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You my Daddy(5)

 今年も始まりました、入札ラッシュ!
 とりあえず、今回は5本。うち何本かでも落札できるといいな~。と言っても現在、2本元請工事やってるから、それはそれで大変なんだけど(^^;
 少々忙しくなりますので、ブログは不定期更新、あるいはご挨拶抜きの予約投稿になるかもです~。ご了承ください☆





You my Daddy(5)





 薪からの電話は約1時間後に掛かってきた。時間調整に通達類の整理をしていた手を止めて、青木は電話に出る。
『家に帰る。カフェテリアまで車を回してくれ』
「え。カフェテリアですか?」
 少し驚いた。内容が内容だけに、人目を避けて庁外に出たものとばかり思っていた。管理棟のカフェテリアで話し合いなんて、無防備な薪らしい。自分が有名人であることに自覚がないのだ。

 妙齢の女性と幼い子供、そして科警研の若き所長と言う組み合わせは、周りの人々の好奇心をさぞ煽り立てたことだろう。しかも相手の女性はあの性格だ。執務室でしたように、相手の立場も周りの目も意に介さず、自分の主張だけを声高に述べたのではないか。
 薪の立場と精神状態が心配で心配で、青木は居ても立ってもいられなかった。帰宅ラッシュで混み合う科警研の地下駐車場から管理棟の屋外駐車場へ車を回す、わずかな時間が耐え難かった。

 青木が焦燥に胸を焦がしつつ、カフェテリアの駐車場の入口に差し掛かった時、ちょうど建物から薪が出て来た。
「えっ?」
 咄嗟にブレーキを踏んで、車を止めた。あやうく前の車に追突するところだった。

 薪は、ミハルと手をつないでいた。
 小さなミハルの右手は薪の細い手をしっかりと握り、反対側の手は母親であるヒロミの手に握られていた。両手を大人に預けたミハルの屈託ない笑い声が、子供の両側で微笑む大人たちのやさしい声が、遠く離れた車の中にいる青木にまで聞こえてくるような、それはそれは幸せそうな姿であった。
 春の夕陽の暖かい朱色に包まれて微笑み合う彼らは、まるで本当の家族のようで――いや、「よう」ではない。ヒロミの話によれば、薪はむかし彼女の母親と男女の関係にあった。それを裏付ける証拠の写真もあり、薪もその事実を認めている。彼らが実の親子である可能性は充分にあるのだ。

 青木は言葉を失くした。鼻の奥がつきんと痛む。
 それはもしかしたら、薪が当たり前に手にしていたものかもしれない。もしも貝沼事件が無かったら、もしも鈴木が生きていたら、もしも自分がこれほどまでに彼に執着しなければ。
 3つのイフの、最後だけは意味がないと自嘲する。例え薪が青木を受け入れてくれなかったとしても、自分の気持ちは止められなかっただろう。

 青木の車を認めてこちらに近付いて来る彼らの、楽しげな足取り。やがて3人は仲良く後部座席に収まり、薪の声が車を出せと青木に命じた。
「あの。どちらまでお送りすれば」
「このまま家に帰ってくれ」
「え」
 いいのだろうか。二人で撮った写真やらペアパジャマやら、自宅には他人に見せられないものが沢山ある。写真や服は仕舞えるけれどダブルベッドは隠しようがないが。
「安心しろ。夕食はテイクアウトしてきた。ちゃんとおまえの分もあるぞ」
「いえ、夕食のことでは」
 自分たちの関係を知られても構わない、と言うことだろうか。それはつまり。

「ではやはり、ヒロミさんは薪さんの実の娘さんで」
「パパ、きれい」
「ん? ああ、夕焼けだね」
 青木の質問はミハルの声に遮られた。薪がミハルの声に耳を傾けてしまったので、青木は質問を続けることができなかった。
 冬に実家に帰った時も思った。薪は子供が嫌いと言うが、とてもそうは見えない。子供は自分が相手に好かれているかそうでないか、いかに言葉面を繕っても察知する生き物だ。自分を嫌っている人間のところへは決して近付かない。それは力の弱い子供だからこそ持ち得る自分を守るためのスキルなのだ。嘘吐き上手な薪の言葉より、子供の本能の方が確かだと青木は思う。

