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パートナー(8)

 こんにちは、また広告出ちゃいました、すみません、てへ。
 
 更新少ないのに、毎日、ご訪問&拍手、ありがとうございます。
 仕事がんばります。←??

 でも、ちょっと聞いてくださいよ、奥さま。
 今年は水道工事2件やってたんだけど、12月中に工事終わってるのに、役所の都合で工期2月22日まで延ばされて、仕方ないからそれで書類作ったら、今度は3月15日まで延ばすって始まりやがった、みぎゃー!
 竣工書類、日付入れちゃったよ! 全部やり直せってか!?
 データ渡すからてめえの方でやり直せ言いたい。

 書類は手戻りになるわお金は入って来ないわ、工期が延びていいことなんかなんもない! ですわよ、奥さま。

 今月末のメロディを心の支えに、がんばるです。あとふなっしーね(笑)



パートナー(8)



「私にも頼む」

 はい、と気持ちよい返事をして青木がキッチンに下がった間、リビングには客人2人だけが残された。そこでどんな会話が交わされたのか、青木には分からない。知らなくてもいいと思った。青木がコーヒーを持って居室に入った時には、二人は何やら思い出し笑いをしていたからだ。
「剛が私の前であんな顔をしたのは、子供の時以来だ」
 昔話ではなく、さっきの薪の様子を思い出して笑っていたらしい。青木は薪の、ポーカーフェイスの下に隠された多様な表情を見ている。それを自分だけが知っていることに優越感もあった。だけどやっぱり、彼を育てたこの人たちには敵わないだろうと思う。
「それだけ、素直に自分が出せていると言うことか」
「だからわたしが言ったでしょ。青木さんはとてもいい子よ、って」
 勝ち誇ったように顎を上げる文代に、史郎はむっつりと腕を組む。口をへの字に曲げて、「しかしなあ」と口の中でぼそぼそ呟き、お終いにはやるせない溜め息。

「剛みたいな意地っ張りにはぴったりですよ。いいじゃないですか。あの子が自分で選んだんですから」
「せめて子供だけでも遺せないものかなあ。剛の天才性を後世に受け継ぐものが居ないというのは、どうにも耐え難い。男なら可能だろう」
「IPS細胞ですか? わたしは個人的には反対ですけど、それも二人が選ぶことですから。でも剛の性格だと、自分の遺伝子は残したくない、とか言うでしょうねえ」
「ああ、いかにも言いそうだ。しかし、そこをなんとかするのが我々の」
「そうなると子供は難しいわね。剛は絶対に自分を譲らない子だし、青木さんを口説いたとしても、青木さんが剛に逆らえるようにはとても見えないもの」
「それも問題じゃないのか。あの二人、パートナーと言うよりは主従関係に近いぞ。青木くんの忍耐力に限界が来る可能性も視野に入れないと」
「大丈夫よ。青木さんのさっきの話、聞いたでしょ。史郎さんは心配しすぎよ」
「おまえは楽観的すぎる」
「人生、なるようになるわよ。会社が潰れても子供ができなくても、わたしたちはそれなりに幸せだったでしょ。剛たちもきっと同じよ」
 文代は、史郎の複雑な胸中を思いやるでもなく諭すでもなく、ただただ自分のペースで話を進める。

「どこにそんな保証がある。いいか、私たちは剛の親としてだな」
「親バカもいい加減にしなさいな。剛がいくつになると思ってるの」
「親バカなんかじゃない。剛はいくつになっても危なっかしくてだな、だから私は」
「そのために青木さんがいるんじゃない。大丈夫よ、あなたが心配してもしなくても、結果は同じ。剛はどうせあなたの言うことなんか聞かないんだから」
「おまえ、そういう言い方は」
 薪の将来が心配でたまらない様子の史郎に引き換え、文代の方は糠に釘と言うか暖簾に腕押しと言うか、史郎の喧々諤々の苦言を春風のように受け流す。
 ――ちょっと待って、これ、どこかで見たような。
 ああ、そうだ。官房室の二人の会話にすごくよく似てる。

「もう十分でしょう。ロスに帰りましょ」
 会話が途切れたところを見計らって、青木はコーヒーを二人の前に置いた。「ありがとう」と微笑む文代に頭を下げて、向かいに腰を下ろす。史郎はと言えば、文代が嬉しそうにカップを取り上げるのを横目で睨みつつも彼女に倣ってコーヒーを口に含み、ゆっくりと飲み下してから、重々しく首を振った。
「いや。まだだ」
 ぎろりと睨め上げられて、青木は焦る。何をダメ出しされるのだろう。主従関係がどうとか言ってた、もっと対等の立場にならないといけないとか、時には薪を叱らなきゃいけないとか言われるのかな、でもそれは無理。そんなことしたら殴られる。殴られるのはいいとして、薪の手が痛くなったら可哀想。だから無理。

「あ、あのですね。ご存知かとは思いますが、薪さんは口より早く手が出るタイプで」
「叔父さん。お説教はもう十分ですよ」
 空回りする青木の思考を他所に史郎の視線は、緊張で強張った青木の顔を飛び超して、左奥のドア口に注がれていた。いつからそこに居たのか、書斎のドアにもたれ、薪は尊大に腕を組む。

「顔を見れば文句ばかり、それでは相手は委縮してしまいます。もっと公正に、穏やかに話をしないと」
 え、それ、薪さんが言います? 今年も、警察庁警視庁・怖い上司総選挙ぶっちぎり№1でしたけど、誰からも結果聞いてませんか? あ、そうですよね、誰も面と向かって言えるわけないですよね、怖いもん。
「まったくあなたは昔から、人から素直に聞こうという気持ちを奪う名人ですね」
 こないだの飲み会で小池さんがそっくり同じことを言ってましたけど、どこかで聞いてました? さすが薪さん、科警研主催の地獄耳選手権、出場申し込んでおきますねっ。

 心の中で突っ込む青木の隣に腰を下ろし、当たり前のように青木のコーヒーを横取りして、薪は脚を組んだ。膝の上にカップとソーサーを置き、ソファにふんぞり返る。前かがみになって膝に拳を載せた史郎とは対照的だ。
「これだけは言わせてもらおう」
 薪の一方的な糾弾に鼻白みもせず怒りも見せず、史郎は凛然と背筋を正した。薪が訝し気に眉を顰める。
「彼の家族の気持ちを、おまえは考えたことがあるのか」
 カチャン、とソーサーとカップがぶつかり合う音がした。カタカタと小刻みに揺れ続けるそれを、見かねて青木が取り上げる。刹那、余計なことをするなとばかりに、ものすごい目つきで睨まれた。この薪の殺人ビームを日常的に浴びているのだ、大概怖いものなどなくなる。ていうか、薪さんに睨まれるとドキドキしちゃう。
 それが恐怖なのか恋のときめきなのか、胸の中の境界線が限りなく曖昧になっている青木の変態性は置いといて。史郎が提起した最後の質問は、いささか難問であった。

「考えましたよ、さんざん考えました。でも」
「過程はいい、言い訳もいい。大事なのは結果だ」
 自分が部下たちの前で口癖のように繰り返したことが木霊のように戻ってきて、さしもの薪も困窮する。なるほど、薪の結果至上主義のルーツはこの人だったかと、まことに家庭教育というのは人を形成するものだと、どこぞの教育評論家のような考えを青木は抱き、息を殺して二人の様子を見守った。
 論点は薪と自分のことなのに他人事みたいに、でも仕方ない。反論は、青木の立場からはできなかった。逆に青木に、薪の家族のことを考えたのかと聞かれれば、青木は沈黙するしかなかったから。

