ヒカリアレ(11)


ヒカリアレ(11)










 カチリと音がして、薄暗がりの中にポツリと火が灯った。煙草の先端がその中に差し込まれ、発光すると共に特有の香りを立ち昇らせる。

 匂いに気付いて光は目を開け、相手の口元から煙草を取り上げた。まだ2口しか吸っていない煙草を、灰皿にギュッと押し付ける。
「おーい」
「だめだよ。この家では崇さんしかタバコ吸わないんだから。匂いが付いたら、一緒にいたのがバレちゃう」
 その理由に崇は苦笑して、
「おかしかないだろ、兄弟なんだから。一緒にいたって」
 言い返そうとした崇の唇を、光の指先が止めた。沈黙した唇に光のそれが重なる。唾液が糸を引くほどの濃厚な口づけの後、光は無邪気に笑った。
「普通の兄弟はこういうことしませーん」
「それもそうだ」

 崇が納得してベッドに仰向けになると、その横に滑り込むように光が入ってくる。「汗臭くね?」と崇が柄にもなく気を使うと、光は鼻先を崇の胸にこすりつけるようにして、平気、と短く答えた。
 そんな何気ない仕草に、愛しさを煽られる。白い腕と絡められた脚に、落ち着いたばかりの情動が早くも甦る。光がもう少し大人だったらもう一度受けさせるところだが、さすがに可哀想だ。光は子供なのだから、やさしくしてやらないと。
 そんな自分の気持ちに気付いて、崇は驚く。
 最初は、邪魔者を追い出すための嫌がらせに過ぎなかったのに。もしかすると本気になってしまったのかもしれない。近頃では、光に近付く人間が憎くてたまらない。あのメガネのガキはまだいいとして、問題はあの女だ。

「欲求不満のメス豚が。光にちょっかい出しやがって、許せねえ」
「そんな言い方しちゃだめだよ。自分の親でしょ」
 苦笑交じりの声。光は時々、びっくりするくらい大人っぽくなる。
「お母さまがいなかったら、ぼくと崇さん、こうして出会えなかったんだから。感謝しなきゃ」
 ベッドの中はもちろんのこと、ピロートークの最中も。崇はしばしば、光が小学生だという事実を忘れそうになる。

「だからぼく、お母さまの言うことを聞くしかないんだ。本当は嫌なんだけど」
「何された?」
「……言いたくない」
「言えよ」
「やだ。崇さんに嫌われたくないもん」
 可愛いことを言う。これが女なら、例え中学生でも男の気を引くための芝居だと疑うが、光は小学生男子。男は女よりずっと単純だ。だから信じられる。そのせいかもしれない、光といると安心できるのは。

「それに、お母さまに口止めされてるし。誰かに喋ったらお仕置きするって」
「脅しじゃねえか」
「お仕置きなんかこわくないけど、この家を追い出されたら困る。ぼく、行くところがないんだ」
 光を失うことを想像してみて、それが思いのほか恐ろしく感じられて、崇は焦る。その焦燥感は先刻、義母の部屋の前で光を見つけ、さらに彼の胸元に赤い痣を見つけた時からずっと胸に燻っていた不明確な感情の源であると唐突に理解する。理解して、激昂する。感情の激するままに、崇は光の身体を強く抱き寄せ、未成熟な胸や首筋にキスの雨を降らせた。

「俺が守ってやる。あのメス豚の好きになんかさせねえ」
「崇さん」
 気が付くと、光が泣いていた。慌てて圧し掛かっていた自分の身体を浮かせ、彼に自由を返す。
「ごめん。辛かったか?」
 聞くと光は首を振り、違うんだ、と小さく言った。
「ぼくは悪い子だね。崇さんとお母さまを、仲違いさせてしまって」
 どきり、と崇の胸が高鳴った。
 この子は、光は、なんていい子なんだろう。この子には他人を憎む気持ちがないのだ。毎日のように「嫌なこと」を自分に強要する養母を厭う気持ちも、嫌がらせのために無理やり自分を抱いた義兄を恨む気持ちも。
 光はまだ子供だが、これほど美しい人間を崇は他に知らない。こんなに心の綺麗な人間も、知らない。

「それが分かっていても、崇さんと離れたくないんだ。罪深い人間なんだ」
「そんなことない」
 細い腕を引き、自分の上に載せた。光の身体は今まで抱いたどの女よりも軽くて、その背中には羽根があるのではないかと目を凝らすほどに軽くて。このまま鳥のように飛び去ってしまうかもしれないと、そんな新たな恐怖も生まれて、崇は光をしっかりと抱きしめる。
「光はいい子だよ。俺が守ってやる、一生守ってやるよ」



*****

 
 青薪さんとのカラーの違いが (;^ω^)



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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お久しぶりです。

しづさん、お久しぶりです。

夏バテしてないでしょうか?

私はバテております・・・( ノД`)シクシク…

光は、もう・・・お母さんとお兄さんを手玉にとっっちゃって・・・

まだ小学生なのに、大人を掌の上で転がしちゃってる

びっくりしちゃいますねぇ。

まさか、お兄ちゃんとも関係をもっていたとは。

そして、お兄ちゃんも光にくびったけ(←表現が古くてごめんなさい)

もう、小悪魔だ。光をとりあうんだろうなぁ、この二人。

薪さんと正反対だ。薪さんは、仮眠室に青木が来ただけで

困ってたのに。「だって青木が来たから」って・・

薪さん可愛すぎる。

あぁ、続きが楽しみです~。

ひろっぴさんへ

ひろっぴさん。

ご無沙汰してますー。
毎日暑いですね~。
え、でも、北海道も暑いの? 夏バテするほど?
30年位前かな、幼馴染が北海道大学へ入学して、そちらで暮らしてたんですけど、その時、北海道は一般家庭はクーラー無いのが普通だって聞きました。夏でも涼しいから要らないって。今は違うんですね。温暖化が進んだ証拠ですね。
夏バテ、きついですよね。無理しないでくださいね。



>光は、もう・・・

何者なんだ、この小学生ww


>薪さんと正反対だ。

そうなんです。
ちょっとオーバーですけど、こういうところ、薪さんと光の違いの一つだと思って書きました。

光は、自分の容姿が周りの人間に与える影響を知っているし、それを上手く利用する術を心得ている。
薪さんは、それを分かってはいるのだろうけど、利用しようとは思わないし、逆にマイナス方向に捉えている感じがするんですよねえ。でなけりゃ、あんなに友だち少なくないだろうし、「独善的」なんて言われませんよねえ?


>「だって青木が来たから」

ごめん、ここは男爵入れちゃった★
原作薪さんは仮眠室に青木さんが来ても、普通に眠ると思います。
きっとね、お風呂に入ってきても平気なんだよ。だって家族だもん……あ、なぜか涙が……。


>続き

まだ半分くらいなんです。
急がないとメロディ発売に間に合わない~。
サクサク行きますのでよろしくです ('ω')ノ


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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