デート(4)

 青木くんと薪さんの、楽しいデートはいかがだったでしょうか?
 ほのぼのと、いい雰囲気で帰途につき、明日の水族館に備えてお休みになった薪さんは、ちょっとだけイヤな夢を見ちゃいます。
 この章と次の章は、その夢のお話です。

 ということで、下記に該当なさる方は、読まずに次の章にお進みください。
 次の章の冒頭には、この章の内容を書きますので、お読みにならなくてもストーリーはわかります。

 ○R系のグロイ描写が苦手な方。
 ○イタグロの苦手な方。
 ○心臓の弱い方。
 ○鈴木さんファンの方。(これ、けっこう重要です)
 ○イタイ薪さんを見たくない方。




 すいません、ちょっと私信です。

 みちゅうさんは、読んじゃダメです。眠れなくなっちゃいます。(笑)
 すぎさんには、次章を捧げます。受け取ってください!(あっ、バットで打ち返された)





デート(4)






 白い孔雀の前に、薪は立っている。
 隣には青木がいて、一緒に孔雀を見ている。
 真っ白な孔雀は美しいけれど、仲間からは迫害される運命にあると言うと、青木は柵の中に入っていき、孔雀を抱き上げて『オレが守ります』と言った。

 薪は孔雀が羨ましくなる。
 あの場所は、自分の場所だ。青木はいつも、自分のことを一番に考えているはずだ。

「青木、早く来い。次はサイの赤ちゃんを見に行くぞ」
 が、青木は声を掛けても動かない。白い孔雀に夢中のようだ。
 仕方なく、薪はひとりで園内を回ることにする。
 ひとりでだって、充分楽しめる。ヨーゼフとも遊びたい。

「あれ?」
 横を向いて驚く。どうしてここにも柵があるんだろう。

 その柵は色気のない灰色の金属製で、薪の遥か頭上まで伸びている。柵ではなく鉄格子―――― まるで牢屋のようだ。
 反対側を向くと、やはりそちらも鉄格子に囲まれている。さっきは薪の腰までしかなかった前面の柵も、いつの間にか鉄格子に変わっている。
「いったい何が……鈴木!」
 後ろを振り向くと、そこには薪の大好きな親友がいて、いつものようににっこりと微笑んでくれている。
 犬が飼い主に駆け寄るように、薪は鈴木のところへ走っていく。親友に会えた嬉しさに、我を忘れて彼に抱きついた。
 
「鈴木、鈴木! 会いたかった」
 親友が何も言わないことに気付いて、薪は顔を上げる。
「鈴木?」
 いつもなら抱きしめてくれるはずの鈴木が、今日はヘンだ。顔はニコニコと笑っているのに、目が笑ってない。
「おまえ、その格好なに?」
「え?」
「なんでそんなにオシャレしてるの?」
「べつに。普通だよ」
「普通ってことないだろ。朝っぱらから何時間、鏡の前で髪の毛いじってたんだよ。洋服だって昨夜から用意しちゃって、つけたことないアクセまでつけちゃってさ」
 細い首から下げたチェーンネックレスを摘み上げて、鈴木は吐き捨てるように言った。
 昨夜からの浮かれた自分を指摘されて、薪は気恥ずかしさに赤くなる。うつむいて、鈴木のデニムシャツをつかんだ自分の両手に視線を落とす。

「そんなにあの男とのデートが、楽しみだったの?」
「ち、違うよ! そんなんじゃなくて。だいたいデートなんかじゃないよ。僕はヨーゼフに会いたかっただけだし」
 薪は犬のことを持ち出して、彼の気持ちを和らげようとする。薪には大切な思い出だし、鈴木にとっても、それは同じはずだ。
「覚えてるだろ? あの犬、鈴木が名前つけたんだぞ」
 しかし、鈴木は追及の手を止めてくれなかった。
「ヨーゼフと遊んだら、髪なんかぐしゃぐしゃになるの解ってて、なんでそんなに念入りにセットしてたわけ?」
「……いいじゃん。たまには僕だって、オシャレくらいするよ」
「正直に言えよ。あの男の気を惹きたかったんだろ」
「ちがうよ」
「あいつ、おまえのこと惚れ直したって顔で見ててさ。おまえだって、それが嬉しくてたまらなかったくせに」
「そんなこと思ってないよ! なんだよ、鈴木だって僕がお洒落でいたほうが嬉しいって、むかし言ってくれただろ」
「オレのためにオシャレしてくれるなら嬉しいけど。他の男のためにするのは面白くない。ってか、許せない」
 鈴木の素直な反応が、ちょっと意外だ。鈴木がヤキモチを妬いてくれたのなんか、初めてじゃないだろうか。
 思わずニヤついてしまう。
 ヤキモチを妬いてもらえるのは、愛されている証拠だ。すごくうれしい。

「鈴木ったら」
「なにチャラついてんだよ。人殺しのクセに」

 薪の笑顔は瞬時に凍りついた。
 鈴木は妬いてくれたんじゃなくて、僕が楽しそうに休日を過ごすのが気に入らなかっただけなんだ。
 じわっと涙が出てくる。鈴木のシャツのボタンに刻まれた文字が、ぼやけて読めなくなる。

「ごめんなさい」
「いいよ。許してやるよ。オレはおまえの親友だから」
 鈴木はやさしく薪のからだを抱きしめてくれる。そのぬくもりを愛しく感じながらも、薪の腕は鈴木のからだを抱き返さない。
 だって、鉄柵の向こうから、青木がこちらを見ている。

「す、鈴木っ、ちょっと待って!」
 Tシャツの裾から入ってきた大きな手を押留めて、薪は叫ぶ。鈴木が自分を欲しがってくれるのは嬉しいけれど、ここでは嫌だ。
「どうしたんだよ」
「だって」
 鈴木の胸に顔を伏せて、見物人の存在を指差す。顔を上げることはできない。
「気にするなよ。見せつけてやろうぜ」
「いやだよ! 僕がこういうとこ他人に見られるの、大嫌いだって知ってるだろ」
 薪は昔からこちらの方面の羞恥心は強い。セックスを見るのも見られるのも、ものすごく恥ずかしい。正直な話、AVにだって抵抗がある。
 お互いが相手しか見えない状態になってしまえばいいけど、その全体図を眺めるとなると、これはまったく話が別だ。普通の男女のそれだってとても美しいとは思えないのに、ましてや男同士なんて。絶対にエチケット袋が必要だ。

「あいつには見られたくないってこと?」
「だれに見られるのも嫌だよ。恥ずかしいよ」
「そんな言い方で、オレのこと誤魔化せるとでも思ってんの?」
 ぞっとするような声音に、薪は思わず鈴木の顔を見る。
 鈴木はこんな声で、薪を威嚇したことはなかった。いつだってやさしくて、薪のわがままは何でもきいてくれた。顔は確かに鈴木だけれど、この男は本物の鈴木なのだろうか。

「ふざけんなよ」
 鈴木は急に怖い顔になって怒り出した。髪を掴まれて引き摺られる。鈴木にこんな乱暴なことをされたのは初めてだった。
「髪の毛一本までオレのものじゃなかったのか? おまえ、何度もオレにそう誓ったじゃないか」
「そうだよ。僕は鈴木のものだよ」
 それは本当の気持ちだ。身もこころも、僕のすべては鈴木のものだ。
「だったら嫌だなんて言うなよ」
「嫌がってなんかいないよ。ただ、場所を変えてくれって頼んでるんじゃないか」
「オレはここでしたいんだよ。あいつの目の前で、おまえがオレのものだって思い知らせてやりたいんだよ」
 鈴木が『あいつ』と呼んでいるのは、鉄の棒越しに薪たちを見ている背高のっぽのメガネ男のことだ。
「あの男が、二度とおまえにちょっかい出さないように」
 ぶちぶちっ、と何本かの髪が頭皮から引きちぎられる。めちゃめちゃ痛い。ハゲたらどうしてくれるんだ。

「痛いよ、鈴木!」
「知ってんだぜ、オレ。おまえ、この前あの男にここを許しただろ」
 固いジーンズ生地の上から思い切りそこを掴まれて、薪は痛みに身をよじる。
 例のPホテルの一件か。あれは鈴木には内緒にしておいたのに、どこから聞いたのだろう。
 ……当たり前か。鈴木は僕の中に住んでるんだから。僕のことなら何でもわかるんだ。

「あれは違うんだ。クスリのせいであんなことになっちゃっただけなんだ。鈴木のことを裏切ったわけじゃないよ」
「あの男に、全部許してもいいと思ってたくせに」
「思ってないよ。思うはずないだろ。僕が愛してるのは鈴木だけだよ」
「よく言うよ。あいつとのこと思い出して、オナニーしてたくせに」
「それは」
 あの体験を夢に見てしまって、ついそんな気分になって。でも、あれは本当に処理をしただけで、鈴木を思ってするときみたいに、相手とのセックスを想像したりしてない。
 