「別に、許してもらおうなんて思ってません。僕も彼も覚悟を決めて、一緒に暮らし始めたんです。これは二人の問題で、親は関係ありません」
 やや投げやりでつっけんどんな口ぶりは、その言葉が真実でないことを物語る。史郎相手だから強硬に突っぱねたが、薪は青木の親には異常なくらい気を使う。傍から見ても痛々しいくらいだ。盆と正月は青木だけでも実家へ帰そうとするし、帰省の休暇を得るために前後2ヶ月間ぶっ通しで働いたこともある。自分が青木のパートナーであることを申し訳なく思って、罪滅ぼしに必死になっている証拠だ。そんな必要はどこにもないのに。

「何がどうあっても、おまえはこの男と添い遂げるつもりなんだな」
「そうですよ。何度も言わせないでください」
 つんと反らせた顎は、言いたいことを飲みこみ過ぎてか少し震えていた。薪はいつだって我慢のしどうしで、その小さな身体に、この世に生まれ出でなかった思いや言葉たちのありとあらゆる死骸を溜め込んでいる。それらが腐食し醗酵し、ぱんぱんに膨れ上がって、だから時々爆発するのだ。
 この時も薪は限界まで広げた堪忍袋に一触即発の危険を孕んで、それを理性で押さえつけている状態だった。だからこそ、意外過ぎる史郎の言葉に突然ガスが抜けたように、突拍子もない声を上げて狼狽えてしまったのだ。

「だったらどうしてパートナー申請をしない」
「はひゃ!?」
 自分でもおかしな声だと分かったのだろう、薪は慌てて両手で口を押えて、だけどもしかするとそれは、瞬時に赤くなった顔を隠すためだったかもしれない。
「ぱ、パートナーってあれ、手持ち式の電動カッターのことですよねっ。僕は免許持ってませんけど、こないだ岡部が資格取ったって」
「薪さん、その辺で」
 挟むつもりのなかった口を、青木は咄嗟に挟んでいた。薪のごまかし方が苦しすぎて我慢できなかった。
 さすがに親と言うか、あるいは年の功か。慌てふためく甥を冷ややかな視線で沈黙させ、史郎は先の質問をもう一度繰り返した。
「なぜだ」
「そ、それはその」
「明日おまえが死んでも、彼には何も遺せないんだぞ?」
 安心してください、残るのは254円の通帳とマンションのローンだけですから。できれば受け取りたくないです。

 ぎゅっと眉をしかめて、薪は俯いた。口元に宛がわれた右手の下で、ふっくらとしたくちびるが破れるほどに噛み締められていた。見かねて、青木が再度口を挟む。
「あの、薪さんもオレも警察官ですし。そういうのはちょっと」
「警官にはパートナーシップ制度は使えない、と言う特例でもあるのか」
 それはない。
 ないが、しかし。
「真実を公にもできずに、何が覚悟だ。片腹痛いわ」

 史郎の言葉は正論過ぎて、薪は一言も返せない。取調室で言う完落ちの状態になった薪に溜飲を下げたか、史郎はふんと鼻を鳴らし、妻に向かって「帰るぞ」と声を掛けた。あらかたの荷造りは済ませてあったらしい文代が、部屋の隅から2つのキャリーケースを引いてくる。2つとも受け取って、史郎は立ち上がった。
「次、会う時までに、パートナー申請を済ませておけ。でないと、どんな手を使っても別れさせるからな」
「ちょ、待ってください、叔父さん。こっちにも都合ってものが」
「おまえの都合なぞ知るか。それ以外で、青木くんの親を安心させてやれる方法を見つけ出せるというなら話は別だが」
 余計な借金背負わなくていい分、今の方がマシなんじゃないかと思います。
 青木は真面目にそう思ったが、賢明に沈黙を守った。その言い訳は別れを早めるだけだ。

 訪れた時と同様、否、それ以上の唐突さで、彼らは去って行った。甥の顔は見れたことだし、帰りの飛行機までの1昼夜、久しぶりの日本を楽しむそうだ。ドライと言うか合理的と言うか、飛行機の時間ギリギリまで家にいた青木の里帰りとは対照的だ。
「また来てくださいね!」
 マンションのエントランスから、通りに向かって歩いていく客人に、青木が手を振りながら呼びかける。文代は笑って手を振り返してくれたが、史郎は振り向きもしなかった。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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