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リハビリ始めました

 冷やし中華始めました的なノリでお送りします、リハビリです。
 みなさん、ほんっとうに、生ぬるーく見てやってくださいね。
 突っ込んじゃいやいやん。


 時系列は、一番新しい2069年10月です。
 もっとドロドロした話になるはずでしたが、一身上の都合で、あっさりとした雑文になってしまいました。
 リハビリが完了したら、ドロッドロのドSバージョンで書き直したいと思います。( `ー´)ノ
 え、回復しない方がいいですか? ううーん……。


 それと、前回までの個人的な記事は、これまで同様、1ヶ月ほどで下げさせていただきます。
 いただいたコメントも表示されなくなりますが、どうかご了承ください。
 
 



パートナー(1)




 警察官は、いついかなる時も緊急の事件に備えなければならない。携帯電話を持ち歩くのは当然、上司からの呼び出しには即応答する。それに例外はない。同窓生との飲み会がどんなに盛り上がっていようと、たとえ一気飲みコールの真っ最中でも、だ。

『青木。今どこだ』
「渋谷のKって居酒屋です」
 青木が一気飲みを中断したことによって沸き起こった、悪友たちのブーイングの嵐から携帯電話を庇うようにして電話に出る。ジョッキの底に残ったビールはほんの一口。飲み干しても5秒くらいのロスだったと思う。つまりこれは気持ちの問題。
 素晴らしい心掛けである、警察官の鑑よと、その拍手はしばし待たれよ。確かに青木の行動は熱意に突き動かされてのものだが、それは職務に対してではない。熱意の対象は電話の相手だ。電話を掛けてきたのは青木の上司ではあるが、同時に恋人でもある。彼専用の着メロを耳にするだけで、青木の頭の中は一気にお花畑だ。拍手を受けるに値するかどうか。

 ともあれ、上司からの緊急連絡である。仕事には違いない。
「すみません。オレ、飲んじゃって」
『かまわん。迎えにいく』
「渋谷のK」と言う薪の声が聞こえた。続いてナビゲーションシステムの音声案内が聞こえてくる。薪はすでに車で第九に向かっていて、その中から青木に電話をしてきたのだ。
「ありがとうございます。じゃ、店の前で待ってます」
『アルコールを摂取した身体で屋外に出たら風邪をひく。中で待ってろ』
 やさしい。時々だけど、薪はすごくやさしい。
 捜査が始まったら「3日くらい寝なくても人間死なん」とか言い出すんだろうけど、それはそれで可愛いからいいや。
 そう微笑む青木は、自分のその考えが全く普通ではないことに気付いていない。よく人生相談を生業とするコメンテーターが「幸不幸を決めるのは自分自身である」とか「幸せの価値は本人にしか分からない」などと尤もらしい顔でマイクに向かうのを目にするが、この男を見ても果たして眉を寄せずにいられるかどうか。少なくとも第九の仲間たちからは、薪の命令に対する青木の非常識な前向きさは、少しばかりの憐れみと多大なる顰蹙を買っている。

 青木は友人たちに仕事が入ったことを告げ、オーダー済みだった3杯目の生ビールをキャンセルした。それから酔いを醒ますために洗面所に行き、冷たい水で顔を洗った。備え付けの口内洗浄液でうがいをし、髪の乱れを直す。これから仕事に向かう警察官として身だしなみを、と傍から見れば感心なことだが、迎えに来るのが上司なのか恋人なのかは微妙なところで、やっぱり手放しで称賛するのはバカらしい。

 店内に戻ると、自分の席に人だかりができていた。
 友人たちに何かあったのかと思い、急いで席に戻ると、そこには先刻電話を寄越した上司の姿。椅子の背に掛けておいた上着で分かったのだろう、青木の席にちょこんと座って、勧められるままにオレンジジュースなんか飲んでる。本当に可愛らしい。「きみいくつ?」って訊きたくなっちゃうの分かる、でもその人オヤジだから。四捨五入したら五十だから。

 急いでいたのか、薪は家に居たときの服装のままだった。普段着で居酒屋まで青木を迎えに来た上、駐車場に青木を呼び出す時間も惜しんで店の中まで探しに来た。これはよっぽどの重大事件が起きたに違いない。青木は気持ちを引き締めた。

「薪さん。お待たせしました」
 青木が横に立って声を掛けると、薪は青木を見上げて、ホッとした顔をした。他人に臆するような人ではないはずだが、いきなり囲まれて緊張したのだろうか。それとも彼らが青木の友人だから? 青木だって、薪の友人の前に出るときは心臓がバクバクする。秘密を秘密のままにしておくために、それは必要な心遣い。
「えっ。青木の上司?」
「青木の職場って言ったら……うそぉ」
 友人たちとギャラリーのどよめきを受け流し、薪はすっと席を立った。
「お楽しみのところ、邪魔をして申し訳ありません」
 すまなそうに頭を下げる薪を見て、青木は頬を緩める。仕事最優先の鬼の室長が、一般市民にはなんて奥ゆかしいことか。その百万分の一でも部下に注いでくれたら、でもまあ無茶苦茶言ってる薪さんも可愛いからいいか。青木のその思考が、以下略。

 芸能人を見るように遠巻きにこちらを伺う人々の視線をいつものごとく水のように流して、薪はさっさと店を出た。友人たちにおざなりに手を振り、青木はその後を追いかける。駐車場の隅に停めてあった車に乗り込み、二人きりになって青木はすぐ、「すみませんでした」と謝った。
 薪が彼らに頭を下げなければいけない理由なんか、無い。自分のせいで気を使わせてしまったと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。けれど薪はシートベルトを締めながら、
「僕のせいで彼らとの交流の時間が減ってるのも事実だ。悪いな、プライベートの楽しみを奪って」
 そんなことを言い出したから、青木は不安でたまらなくなる。薪が青木にしおらしい態度を取るのは、何か企んでいる時と相場が決まっているからだ。

「あの。薪さんは少し誤解してらっしゃると思います」
 言葉を選び選び、青木は薪の気持ちを宥めに掛かった。このままにしておいたら今度の事件、全部一人でやれとか言われる、絶対。
「嬉しかったです。呼び出してもらえて」
 最初は保身から出た言葉だったけれど、それは本当のことだと途中で気付いた。いい機会だからきちんと伝えておこう。どうも薪は未だに、青木にとってこの世で一番大事なものが何なのか、分かっていない節がある。あんなに頭がいいくせに、どうしてそんな簡単なことが理解できないのか。青木には謎だ。
「オレはあなたといる時が一番幸せなんです。24時間一緒にいたいくらいです。片時も離れたくない。でも薪さんは、たまにはお一人になりたいでしょう? だからオレ……あの、薪さん?」
「あ、悪い。何か言ったか」
 十中八九聞いてないんですよね、こういうの。

 どうせ仕事のことを考えていたのだろう。事件の詳しい情報は入らずとも、誰を何の担当にしようかとか職員のシフトをどうしようかとか、室長が考えることは山ほどある。
 考え事をしながら車の運転をしていると、つい曲がり道を忘れてしまったりする。大抵は通り過ぎた所で気付いて次の角を曲がるのだが、思考に熱中し過ぎるとその失敗を繰り返す。4つ目の角を通過したところで青木は口を開いた。思考の邪魔をすると薪の機嫌を損ねるから本当は嫌だったのだが、このままでは首都圏を抜けてしまう。

「薪さん。道が違いませんか」
「え」
「第九へ行くんでしょう? 右折しないと」
「そうか。その手があったか」
 人形みたいに整った横顔の中で、長い睫毛がぱちぱちと瞬かれた。
「緊急の仕事が入ったことにしよう。1週間ばかり第九に缶詰で家に帰れないことにして、そうすれば」
「薪さん!」
 青木が叫ぶと同時にブレーキが踏まれる。停止線を一車両分超えた位置で停止した薪の車の鼻先を、クラクションと共にトラックが通過して行った。
「危ないですよ。考え事は車停めてからやってください」
 すまん、と薪はハンドルに額を付けて、重い溜息を吐いた。捜査に夢中になると他のことが疎かになる、薪の困った癖は相変わらずだが、今回は重症のようだ。
「そんなに興味深い事件なんですか」
 気になって青木は訊いた。薪の心をここまで虜にしたのだ、よほど『面白い』事件なのだろう。ところが、薪の答えは予想とまるで違うどころか、青木を仰天させるものだった。

「……叔母夫婦が来た」
「えっ」
 薪は天涯孤独に近い身の上で、血縁者はこの世に1人しかいない。叔母、つまり亡くなった実母の妹だ。父母の家系図を辿って行けば親類はいるのだろうが、どんな事情からか彼らは親戚付き合いは一切せず、実家とも断絶していたらしい。そんなわけで、青木はこれまで薪の親戚に会ったことがなかった。
 叔母夫婦は、小さい頃に交通事故で死んだ父母の代わりに、薪を育ててくれた。現在は仕事の都合でアメリカのロサンゼルスに住んでいる。彼らがアメリカに旅立ったのは薪が24、5の頃だったそうだから、約20年振りの再会になるのか。

「家にですか? いつ」
「1時間前」
「だったらオレ、友だちの家に泊めてもらいます。オレのこと、叔母さんたちに知られたくないんでしょう」
「バレた」
「えっ。もうバレちゃったんですか?」
「だって仕方ないだろ! 写真やらお揃いの食器やらパジャマやら、どうやって言い訳しろってんだ!!」
「だから薪さん、前見て前っ!」
 これ以上は周りに被害が及ぶと判断し、青木は車を道沿いにあったドラックストアの駐車場に停めさせた。店舗から離れた隅っこの一区画を借りて、ふう、と息を吐く。

