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ファイヤーウォール(3)

ファイヤーウォール(3)





 ピンポン、という電子音に呼ばれて、間宮はPCの前に座った。
 目的のソフトを開き、受信のボタンをクリックする。画面が明るくなり、白いバスルームが映し出された。最近作られたばかりの浴室らしく、金具類がピカピカに光っている。
 たっぷりと張られた湯の中に、ゆったりと身体を横たえている青年の姿がある。それを確認して、間宮はにやりと笑った。

 亜麻色の髪に亜麻色の瞳の美しい青年。顔立ちもさることながら、身体のほうも素晴らしい。
 華奢な体つきに白い肌。表面を覆う薄い筋肉。胸のあばらが減点ポイントだが、見苦しいというほどではない。あくまでしなやかで、限りない色香を漂わせた蠱惑的な肢体。
「ここまでとはね。これは何が何でも、味見させてもらわなきゃ」

 間宮がこのお楽しみを得ることができたのは、総務部の女の子を抱き込んでおいたおかげだ。
 間宮の場合、これはもちろん言葉通りの意味だ。彼女から情報を得て、第九のユニットバスの工事をした業者に金を握らせ、施工ミスのお詫びの品を取り付けると同時に、CCDカメラを設置させたのだ。

 薪警視正と初めて会ったのは、3ヶ月前。
 11月に警務部長に就任した間宮は、かねてから美人の噂の高い第九の室長を、警察庁の自室に呼び出した。ダークグレイのスーツをピシリと着こなした薪は、間宮がこれまで見てきたどんな人間よりも魅力的だった。

 亜麻色の髪はさらさらとして、長く伸ばしたらさぞかしきれいだろうと思うが、薪にはこちらの髪型のほうが似合っている。小さな耳も白い襟足も、短髪ならではの美しさだ。
 髪と同じ亜麻色の大きな瞳に、長い睫毛。微発光しているかのような肌理の細かい美しい肌。そして、グロスを塗ったようなつややかなくちびる。まるで化粧をしているようだった。

 あまりの美態に自分が制御できず、思わず抱きしめてしまった。
 そのとき触れた、その身体のしなやかさが忘れられない。薪の身体は、細いがそれなりに筋肉がついていて、特に腰の辺りは柔らかさの中にも強い腱の存在を感じる。プロ級の腰使いが期待できそうなさわり心地だった。
 間宮の腕の中で、警視正はからだを強張らせ、しばし硬直していた。竦められた華奢な肩と背中が、とても可愛らしかった―――――。

 その時の薪の戸惑った表情を思い出して、間宮は思う。
 きっと彼も、あのまま自分に抱かれていたかったに違いない。しかし彼には、小野田官房長という権力のある愛人がいた。だから自分の誘いを断るしかなかった。
 わざと邪険に間宮の手を払うと、薪は部屋を出て行った。薪の後姿はとてもきれいで、魅惑的な腰のラインがたまらなかった。

 ……その直後、薪は腹いせに、室長室のキャビネットをぼこぼこに蹴り飛ばしている。「どうして第九のキャビネットはしょっちゅう壊れるのか」と嫌味を言われた岡部が、総務の女性にひたすら頭を下げていた姿は、記憶に新しい。

 間宮は基本的に楽天家で、自分はみんなに好かれていると思っている。
 その天真爛漫さが、間宮の数多い愛人たちを彼に繋ぎ止めている理由なのだが、一歩間違うとただのカンチガイ野郎になってしまう。この相手に限っては、確実に後者のほうだ。

 キャビネットの災難も岡部の心労もつゆ知らず、間宮は自分の都合のいいように、薪の本音を予想する。
 きっと薪は、官房長に気兼ねしているのだ。官房長さえいなければ、自分の誘いに喜んでのってきただろう。あんな腰つきをしている若い薪が、官房長のような50過ぎの老人ひとりで満足できるとは思えない。きっと他の男もつまみ食いしてみたい、と思っているに違いない。

 当人が聞いたら室長室のキャビネットどころではなく、部屋ごと粉砕してしまいそうなことを考えて、間宮はひとり悦に入る。

 画面の中では、薪が湯船から上がって髪を洗い始めた。
 洗い場に移動した薪に視点を合わせるため、マウスをクリックしてアングルを変える。姿鏡に取り付けたカメラのほうが、よく映るはずだ。
 果たして先刻より大きく、遥かに鮮度を増した画像がPCに映し出された。
 身体を洗う薪の姿が画面いっぱいに広がる。胸の鎖骨が果てしなく色っぽい。どんな格好をしていても美しい人間というのを、間宮は初めて見た。
 いま薪は、足を拡げて自分の性器を指で洗っている。その姿から連想される行為に思いを馳せて、間宮は自分の股間が熱くなるのを感じた。

 薪だって若い男だ。きっとひとり寝の淋しい夜にはこんなこともするに違いない。そんな時には自分に声を掛けてくれれば、一目散に飛んでいくのに。

 身体に付いた泡をシャワーで流すと、薪はもう一度湯船に浸かった。
 そこで、給湯パネルの左についた新設のボタンに初めて気付いたらしい。軽く首を傾げ、細い指でスイッチを押してみる。すると、湯船の底からたくさんの水泡が発生し、まるで沸騰したお湯の中にいるような状態になった。
 薪はとても嬉しそうな顔になって、インターホンのボタンを押した。しばらくしてから入り口のドアが開き、背の高い男が姿を見せる。名前は忘れてしまったが、この男は薪の部下だ。警務部に薪を呼び出すと必ず誰か第九の部下がついて来るが、その中にこの長身の男の姿もあった。

 なにを話しているのかは分からないが、薪はとても楽しそうだ。

 間宮にはついぞ見せてくれたことのない無邪気な顔で、部下と話をしている。会議のときの取り澄ました表情とは大違いだ。こころを許した自分の部下の前では、こんなにかわいい顔をするのか。

 薪の優雅な腕が再度パネルに伸びて、今度はジャグジーのボタンを押した。
 強い水流が美しい背中に当たる。その反応の過敏さに、間宮は驚いた。

 薪は明らかに、性的興奮を味わっている。眉根を寄せて目を閉じ、肩を竦み上がらせ、ガクガクと身体を震わせている。小さな顎をあげて亜麻色の頭を仰け反らせ、湯船の縁に摑まっている。つややかなくちびるから洩れる、快楽の声が聞こえるようだ。
 なんて敏感な身体をしているのだろう。ジャグジーくらいであんなに感じてしまうとは。これは自分の性技にかかったら、よがり狂った挙句に失神してしまうかもしれない。

 狂わせてみたい。
 自分の手で、この美しい生き物を、それ以外のことは考えられなくなるようになるまで、徹底的に調教してやりたい。自分のテクニックならそれが可能だ。

 そのなまめかしい姿態に刺激され、間宮は自分の手をズボンの中に滑り込ませた。
 自分の手でここを慰めるのは、何年ぶりだろう。こんな気分になったときには、携帯のメモリーから適当な人間を見繕って相手をさせてきた。間宮と寝たがる人間はたくさんいる。
 その俺がこんな……しかし、とても我慢できない。こんなにそそられる相手は初めてだ。

 欲しい。薪が欲しい。
 あのつややかなくちびるに、この怒張を咥えさせてやりたい。薪の細い腰に、この猛りを打ち込んでやりたい。
 だが、困ったことに薪の相手は官房室の室長だ。義理の父からも、小野田の不興は買うなと言われている。口惜しいが、今の段階で薪に手を出すことはできない。
 今は、こうして見ているしかない。
 が、そのうち必ず機会を見つけて口説いてやる。薪だってまんざらじゃないはずだ。官房長との関係も10年近くなるはず。とっくに飽きがきているだろう。新しい男が欲しいはずだ。

 画面に映った薪の愉悦に満ちた美貌を見ながら、間宮は淫らなひとり遊びに耽っていた。



*****


 間宮が出てくると、異様に筆が進むのは何故?
 やっぱり自分が憑りうつってるからかしら(笑)



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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