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真冬の夢(8)

 この章はイタグロです。Rも入ってます。
 苦手な方、せっかく幸せな気持ちで眠っている薪さんを邪魔したくない、という心優しい方は、前の節でこのお話はおしまい、ということでお願いします。







真冬の夢(8)







 薪はいつの間にか、第九に来ている。
 科学警察研究所法医第九研究室の室長室。ここは薪の城だ。

 室長室のデスクは大きい。薪が両手を広げても端に手が届かない。
 材質は事務的なスチール製。これが民間の会社なら、薪の役職からしてマホガニーの高級机になるところなのだが、またその持ち主にとってもそのほうが遥かにお似合いなのだが、いかにもお堅い警察関連研究所の事務机らしい。
 ふたつの机がL字型に組まれて、正面には書類の山。左手にはデスクトップ型のパソコンが置かれている。PCの画面はかなり大きい32インチ型で、第九のスパコンの端末として繋ぐことができる。

 その、機能優先の色気のない机の上で。
 仕事最優先の室長が、今宵ばかりはしどけない姿で快楽に喘いでいた。
 
「いやだ、こんな所で」
 神聖な職場でこういった行為を行うことに、真面目な室長はかなりの抵抗を覚えている。逆に、相手は室長の反応を楽しんでいるかのようだ。
 室長の姿は、かなりきわどい。
 上半身はきっちりとワイシャツにネクタイを締めているのだが、腰から下は何もつけていない。そのアンバランスさが、かえって社内恋愛の生々しさを強調している。
「だめっ……!」
 相手の男もネクタイ姿で、薪を後ろから抱きしめるようにして、身体を密着させている。薪よりだいぶ背が高く、堂々たる体躯をしている。
 激しい羞恥に苛まれている薪と違って、相手の男は冷静だ。いつもは薪のほうが立場的にも優位に立っているはずなのに、このときばかりは逆転してしまう。
 ……惚れた弱み、というやつだ。

「あっ」
 ワイシャツの裾から、男の大きな手が滑り込んでくる。
 長い指が、弱点のわき腹をなぞり上げて、薪から理性を奪う。腰骨の少し上の辺りを重点的に責められると、薪は腰砕けになってしまう。彼は薪の身体を知り尽くしている。
 もう、抵抗できない。
 為されるがままに、男の愛撫に身を任せる。相手の手は、薪の前に回って下腹部を責め始める。薪の身体の中心を、男の大きな手がすっぽりと包み込んだ。

「あふっ!」
 思わず、恥ずかしい声が上がる。逃れようとした華奢な手が、机の上に積まれた報告書の山を突き崩した。
 まずい、書類が―――― しかし、身体はすっかり男の思うがままの状態だ。腰の辺りから上にも下にも電流のような快感が走って、立っているのがやっとだ。
 男の愛撫はとても巧みで、薪はたちまちのうちに昇りつめてしまう。
 あられもない声を上げてデスクに縋りつき、散乱した書類の上にうつぶせる。何枚かの報告書はくしゃくしゃになってしまって、書き直しが必要だ。
 尻を高く上げるような屈辱的なポーズを取らされて、なけなしの理性が顔を出すが、すでに行為に対する期待のほうが大きい。このまま放って置かれたら、それこそ堪らない。

「は、はやく……あひっ!」
 男のものが入ってくる。
 痛みもなく、愉悦とともに受け入れる。
「あっ、い、いいっ」
 腰を押さえられて、激しく突き上げられる。深く深く相手と繋がって、薪はからだの奥底から湧き上がってくるよろこびを抑えきれない。
「す、すずきっ……!」

 あたたかくて大きな身体。
 ああ、鈴木の身体だ。
 
「鈴木……大好きっ……」
 いったい何年越しの恋なのか、自分でも分からなくなるほどに、愛しくて愛しくて――――。
 いつまでこの男の虜になっていればいいのか。いや、自分がそれを望んでいるのか。

 ひょい、と足を持ち上げられて身体を運ばれる。器用に繋がったまま鈴木は室長席に座り、自分の上に薪の小さな身体を載せた。
 鈴木を悦ばせようと、いつものように薪は腰を動かし始める。
 自分の快楽よりも、鈴木に感じて欲しい―――― 椅子の肘掛に両手をついて自分の身体を支え、激しく上下に振る。本来なら痛みを伴う行為のはずだが、今夜に限っては快楽しかない。そういえば、さっき鈴木を受け入れたときも痛くなかった……。
 そこでようやく、これはいつもの夢だ、と気付く。
 現実に、薪はこの行為で快楽を感じたことは一度もない。夢とは都合よくできているものだ。
 なんだ、と薪は落胆するが、夢で良かったこともある。報告書の書き直しは必要ない。