「仕方ないだろ。僕だって生身の男なんだから。そんな気分のときもあるんだよ」
「解ってるよ。だからオレが満たしてやろうって言ってんじゃん」
「やめろよ! 人前でするもんじゃないだろ!」
 薪は鈴木の腕を振りほどいた。これまで鈴木の求めに応じなかったことは、一度もない。でも、薪には他人の目に晒されながらその行為を行うなんて、絶対に耐えられない。

「奥の方に行こうよ。そこでなら」
「だめだ。ここでするんだ」
「鈴木。どうして今日はそんなに意地悪なんだよ」
「決まってるだろ?」
 ぐいっと髪の毛を鷲づかみにされて、身体を持ち上げられる。鈴木は背が高いから、爪先立っても届かない。痛みに耐えかねて鈴木の身体に縋る。鈴木が手を離すと、何本もの亜麻色の髪が地面に落ちた。

「おまえがオレを殺したから」




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Dさまへ

いらっしゃいませ、Dさま。
って、あれだけ警告したのに、読んじゃったんですね・・・・・・。
BL苦手なDさまには、つらかったんじゃ・・・・・。

> パスワード付きなので、鍵コメがよろしいですかね。

Dさまが、これを読んだ、という事実が、ここを見た方々にわかってしまう→人格を疑われる(笑)という危険性を恐れなければ、鍵はいらないと思います。(^^

> これは・・・薪さんの葛藤なのですね。

> この薪さんは、何というか、すごく欲望を抑制しているところがあるのでしょうか。一般的に薪さんは淡泊に解釈されていると思うのですが、しづさんの薪さんはことあるごとに罪の意識と一体になった欲望に襲われておりますね。

高尚な解釈、恐れ入ります。
そうです。
「深夜のバレンタイン」で独白していたとおり、うちの薪さんは、自分が人生を楽しんじゃいけない、と思い込んでいるのです。

> いや、罪の意識からわずかでも逃れるために、身体が欲を感じているのだと感じようとしているのでしょうか?

ああ、こんな解釈も。
Dさんは、本当に読み取り能力に長けてらっしゃる。

> 複雑な男心と身体が、とても良かったと思います。

ありがとうございます。
でも、本当は、Rは作者のシュミで、ただ書きたかっただけ い、いえ、なんでもありません・・・・・。

> ところで、BLって割とこんな風な感じなんですか? 
> はっはっは!

いえいえいえ!
みんなもっと、楽しくやりまくってると思いますよ!(実は、わたしもあまりBL読まないんです)
きっと、こんなにグロクなくて、もっと夢のようにきれいに書いてると思います。Kさんとか、MさんのRみたく、ウツクシイ世界です。
誤解のないように(笑)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Kさまへ

てへへ、またやっちゃいました(^^;
ありがとうございます。
なんか、こうやって連絡をくださる方がいてくれると、安心してアップできます。これからも面倒見てください。(笑)(←悪びれてない。)

M 『Kさまに頼ってないで、自分で気をつけたらどうなんだ、この低脳が』
くっ・・・・・今回だけは、脳内薪に言い返せない・・・・・。

> 4-(2)も高速ですが読みました。

あんなに、読まなくても大丈夫ですって、書いたのに(笑)
気持ち悪くて、大変だったと思います。ごめんなさい。

> 私が感じたことはほとんどruruharu様が書いて下さっています。
> (あ、でも私ドSじゃないです、特に薪さんに対してはむしろドM……あの冷たい目で睨まれたい)

そうなんですか?
へえ、薪さん好きな方で、Mの方、初めてです。わたしのサイトのお客様は、みーんなドS(笑)
あ、それなら、コハルビヨリさんのところのイラストで、『走れ』って、冷たい顔で言う薪さん、ご覧になりました?まだでしたら、ぜひリンクからどうぞ。

> 読み終わって感じたのは、どうしようもない位の切なさでした。
> 薪さんの気持ちを考えると泣けてきます。

表面だけ読んだら、グロイだけのあのシーンから、薪さんの心情を読み取っていただけて、とてもうれしいです。
ああ、伝わってよかった。

> でも、ラブラブだという二人の明日を信じてついてゆきますね。

ありがとうございます。
どうか、よろしくお願いします。うちのふたりを応援してやってください。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: