ヒカリアレ(2)

 こんにちは。
 2幕目、短いですがどうぞ。て、次の幕も短いんですけど。
 
 なんか今回、1章1章が短いの、なんでなんだろうって思ってたんですけど、過去作と見比べてみて判明しました。
 中身がないわけでも筆が乗らないわけでもなくて、ズバリ、
 ギャグがないから。←そこかよ。
 今までのわたしの話って、テキスト量のほとんどをギャグが占めてたから、それがなくなってしまうとボリュームが一気にダウンするんですね。読まされる方は堪ったもんじゃないですね、すみませんです(。´・(ェ)・)





ヒカリアレ(2)


 












 科警研の薄暗い廊下を歩く、薪はとても難しい顔をしていた。
 何かしら考え込んでいる風情の、心ここに在らずといった彼の美しい瞳が、突如驚愕に満たされる。不意に拘束された左手首に眼を走らせると、自分の手を男の大きな手ががっしりと掴んでいた。
 驚きを表情には出さず、不作法者をぎろりと睨めあげる。相手は気おくれしたように手を放し、一歩下がって薪に道を開けた。譲られるが当然と歩を進める薪の後ろに、襲撃者は付き従うようについてくる。

「鑑識に、何のご用だったんですか」
「おまえには関係ない」
 それは多分、予期された答え。その証拠に相手はしつこく追いすがってくる。
「あの子の、コウタくんの所見を確かめに?」
「おまえは早く九州へ、自分の持ち場へ帰れ。これは所長命令だ」
 質問には答えず、薪は冷たく言い放った。相手の顔も見ない。
 そこまで素気無くされても、相手は引かなかった。彼は第九時代からの薪の部下。長年、薪の塩対応に晒されてきた。慣れとは恐ろしいものだ。

「この件に関して、薪さんが何もなさらないと約束してくだされば、このまま帰ります」
「事故死だと言っただろう。起訴できない事件を調べることなどしない。総監も、この件からは手を引けと」
「だから、お一人で調べる気なんでしょう?」
 背後から、鞭のようにしなる長い腕が、薪の目の前にスマートフォンを滑り込ませた。

 ――少年の死体検案書作成なう――

 薪は思わず後ろを振り仰ぐ。微苦笑する長身の男と、レンズ越しに目が合った。
「雪子先生からメールが入りました」
「……あの人はまた余計なことを」
 だから女は苦手なんだ。そう言いたげな表情で眉を吊り上げる。剥き出しの不機嫌は、心を許している証拠。彼女にも、目の前の大男にも。

「抜け駆けばかりしないでください。さっきだって、明日からの予定の児玉の脳を先に」
「うるさい。説教は岡部だけで間に合ってる」
 わざと厳しい口調で遮っても、青木はその場を去ろうとはしない。素直に口は噤んだものの、薪を解放する気はないようだ。
「とにかく、おまえには関係ない」
 児玉が死んで、日本各地で発生した変死事件は片が付いた。第九の仕事は終わったのだ。ヒロト少年の転落死は別件で、第8管区の室長である青木が立ち入る事件ではない。
「あれは事故だ。100歩譲って長野県警の」
「では、県警に話を通します」
 言われた瞬間、ありったけの怒りを込めて薪は青木を睨みつけた。反射的に引けた腰を戻そうとして、青木はたたらを踏む。閑散とした廊下に革靴の音が大きく響いた。

 話は済んだとばかりに、薪は前を向いた。大きく一歩、踏み出そうとしてそれを為せない。眼前5センチのところに、白いワイシャツに包まれた分厚い胸板があった。
 ぎりっと歯噛みをして見上げれば、三白眼から発せられる無言のプレッシャー。左は壁、右に回り込んで避けようとすれば、そこには巨大なデクノボウ。二人の大男に壁に追い詰められる形になって、薪は盛大に舌打ちする。

