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デート(1)

 今回は、薪さんと青木くんが、初めてデートをするお話です。
 ラブくなるといいな。(自分で書いといて、いいなって。(^^;)


 ちょっと私信です。

 すぎやまださんへ

 こちらは以前、すぎさんの水族館のコメに残しました、あのお話です。
 楽しんでくださるとうれしいです。





デート(1)







 第2と第4の水曜日の夜を、青木は指折り数えて待っている。
 その日は、金曜の室長会議に使う資料を作成する助手にと、毎回薪からお声が掛かる。例え仕事でも、薪とふたりになれる貴重な時間だ。
 本音を言うと、金曜の夜の定例会より楽しみにしている。会議の資料作りの流れで、薪と一緒に夕食が食べられるからだ。
 定例会は岡部がいて、それはそれでとても楽しいのだが、水曜は薪とふたりきりだ。プライベートのかわいい薪をひとりじめにできるのが、何よりも嬉しい。

 ペニンシラホテルの一件以来、戒厳令は何故か解除されて、青木は再び単身でも薪の家に行けるようになった。と言っても、それほど頻繁にチャンスに恵まれたわけではない。年度末の室長は何かと忙しくて、帰りは遅くなることが多かった。
 青木のほうも、4月に新人が入ってきてからはアフターの誘いが多くなって、自由になる時間がなかった。結局、戒厳令が解かれてからこの2ヶ月の間に、薪の家に行けたのはたったの4回。金曜の定例会も含めてのこの回数は、決して青木を満足させる数字ではない。
 だから、今日のチャンスは絶対に逃したくない。
 資料の準備は、昨日のうちに進めておいた。自宅でレジュメも作ってきた。これなら7時前には、研究室を出られるはずだ。
 ところが、薪に掛かってきた一本の電話によって、青木の計画は頓挫してしまった。

「今夜は所長と一緒に、人権擁護団体の役員と会食をすることになった」
 プライバシー問題でMRI捜査を非難する人権擁護団体は、第九にとって厄介な相手だ。
 彼らには定期的に会食の機会を設けることで、いくらかでも態度を和らげてもらうように務めている。いわば接待のようなものだ。団体の役員も切替の時期だから、今夜の会食は新しい役員の紹介も兼ねているのだろう。第九の室長が顔を出さない訳にはいかない。

 薪が、少し困った顔でこちらを見ている。
 青木はにっこりと笑顔を作って、明るく言った。
「場所は『玄楼鮨』ですか? いいなあ。あそこのアナゴは絶品なんですってね」
「会食の間中、嫌味たらたら言われるんだぞ。ものを食う気になんかなれるか」
「聞き流せばいいじゃないですか。高いお金を払うのに、もったいないですよ」
「それもそうだな。じゃ、今日は耳栓して行って、食ってみるか」
 薪に皮肉な口調が戻る。しかし、亜麻色の瞳は憂鬱そうだ。会食の相手のせいもあるだろうが、いつもなら仕事と割り切っているのに、今日は様子が違うようだ。

 もしかしたら。
 薪も少しは、今夜の予定を楽しみにしてくれていたのかもしれない、と考えるのは、自惚れが過ぎるだろうか。

 セキュリティーを掛けて、研究室を出る。エントランスまでの長い廊下を、ゆっくりと歩く。
 薪の歩調がゆっくりなのは、青木と話をしたがっている証拠だ。青木は自惚れを一段階、強めることにした。
「一乃房の寿司は、いつになったら食べさせてもらえるんですか?」
「ちっ、覚えてたのか。食うことだけは忘れないな、おまえは」
 言葉面だけ聞くとひどい言われ方だが、本気でそう思っているわけではない。亜麻色の前髪に隠れた眉の形が、やさしくなっている。
「食べることじゃなくても忘れませんよ。薪さんとの約束ですから」
 薪は足を止めた。
 右手を口許に当てて、考えている。頭の中で、スケジュール表をめくってくれているのかもしれない。

「今、けっこう忙しいんだよな。春の異動の後で、会議も多いし」
「じゃあ、お休みの日に連れて行ってください」
「いやだ」
 即答だ。コンマ1秒もかかっていない。
「少しくらい、迷ってくれたって」
 休日に薪とデートをしたのは、1回だけだ。
 去年の冬に、青木の誘いを薪が仕事だと勘違いして、なし崩しにデートに持ち込んだ。それから何回か誘いを掛けたのだが、一度もOKしてもらったことはない。
 仕事の流れで食事に行ったりするのは、上司と部下であればおかしくない。しかし、休みの日にふたりでどこかへ行く、というのはその範疇を超えることだ。
 薪はそう考えているのかもしれないが、青木はいつまでも、ただの上司と部下でいるつもりはない。

「観たい映画とか」
「ない」
「森林浴とか」
「そこに皇居と日比谷公園があるだろ」
「海とか」
「まだ5月だぞ」
「美術館とか、博物館とか」
 くるりと背を向けて、歩き始める。付き合ってくれる気は全然ないらしい。
「ドライブ、セーリング、ゴルフ」
 すたすたと青木の前を歩く。薪はとても足が速い。
 もう、ヤケクソだ。

「植物園、遊園地、動物園」
 薪の足が止まった。

「植物園?」
 歩き出した。
「遊園地?」
 早足になった。
「上野の動物園で!」
 止まった。

「サイの赤ちゃんが産まれたって、ニュースでやってました」
 薪はゆっくり振り向いた。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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お言葉に甘えて

こんばんは、お言葉に甘えて表に移動しました。
以下、拍手コメ

動物園・・薪さん、お好きなんですか?
そういえばチャッピー事件のときも、室長自ら事情聴取にいってましたね。
M 『動物園?事情聴取には僕が行く!青木!車を回せ!!』 
A 『ま・・薪さん?』
なんて、やりとりが・・・。ごめんなさい。

以上。

不思議に思っていたんですよ。
なぜ室長自ら動物園に??しかも、事務所じゃなくて ゴリラ舎の前???

きっと、チャッピー探して(建前)園内一周してきたんだろうな。で、
M 『見つからないな。僕はここ(ゴリラ舎の前、実はお気に入り)で待っているから、お前、事務所に行って聞いてこい!』
なんて会話が、あったかもしれない。

その後の緊迫した会話は、見事にスルーして妄想してみました。

失礼しました。
こちらの薪さんと、青木さんは動物園でどんなデートをしてくださるんでしょう。
薪さんの手作り弁当もでてきますか?楽しみにしています。

yumemi さんへ

いらっしゃいませ、yumemi さん!

> 動物園・・薪さん、お好きなんですか?
> そういえばチャッピー事件のときも、室長自ら事情聴取にいってましたね。
> M 『動物園?事情聴取には僕が行く!青木!車を回せ!!』 
> A 『ま・・薪さん?』
> なんて、やりとりが・・・。ごめんなさい。

yumemi さん、おもしろいっ!
動物園と聞いて、目の色変わっちゃってますね、薪さん(笑)

> 不思議に思っていたんですよ。
> なぜ室長自ら動物園に??しかも、事務所じゃなくて ゴリラ舎の前???

> きっと、チャッピー探して(建前)園内一周してきたんだろうな。で、
> M 『見つからないな。僕はここ(ゴリラ舎の前、実はお気に入り)で待っているから、お前、事務所に行って聞いてこい!』
> なんて会話が、あったかもしれない。

なるほど、鋭い考察ですね!
いや、ありだな、これは。
薪さんはきっと、動物好きですよ。動物はウソをつかないから・・・・とか、言いそうです。

> こちらの薪さんと、青木さんは動物園でどんなデートをしてくださるんでしょう。
> 薪さんの手作り弁当もでてきますか?楽しみにしています。

まだ、恋人同士ではないので、友だちみたいな感じです。
はっ、手作り弁当・・・・・しまった、忘れました(^^;
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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