を男の声で唄ってるから」
 恋を夢見る女子高生の日常を若者言葉で語る知性の感じられない歌詞、あれは若くて可愛い女の子がミニスカート(これは外せない)を穿いて踊りながら歌うから許せるのであって、30過ぎの男が重低音で奏でるものではない。てか単純にキモチワルイ。
 顔をしかめて、今度は曽我が宇野と囁き合う。
「音程もテンポも合ってるのに。聴いてると冷や汗が出てくるの、なんでだろう」
「ある意味曽我より強烈だな」

 今井に到っては、耳を塞いでソファに突っ伏している。そこまでしなくても、と思うが、繊細な彼には耐えられない不協和音なのだ。同時に、気遣いのできる彼は、協力してくれた客人に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「先生、すみません。うちの連中、歌はあまり得意じゃなくて」
「ん? あ、いいのいいの。カラオケなんて楽しけりゃいいんだから」
 なんて心の広い女性だろう。
「それよりこの山賊焼きだっけ、ホント美味しいわ」
 食べるの夢中で聞いてなかったんですね。

 黒板を爪で引っ掻くような不快感がようやく途切れ、次の歌い手がマイクを持った。みながホッとしたのも束の間、そこからが、本当の地獄の始まりであった。

 画面に閃光が走ったかと思うと、星の飾りのついたステッキを持った女の子が出て来た。目の面積が顔面の六割を占める人間離れした顔立ちの彼女の、髪の色はピンク、髪型は鉄板のツインテール。セーラー服をアレンジしたミニスカコスチュームに身を包み、色違いの戦闘服を着た仲間たちと共に夜空を駆ける、その名も。
『萌え萌えキュンキュン、ヴィーナスレボリューション!』
「やめろおお!」
 叫び声と共に、今井は外に飛び出して行った。限界を超えたらしい。残されたのは4人、うち二人の仕掛け人は宇野の歌声を掻き消そうとするかのように絶叫する。
「あいつがアニソン以外、それも美少女アニメ以外、興味無いの忘れたのか!」
「だれだっ、宇野にマイク持たせたの!」
 おまえらだ。

 だが彼らにとって、それは戦略的被災であった。
 全員が唄い終え、残るは薪一人。その状況に追い込めば、マイクを拒否しようとする彼を「お互いさま」という一言で封じることができる。自分はその責を果たしたのだと言う自負が、彼らを強気にしてくれるのだ。多少の無理強いも可能だろう。

「今井さん、ずるいですよ! 逃げないでくださいよ!」
「いやだああ! おれの絶対音感が崩れるうう!」
「大丈夫ですよ。そこまで合ってませんでしたから」
『このせーかーいー、まもーるためー。マジカルピーチ、ラブリーバナナ、あなたのハートにMOEズッキュン!』
「宇野っ、その呪文はヤメロ!」
「世界が崩壊するわ!!」

 地獄の3分が過ぎた後、部屋の中で平静を保っていられたのはたったの二人。一人は歌い手である宇野と、もう一人は薪だった。雪子ですら歌の間は箸の動きが鈍かったと言うのに、薪の神経は大したものだ。
「最近は変わった歌が流行ってるんだな」
「薪さん、平気なんですか」
「なにが?」
 その薪の態度に、今井は確信を持った。薪は音楽に疎い。音感も鈍い。当然ながら、歌は上手くない。
「みんな上手いもんだな」
「いや、マトモなのは最初の2人だけだと思いますけど」
 悪夢から解放された人々の眼が、やがて理性を取り戻し、野望にギラつき始めた。本来の目的を思い出したのだ。

「さ、次は薪さんの番ですよ」
「僕はいい」
「順番ですよ。歌ってください」
「歌はあんまり得意じゃないんだ」
 やはり、と4人は笑顔の裏で悪魔の笑いを浮かべる。ここはどんな手を使ってでも歌わせてやる。そのために、これまでの苦労はあったのだから。

「こういう席で、野暮は言いっこなしですよ。俺だって歌は上手じゃないけど、三代目の曲、一生懸命覚えたんですから」
「「「身の丈に合った曲を選べ」」」
「聞き慣れてる曲でいいんですよ。ドラマの主題歌とかCMソングとか」
「「「慣れてるからこそ違和感ハンパねえ」」」
 彼らのツッコミは容赦がない。4人の正直さに、薪は苦笑して首を振り、
「生憎、最近の曲は知らないんだ」
「俺もですよ。アニソンしか知りません」
「「「おまえのは公害だ!!」」」
 正直すぎて取っ組み合いのケンカになりかけている4人に、薪はトム・コリンズを飲み干して言った。
「悪いけど、アニメもドラマも見ないから。ニュースはCMも流れないし」
 ああ言えばこう言う。理屈屋の薪に理屈で勝とうとするのはバカのやることだ。

「先生、お願いします」
「なに。薪くんに唄わせたいの? なんで?」
「天楼閣の満漢全席付けますから」
「ラジャ」
 食べ物で釣れば人でも殺しそうだ。
「久しぶりに薪くんの『A Whole New World』が聴きたいわ」
「よろこんで」
 そして薪は雪子の頼みなら事件そのものを握りつぶしそうだ。

 結局は雪子にすべて頼る形になって、こんなことなら最初から彼女に頼めばよかった、そもそも彼女なら薪の弱点を知っていたのじゃないかと、その可能性に4人が思い至った時、静かな前奏が流れてきた。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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A Whole New World!!

その選曲~~!!( ;∀;)
うまくないと入れない選曲!薪さんまさかの歌うまい設定でしたかっ!!ヤバいそんなん歌われたら泣きます。

いや、お忙しいのに続きありがとうございます。
いつまでも、いつも待ってますから。頑張って下さいね(*´∇`*)

ありがとうございます!

お疲れのところ更新していただいて…ありがとうございます(;_;)
ぼ…防衛省⁉︎すごいお仕事されてますね。
それは、書類も検査もたいへんそうですね。
お疲れが出ませんように…

やっぱり!薪さんに弱点はないんでしょうかね。
A Whole New Worldって。選曲が。
薪さんが歌うなら洋楽かなぁって思ってました。
続き楽しみにしてます。あ。ゆっくりで…

なみたろうさんへ

なみたろうさん。

>薪さんまさかの歌うまい設定でしたかっ!!

えへへー、実は上手いんですよー。
過去には鈴木さんと一緒にコンパの盛り上げ役に駆り出され、女の子たちに「歌手になれるー!」と騒がれたほどですから。(「言えない理由sideB」)

あの曲、好きなんですよー。
以前テレビで、男の人がきれいな裏声で二役唄ってるのを聞いて、あ、これ薪さんにもやらせたい、とずっと思ってたんです。



>いつまでも、いつも待ってますから。頑張って下さいね(*´∇`*)

ありがとうございます。
最近の話題にはまったく付いていけず(映画とか)、すっかり取り残されてしまいましたが(^^;)
自分のペースでコソコソ続けていきたいと思います。

防衛省対策の書類が終わったら、なみたろうさんの薪さんに癒されに行きますので、よろしくお願いします。


ばろんさんへ

ばろんさん。

励ましのコメントありがとうございます。


そうなんですよー。
こんな風に書類作ったの、初めてですよー。

現在、提出書類を監督員さんが見てくれてます。
付箋が山ほど貼られて返ってくるんだろうなあ(^^;


>やっぱり!薪さんに弱点はないんでしょうかね。

薪さんにできないことはない! がわたしの信条です(〃▽〃)


>薪さんが歌うなら洋楽かなぁって思ってました。

薪さんに洋楽、似合いますよね!
男爵は必要とあらばポップスもラップもアイドルも演歌も歌いますけど、
原作薪さんはクラシックか洋楽オンリーですね。Mさんのイラストみたいに、ジャズも素敵だと思います(^^)

ヴィーナスレボリューション…笑

宇野さんが…
萌え萌えキュンキュンズッキュンズッキュンで、どうしましょうと動揺したのも束の間、思わずペンライトを振りそうになりました。さすが宇野さんです(笑)

薪さんが歌うA Whole New World…
しかし、これはデュエットでありますから、薪さんがアラジンで私がジャスミン役と言うことで魔法の絨毯に乗って世界を見せてあげる…てあれ?すみません、あまりに興奮して…!!妄想がドンストップしそうになりました。(←やめて)

薪さんの甘い歌声を楽しみにしております!
お忙しい中、ありがとうございました!(*^^*)

おつかれさまです!!

お忙しい中、更新ありがとうございます!

いやもうその選曲で「久しぶりに聴きたいわ」でウタウマなことに気がつかないと……第九メンズ……。観察力と洞察力……(笑)

そうそう、言えない理由でヤング薪さんが歌ってらしたから。
歌はうまい設定なんだろうと思いつつ読ませていただいてました!

また続きお待ちしております!ご無理のない範囲で!(^0^/)

BON子さんへ

BON子さん。

わー、来てくれてありがとう~(;;)
この頃ちっともコメント残せなくてごめんなさい。
1000拍手おめでとうございましたー!(ここで言っても)


>宇野さんが…

宇野さんと言えば、ダニーボーイの誕生日やってましたよね?
「オウ、マミー、なんてこったい!」 爆笑しました~!(だからここで言っても)
ていうか、あのアメフラシみたいな色合いのお菓子は何事?(だからここで聞かないでってば)
アメリカって、ああいうのが美味しそうなのか~。


>薪さんが歌うA Whole New World…

そうそう、デュエット曲なんですよね、これ。
わたしが昔テレビで聞いたやつは、男の人が低音も高音も一人で歌ってたの。その裏声がめっちゃキレイでね~。

青薪さんデュエットも考えたのですが、薪さんが「死んでもやるか」て怒るから止めました。
雪子さんとなら唄ってもいい、と本人ノリノリだったのですが、わたしがイヤなので止めました。
世の中、上手く行かないもんですねえ。

にゃんたろーさんへ

にゃんたろーさん。

本当に、遅くなってすみませんー!
にゃんたろーさんのリクなのに、中断とか、ゴメンねえ(><)


>いやもうその選曲で「久しぶりに聴きたいわ」でウタウマなことに気がつかないと……第九メンズ……。観察力と洞察力……(笑)

ですよねえ(笑)
大丈夫か、うちの第九☆


>そうそう、言えない理由でヤング薪さんが歌ってらしたから。

憶えててくださってありがとうございます。

うちの薪さんは何でもできる設定です。
ただ、それって裏を返せば……というのが今回の話のテーマです。
お楽しみいただけますように(*^^*

Aさまへ

Aさま。

クイーンのコンサートに?
わー、Aさん、すごーい!

わたしは英語が超苦手なので、洋楽って拒否反応(?)が出るくらいダメなんです(具体的には、聴くと寝る)
そんなわたしが唯一、いい曲だな~、と思えたのがこれです。ディズニー映画の「アラジン」の歌です。
それなりにメジャーな曲だと思いますが、ディズニー興味無い人は知らないんじゃないかしら。

薪さんに唄わせるとしたら、絶対に洋楽だと思ったんですよ。
そうしたらね、(わたしが)これしか覚えてなかったのね。


>薪さんの弱点は青木かな( *´艸`)

残念ながら、今回は違います。
や、まあ青木さんも入ってるっちゃ入ってますけど、青木さん単体じゃないですね、うん。


>メロディ

楽しみですねえ(*^^*

新しいMRI捜査が何とかって前振りしてましたよね?
わたしもMRIシステムの進化形として、須崎に音声の研究開発をさせてるんですけど、それをテスト段階で宇野さんが邪魔してましたけど(笑)
先生が進化させたMRIはどうなってるんでしょうね。楽しみですね。



プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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