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ファイヤーウォール(6)

ファイヤーウォール(6)




 第九の室長室には、ひとつだけ真新しいキャビネットがある。
 色はアイボリーの金属製で、下方に引き出しがふたつ、その上に片開きの棚が3つあり、棚は未処理の書類用、引き出しは所長に提出する書類を入れるようにしている。
 同じタイプのものが5つほど並んで壁を埋めているが、こちらのほうは今までのMRI捜査に関する様々な資料や、犯罪関連の資料が山のように入っていて、どこになにがあるのか、部屋の主以外はよくわからない状態である。

 主不在の室長室で、青木はその備品の変化に気付いた。
「キャビネット、曲がってませんか?」
「いいんだ、あれは。きりがないから、あのままにしておくことにしたんだ」
 岡部が投げやりな口調で、ため息混じりに言った。総務の女性にこれ以上、文句を言われるのは辛いらしい。

 どうやら、また何かあったようだ。
 被害を受けるのは、いつも同じキャビネットだ。中身を入れ替え易いように、報告書専用のものを選んで蹴り飛ばすあたり、これは間違いなく確信犯だ。

「今度はなんですか? 捜一ですか? それとも週刊誌?」
「セクハラだとさ」
「官房長のセクハラは、今に始まったことじゃないじゃないですか」
「官房長じゃない。警務部長だ」
 とかく色事の噂が絶えない警務部長は、当然のように薪に目を付けている。その被害に遭ってしまったらしい。
「何されたんですか?」
「詳しくは教えてくれなかったけど。帰ってきてから給湯室で、必死に手を洗ってたな」
 何か汚いものでも触ってしまったのだろうか。

 しかし、今日は金曜日。楽しい週末だ。
 薪の家で3人で酒を飲めば、きっと薪の機嫌も直るに違いない。

 昨日言われた通り米を買って、吉祥寺のマンションに向かった青木を迎えてくれたのは、亜麻色の髪を濡らした薪だった。風呂から上がったばかりらしく、すごくいい匂いがする。
「悪いな。それ、米びつに入れといてくれ」
 バスルームの方向から、ドライヤーの音が聞こえてくる。どうやら今日は、前髪が額を隠した薪の顔を見られるらしい。
 あの髪形の薪は、とてもかわいい。幼い顔がますます幼くなる。酒を勧めていいものかどうか、迷ってしまいそうだ。

 歩いただけで自然に揺れるさらさらの髪美人に仕上がって、薪はキッチンに現れた。
 襟と袖口に紺色の縁取りが入った、白いパジャマを着ている。目眩がするほどかわいい。職場での薪はきっちりとスーツを着ているから、ふたりきりになっても理性を保っていられるが、自宅での薪は無防備すぎて、岡部がここにいなかったら間違いなく襲ってしま……。

「あれ? 岡部さんは?」
「岡部は姪っ子の就職祝だって。急に決まったみたいで、さっき電話してきた」
「え! それじゃ、今日は来ないんですか」
 まずい。
 職場でふたりきりになるのはいいが、ここで薪とふたりきりになるのはまずい。
 食事だけで帰るならまだしも、週末は酒も入る。しかも風呂上りのパジャマ姿。すぐそこにベッドもあって……絶対にやらかしそうだ。

「岡部に何か用事だったのか?」
「いえ、そういうわけじゃ。……あの、オレも今日は帰ります」
「なんで」
「ちょっと用事が」
「じゃあ、ここに何しに来たんだ」
「お米を届けに来たんです」
「三河屋さんか、おまえは」
「だれですか? それ」
 わからない。
 12歳も年が離れていると、日本語はときどき別の国の言葉になる。

「この大量の酢豚、僕ひとりでどうしろってんだ」
 大きな中華鍋いっぱいのつやつやした中華惣菜は、薪が今日の定例会を楽しみにしていた証拠だ。食欲をそそる甘酸っぱい匂い。隣には湯気を立てた雲呑スープもある。
「用事は急ぐのか? 食事だけでもしていかないか?」
 眉根を寄せて、少し甘えたような声を出し、上目遣いに誘いを掛けてくる。この薪に逆らえるくらいだったら、青木はとっくの昔に新しい彼女を作っている。

「すごく美味しそうですね。いただきます」
 ぱっと亜麻色の瞳がくるめいて、薪は嬉しそうな表情になる。
 青木の中で、自制心という扉がガタガタと音を立て始める。その扉の向こうの獣の存在に怯えながら、青木は戸棚を開けて大皿を手に取った。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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壁→|_@;)じー

こんばんは

青木・・ 青木・・ 信じてるから    な

壁→|_@;)じーー  ”あきこねーちゃん”化してます

ところで うけけけけ とか うひゃひゃひゃ とか、どう見ても・・・
その・・・・・。

あ、後、青木が子孫繁栄には役に立たないといわれてましたが・・・、あの・・薪さんを好きになった時点でその・・・子孫繁栄はどの道・・・。
このあたり、鈴木と青木は足して2で割ればちょうどいいかもなのです!!

あ、それから(まだあるのか)慰安旅行の”スーパー”ですが、もしかして共寝もしてくれるアレですかあ?
阿刀田高さんの小説なんかで、たまに出てきますが・・・。

ちわーッス!三河屋ッス!

こんにちは!しづさん!

そろそろ青木君の想い・・・通じないかしらん・・・?
期待してますよ~~~!
(わんすけさんは壁の向こうから眺めてますが・・・)

ところで、この前の冒頭に書いてありましたが・・・。
ブログ拍手機能、やっぱり変ですよね?
私も最近いただいた拍手消えてました。拍手数は気にしませんが、コメントはどこへ・・・?
(内容はメールにも送信されるので残ってますけど・・・返信が消えてるのが残念かも・・・)


このコメントも拍手で送ろうかと思ったのですが、心配なのでこちらから・・・。

続き・・・おまちしております!

Re: 壁→|_@;)じー(わんすけさんへ)

ようこそ、わんすけさん。
壁の向こう側から、こんばんはです。(笑)


> 壁→|_@;)じーー  ”あきこねーちゃん”化してます

↑ あははは!
これ、わんすけさんじゃないと考え付かないですね。
わんすけさんのツッコミとかこういうセンス、光ってますよね。尊敬します!

> あ、後、青木が子孫繁栄には役に立たないといわれてましたが・・・、あの・・薪さんを好きになった時点でその・・・子孫繁栄はどの道・・・。

そうですね、青木ですからね。
これが普通の男だったら、薪さんを愛する傍ら、結婚もして子供もちゃっかり作って、ということになるんでしょうけど。
あれ?
わたし、今、さらっとすごいこと言いました?
いや、聞き間違えですよ、きっと。
男なんて生き物は、どんなに好きなひとがいても、他の女とやれる生命体なんですよ、なんて言ってませんから。(←男に偏見もってる?)

> このあたり、鈴木と青木は足して2で割ればちょうどいいかもなのです!!

ああ、そうですねえ。
うちの鈴木さんは、基本的に来るもの拒まずですからね。(ひどいキャラ設定・・・・鈴木さんファンの方、ごめんなさい)

> あ、それから(まだあるのか)慰安旅行の”スーパー”ですが、もしかして共寝もしてくれるアレですかあ?
> 阿刀田高さんの小説なんかで、たまに出てきますが・・・。

はいはい、それです。
宴会場ではだかになってくれて、お金を払えば本番オッケーみたいな。(←自主規制)
そのシステムを第九の人たちが何処まで活用したかは、ご想像に任せます。(笑)

(だから薪さんは、開始30分で逃げちゃったんですよ。彼女たちが来ないうちに。AVのときみたいに、真っ赤になっちゃうから)

Re: ちわーッス!三河屋ッス!(みひろさんへ)

いらっしゃいませ、みひろさん!

> そろそろ青木君の想い・・・通じないかしらん・・・?
> 期待してますよ~~~!

そ、そうですね。
通じてほしいものですね・・・・。
まずい・・・この続き、アップしづらい・・・・でも載せちゃうけどね!

> ところで、この前の冒頭に書いてありましたが・・・。
> ブログ拍手機能、やっぱり変ですよね?
> 私も最近いただいた拍手消えてました。拍手数は気にしませんが、コメントはどこへ・・・?
> (内容はメールにも送信されるので残ってますけど・・・返信が消えてるのが残念かも・・・)

そうなんですよ。
KさんとTさんとMさんの井戸端会議がなくなってしまって、ものすごくがっくりきてます。
ああいうのが舞台裏の会話みたいで、楽しかったのに。

> このコメントも拍手で送ろうかと思ったのですが、心配なのでこちらから・・・。

お気遣い、ありがとうございます。
わたしも他のブログさまに、連投コメしてきちゃいました。
(拍手なら隠れるからいいけど、コメは表に名前が残ってしまうので、アラシと間違えられそう・・・。)

おおっ(≧∇≦)

こんばんは。しづ様♪

きゃ~(≧∇≦)
何かが起こりそうなよ・か・ん←前にも言ったような(^_^;)

ふ、二人っきりですよね(〃▽〃)v
週末だし(?)
お酒入るし~
薪さん!お酒が入ったからって、寝ちゃだめですよ~(^▽^;)

この二人は、あの同情のキスだけですよね。
でも、薪さんを送って行った時、車中の青木の濃厚なキスって・・・(≧∇≦)

えっΣ( ̄ロ ̄lll)
薪さん、寝ていたから気が付かなかった・・・

ま、まさかですよね・・・(^_^;)
せめて、送ってくれたご褒美の方が・・・

今回、ドキドキな「ほんのりピンク」期待しております(≧∇≦)
薪さんも、ほんのりピンク(〃▽〃)
う腐腐腐★

間宮の変態ぶりに、薪さん、遂に危なかったですね(°□°;)
官房長ありがとうございましたm(_ _)m
肩を抱いて、恋人ごっこしていただいて♪\(≧∇≦)

前回、拍手コメで、捜一の竹内さんの名前を間違えてしまい、すみませんでしたm(_ _)m

拍手コメといえば、私も、昨日の深夜から、今日に掛けて、拍手画面に入れませんでした(≧ヘ≦)
先程、入る事が出来たので一安心しておりました(^_^)

カウンターや拍手コメが消えたりすることがあるんですね(∋_∈)
怖いですね。

しづ様の1000拍手記念小説が拝読できなくて残念です(T_T)
次の機会にお待ちしております(^_^)v

Re: おおっ(≧∇≦)

こんばんは、たつままさん。
あ、前にも言ったかもしれませんが、わたしのことは「しづ」または「間宮」とお呼びください。(様付けは恥ずかしいです(^^;)

> 何かが起こりそうなよ・か・ん←前にも言ったような(^_^;)
>ふ、二人っきりですよね(〃▽〃)v

はい。
何かは起きました。(笑)

> この二人は、あの同情のキスだけですよね。
> でも、薪さんを送って行った時、車中の青木の濃厚なキスって・・・(≧∇≦)
>
> えっΣ( ̄ロ ̄lll)
> 薪さん、寝ていたから気が付かなかった・・・

はい。気付いてないです。
うちの青木は割合ちゃっかりしてて、盗めるときには盗んでます。
竹内の気持ちを知りながら薪さんの誤解を解かないところとか、腹黒いところもあったりして、けっこう、したたかな男なんです。

> 間宮の変態ぶりに、薪さん、遂に危なかったですね(°□°;)
> 官房長ありがとうございましたm(_ _)m
> 肩を抱いて、恋人ごっこしていただいて♪\(≧∇≦)

・・・・・・あれ?
たつままさん、アレくらいで済んだと思ってらっしゃる・・・・?
本番はこれからですよ。腐腐腐。

> 前回、拍手コメで、捜一の竹内さんの名前を間違えてしまい、すみませんでしたm(_ _)m

いえいえ!お気になさらないで下さい!
そんな些細なことで、たつままさんのコメからいただくパワーは減ったりしませんから!

> カウンターや拍手コメが消えたりすることがあるんですね(∋_∈)
> 怖いですね。

はい。
無くしてしまって、申し訳ありませんでした。
時間が経ったらコメも元にもどるかな、と思っていたんですけど、ダメでした。
幻の井戸端会議が・・・・・・残念です。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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