You my Daddy(18)

 こんにちは!
 いつの間にか月が変わっちゃいました☆
 水道の現場が一つ終わったので、竣工測量と書類をしてたんですが、オットが本調子じゃないので、スムーズに行かなくて~。夢中になってるうちに、また放置しちゃってました。ごめんなさい。



 前記事に、たくさんの「お帰りなさい」をありがとうございました。
 それぞれの立場からの励まし、労り、助言をいただきました。
 びっくりしたのが、ご自身や身内の方、お友だちが経験者です、と言う実体験を語ってくださった方が、複数いらしたこと。すごく勇気付けられました。
 感謝の徴と言うのもアレなんですけど、「ご心配かけました」の記事に、その後の経過を追記しておきました。ついつい長くなってしまったので、読まなくても全然大丈夫なんですけど、心配してくださった方には、少しでもお気を楽にしていただきたいです。


 コメントの方は、少しずつ、書いてくださった方のお気持を噛み締めながら、お返事させていただいてます。
 書きながら、SSとはまた別種の幸福を味わっています。
 やっぱりわたしって、幸せ者です。
 全部書き終えるまでにはまだ時間が掛かりそうですが、もうしばらくお待ちくださいね。
 

 先に、お話の続きです。
 章の途中で切ってたんですね。我ながら、鬼畜な切り方だな(^^;






You my Daddy(18)





「大丈夫ですよ。ミハルちゃんは強い子です。なんたって薪さんのお孫さんですから」
「孫じゃない」
 え、と薄暗がりの中で改めて薪を見たら、ものすごく蔑んだ眼で見られた。これはあれだ、MRI捜査で証拠を見逃した部下の心をめった刺しにするときの鬼上司の眼だ。

「ヒロミは僕の子供じゃない。病院で彼女が言ってただろ、自分はO型だって。僕の血液型はノーマルのABだ。Cis―ABじゃない」
 親がCis-AB型という特殊な血液型の場合、低確率ではあるがO型の子供が生まれることがある。薪は普通のAB型だからO型の子供が生まれることはない、それは青木にも分かる。だが。
「ちょっと待ってください。薪さんて、A型じゃなかったですか? だって去年オレが刺された時、薪さんはオレにご自分の血を全部くださるって」
「あれは取り消しだ。公式のプロフで発表されたからな。どうにもならない」
「……そういう変更って物語としてどうなのかなあ」
「いいんだよ、二次なんだから。原作優先で」
「ああ、ますます話がグダグダに」
 慨嘆する青木を尻目に、薪は片脚を抱えた。湯船の背もたれに背中を預け、覚えの悪い生徒に講義をする教師の口調で、一連の騒動のおさらいを始める。

「よく思い出してみろ。僕が一度でもおまえに、ヒロミは僕の娘だと言ったことがあるか」
「今日、さんざん聞きましたけど」
「あれはあの男を牽制するために言ったんだ。おまえに言ったんじゃない」
 以前にもその言葉は聞いたことがある、と青木は思い、コンビニの事件を思い出す。青木は遠目に見ていたから気付かなかったけれど、あの時ヒロミに絡んでいたのもあの男だったのか。

 それじゃ、オレの勘違い? いやいや、薪じゃあるまいし。
「言われましたよ。いつだったかは忘れましたけど」
「おまえには言ってない」
「いや、確かに……あれっ? あれれ?」
 ここ1月ばかりの薪との会話を思い出してみて、青木に対する説明は何もなかったことに気付く。ただ「落ち着き先が見つかるまで生活の面倒を見ることにした」と言われただけだ。
「それならそうと、言ってくれればいいじゃないですか」
「だって訊かれなかったから。分かってるもんだと思ってた」
 薪の言葉足らずは今に始まったことではないが、今回ばかりは性質が悪い。一緒に住むと言えば、普通は肉親だと思うだろう。

「で、でも。ミハルちゃんには、ご自分のこと『おじいちゃん』て何度も教えてましたよね?」
「ミハルには、そう信じさせてやりたいから」
 ぽつりと零した薪の声音は、彼の弱気を雄弁に物語る。今さらながらに気付いてしまった恐ろしい疑惑にぞっと背筋を寒くしながら、青木は尋ねた。
「薪さんの子供じゃないなら、ヒロミさんは誰の子なんですか」
 しばしの沈黙が訪れ、やがて薪の口から驚愕の事実が語られた。それはこの仄暗い闇の中でもなければとても口にできない、禁断の事実であった。
「ヒロミは笹原亜由美と、彼女の夫であり彼女を殺した笹原健二の子供だ。そしてミハルは、笹原健二が実の娘を暴行した挙句に産ませた子供だ」
「まさか」
 青木の耳に、ミハルの舌足らずな喋り方が甦る。同年代の頃の舞に比べるとひどく未熟に思われたミハルの幼さは、軽い知的障害の症状でもあった。混ざる血が濃すぎると、その傾向が増えると聞く。ミハルと接してみてそれを察知した薪は、当初からその疑いを持っていたのだ。
 それは、DNA鑑定をするべきだと青木が薪に進言した時、薪が返してきた言葉に現れていた。
『血縁関係ってそんなに大事なのか』
 あれは、血のつながりがないことを言ったのではない。逆の意味だったのだ。

「そんな……だったら余計に、生まれてくる前になんとかしなきゃいけなかったんじゃないんですか。その頃はまだ、母親のアユミさんもいたはずでしょう」
「堕胎手術をすべきだったと?」
「それが大人の責任です」
 青木が強く言い切ると、薪は、ふ、と軽く息を吐いた。
「そうだな、それが正しいんだろう。……でも、想像してみろ」

 長い睫毛を伏せて、薪は語る。
 人間は痛みに弱い生き物だ。普通の人間はそれに屈服することしかできないし、その状態に長く晒されることは大きなストレスになる。彼女たちもきっとそうだった。
 度重なる暴力に、気力も正常な思考力も奪われ、ヒロミもその母親も、精神を蝕まれていった。父親と同じように、彼女たちも正気を失っていたのだ。
 あの家は、狂人たちの棲み処だった。そこに生まれてきた新しい命。
 赤子を前に、大人たちはどうしただろう。虐待を? 否。それならとうにミハルはこの世にいない。彼女が元気で生きてきた事実が、すなわち正解を示している。
「狂気の中で生まれてきた子供が、彼女たちを正常な世界へ導いてくれたとは考えられないか」
 子供は親の庇護がなければ一日たりとて生きられない。ミハルは、それを改めて教えてくれた。そのおかげで彼女たちは、人としての在り方を思い出すことができた。

 そこまで薪に聞かされて、青木はやっと4年前の殺人事件の真相に辿り着いた。
 だからこそ、ああ、だからこそ、生まれた悲劇だったのだ。
 親は子供を守るもの――ヒロミを守ろうとして、母親は死んだのだ。

 黙り込んだ青木に、薪が小さな声で語りかける。その声の儚さは、彼が自分の意見を正しいとは思っていない証拠であったが、さりとて誤りと断ずることもできない不明な人間の愚かさでもあった。
「すべての堕胎に反対してるわけじゃない。レイプ被害者が犯人の子供を身籠ってしまった場合、生んで育てるべきだなんて、そんな非常識なことは思わない。だが」
 薪はお湯の中で身じろぎし、両脚を曲げて両手で抱え込んだ。まるで子供のように、大切なものを守ろうとするように、自分の二つの膝を抱きしめる。
「こうして、何の疑いもなく親を慕う子供がいて、その子供を愛し、守ろうとする親がいれば、それは立派な親子じゃないのか。ヒロミたちと他の親子、いったいどこが違うんだ」
 ゆらゆらと揺らめく焔を映す、愁いを帯びた亜麻色の瞳に訴えかけられれば、青木はもうそれ以上の言葉を持たない。
 つつがなく世界を回すために必要な良識を否定するつもりは毛頭なく、でももっと大事なものがこの世にはある。青木にとってはそれが薪で、ヒロミにとってはミハルなのだ。
 人として、生きていくために必要なもの。例えそれが人の道に外れていても、人間は人として生きるためには何かが必要なのだ。自分の中にたった一つでいい、揺るがないものが必要なのだ。

「それでも」と薪はいっそう密やかに、まるで散った花弁が息を潜めて地に落ちるがごとくに独白した。
 それでも遠い将来。ミハルが本当のことを知る時が来るだろう。どれだけ巧妙に匿っても、真実が真実である以上、その可能性はゼロではない。
 その時に、ヒロミの親は僕だと。薪剛という祖母の昔の恋人なのだと、ミハルの記憶に残すことが必要なんだ。
 嘘でもいい、幻でもいい。絶望に飲み込まれようとする時、人には縋るものが必要なんだ。それがあれば人は生きられる。
 永遠と思えるほど、時間は掛かっても。
 生きて、絶望から抜け出すことができる。
「――僕がかつて、鈴木の幻に縋って生き延びたように」

 青木が我慢できたのは、そこまでだった。鈴木の名前が出た時点で、彼はもう己が衝動を止められなかった。
 伸ばした両手で薪の身体を抱き寄せ、自分の胸に押し付けた。ざぶんとお湯が波立って溢れ、キャンドルの炎を掻き消した。
 真っ暗になった浴室で、薪は何も言わず。ただ黙って青木に抱かれていた。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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薪さんには青木がいますよ。
ご主人にしづさんがいるように、そばにいますよ。だからたいがいのことはふたりなら大丈夫ですよ。

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Aさまへ

11/3にコメントくださった Aさま。

>戻ってきてくれて嬉しいです!

ありがとうございます(^▽^)
今更なんて、そんなことはございません。声を掛けてくださって、本当にありがたいです。


Aさまのお近くにも、患者さんがいらっしゃるんですね。
本当に、今や一般的な病気なんですね。

応援、ありがとうございます。
ゆるゆると頑張ります。

Eさまへ

11/4にコメントくださった Eさま。

体験談、お話しいただいてありがとうございます。
なるほど~、と頷く点が、いくつもありました。


>コップいっぱいの水

確かに。
あれって、失敗したらどうしようって思うからこぼしちゃうんですよね。
こぼれたら拭けばいいのよ、て構えてると意外とこぼさず運べちゃったりする。


>考え方の癖

そうなんですよねえ。
結局は、そこを直さないと根本的な解決にはならないんだと思います。
ただ、おそらくは、Eさんのおっしゃる通り、
本人も分かってて、でもどうしようもないんでしょうね。
真面目な人ほどソン、て、こういうのを言うのかしら……。


>しづさんの薪さん…強くなりましたね。

ありがとうございます。
成長物語を書いてるつもりはなくとも、薪さんの幸せを追及していくと、やっぱり人間的な成長も欠かせないのかなあって思います。

あのね、ふなっしーがカレンダーでね、
「幸福も不幸も、自分の心が決めるなっしー」て言ってるんだけど、本当にそうなんですよね。
周りから見てどんなに悲惨な状況でも、本人にしてみれば幸せってこと、あるんです。でも、自分の幸せに気付くには、心に余裕がないと難しい。心に余裕を持つためには、人間的に成長しないと。

だからうちの薪さんは、次第に強くなっていく方向で書いてます。
これからもよろしくお願いします。

読者その1さまへ

11/4にコメントくださった 読者その1 さま。(この呼び掛けで失礼じゃないかしら(^^;)

コメントありがとうございます。

>記事にあるような負荷がかかったら、それなるわ・・と思えました。辛かったですね・・。

共感いただき、ありがとうございます。
他にも色んな要因はあったんですが、トドメって感じだったみたいです。

今は~、
飛行機の騒音と、お義母さんの話を聞いてるのがツライみたいで。
年を取ると、愚痴っぽくなるし、話もくどくなるし、プラス 認知症が加わって、今言ったことと話が違う、何が本当か分からない、でパニックになるみたいです。聞き流しとけばいいのに、それができないんでしょうね。
飛行機はどうしようもないけど、お義母さんの方は、わたしが間に入って、負担を軽減してます。(←親子の会話を邪魔するイヤな嫁)


>脅かすようですが、今少し体が動くようになっているのも、回復というよりはお薬が体に馴染んできたから、と捉えたほうが後々の自分の気持ちが楽になるはずです。(揺り戻し来ちゃいますし・・)

具体的なアドバイス、ありがとうございます。
揺り戻し、少し、来てるみたいです。
考えられなくなっちゃったり、慣れているはずの仕事の手順が分からなくなったり。
そうなったらスッパリ休んじゃえばいいのに、それができないんですよねえ……なんとか休ませようと、ビールとテレビドラマで誘惑してます。仕事、溜まる溜まる(笑)


>しづさんが倒れないように、そりゃあもう、お好きなことをなさって美味しいものをバンバン召し上がって、よく寝て、ご自愛下さいませ。

はい!
仕事もしますけど、好きなこともします! 
好きなことができるよう、仕事の手は抜いて体力温存しますw (←え)

なみたろうさんへ

なみたろうさん。

>ふたりなら大丈夫

うん……うん。
その言葉、心に沁みます。
初めて聞く言葉じゃないのに、今のわたしには、すごく大切な言葉に思えます。
ありがとう。

Hさまへ

11/15にコメントくださった Hさま。

Hさま……!
こんな大事なものを、わたしのような者に見せていただいて、本当にありがとうございます。
感激して、うるっとしちゃいました。きっとこれは、Hさまにとって、一番の宝物にも等しいものでしょう? それをわたしに。

Hさまも、素敵なお友だち、お持ちですね。
偶然ですが、わたしの親友と同名で、びっくりしました。
やっぱり友だちは宝物ですよね。この年になると友だちも限られてしまうので、しみじみそう思います。
わたしも久々に、彼女にメールしようっと。

Aさまへ

11/17に拍手コメントくださった Aさま。

>御主人、仕事に復帰できて良かったですね。

おかげさまで。
ぼちぼち、という感じですが、自営業の特権で、家族でフォローし合って何とかやってます。
でも、肝心なところはやっぱり夫に頼るようになってしまって。その改善が今後の課題ですね。夫がいなくても、そこそこ仕事はできるようじゃないと。


>後から原作に合わせるの大変ですね 笑

そうなんですよ~。
誕生日と年齢はどうにもなりませんでしたが、血液型くらいは、ねえ。


>ひろみがミハルを愛するように薪夫妻は薪さんを愛した。

いや、ヒロミにとってのミハルは、人として生きるための指針というか。自分が獣に堕ちないための、命綱みたいな感じです。

薪パパと琴海さんはね~、本当に、天使の心で薪さんを愛したんだと思いますよ~。宿った命に罪はないと、生まれてきた子は自分たちが慈しみ、守っていこうと、そう思ったんだと思いますよ。


>愛するもの、守るべきものを持つことで人は強くなれるのですね。

そうですね。
愛する人ができると、それがネックになることもありますが。プラスの面も多いですよね。
女は弱し、されど母は強し、って言うじゃないですか。「この子を残しては死ねない」て思うんでしょうね。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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メロディ6月号、読みました。
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