「なんで隠しておかなかったんですか」
「突然来たんだ」
 玄関で固まってるうちに全部見られちゃったんだよ、と薪は頭を抱え、再びハンドルに突っ伏した。彼らが何の連絡もなしに訪ねてきたのはサプライズのつもりだったのか。薪がパニくるわけだ。
「もう20年以上もアメリカで生活しているせいか、叔母さんはLGBTにも理解があって、笑って許してくれたんだ。でも叔父さんは、相手を連れてこいって。それでおまえを迎えに」
「分かりました。オレ、頑張りますから」
 いい機会だと思った。彼らは薪の育ての親。薪と一生を共にしたいなら、彼らに話を通すのが筋だ。ずっとそう考えていたのだが、彼らはアメリカに住んでいるため、挨拶をすることができずにいたのだ。
 薪が青木の母親に気を使っていたことを、青木は知っていた。それは青木の母への尊敬や感謝から生まれる自然な気持ちだったと同時に、間に入った青木が苦労しなくて済むように、気を配ってくれたのだと思う。今度は自分の番だ。

 よし、と気合を入れてガッツポーズを取る青木を冷ややかに見つめ、薪は憂鬱そうに呟いた。
「言っとくけど。叔父さん、ものすごく怖いからな」
 薪に怖い人がいるなんて、そっちの方が驚きだ。
「でもって、理屈屋でイヤミっぽくて意地悪だから。ハッキリ言って性格悪いから」
 性格の悪さで薪に畏怖される人がいるなんて、以下同文。
「任せてください。そういう人の扱いには慣れてますから」
「おお。頼もしいな」
 ひゅっと口笛を吹くように唇を窄め、眼を丸くした薪のかわいいこと。このいじらしい人のためなら何でもできると思った。
 薪が望むことなら、青木は耐えられる。愛情ゆえに激しい身内の、言葉の暴力にも、泣き落としにさえも。

 ありったけの愛を込めて薪を見つめる青木の黒い瞳の中、薪の大きな亜麻色の瞳が猫の目のようにキラリと光った。
「で。どこで慣れたんだ」
 それを聞きますか。
「どこだ」
 さっきまでパニくってたくせに、どうしてコロッと変わるんですか。緊急脱出用のスパナの確認とか、なにも今しなくてもいいと思うんですけど。
「答えろ」
 スパナ磨くの止めてくれたら声が出せるようになるかもしれません。

 この薪より意地悪で怖い人なんて、青木には想像もつかない。世の中にはまだまだ自分の知らない世界があると、しばし現実から逃避する青木だった。




*****

(リハビリのくせに)続きます。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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ご無沙汰してます。

お休み中も、時々、過去作を読み返しておりました。
私のバイブルはパタリロなんですが(笑)、しづさんの作品もそうかもしれないと、いま気づきました。
パワーをくれます。
お休み中のことは、あえて触れません。
新作の続き、楽しみです。
私も口の悪さでは薪さんに負けないかもですが(笑)、最近はパワハラだなんだと言われないよう自粛中(笑)。

可愛いからいいや!( ;∀;)

うええええん!!しづ薪さんだ!!
相変わらず可愛くてちょっと天然で最高です…
また読めて嬉しいですありがとうございます。
なんだろうこの青薪さんの安心感って。
薪さんはもちろん最高なんですけど、青木の愛の揺るぎなさかな?絶対的盲目ですよね~。

大変な中ありがとうございます。
でも「何か創作する」っていいですよね。私は無理にでも描いたら気持ちが上がった気がします。
やっぱり薪テラピー、効くな。
もうすぐ新しい薪さんにも会えますね!

お久しぶりです

お久しぶりです。
しづさんの新しいお話が読めることの幸せ。
噛み締めています。

香さんへ

香さん

ご無沙汰してます。
お元気でいらっしゃいましたか?
コメント、どうもありがとうございます。


バイブルがパタリロ(笑)
分かるわw
わたしもコミックスは全巻持ってますよ(^^


わたしの話、元気、出ますか?
わーい、ありがとうございます。
訪問者さまに笑ってほしい、と言うのが当ブログのコンセプトですので。とても嬉しいです。

すっかり更新が滞ってしまって、すみませんでした。
今回の話も、間延び更新になってしまうかと思いますが、
どうかまた、来てくださいね。

ありがとうございました。

なみたろうさんへ

なみたろうさん


その後、お身体は大丈夫ですか?
ゆっくり休んでくださいね。


しばらく書いてなかったし、今回は精神的にもしんどかったので、書けなくなっちゃっただろうな、と思っていたのですが、意外とあっさり創作モードに入ることができて、自分でも驚いています。青木さんの盲目的愛のおかげかもしれませんねw


薪テラピー、効きますよねえ!
そうそう時間が取れないのが難ですが、書いてるときは本当に楽しい。
さして意味のあることじゃなくても、文字を打っているだけで楽しい。
わたし、創作やっててよかったです。

シーラカンスさんへ

あらー!
シーラカンスさん、お久しぶりです!!
コメントありがとうございます、嬉しい~~!


こちらこそ、
ブログ開設当初からのお付き合い、続けてくださってありがとうございます。
おかげさまで、うちのブログも9歳になりました。
来年は10歳ですよ! 我ながらよくやるよ(笑) 元気だったら記念SS書きたいな~!

シーラカンスさんが、ずっと見守ってくれてると思うと、元気が出ます。
本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。(#^.^#)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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