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二年目の桜(4)

二年目の桜(4)






 湯の張られたバスタブの中に、きれいな足がゆっくりと沈んでいく。
 踵から爪先まで真っ白で、小指の爪の形まで美しい。きゅっと締まった足首から、理想的な形のふくらはぎ。かわいらしい膝頭。細すぎるきらいはあるが、充分に優美な太もも。それが徐々に曲げられて、思わず手を伸ばしたくなるような、魅力的なヒップが現れる。

 右の尻の下、太ももの付け根のところに黒子がある。
 これはきっと本人も知るまい。ベッドを共にした相手なら、知っているかもしれないが。

 下着のCMモデルのような下半身が湯の中に沈んで、細いウエストから続く白い背中が見えてくる。この背中がまた素晴らしい。華奢な肩と肩甲骨のラインがたまらない。この背中が自分の下でビクビクと蠢く様子を想像すると、身体の芯が熱くなってくる。
「まったく。あの爺さんにはもったいないな」
 間宮隆二はPCの画面にそんな光景を映し出して、ひとり悦に入っている。PCのマウスをクリックすると画像が切り替わり、今度は前方からのアングルが映し出された。

 画面に映っているのは、現在間宮が目を付けている青年だ。
 亜麻色の短髪に幼げな顔立ち。小さな鼻とつややかなくちびる。
 これで36になるというから驚きだ。どう見ても高校生くらいにしか見えない。どんな秘薬で、その若さと美しさを保っているのか。謎としか言いようがない。

 彼の名前は薪剛。階級は警視正で、第九の室長を務めている。
 警察官という職業も室長という立場も、その外見からは想像もつかない。
 女性の嫉妬を掻き立てそうな美貌の青年は、とっぷりと首まで湯につかって、気持ち良さそうに目を閉じている。見られているとは気付いてないから、その姿はとても自然でのびのびしている。

 薪が湯船から上がるのを見て、間宮は画面に目を近づけた。
 いつもの手順通り、薪は髪を洗い始めた。シャワーで髪を下方に流している。白いうなじが眩しい。男でありながらここまできれいなうなじを持っているものは見たことがない。
 髪の次は体を洗う。腕を上げて脇の下や横腹を洗い、足を上げて膝の裏や足の裏を洗う。ひとりで風呂に入っているわけだから、タオルで腰を隠すなんて真似はしない。だから薪の美しい身体のすべてが見える。

 その身体にはいっさいの無駄な肉はなく、控えめではあるが筋肉もそれなりについている。しかし、それは決して薪のたおやかなイメージを損なうものではない。あくまで優美でほっそりとして、しなやかで限りなく色っぽい。
 きれいな鎖骨やピンク色の乳首。形のいい臍やそれからもっと下のほうの部分まで、何もかもが間宮の理想だ。
淡い繁みも好みだし、その下の男の部分も可愛らしい。官房長の愛人の噂があることからも、薪は男に愛される側の人間らしく、そこはまだ経験のない少年のようなきれいな色をしている。
 それをきゅうきゅうと自分の口で扱いてやったら、この美人はどんなよがり声を上げてくれるだろう。やわらかい尻の奥を指で犯しながら絶頂に導いてやったら……。
 きっと堪らなくなって、自分から尻を差し出してくるに違いない。

「そろそろ見せてくれてもいいのになあ」
 このCCDカメラを第九のバスルームに設置したときから、間宮はずっとあることを期待してきた。それが見たくて、こんなものを仕掛けたと言っても過言ではない。
 いま、薪は職場に泊まり込んで捜査に当たっていると聞いた。それは本当のことらしく、間宮は連日薪の入浴シーンを楽しんでいる。
 今日で4日目。年齢的に言っても、一度くらいはやりそうなものだ。

 薪がどんなに仕事熱心な人間でも、男には男の事情というものがある。特に下半身の事情はどうにもならない。仕事が忙しくてそのヒマがなければ、必ずひとりきりになれる場所で解消するはずだ。風呂場は、正にうってつけだと思われるのだが。
 あの冷静を絵に描いたような室長が、その時にはどんな顔をするのか、どうしても確かめたい。普段取り澄ましている人間ほど、そういうときには激しく乱れるものだ。

 男とセックスする場合、ビギナーはいただけない。ある程度行為に慣れていないとこちらも痛い。
 これが、局部を緩めたり締めたりが自由にできるくらいのベテランになると、経験の浅い若い女より遥かにいい。その点薪なら、10年も前から官房長の相手を務めているらしいから、テクニックのほうも大いに期待できる。
 あんな幼げな顔をして、ベッドの中ではきっと娼婦のようになるのだ。そうでなくては10年もの間、ひとりの男を自分に夢中にさせておくことなどできまい。

