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ヒカリアレ(24)

 最終章です。
 間に合ったーε-(´∀`*)ホッ



 ヒカリアレ(24) ~エピローグ~












 ノックの音がすると同時にドアが開き、岡部が姿を現した。相変わらず岡部のノックは意味がない。だから彼に部屋に入って欲しくないときは、鍵を掛けるしかなくなるのだ。

 岡部は、たくましい両腕に山のように書類を抱えていた。昼間、薪が無断でいなくなってしまったせいで、これほど多くの未決済書類が溜まってしまったに違いなかった。
 岡部はそれを遠慮なく薪の机に置き、重力に負けて崩れそうになる紙の束をもう一つの書類の山で支えるという荒業をやってのけた。この山を崩さないためには、岡部が持ってきた書類から片づけなくてはならない。天晴な割り込み方だ。

「青木から電話がありました。今、自宅に着いたそうです。薪さんによろしく伝えてくださいとのことです」
「そうか」
 飛行機事故の確率は交通事故よりずっと低いが、それでもゼロではない。無事に帰れたと聞いて、自然と頬が緩んだ。
「よかったですね」
「なにが」
 答えて顔を引き締めた。もしかすると岡部は、薪が考えている以上に薪の気持ちを知っているのかもしれなかった。それならば尚のこと、隙を見せてはいけない。

「あの子たちですよ。事件にならずに済んだんでしょう」
「なんだ、そっちか」
「そっちってどっちです?」
「……なんでもない」
 隙を作るまいと身構えたのが裏目に出た。肩に力が入りすぎて、気が抜けたら口が滑った。本末転倒だ。

「薪さんが光の犯罪を暴いたことで、光は新しい罪を犯せなくなった。バレないままだったら再犯もありですけど、今度やったら間違いなく捕まると思えば、彼も二の足を踏むでしょう」
「だといいがな」
 病院へ向かう車の中で、青木に聞いた。光がなぜ西園寺家の財産を狙ったのか、その理由と彼の決意を。
 青木のバカは完全に信じ切っているようだったが、怪しいものだ。あの子供は油断がならない。あの子には冷血漢の血が流れている。
 ――育ててくれた親を殺人犯だと疑い続け、最終的には彼を死に追いやった自分と同じ。冷たい血が。

 気のない返事をする薪に、「きっと大丈夫ですよ」と岡部は言い、脇に挟んでいたスケジュール表を山のてっぺんに置いた。
「児玉と須田のMRIは、精査が完了しました。明日からは報告書のまとめに入ります。来週いっぱいには提出できると」
「火曜」
 岡部の工程計画を薪の声が遮る。書類に判を押しながら、ちらりと部下を見上げた。
「報告書の提出期限は火曜だ。4日あれば十分だろう」
 その4日に週末の休みは含まれていませんよね。
 薪に爆弾を落とさせる愚かなセリフを、岡部は口にしなかった。「了解しました」とだけ言い置いて去っていく。さすが岡部だ。

 部下の仕事意欲に満足して、薪は積まれた未決済書類の山に手を伸ばした。ずっしりと重いファイルを2冊、クリップ留めされた書類束を3組、まとめて前に持ってくる。
 上から順に書類を捌いていく薪の、淀みなく動いていた手が不意に止まった。
「えっ?」
 書類と書類の間に、異物が入っていた。横型のレター封筒、縁取りは赤と青の斜線、宛名はローマ字で書いてある。

 この手紙、見覚えがある。というか文字の一つ一つの形まで覚えているというかむしろ描けるというか、でもっ!
 これ、返したはずだよな? 内容同じだし。
 え、え。じゃなに? これなに?
 返されたけど、納得しないってこと? ちゃんと返事しろってこと?
 ノーと言えないから察して欲しかったのに。振るならきっちり振れってか?
「……いい度胸だ」
 二度と僕に近寄れないよう、ギタギタにぶちのめしてやる。

 心に誓いながらも、その手は返された手紙を手放そうとはせず。
 この手紙が初めて届いた時を思い出したかのように、痛む胸を押さえるように。薪は再び自分の元へ舞い戻ってきた手紙を、胸にぎゅうっと押し付けた。


―了―



(2017.6)



 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。<(_ _)>


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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お疲れさまでした。

本誌の後味の悪さが解消されました~。

いよいよ、待ちに待った月曜ですね。どんな話になるのかな。

すごい!間に合った!ヽ(;▽;)ノ

長編お疲れ様でした~( ;∀;)
正直、私は光くんはサイコパスで矯正とかの問題じゃないと思ってましたが。そうかその方向から攻めるか…と目からウロコでした。
薪さんなんて過酷な運命でも綺麗な心と強さを持ってるんだぞ…くうぅ。

手紙!( ゚∀゚)
返すかあぁアア!!
ああでもこんなシーンが見たかったです!きっとものすごく狼狽えるんでしょうねぇこんな風に。誰もいないところで百面相して欲しい~( ;∀;)
そしてきゅう、ってするのめちゃめちゃ可愛いです…受け取った時を思い出したのォ?そうなのォ…

もうあと2回寝たら薪さんに会えますねぇ~(*≧∀≦)楽しみです。

KAORIさんへ

KAORI さん。

これはあくまで個人的な妄想にすぎませんが、
解消されてよかったです(^^)


今日ですね!!
4ヶ月、長かったですよねえ。
思い起こせば、無気力な日々でございました……振り返ってみると、もっと色々できたはずだと思うの。子供の夏休みと変わらないなあ(苦笑)


なみたろうさんへ

なみたろうさん。

間に合いました~(*'▽')


>光くんはサイコパスで矯正とかの問題じゃない

うん。そうだったかも。

この子、ヤバいな、と思ったのが、病院での一幕でした。
あの時光は両親を喪ったばかりで、普通だったらメソメソ泣いてるのが自然ですよ。それがケロッとしてて、看護師さんたちと笑い合うわ青木さんに花渡すわ、あの時点で誰も違和感感じないのか、ピースサインしてる場合じゃないだろ、とそっちの方が驚きでした。

このお話は、光を矯正するのが目的だったので、サイコパスの可能性には目をつむりまして、
あの時点で彼はすでに覚悟を決めていて、その計算の上で動いていたことにしました。


>薪さんなんて過酷な運命でも綺麗な心と強さを持ってるんだぞ…くうぅ。

本当にねえ。
サイコパスになっちゃう方が多分楽だよ。薪さん、もともと境界線に居る人だから。本質がそこだから。
でもね、
そこを歯を食いしばって踏みとどまるところが男なんですよ~! カッコいいの!
だからわたしは「警察官の薪さん」に拘るんです。



>手紙!( ?∀?)
>返すかあぁアア!!

だって、返さなきゃ始まらないじゃん! 
拾得物扱いで3ヶ月経ったら拾った人(岡部さん)のものとか、おばちゃんは認めないよ!?


>きっとものすごく狼狽えるんでしょうねぇこんな風に。

見てみたいですねえ。
見た目はまったく変わらずとも心の中はパンデモニウムとか、めっちゃツボです(^^)
そして、きゅう、がオトメww



今日はメロディ発売日ですね!
買いに行けるのは夜ですが、とても楽しみです!
読んだらなみたろうさんのところへ報告に行きますね~!

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Hさまへ

Hさん。

お返事、大変遅くなってすみません。
お元気でしたか?
こっちはまたもや色々あって(^^;
仕事もさることながら、プライベートもゴタゴタしてまして、時間が取れませんでした。



お話の感想、ありがとうございます。
今回は自己満足も極めつけの話でしたが(いつも?)、Hさんには楽しんでいただけてよかったです。



>光が警察官に
>頭使って上に行きそう

薪さんが全力で阻止すると思います(笑)

先のことは解りませんが、こちらの光は教祖にだけはならないですね。
もともと仲間思いの子なので、リーダーではあり続けると思いますが。


>薪さん、青木を強制的に帰しちゃったんですねぇ。

薪さんですからねえ。
第九編の最後でアメリカに発つ前も、帰国後も、あからさまに避けてた人ですからねえ。(笑)


>「おぉ、返ってきたぞ、手紙~」とニヤついてしまいました。

ふふふ。
やっぱりここが一番楽しかったです(*‘∀‘)
カミソリみたいに切れる人なのに、恋はグダグダ。そのギャップに萌えますw



娘さんのこと、よかったですね。
初めてのお給料でご家族に御馳走してくれるなんて、なんていい子なんでしょう!
わたし、初めての給料どうしたかしら……全部自分で使ったな、きっと(^^;

ゆっくりゆっくり、進んでいくんですね。
それも周りの理解があってこそですよね。
うちも見習いたいです。

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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