ヒカリアレ(10)

 すみません。
 この辺から微妙に男爵混じります。
 どなたさまも広いお心でお願いします。




ヒカリアレ(10)











 翌日から、児玉と須田の余罪を洗い出すためのMRI捜査が始まった。
 二人のMRIデータを細かく割り、担当者を決める。第三管区の捜査員は27名。他の事件も抱えているからこの検証に引っ張って来れる人数は全体の3分の1程度だ。正直、青木の捜査協力はありがたかった。
 そしてもう一つ。岡部が青木に感謝することがある。それは。

「岡部っ、あれはなんだ!」
 血相を変えて室長室に駆け込んできた薪が、前置きもなく怒鳴る。展開を予想していた岡部は、平然とマウスを操りながらそれに答えた。
「あれってなんですか」
「青木だ! 仮眠室で寝てたら青木がっ!」
「青木がどうかしましたか」
「スーツケース持ち込んで荷物広げて、あいつ、此処に住む気か?!」
「はあ。そうですか」

 岡部の落ち着いた様子から、青木の逗留は岡部も承知の上だったことを悟ったのだろう。薪はそれまでのパニックを瞬時に治めて、ぎろりと岡部を睨んだ。
「岡部」
「すいません。おれが許しました」
 ホテルに帰る時間が惜しいから仮眠室に泊めてもらえないか、と青木に頼まれた。仕事熱心の裏で何を考えているか丸わかりだが、今は泊まり込みが必要なほど急ぎの案件はない。仮眠室を使っているのは寝落ち寸前までMRIを見ている薪だけだ。青木に仮眠室の一区画を貸しても、不都合はないと思われた。

「仮眠室は第三管区の施設であって、ホテルじゃない」
「いいじゃないですか。薪さんもほぼ毎日泊まり込んでるでしょう」
「僕はそういうことを言ってるんじゃない。きちんと休まないと疲れも取れないし、士気も効率も下がる。泊まり込みは良い捜査スタイルとは言えない」
 自分のことは棚に上げる。自分勝手な薪らしいが、薪の言うことは正しい。そこで岡部は、青木家の事情を話すことにした。

「盆に、家族3人で墓参りに来たいそうなんですよ。3人分だと旅費もかさむでしょう。ホテル代を節約したいって青木のやつが」
 少し卑怯だとは思ったが、青木の姉の話を出せば薪は黙らざるを得ない。彼女の死に関して、薪は強く責任を感じているからだ。
「そうか……墓参りか」
 岡部の狙い通り、薪はしんみりと頷き、しかし。
「いや待て。青木の出張は延長になっているはずだ。宿泊費も出るだろう」
 気付いたか、さすがは薪。されどここまでは想定内。岡部は落ち着いて、用意しておいた理由を話した。
「そこは青木の性格ですから。自分の希望でここに留まっているのだから、日当はともかく、宿泊費までもらうわけにはいかないと」
「……仕方ないな」
 青木の生真面目な性格を強調すると、薪はようやく矛を収めた。それもまた予想通り。
 これで岡部も安心して家に帰れる。今までは薪の様子を見るために、3日に一度は夜回りに来ていたのだ。今週はゆっくり家で寝られる。子守を代わってくれた青木に感謝だ。

 薪はしばらくの間腕を組んで何事か考えていたが、やがて軽く溜息を吐くと、ふわりと腕組みを解いた。それから上着を脱ぎ、ネクタイを外すと、それらをサイドボードの上に無造作に放り投げ、長椅子に腰を下ろした。靴を脱いで座面に両足を上げ――。
「ちょっと。なんでここで寝るんです。仮眠室使ってくださいよ」
「うるさい。僕は眠いんだ」
「ちゃんと休まないと疲れが取れないって言ったの、薪さんですよ。どうせ昨夜も寝てないんでしょう?」
「……だって青木が来たから」
 青木がなんだってんですか、青木がいたらドキドキして眠れないんですか、それともムラムラして眠れないんですかどっちですか聞いたら殺されちゃうから訊きませんけどっ。
 昨夜、青木は薪が心配で、夕飯もそこそこに店を出て第九に引き返し。薪は薪で、予期せぬ来訪者と思いがけない二人きりの夜、落ち着かなくて一睡もできなかったらしい。
 めんどくせえ。ホントめんどくせえ、こいつら二人とも。

「岡部」
 心の中で繰り返し愚痴りながら岡部が毛布を掛けてやると、薪は目を閉じたまま岡部の名を呼んだ。
「光の画が出たら起こせ」
「わかりました」
 天才の千里眼か、はたまた刑事のカンか。薪は徹底的に光を疑っている。
 口には出さないが、岡部の心証でも光はクロだ。あれは普通の子供じゃない。

 岡部は厳しい顔で席に着き、児玉の脳の検証を再開した。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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ぐえっ

しづさま、おはようございます!
朝から萌え死にかけて仕事行く気が失せました!
(いやウソです元々行く気ないですすいません逆に今日1日ニヤニヤしてます)

「だって青木が来たから」(激萌)

なんて可愛いんでしょう薪さん…( ;∀;)

「だって青木が来たから」って!(うるさい)

ああお可愛らしくてめんどくさい。
ドキドキ仮眠室ですね?
名前…キラキラ武士みたい(笑)
すいませんこのお話をいやらしい目で追いかけてしまいそうです。
ドキドキ仮眠室…←気に入ったんかい。

なみたろうさんへ

なみたろうさん。

ぐえっ、て。踏みつぶされたカエルみたいにw
勤労意欲を削いですみません(笑)

原作薪さんは絶対に言わねえな、て思ったですけど、
そう思って削ったところ、いっぱいあるんですけど、ここだけは残しました。
「だって」よりも、「ムラムラして眠れない」がツボに入ってしまってwww ←萌えよりギャグ優先。

せっかく青木さんが押し掛け女房しても、薪さんが逃げちゃうんですよねえ。
なので、今後も楽しい展開にはなりませんが、何日かは同じ部屋で(仮眠室で)一緒に休んだものと解釈してください。
……(薪さんに強制されて)もれなくヤスフミ付いてきたと思いますけど(笑)


ヤスフミと言えば、
なみたろうさんが描いた生誕祭の岡部さん、カッコよかったですねえ!
渋いわー、惚れるわー。
しかも背中におまわりにゃんwww
キャスティングの話も盛り上がってましたね。遠藤さん、いいと思います!

ドキドキなのかムラムラなのか

おひさしぶりでございます。

お忙しいのにヒカリアレの連載ありがとうございます〜
楽しみに読んでおります〜

そして

>青木がなんだってんですか、青木がいたらドキドキして眠れないんですか、それともムラムラして眠れないんですかどっちですか聞いたら殺されちゃうから訊きませんけどっ。

に吹きました……。
やだ……。薪さんどっち……??

わたしもツボりました………。

青木くんが押しかけてきたら、薪さんあわてて逃げちゃいますよねえ。
困ったもんですね。全ての読者も岡部さんと同じ気持ちです。


続き楽しみに待っております!

にゃんたろーさんへ

にゃんたろーさん。

お久しぶりです。
こちらこそ、すっかりご無沙汰してしまってすみません。
にゃんたろーさんも、すっごくお忙しかったみたいですね。
その中でも、ちゃんと誕生日やら鈴薪祭りをされていて、偉いなあ。見習わないと、と思いつつ、夜になると眠くなってしまいます。年には勝てねえなー。


ドキドキかムラムラか、
吹いてくださってありがとうございます♪
ここ、一押しのギャグですw

本当はねー、原作薪さんなら絶対にこういうこと言わないと思って削ろうとしたんですけど、
あまりにも好みのR系ギャグに仕上がったもので、残してしまいました。
カラーぶち壊しは承知ですが、やっぱりギャグは外せないよね!


8月末には本誌で新章スタートとのこと。
今頃、前作の続きの二次なんて、時期を外してしまった感ありありなのですが、
読んでくださって嬉しいです。
ありがとうございます。

実家の新盆が終わったら、にゃんたろーさんのお盆スペシャル鈴薪小説(だと勝手に思ってる)も読みに行きますので、よろしくお願いします。


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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