You my Daddy(12)



You my Daddy(12)






 週末の土曜日、青木は薪に、自分が仕事に出ている間、娘たちの様子を見に行って欲しいと頼まれた。
 青木はピザ屋に寄ってからマンションに行った。ヒロミもたまには手抜きをしたいだろうと、昼食用に買ったのだ。子供が好みそうなツナマヨネーズのハンドトス。薪の好みはイタリアンバジルのクリスピーピザだが、彼は今日は休日出勤で家にいないから問題ない。

「ヒロミさん。お昼ごはん買って」
 青木は途中で言葉を止めた。中はシンとして、人の気配がなかったからだ。
「公園にでも行ったかな」
 心配性の父親にいくら止められても、小さな子供が部屋に籠っていられるわけがない。青木もさんざん姪や甥の面倒を見てきたから分かるが、あの年頃の子供は延々と遊べる生き物なのだ。付き合う大人の方が疲れてしまう。きっとミハルを遊ばせるため、遊具のある公園にでも出掛けたのだろう。

 留守番をしながら待とうと考えて、青木は玄関先に座った。ここは自分の家だが、現在は若い女性が住んでいる。留守中、勝手に部屋に入るのはマナー違反だ。
 膝に載せた薄い箱からピザの旨そうな匂いが立ち昇ってくる。ピザは焼き立てが美味いのだ。温め直すとどうしても柔らかくなるし、具材にも熱が通り過ぎてしまってジューシーさが無くなる。1ピースだけ、今のうちに食べてしまおうか。Lサイズだし、半分残しておけば二人には充分、いっそのこと全部食べて新しいの買ってくるってのは……エスカレートしていく誘惑と戦っていると、薪から電話が掛かってきた。危ない危ない、もうちょっとでミハルたちの昼食が消えるところだった。

「はい。ええ、今、薪さんのマンションに。――え」
 ヒロミを電話に出せと叱るように言われて、青木は家に上がった。念のため、ヒロミの名前を大声で呼んでみる。ダイニングテーブルに買ってきたピザの箱を置き、続いてクローゼットやトイレ、浴室まで確認したが、やはり誰もいなかった。
「ヒロミさんならいませんけど。ミハルちゃんと一緒に出かけたんじゃないですか?」
 ヒロミと連絡を取りたいのなら直接電話をすればいいのに、どうして青木に言ってくるのだろう。不思議に思いながらも青木は答え、するといきなり薪の雷が落ちた。
『探せ! いますぐ見つけ出せ!!』
 いますぐ探せと言われても。千里眼でもあるまいし、そんなの無理に決まってる。ちょっと姿が見えないくらいで、過保護もいい加減にして欲しい。

「……あのお。どこを探したら」
『知るか! いいから早く探しに行けッ!』
 さすがに無茶苦茶だと自分でも思ったのか、薪は一つ大きな溜息を吐くと、声の調子を改めて青木に具体的な指示を出した。
『とりあえず、こないだのコンビニの周辺を探してみてくれ』
 2週間くらい前、ヒロミに絡んでいた男を警戒しているのか。しかしそこはヒロミの方で避けるだろう。公園にでも行ったんじゃないですか、と言おうとして青木は、被せられた薪の言葉に驚いた。
『見つけたら連絡をくれ。僕もすぐに帰る』
「えっ」
 薪が仕事を放り出して、娘たちを探しに帰ってくる? あの全日本ワーカホリック大賞ぶっちぎり優勝の薪が?

 ここに至って初めて、青木はその可能性に気付いた。
 薪が仕事より優先するもの、それは仕事しかない。つまり、より急を要する仕事だ。例えば事件に関係するもの、人の命に関わるもの。
 もしかして、ヒロミたちの身に危険が迫っていると、薪は考えている?

「まさか」と思わず口に出た。
 いや、あり得る。薪なら。
 何よりも人命を尊重し、目的のためなら手段を選ばない、あの人なら。
 危険に晒された母子を保護するために自宅を提供するくらい、当たり前にやってのける。もしかしたら最初から薪には、彼女たちに降りかかる災厄が見えていたのか。それ故の過保護だったのか。

「てことは……やばいぞ」
 事件に於いて、薪の推理が外れたことはない。
 青木は口中で呟き、急いで外に駆けだした。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

超ご無沙汰しております。
なのに日誌欄のコメントですみません。
>今回も飴だらけ!
『シーズン0』になってから、薪さんの魅力にますます磨きがかかった感じですね。
今回も青薪、岡薪、タジ薪(?笑)と、萌えどころ満載で、ホント、困っちゃいます。
警視総監に会って介抱される薪さんを妄想した、変態サンショウウオでした。

PS 生きている牢名主滝沢の活躍するお話も、楽しく読ませていただきました。

サンショウウオさんへ

サンショウウオさん。

ご無沙汰してます~!
お元気でいらっしゃいましたか?


>『シーズン0』になってから、薪さんの魅力にますます磨きがかかった感じですね。

一言で言って、明るくなりましたね。
ジェネシス薪さんの無垢な所や、ヘンに素直な所が戻って来たみたいなカンジ。
これはやはり、青木さんによって救済された薪さんが本来の姿を取り戻した、ってことなんでしょうか。
そしてそこに、第九で培われた鬼室長っぷりも混在してるとw


>警視総監に会って介抱される薪さんを妄想した、変態サンショウウオでした。

あ、やっぱり?
あれって絶対、お見舞いに来たんですよね。だって、報告に来い、じゃなくて、自分から出向いてきたわけでしょ? (もしも所長代理として総監に報告に行くなら、その役は新人の波多野ちゃんに振らないよね?)
「薪くん、熱出して倒れたって聞いたけど、大丈夫なの?」とは口に出せないだけで、心配してたんだよー。だって総監、薪さん大好きだもん!


>生きている牢名主

ありがとうございます(^^)
楽しんでいただけてよかった。

滝沢さんの役どころは、タジクさんに引き継がれたみたいですね。
リニューアルされたら、えらくハイスペックになりましたねw

これからもちょくちょく出て来ては、薪さんを構ったり青木さんを苛めたりするんでしょうね。
楽しみですね~。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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