You my Daddy(14)

 こんにちは!
 
 毎日たくさんの頑張れコール(拍手・コメント)、ありがとうございます。(*´∀`人 ♪  励まされてます。
 の、割に、更新遅くてごめんなさい。
 なんか最近、時間が上手く取れなくて~、決してよそのブログさん読むのが楽しくて自分とこがお留守になってたわけじゃ、ごめんなさい、読んでました。今回のメロディレビュー最高www



 お話の続きです。
 
 この章、ちょっと暴力描写が強いです。苦手な方はご注意ください。
 (いないと思いますけど)18歳未満の方はご遠慮ください。
 本日も広いお心でお願いします。
 



You my Daddy(14)





 蝶番の壊れたドアが、ぎいぃ、と耳障りな音を立てた。
 中に入ってみれば、見覚えのある黄色いソファに割れたガラステーブル。床に積もった厚い埃は、長期間人が住んでいないことを示していた。
 元は緑色だったカーペットの上に、3組の靴が足跡を残す。一つは男物の皮靴、もう一つは女物のローヒール、そして最後の一つは子供用のスニーカー。男の足取りはしっかりと大股で、他の2つはひどく乱れていた。

「久しぶりの我が家だ」
 そう言って男は埃臭い空気を吸い込み、ムッと顔をしかめた。
「掃除が行き届いていないな。さてはヒロミ、怠けてたな」
「こ、ここは、もう、わたしの、家、じゃ」
 思うように喋れない。
 この家でこの男と暮らしていたのは、もう3年も前のことなのに。ヒロミの細胞は男から受けた仕打ちを痛みを屈辱を、ただの一つも忘れていない。それはまだ少女だった頃のことで、今の自分は母親の強さを身に付けたはず。
 ――でも身体が動かない。

「パパに口答えするのか? 悪い子だ」
 叱責と同時に平手が来た。汚れたカーペットに突っ伏した、ヒロミの髪を男の手が引っ張って顔を上げさせる。まとめて4,5本、髪の毛が引き抜かれた。
「うっ……」
「勝手に引っ越したりして。駄目だろう、ちゃんとパパに教えてくれなきゃ」
 薪の言いつけを破って、ミハルを公園に連れて行ったことを、ヒロミは激しく後悔していた。コンビニの一件で自分には薪という強力な保護者がいること、それから10日以上も何の音沙汰もなかったこと、更には昨日、待ち焦がれた連絡が裁判所から届いたことで、もう大丈夫だと思ってしまった。
 甘かった。この男に常識が通用しないことは、身に染みていたはずなのに。

 恐ろしい執念深さで、男はヒロミたちをつけ狙っていた。後を尾けて住処を突き止め、猫がネズミの巣穴の出口で待ち伏せるように、マンションから出てくるのをじっと待っていたのだ。
 公園内の散歩コースで、偶然を装って現れた男は、狡猾にもミハルを人質に取った。警戒心の薄いミハルは男が持っていた大好きなキャラクター人形に釣られ、ヒロミが気付いた時には男の手の中にいた。
 言う通りにするしかなかった。逆らえば、男が躊躇いなくミハルの細い首を折ることをヒロミは知っていた。実体験として、知っていたのだ。
 男の暴力から我が子を守ろうとして男に殺された母の死に顔は、今でもヒロミの網膜に焼き付いている。
 男の指が食い込んだ母の首は驚くほど細く縊れ、口からだらりと垂れ下がった舌は信じられないほど大きかった。母親の死体の横で、尿失禁と汚物の臭いに吐きそうになりながら、ヒロミは男に犯された。何度も何度も、男が自分に腰を打ちつけている間中ずっと、醜く紫色に膨れ上がった母親の死に顔がヒロミを見つめていた。

「それも、パパ以外の男と一緒に住むなんて……パパは許さないよ」
 あの頃の恐怖を、その絶望を思い出すには、平手の2,3発もあれば充分だった。男から虐待を受けた部屋に帰ってきたことで、その恐怖は倍の大きさになってヒロミに襲いかかった。
「あの男と寝たのかい」
 必死で首を振る。誤解されたくないとか薪に迷惑を掛けたくないとか、そんなことは一切考えられなかった。ただただ、恐怖から逃れるため。男を怒らせないように、その一心からだった。
「そうか、よかった。ヒロミ……ヒロミはパパだけのものだ」
 骨が軋むほど強く抱きしめられた。男の身体からは饐え臭い匂いがした。薪のフローラルな香りとは比べ物にならない、それは忌まわしい臭気だった。

 ぽん、と男の右腕に何かがぶつかり、男はヒロミを抱いたまま顔をそちらに向けた。見ればそれは、先刻男がミハルに与えた人形であった。
「ママ、いじめる。おじさん、わるい」
「違うんだよ、ミハル。パパはママを愛してるんだ」
「パパ、ちがう。パパ、ダイク」
「黙りなさい」
「ちがう。パパ、マキ、っ」
 容赦ない鉄拳が、ミハルの柔らかい頬に振り下ろされた。小さな身体がソファの向こう側までふっとぶ。まるで壊れた人形のように、ミハルは床に倒れて動かなくなった。

「ミハル!」
 駈け寄ろうとして男に蹴られた。恐怖に竦んだ脚は簡単にバランスを崩し、ヒロミは床に倒れた。大量の埃が舞い上がる。
「パパの言うことを聞かないからだよ」
 転倒したまま、ヒロミは立つことができなかった。男の脚が、ヒロミの身体を床に縫い止めていた。
「ヒロミはいい子だから、パパの言うことをきくよね?」
 嫌だと叫びたかった。だけど声が出ない。ヒロミは必死に首を振り、抵抗の意を示した。
「小さい頃はあんなにパパのこと好きだって言ってたじゃないか。大きくなったらパパのお嫁さんになるって」
 多くの幼い少女が、人生初めての結婚相手に選ぶのは自分の父親だ。殆どの場合それは好意ですらなく、恋の予感さえ未だ訪れない少女の無邪気な独占欲に過ぎない。成人した娘に言質を求めるようなものではないはずだ。
 だが、この男にはその常識が通じなかった。
「安心しなさい。邪魔者はパパが排除した」

 いつ頃から彼が狂い始めたのか、ヒロミには分からない。
 派手好きで男好きの母親が、最初の浮気をした時か。男の自慢の種だった勤め先の一流商社をリストラされた時か。
 少なくともヒロミが中学生になった頃には、男は昼間から酒の匂いをさせていた。母がそれをなじると、すぐに物が飛んできた。それが直接的な暴力になるのに、時間はかからなかったように思う。
 暴力はエスカレートし、母親は子供を守ろうとして死んだ。残された子供に待っていたのは、母親という防護壁を失って防ぐ術のなくなった拳と、男の玩具としての日々だった。

「わたしのことも殺すの」
「殺さないよ。パパの言うことを聞けば、殺したりしない」
 事件が発覚するまでの1月あまり、ヒロミは昼夜を問わず、男の性と鬱憤晴らしの捌け口に使われた。
 そんなヒロミを助けてくれたのは、2歳近くなってやっと歩き始めたばかりのミハルだった。空腹に耐えかね、罪の意識もなく、隣の家の台所で食べ物を漁っているところを家人に見つかり、隣人が抗議に赴いたのがきっかけとなった。栄養失調による発育不良だったミハルが歩き出すのがもう少し遅れていたら、ヒロミはおそらく3年前に死んでいた。

「あの頃みたいに、パパと」
 胸元に手を入れられて、虫唾が走った。あの頃はこれが日常だったのに。
 生命と禁忌とどちらが重いのかと、落ち着いて考えるだけの思考力はその頃のヒロミにはなかった。彼女の脳には母親の死に様だけが残っており、自分はああはなりたくないと、それしか考えられなかった。

 でも今は違う。わたしはミハルのママだ。

「いや!」
 自分はミハルに救われたのだ。命だけでなく、人としても。
「死んでも厭よ!!」
 断じてそれを許してはならないと、その声はヒロミの魂の叫びであった。

 追い詰められた野良猫のように、ヒロミは両手の爪で男の顔面を引っ掻いた。男の顔色が赤黒く染まる。次の瞬間、男は激昂し、ヒロミに襲いかかってきた。
「今のうちに逃げなさい、ミハル!」



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

Mさま。


拍手、やっぱりMさまでしたか~。
どうもありがとうございます。
ストーカーなんて(笑)、とんでもないです、うれしいです(^^


>私には想像がつかないくらいのお話ばかりで

……うん。多分、人間らしいやさしさを持った人には考え付かないような鬼畜な話だと、すーみーまーせーんー!!
自覚はあるんですが、わたしのカラダに流れるSの血が命令するんですよー(笑)


>今回も薪さんに孫~

すみませんww
でもご安心ください。今回も丸くまとめますので!


>薪さんがお年を召して認知症を患う話を拝読した時が来た日には、魂ごと粉々散り散りになるかもしれません

魂ごと!!(>▽<) ←いや、笑い事じゃないから。

これは雑文なので、そんなに深くは書かないつもりなんですが、
書き始めたら割と面白いシチュなんですよね。
薪さんは認知症だから、青木さんと恋人関係にあったことを忘れちゃってるんですが、青木さんは毎日薪さんに「好きです」て言うんです。で、薪さんはすぐにそれを忘れちゃって、でも青木さんはめげずにずっと「好きです」て言い続けるんです。
面白いと思いません?←鬼か。

ごめんなさい、わたし、説明下手くそで(^^;
そのうち公開しますので、気楽に構えて読んでくださいね~。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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