 やがて薪は立ち上がり、シャワーで自分の体についた泡を流し始めた。
 磨き上げられた肌は、思わず性別を疑ってしまうほどきれいだ。
 あの白い肌を吸い上げて、赤く印をつけてやりたい。自分のものだという証拠を体中に刻んでやりたい。表面だけではなく、からだの奥にまでその標を打ち込んでやりたい。

 石鹸の泡を流し終えるとさっぱりした顔になって、薪はシャワーを元の位置に戻した。今日のお楽しみはこれでお終いだ。
 浴室を出て行く色っぽい後ろ姿を見ながら、間宮は頑なな麗人を陥落させる手立てをあれこれ考えている。

 顔から身体から、薪はパーフェクトだ。何としても欲しい。
 一目見たときから、絶対に落としてやろうと決めていた。何度か粉を掛けたのだが、どうしてもあの氷のような鎧を溶かすことができない。部屋に呼び出せば必ず部下と一緒に来るし、会議の後に捕まえようとすると、第九の部下や捜一の人間が邪魔をする。
 そういえば、会議の時にはいつも薪に引っ付いている捜一の竹内という男も、かなりのハンサムだ。薪のように美しいというタイプではないが、俳優のような甘いマスクで男の色気をぷんぷんさせている。
 しかしあれは女好きする顔立ちだ。好みではない。自分の好みはあくまで薪のような麗しいタイプだ。

 薪が官房長の愛人でなかったら、とっくの昔に無理矢理にでも抱いてしまっていたのに。今回ばかりは相手が悪い。
 官房長の恨みを買うのは、いかに間宮が警務部長とはいえ避けたい事態だ。小野田は警察庁内で大きな力を持っている。たしかな実績と実力に加え、どこから手に入れてきたのか、政財界の大物の命運を左右する秘密のリストを所持しているという噂だ。だから間宮の後ろ盾である次長も、迂闊に手を出せない。

 しかし、間宮にしてみれば、こんなに長いこと目的の美肉にありつけない、というのは初めてだ。我慢も限界だ。もともと気が長いほうではない。
 どんな手を使ってもいい。とにかく1度抱いてしまえば、こっちのものなのだ。あとは薪のほうから摺り寄って来るはずだ。薪のほうから来る分には、小野田も文句は言えまい。結婚しているわけでもなし、恋愛は自由だと言い切ってしまえばいいのだ。
 今までずっとそうだった。初めは抵抗しても、次の時には「お願い」と自分から身を投げ出してくる。自分のテクニックに夢中にならない人間などいない。

 おめでたいことに、間宮はそう信じている。
 間宮は警察庁次長の娘婿だ。つまり、寄って来る人間にはそれなりの下心があるのだ。

 自惚れが強くて、相手の言動を自分の都合のいいように解釈するのが得意な間宮は、今日もまた薪を口説く手段を考えている。
 仕事が混んでいて、小野田との逢引の時間がとれない今がチャンスだ。きっと欲求が溜まっているはずだ。そこをつけば――――。

「最終手段はこれか」
 小さく呟いて、机の引き出しから茶色の薬瓶を出す。

 要は薪のほうから、「抱いて欲しい」と言わせればいいのだ。これさえ飲ませることができれば、それが可能になる。が、薪にこれを飲ませるには、いくつかの下準備が必要だ。
 間宮はその準備のひとつのため、携帯電話を取り出した。愛人のひとりと今夜会う約束を取り付けて、電話を切る。
 電話の相手は自分の虜になっている。ということは、薪をこの手に抱く日も近いということだ。

 PCのフォルダに今日の貴重な映像を保存して、間宮は下卑た笑いを浮かべた。




*****


 くははは!
 間宮サイコー、書いてて楽しい!
 ドヘンタイもここまでくると、いっそ清清しいと思いませんか?(と言い残して逃げる)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、いらっしゃいませ~。

そう、唐突に出てくるんですけど、そのうち絡むんですよ。 でもって、次の話の伏線にもなってます。
てか、
あー、どーしよー、次のファイヤーウォールは読まないほうがいいかもー、ヘンタイ全開の話で、大丈夫かなーっ(^^;


>何ということでしょう、薪さんが覗かれている!!ばれたらえらいことですが!?

まったく、不届きなヤツですねっ!!
と言いつつ、
この下の、Aさまの二律背反にフイてしまいました☆
そうですね~、見たいですよね~、他人には見せたくないですけどね~。
原作でも薪さんのシャワーシーンを望む読者は多いとか。(その噂はいったいどこから・・・・・?)
でも、薪さんのすねに毛が生えてたら泣く。 って、あり得ないですね。(笑)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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