 夢でもいい。
 だって、もう、夢でしか逢えない。
 鈴木はこの世にはいない。

「すずき、すずきっ、愛してる!」
 夢ならいくらでも大胆になれる。
 誰にもこの気持ちを咎められない、邪魔されない。鈴木が僕だけを見てくれる世界に、ずっと浸っていられる。
 このまま、目が醒めなければいい。

 愛する人と繋がった部分から底知れない悦楽が沸いて、薪の身体を薄紅色に染め上げる。いつの間にネクタイとシャツを取ったのか、薪は全裸になっている。
 震える腕から、爪先立ったきれいな足から、仰け反らせた白い背中から、匂い立つような色香を迸らせて腰を動かし続ける。切羽詰ったあえぎ声は、肉の悦びに満ちている。
「あっ、あっ! もう……!」
 イキそう、と言おうとしたとき。
 ブン、とパソコンのモニターに光が点った。

 ―――― もう、少しだったんだけどな。

 薪の動きが止まり、大きな眼がこわごわとモニターを見る。
 画面に、ひとりの男が映っている。つるりと禿げ上がった頭。小さな、しかし底知れぬ狂気を宿した目。がっしりとした体躯の五十がらみの男。
「今日はちょっと早くないか? 貝沼」
 薪は唇を噛んで、目を閉じた。
 これから自分がどうなるのか、薪にはよく分かっていた。もう、何度も見た夢だ。

 貝沼がモニターから抜け出してくる。手には大きなジャックナイフを持っている。彼のお気に入りの凶器だ。
 肩に、鋭い痛み。流れ出る赤い液体。
 奥歯を食いしばって痛みに耐える。これは、自分のせいで殺された少年たちの痛みだ。

「薪。痛い?」
 優しい声で鈴木が尋ねる。振り返ると、やさしい笑顔がそこにはある。
 顔は笑っているのに、胸は血で真っ赤だ。薪の白い背中が、血の色に染め上げられていく。
「うん。痛いよ、すごく」
「そっか」
 うれしそうに笑って、鈴木は自分のからだを薪から離す。それから薪のからだを抱き上げて、デスクの上に運んだ。
 ああ、イヤだな、と薪は思う。
 このパターンが一番厭だ。

 書類の上で裸に剥かれて、うつ伏せにされる。後ろから貝沼がのしかかってくる。解ってはいても、嫌なものはやっぱりいやだ。
 無駄だと知りながらも、身体が勝手に助けを求めて、前へ進もうとする。それを鈴木が押さえつける。両肩をがっちりと摑まれて、薪は身動きができなくなる。
「いやだ、鈴木……それだけはイヤだ……」
 亜麻色のちいさな頭が、激しく左右に振られる。
 身体を切り刻まれる痛みは、我慢する。それは、自分が引き起こしたことへの報いだから。もちろん薪も痛いのは辛いが、そこは諦めている。
 ただどうしても嫌なのは、好きなひとの前で他の男に犯されることだ。

「いやだ! それだけは許して!」
「だめだよ、薪。もう少し頑張れよ」
 華奢な身体を押さえつけて、鈴木は邪気の無い笑いを浮かべる。貝沼の手が細い腰に掛かり、自分の怒張をそこにあてがう。薪の両眼から、大粒の涙が溢れ出した。
「―――― っ!」

 身体を裂かれる痛み。
 夢でもこんなに痛いのか。
 鈴木が見ている。他の男に犯される僕を、にこにこしながら黙って見ている。
 痛みより何より、それが耐えられない。

「見るなっ……」
 夢だと解っていても、涙が止まらない。
 鈴木はついさっきまで薪の中で脈打っていたものを、薪の小さな口唇に咥えさせた。
 鈴木の欲望を口の中に押し込まれて、薪は言葉を封じられる。鈴木の欲望に精一杯奉仕しながらも、下腹部の痛みはひどい。
 薪を犯しながら、貝沼は逆手に持ったナイフで白い背中に幾筋もの深い傷を付ける。
 激痛に、しかし声を出すことも歯を食いしばることもできない。鈴木に痛い思いなどさせられない。例え夢でも、鈴木を傷つけたくない。
 小さな口唇には大きすぎる昂ぶりを咽喉の奥まで入れられて、薪は生理的な吐き気を覚える。亜麻色の頭を大きな手で押さえられて、鈴木が腰を使ってくる。

 もう、息もできない。

 その間にも貝沼のナイフは薪の身体を切り刻んでいく。
 白かった背中も腕も、流れ出た血で真っ赤に染まっている。気が狂いそうな、いっそ狂ってしまいたいほどの痛みの中で、薪は鈴木の迸りを口の中に受け止める。咽喉もとまで込み上げてきていた自分の胃液と一緒に飲み下し、必死の思いで鈴木に笑いかける。

 鈴木の身体が離れて、次に薪は貝沼の生贄になる。
 犬のような格好で床に這いつくばらされ、後ろから押さえつけられる。それを鈴木が腕を組んで、楽しそうに見ている。
「鈴木、愛してるよ、愛してるから……いっ、ぐあっ!」
 今度は悲鳴が上げられる分、さっきより楽だ。

 でも、鈴木が見てる。
 貝沼に犯される僕を―――― 殺されていく僕を。

「見ないで……お願いだからっ、うぐっ!!」
 深くナイフが突き立てられて、背筋を縦に切り裂かれる。激しく突き上げられて、背中に流れる血が床に飛び散る。
「ああああ!」
 もう、早く殺して欲しい。
 これ以上、鈴木の前にこんな姿を晒したくない。
 だが、夢の中では死ねない。
 いつもいつも、汚らしい内臓を撒き散らすまで、鈴木の穢れのない目に僕の汚さのすべてを見せつけるまで、貝沼の凶行は止まらない。

 いたい。くるしい。
 しかしこれは――――― 僕が望んだことだ。
 この世で鈴木に償うことができない、僕の弱い心が産んだ夢だ。

 背中にナイフが刺さらないほどズタズタになって、貝沼は薪の身体を仰向けにする。
 足を大きく広げさせて、薪の恥部にナイフをあてがう。痛みを予想して、薪の身体が硬直する。
 ゆっくりと、そこにナイフが沈み込んでくる。
「ひ、ぎぃ―――ッ!」
 時間をかけて、切り落とされる。
 それを無理やり口の中に突っ込まれて、薪はその場に嘔吐する。吐瀉物にまみれた自分の性器と、さっき飲んだ鈴木の精液が、血みどろの床に浮かんでいる。

 鈴木が見ている。
 もう、それを気にする余裕すらない。
 早く、早く、殺して欲しい。
 自分が死ぬまでこの夢は終わらない。

 尻を犯されたまま、貝沼のナイフが下腹から上に薪の身体を遡っていく。
 立て続けに上がる悲鳴。声を殺す余裕はない。
 大きく開けられた腹から、びっくりするくらい長い腸を引き出されて、顔に押し付けられる。腸をナイフで切り裂かれてその中身が薪の顔面に降り注ぐ。
 ひどく、臭い。
 薪のきれいな顔は汚物にまみれて、いつもの清らかな美貌は見る影もない。

「薪。苦しい?」
 鈴木が近づいてきて、薪の頭のそばにしゃがみこむ。邪気のない表情。片肘を膝に乗せて、首を傾げている。
「くるしい、よ……」
「そっか」
 薪の大好きな屈託のない笑顔で、鈴木は頷く。
 もう、限界だった。

「すずき……たすけて……」
 むかし、鈴木はとてもやさしくて、薪の我儘を何でも聞いてくれた。その頃いつもしてくれたように、鈴木は薪の亜麻色の髪をやさしく撫でてくれた。
「しょうがないなあ、薪は」
 やさしい微笑。
 鈴木は今も、とてもやさしい。

 薪の大好きな大きな手が、貝沼からナイフを貰い受ける。冷たい切っ先が、薪の咽喉に宛がわれる。
 薪はうっとりと微笑い、血の海の中で目を閉じた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。

心優しい乙女は、こんなの読んじゃいけません、てか、ヒドイもの公開してすみません(^^;


>でも、今は青木が死ぬ夢を見る方が辛いのでしょうね(тт)

2月号の薪さん、辛そうでしたね。
葬儀の修羅場もしっかりトラウマになって・・・・・薪さんの苦悩、重なる重なる。 どれだけ泣いたら薪さんの明日は訪れるのでしょうか・・・・・。


>青木が満員電車で薪さんを庇うところ、鈴木さんもそうだったんだろうなと思います(^^)

ですねっ、エスカレーターに乗っててもガードしてるくらいですからね!(←腐女子ビジョン)


>薪さんは鈴木さんとはまだ快楽を得られてなかったのかしら?だとしたら青木に随分、開発されちゃったんですね(笑)

あ、はい。 そういう設定です。
てか、うちの薪さん、エッチはど下手くそで~、青木さんとも最初はすっごい苦労するんですよ。 その辺もギャグなんですけど。(←他人のエッチを嗤うやつ)
王道から外れたBL小説ですみません★
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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