「何度言ったら分かるんです。あんたは所長なんです。一人で勝手に突っ走らないでくださいよ」
「この捜査は上の許可が下りない。勝手なことをして、免職にでもなったらどうする気だ」
「それは薪さんだって同じでしょう」
 むしろ、全責任を負わされて辞職に追い込まれる可能性は薪のほうが高い。青木がそれを指摘すると、薪は凄まじく笑って、
「クビ? この僕を?」
 やれるもんならやってみて? という文字が後ろの壁に浮かび上がる、そんな幻覚が2人の大男を襲う。追い詰めたはずの相手に逆に慄かされて、二人は揃って頭を振った。ここで引いてはいけない。

 石のように押し黙った二人を相手に、薪はため息を吐いた。これでは根競べだ。付き合うだけ時間の無駄だ。
 不毛な時間を終わらせるピリオドのように、薪の電話が振動した。お節介な監察医からのメールだった。『貸しだからね、剛くん』と、相変わらず自分の優位を確かめるような不快な文章。しかし、そのくらいは我慢せねばなるまい。死亡診断書作成の名目で遺体を詳細に見分し、そのデータを流してくれた。そんな危ない橋を薪と一緒に渡ってくれるような医者も、彼女しかいないのだから。

「第九にデータが届いた。行くぞ」
 自分の倍もある男の体を細い手で静かに掻き分けて、薪は遮られた一歩を踏み出した。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

リハビリ!

しづ様、こんにちはー。

最新作は、メロディの続きなのですね。

メロディを定期購読するようになったので、
最新号を読みましたが、後味が悪いというか、うーん、
めっちゃ落ち込んでしまいました。

あのカースト制を子供に強いたの?…しかも姉弟を傷つけ合わせて。

児玉が始めたことだけど、光がしっかり踏襲しちゃってるし、
児玉!あんたコレどうしてくれるんだよ?って感じです。;;

最後にミドリが敬礼したシーンで、光とミドリが、
児玉と須田洋子の道をたどっているようで、なんだかやるせない…orz


そこにこのリハビリ話! すごくうれしいです。


あおまき設定も、しづさんのパートナー青薪じゃなくて、
手紙の返事待ちの本編の青薪さんなんですよね?
わー、本編の青薪で男爵が加味されたらどうなるんだろ?
うーん、これは楽しみ!

一話目は本編の行間をしっかり使ってるし、なるほどなーと思いながら、
二話目はオリジナルでドキドキしながら読みました。
続きも楽しみにしていますね!

みかんさんへ

みかんさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。


>最新作は、メロディの続きなのですね。

そうなんですよ。なんか落ち着かなくてね~。
第九編でも終わった後、「あああ~」ってなる話は多かったんですが、それは主に登場人物の心の問題だったと思うんです。
それが今回は、
明らかな殺人なのに「子供で起訴できないから」調べもしないで事故処理とか、ヤバい宗教団体に新たな教祖が出現してるのにそのまま放置とか、ちょっと種類の違うモヤモヤなんですよね。

児玉がしたことは最低ですが、それでも、子供たちの未来に明るいものが感じ取れる終わり方だったら、モヤモヤしなかったと思うんです。それを先生は敢えて描かずに、その後のことを一人ひとりの読者に考えさせることで、何かしら学び取れるようにしたんだと思います。
こんな現実、よくあることだけど、どうしたらいいと思いますか? という質問を投げかけてるのかもしれないと、なので、これはわたしのレポートということで。リアルの文章苦手なんで、SSになってますケドw


>あおまき設定も、しづさんのパートナー青薪じゃなくて、手紙の返事待ちの本編の青薪さんなんですよね?

はい。そのつもりで。
これが書きづらいのなんのって(笑)
男爵には何をさせても平気ですけど、原作薪さんにはさせられないことが多くて。仕方ないので青木さんと岡部さんに割り振ってますが、そうなると薪さんの出番は減る一方で……なんだかなあ。

青木さんとの関係も、いつもなら目で通じるけど、そうはいかないから。
読んでてももどかしいですけど、書いててももどかしいです。(^^;



プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: