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ファイヤーウォール(18)

 Rなので、苦手な方はご注意ください。





ファイヤーウォール(18)





 細い体を毛布ごと抱きしめて、青木は薪を落ち着かせようと必死だった。
 きっともの凄く辛いのだ。青木も男だから、その事情は良く分かる。
 雪子に聞いた話では、このクスリによる効果は2時間程度で、副作用は無いものの射精による終了は訪れない。つまり、何回イッても興奮状態が続くらしい。もともと性的不能者の治療薬で、その目的のために開発された薬品である。正常者が用いるものではない。

 立っていることもできない薪の身体を、ソファに寝かせる。薪の身体はびくびくと震えている。この震えを止める方法は知っているが、それをしていいものかどうか。

 1ヶ月ほど前のハプニング以来、薪はすっかり警戒態勢に入ってしまって、仕事以外では決してふたりきりにはならないようにしている。岡部の説得のおかげで、自宅の出入りは許可が下りたが、来るときには必ず岡部と一緒に、と約束させられてしまったし、仕事の帰りに家まで送ることも禁止されてしまった。
 細糸1本で繋がっているような薪との関係が、このことで完全に断ち切られてしまうかもしれない。これ以上、薪に嫌われるようなことはしたくない。
 そんな危惧から青木が手をこまねいている間に、薪の症状はどんどん進行しているらしかった。
 びくんびくんと身体全体が、大きく脈打つように動いている。何度もそこに手を伸ばしかけるが、思いとどまって毛布を掴んでいる。
 苦痛に歪んだ表情は、心の底からの嫌悪感を現している。しかしそれを、自分の身体の一部だけが裏切っている。このままでは太腿のボールペンだけでは、済まないかもしれない。

「もう、やだ……もう嫌だあ……」
 薪はとうとう大声で泣き出してしまった。
「手が疲れた。もうしたくないのに、なんでこんな、ちくしょう」
 おとり捜査の時とは違って、薪はラリっているわけではない。ただ薬の作用で、性欲だけが異常に高まった状態に置かれているだけだ。それが自尊心の強い薪を、自傷行為に走らせている。

 亜麻色の瞳が、助けを求めて縋り付いてくる。
 この人が声も殺さずに泣くなんて、よっぽどきついのだ。
 この苦しみを軽くしてあげたい。それをしたら、もう二度と口をきいてくれなくなるかもしれない。
 だけど。

「特効薬、使ってみますか?」
 薪は目を閉じた。
 ぎりっと奥歯を噛み締めて、ひどく口惜しそうな顔をする。この涙は、明らかに悔し涙だ。声にならない罵倒は、自分自身へ向けられたものだ。
「泣かなくてもいいんですよ。落ち着いて。リラックスしてください。この薬はその方がよく効きますよ」
 薪は泣きながら頷くと、自らの手で毛布を落とした。
 横向きに寝そべった白い裸体が現れる。その強烈な色香。青木の下腹部に、痛みを覚えるほどの衝動が沸き起こる。

「だ、ダメです! 毛布はこのままにしておいてください」
 慌てて毛布を拾い上げて、自分の視覚を塞ぐ。これを見ていたら先月の二の舞、いや千秋楽まで突き抜けてしまいそうだ。
 自分の身体に毛布を巻きつけられて、薪が意外そうな顔をする。きょとんとして首を傾げる、その可愛い仕草も今はヤバイ。抱きしめたくなってしまう。

「今の薪さんは、病気と同じです。病人をどうにかしようなんて思いません」
「だっておまえ、これ」
「これは男の悲しいサガで、ちょっと! さわんないでくださいよ!」
「僕が欲しいんじゃなかったのか?」
「欲しいですよ。当たり前じゃないですか」
 だから毛布は外しては駄目なのだ。こちらの我慢ができなくなってしまう。
「でも、こんなのはダメです。今はよくても、薪さんは後で絶対に後悔します。オレはあなたを泣かすのは嫌です」

 薪の体をしっかりと毛布で包み込み、布の隙間から手を入れる。手探りでそこを探り当て、やさしく撫で始める。細い腰が跳ね上がるように反応して、薪はつややかなくちびるを噛み締めた。
「――――っ! くっ!」
 いくらも経たないうちに絶頂を迎えるが、薪のそれは硬くなったままだ。
 がくっと力が抜ける感じはあるから、精神的には射精しているらしいのだが、何も出てこない。たぶん、もう中身は空なのだ。でも、薬の作用は脳に働いているから興奮状態が続く。女の場合は基本的に限界というものはないらしいからこれもありなのだろうが、男の場合は――――― 地獄かもしれない。

「やめないで、もっと」
 何ともそそられるセリフだが、もちろんクスリの作用によるものだ。言ったそばから、はっとして口を覆っている。
「ちがう、僕はこんな」
「わかってます。薪さんが人一倍自制心が強いことは、よく知ってますから」
「うん……う、あっ!」
 声を抑えようと、またくちびるを噛む。
 薪の柔らかそうなくちびるは、切れて血が滲んでいる。青木は自分の人差し指をその小さなくちびるに当てて、やさしく言った。
「声も出していいんですよ。寒いときには勝手に体が震えちゃうし、暑いときには汗を我慢することなんてできないでしょう? それと同じですよ。恥ずかしくないです」
「でも、んくっ!」
 白い前歯に再び傷つけられようとしたくちびるは、そっと入ってきた青木の指に開かれる。

「これでも噛んでてください」
「指がちぎれるぞ」
「いいです。薪さんの唇が切れるよりましです」
「だけど、あぐっ!」
 幾度目かの到達感に、薪は思わず歯を食いしばった。

「あ……」
 青木の指を噛んでしまったことに気付いた薪が、眉根を寄せる。そのきれいな顔がさっと曇る。噛んでください、と言ったのは青木の方なのだから薪が気にすることはない。
 薪の小さな手が青木の手を取って、自分の口から青木の指を引き抜いた。
「血が出てる」
 傷ついた指をつややかな唇が再び包み込む。口中に含まれて、やさしく傷口を舐められる。
「大丈夫ですよ。痛くないです」
 本当はめちゃめちゃ痛い。マジで食いちぎられるかと思った。

 強がりを言って笑った青木に、薪は急に抱きついてきた。もう次の余波が襲ってきたのだろうか。
 頭を掴まれて、唇にキスをされる。薪のほうからキスをしてくれるのはとても嬉しいが、これはクスリの効果によるものだ。以前ドラックでラリッた時にも同じようなことが。
「今度、僕が唇を噛もうとしたらこうしてくれ」
 薪の言葉に、青木は驚く。熱に浮かされたような目をしているが、口調はしっかりしている。この命令は、薬のせいではない。
「特効薬なんだろ、おまえ」
 薪はどうやら、青木の効能を認めてくれたらしい。

 達した直後は少し落ち着くようで、息を弾ませながらも会話ができる。が、すぐにまた薪は苦しそうな顔になって、青木にその身を擦り付けてきた。
「うっ……くっ!」
 薪が声を殺そうとするたびに、青木は唇でそれを防いだ。何度も繰り返されるうちに下腹部の興奮と相まって、口唇の動きも激しくなっていく。次の絶頂を迎える頃には、薪は青木の身体に抱きついて、夢中で舌を絡めていた。
 しっかりと身体に巻きつけていたはずの毛布はとっくに床に落ちてしまって、一糸纏わぬ姿のまま、薪は快楽に喘いでいる。見てしまったら終わりだとばかりに、青木はぎゅっと目をつむっている。
 自分の身体に抱きついて、そんな風に乱れる薪をいつも想像していた青木だが、この誘惑に耐えるのはキリストでも不可能ではないだろうか。

「んああっ! いっ、いいっ!」
 続けざまに訪れる到達感は、薪の理性を剥ぎ取っていく。いつしか声を殺すことも忘れ、青木の耳元で薪は愉悦の声を上げ続ける。
 薪のこんな声は聞いたことがない。まるで悲鳴のようだ。というか、悲鳴だ。
 しかも、びっくりするほど大きい声だ。ここが青木のアパートだったら、間違いなく警察に通報されてしまう。

「もしかして……悲鳴系?」
 まさか。これはクスリのせいだ。薪はきっと奥ゆかしい吐息系だ。
「ひああっ!! あっ、あっ、あ―――ッ!!」
 ……悲鳴系だ。

 ひときわ大きな声をあげて、薪は大きくのけぞった。
 手淫だけでは得られなかった、深いオーガズム。体中の力が抜けて、ぐったりとソファに沈みこむ。
 その激しい絶頂感のおかげか、あるいはクスリの作用が切れたのか、薪の身体の震えはようやく止まったようだ。頬を伝う透明な液体は、悔し涙か快楽の涙か判断がつかない。
 薪は気絶するように眠りに落ちて、ぴくりとも動かなくなった。

「よかった、終わってくれて」
 白い欲望の残滓に汚れた薪の体を清めてやろう、と青木は思う。しかし。
 ダメだ。先にこっちを抜いてこなきゃ。
 例え薪に意識がなくても、襲いかかってしまいそうだ。
 よくぞ今まで耐えたものだ。自分の自制心に拍手だ。

「すいませんっ!」
 裸の薪を放っていってすいませんなのか、自分の今の状態を謝っているのかは不明だが、青木は謝罪の言葉を叫んでバスルームに駆け込んでいった。




*****



 初のあおまきRです♪ って、なんじゃこりゃ(笑)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Oさまへ

Oさま
お返事返してないのに、重ねてのコメント、ありがとうございます。


>ここの青木、すんごくよかったです~

ありがとうございます。

ええと、確かここは、みなさまの感想が、
「よく我慢した」と「ヘタレ」の両極に割れたような憶えがあります。
ちなみに筆者は後者です。
だって、青木さんのキャラ設定がヘタレ男のストーカーだったから……今考えるとひでえな (;^ω^)

うちの青木さんは、原作の青木さんのように聖人ではなくて、
ヘタレでおバカでストーカーで、腹黒い部分もかなりあって、
何よりも青木さん失格だな、と思うのが、
万人に愛を注げるタイプじゃない。
理由は単純で、わたしがそうじゃないから彼の気持ちが分からない、なので書けないからです。

原作の青木さんのように、命に代えても守りたい大事な人がいるなら、危険は避けたい。殺人犯の可能性がある子供を、その大事な人と同居させたりしない。
神さまじゃないもん。すべての人に等しく愛を注ぐ必要も、それだけの力量もない、むしろそれが自分にあると思うのは奢りだと思う。
人間なんてせいぜい、自分と自分の身の回りに居る人たちを守るのが精一杯の小さな生き物だとわたしは思います。それだって満足にできないのに。

そんなわけで、うちの青木さんはこれからもヘタレでストーカーです (*‘∀‘) ←それもどうよ?

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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