「夕焼けと言うのは光の散乱現象だ。レイリー散乱と言って、微粒子の大きさDが光の波長λよりも遥かに小さい場合、光は波長λの4乗に逆比例して散乱されやすくなる。加えて朝夕は太陽の位置が低くなることで光の通過する大気層の長さが長くなるため、昼間散乱することによって見えていた波長の短い青い光は届かなくなり、逆に微粒子の間をすり抜けていた赤い光が拡散されて」
 子供相手にレイリー散乱の講義を始めた薪を、止めるべきか突っ込むべきか、青木は迷う。そして気付いた。どんな魔法を掛けたものか、ヒロミがすっかり大人しくなっている。
 薪の、子供には到底理解できない講釈を、ヒロミは黙って聞いていた。まるで、子供の相手に慣れていない父親を微笑ましく見守る妻のように。

 此処はやはり自分が薪を止めるべきかと思案する青木の後ろで、ヒロミの娘らしく、ミハルが華麗に薪の講義をスルーする。
「パパ、きれいね」
「え、僕のこと? ちがうよ。僕はパパじゃなくておじいちゃん。それから、男の人にはキレイって言わないんだよ。カッコイイって言うんだよ」
「パパ、お顔、きれい」
「いや、だから」
 かみ合わない会話に、薪が口ごもる。舞がこれくらいの頃にはもう少しまともな会話が成り立ったように青木は記憶しているが、幼児期の個人差は大人よりも大きいものだし。小学生あたりから急速に伸びるタイプの子供もいる。
「……ありがとう」
 さすがの薪も幼児相手にキレるわけにもいかず、苦笑で諦めたようだった。
 ルームミラーでその笑顔が作り物で無いことを確認すると、青木は軽く微笑んで車をスタートさせた。


 ――彼らがカフェテリアを後にする数分前。

(薪所長に子供が)
(見ろ。子供に向ける笑顔の美しいこと)
(まるで聖母だ……)
(なんと神々しい)
(おまえら、よく落ち着いていられるな?!)
(おまえこそ、なにをそんなに苛立っている?)
(バカかおまえらは! 子供ができると言うことは、我らの女神がどこかの男に汚されたと言うことだぞ!)
(バカはおまえだ。薪所長は男性だぞ)
(それもそうだ。と言うことは)
(((処女懐妊に決まってるだろうが)))
(なるほど。ああ、なんて神々しい)
 同様の会話がカフェテリアのそちこちで繰り返されていたことを、彼らは知らない。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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お見舞い

しづさんへ

地震大丈夫ですか?
震度4と書かれてましたが、大きく揺れたでしょうか

大事ないとよいのですが、お見舞い申し上げます

通りすがりさんへ

通りすがりさん。

そうか~、もう1年経ったんですね~!
早いなー!

あの頃はまだお義母さんが元気だったんですよ。
だから遠出もできたけど、今はちょっと無理ですねえ。
でも、
映画は行きたい!!
……義妹にお義母さん預けて行こう。←鬼嫁。


>まわりの薪さんへ対する神化扱いが可笑しくて何とも…!

相変わらずバカやってますねえ(苦笑)
法十はいつもこんな調子ですが、お暇なときはまた覗いてやってください。


こちらも梅雨が明けまして、暑さも本番でございます。
通りすがりさんも、お疲れの出ませんように。

Aさまへ

Aさま。

>でもやっぱり、青木は複雑だよね(´・ω・`)

そうですねえ。うちの青木さんは、人間できてないからねえ。
薪さんに血縁者がいたことは嬉しい。
でも、薪さんの心を充たし、彼に幸せを実感させるのは常に自分でありたい。そんな利己的な考えを持っています。悪い子。

あ、でも、原作の青木さんだって、どうだか分からないかもよ?
由花里さんのとき「薪さんに女の人」ってフリーズしてたでしょ。あれってヘンだよね?
薪さんが家族を欲しがっていることを青木さんは知っている日本で家族を持とうとするなら、女性と自分の家庭を築くのがスタンダードで一番の近道のはず。その当然の帰結を目の当たりにして凍ってしまう青木さんに今更ながら胸アツです。天然すぎる。愛しいやつ。


>LaLa40周年記念原画展

おお、行かれましたか。よかったですね!
清水先生の原画に描き下ろしの色紙……え、それは薪さんですか? それとも違うキャラ?
だれか写真、上げてるかな?(撮影禁止かな?)
東京まではとても行けないので、ググってみます。
情報、ありがとうございました。


汐路さんへ

汐路さん。

お見舞い、ありがとうございました~。
はい、わたしの方は大丈夫です。
夜中、役所の防災無線に起こされましたが、揺れはすぐに治まったので、そのまま朝まで寝ました☆(呑気ですみません)

でも最近、細かな地震が多いんですよね。
少し不安ですよね。
防災グッズと備蓄食料の確認、しようかな。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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