FC2ブログ

二年目の桜(9)

二年目の桜(9)






 ピンポン、という電子音は間宮のお楽しみの合図だ。

 にんまりと笑って、自分のPCに注目する。第九に仕掛けたCCDの画像が、自動的に転送されてきている。必ずしも薪が映っているとは限らないが、今の時間帯ならまず間違いはない。昼間から風呂に入っているのは、薪くらいのものだ。
 薪の白い裸体が脳裏に浮かぶ。
 あのきれいな肌、細い首、魅惑的な背中―――― 思い出すだけでぞくぞくする。
 ところが。

「げっ!!」
 PCの画面に映ったグロテスクな画に、思わず間宮は椅子から転がり落ちた。
 それは中年のいかつい男がトイレの個室で用を足している光景で――――。

 なんでこんなものが俺のPCに送られて来るんだ!?

 慌てて画像を消すが、見てしまったものの記憶は消せない。毛むくじゃらの足やら気持ち悪い3段腹やら、黒ずんだ男の……。
「うあああ、目が腐る!」
 しかも場所はトイレの個室だ。当然、それも見てしまった。間宮にはスカトロ趣味はない。対象が薪だったらひたすらあの可愛い顔を楽しむという手もあるが、どこかのオヤジのそんなシーンを見てどうしろというのだ。
 何の間違いだかは知らないが、早くこの画像を消去しなくては。PCが汚染されてしまう。

 間宮は画像フォルダを右クリックし、今の画像を消去した。
 その途端。
「あ、あれ!?」
 画面に意味不明の英文字が並び、凄まじい勢いでスクロールしたかと思うと勝手にPCが動き始めた。次々と画像フォルダを選択し、削除していく。
「ちょっと待て! それは薪警視正の!」
 いくらマウスをクリックしてもESCを押しても、PCは止まらない。あれよあれよという間にフォルダは画面から消えて、間宮が大事に保存しておいた薪の入浴シーンの画像は全部なくなってしまった。
「そんな……なんでだ?」
 がっくりと肩を落として、間宮はことの真相を考え始めた。
 間宮は決して馬鹿ではない。色事に関してはキチガイだが、仕事はできる。46歳で警視長というのは、誰でも手に入れられる階級ではない。

「小野田だな」
 間宮が薪のからだの特徴を知っていたことから、小野田はこのことを察知し、第九からCCDカメラを撤去したのだ。そしてどこかの男子トイレに仕掛けた。今のPCの暴走もハッキングによるものだ。カメラからの情報がPCに到達する際に起動するよう、ウイルスを仕込んでおいたに違いない。
 見かけによらずなんて陰険な男だ。自分は薪と楽しい夜を過ごしているくせに、間宮には見ることも許さないつもりか。

 が、間宮が出した結論は間違っていた。
 小野田が、こんな手の込んだことをするはずがない。もし、CCDカメラを見つけたのが小野田だったら、カメラをゴミ箱に捨てて、後は知らぬ振りを決め込むだろう。
 カメラをトイレに仕掛けたのは、第九の職員のひとりである。PCのデータを破壊したのは、もちろん宇野の仕業だ。どちらも薪の指示によるものだ。こんな意地の悪いことを考え付くのは、警察庁中探しても薪しかいない。
 そんなこととはつゆ知らぬ間宮は、小野田への怒りに顔を赤らめている。

 こうなったらもう容赦しない。小野田から薪を奪い取ってやる。

 小野田が薪の尻のホクロを知らなかったことから、もしかするとこのふたりの間には肉体関係はないのかと間宮は思った。しかし、あの時も間宮への牽制球は鋭かったし、こんな恨みがましいことをしてくるところをみると、やはり小野田と薪はできている。そうでなければ特別承認や異例人事など、そうそうあるものではない。ましてや、相手はあの薪だ。例えノーマルな男でも、一緒にいれば自然とそういう誘惑に駆られるに違いない。

 予てからの計画を実行に移す時が来た。
 どんな形でもいい。一度抱いてしまえば、薪は自分の言いなりになる。
 自分に夢中になった薪に別れ話を告げられて、哀れっぽく若い恋人に取り縋る小野田の姿が見えるようだ。
 間宮は携帯電話を取り出し、計画の1歩を踏み出した。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: