デート(6)

 前章を読まれなかった方の為に、内容をご説明します。
 もうグロイシーンは出てきませんので、安心してお進みください。


 薪さんは夢を見ました。
 すごくすごく、怖い夢でした。

 夢には鈴木さんが出てきて、薪さんが青木くんと昼間、楽しくデートをしたことをなじりました。
 鈴木さんはめちゃめちゃ怒っていて、青木くんが見ている前で薪さんを犯しました。
 薪さんは鈴木さんには逆らえないので、為されるがままでした。
 そんな薪さんに幻滅して青木くんが去っていくと、今度は貝沼の狂気の犠牲になった少年たちが出てきて、集団で薪さんを襲いました。(性的な意味ではなく暴行です)
 薪さんは40人もの人間の手で、バラバラに解体されて死んじゃいました。

 あれー、わたし、こんな残酷なこと書いたっけ……。(←書いたそばから忘れる)








デート(6)







 親友の写真を抱きしめて、海老のように身体を丸め込み、薪はシーツの中で震えている。

 今夜の夢は、ものすごく怖かった。ヨーゼフと遊ぶ夢が見られると思っていたのに、あんまりだ。
 どうしてこんな夢を見たんだろう。昼間はあんなに楽しかったのに。

 ……楽しかった、から?

 今日は青木と一緒に動物園に行って、大好きな動物たちの顔を見て、古い友だちのヨーゼフとも会ってきた。久しぶりに、心から笑えた休日だった。

 だから?

 薪は震える足でベッドから下り、部屋の明かりを点けた。
 明るくなった寝室で、薪はシーツについた血痕を発見する。ふと見ると、爪の先が血だらけだ。両腕には幾筋もの蚯蚓腫れができていて、傷口から血が流れている。

 胸に抱いた写真立てを両手に持ち替え、親友の顔を見る。
『なにチャラついてんだよ。人殺しのクセに』
 夢の中で、鈴木に投げつけられた刃のような言葉が、胸の痛みとともに甦ってくる。

「あれはおまえの本心なのか? それとも、僕が勝手に思い込んでいるだけなのか……?」
 鈴木は、とてもやさしい男だった。特に薪には、限りなく甘かった。
 こんな酷いことをするはずはないし、言うはずもない。だからこれはきっと僕の思い込みで、鈴木はそんなことを考えてはいない。
 わかっているのに、鈴木を信じているのに、どうしてこんな夢を見るんだろう。

 そういえば、と薪は過去の悪夢を思い出す。
 以前にも一度、こんなふうに鈴木に、嬲られる夢を見た。貝沼と一緒になって、薪を殺す夢だった。
 あれを見たのは去年の冬。やっぱり青木と過ごした日のことだった。その後も夢とは違ったけれど、あいつのことで鈴木に誤解されて。
 鈴木が怖い男になって夢に出てくるのは、決まって青木と何かあった日のことだ。これはどういうことなんだろう。
 鈴木は、僕が青木と過ごすのが、面白くないのだろうか。

『そんなにあの男とのデートが楽しみだったの?』
『あの男の気を惹きたかったんだろ』
『あの男に、全部許してもいいと思ってたくせに』
 そんなことは思っていないのに。僕が愛してるのは、鈴木だけなのに。

「あいつとは何でもないよ。おまえとはぜんぜん違うよ」
 薪の声は、空に飲み込まれた。
 言葉に出してみても、だれも答える者はない。虚しさが増すばかりで、つい涙があふれてくる。

 ……本当は解っている。
 鈴木の言葉は、全部薪のひとり芝居だ。自分の中にあいつに惹かれていく自分がいて、それを許せないだけだ。
 そいつは近ごろ増長してきて、薪は月に何度か青木と過ごすアフターを、楽しみにするようになった。頻繁に家まで押しかけてこられて、以前は迷惑だと思っていたはずなのに、最近は心待ちにするようになった。
 明日の準備だって、万全に整えてある。
 服だって選んであるし、今日とは違うアクセも用意した。
 半袖のTシャツとベストに、カーゴパンツでアクティブに決めて、腕には太目のシルバーのバングルを……どうしよう。この傷だらけの腕では、半袖は着られない。

 困った顔をした薪に、鈴木が呆れたように言う。
『おまえって頭いいのに、時々すげえバカみたいだ』
 そうだ。鈴木の言うとおりだ。長袖の服を用意すればいいんだ。
 外出用のシャツは何枚かあったはず。これから用意してアイロンをあてて――――。

『行かなきゃいいだろ』

「……やっぱり?」
 あはは、と薪は笑う。
 笑いながら、涙を流す。

 自分はゆっくり狂っていくのかもしれない、と薪は思った。









テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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読めました(*^-^)b

私事でご迷惑だと思っていたのに、優しいお心遣い本当に嬉しいです
ありがとうございます(*^-^*)
逆に、ご質問の答えですが、物理的に読めない状態ですね
携帯の画面表示可能な許容量を超えているみたいで、過去作「聖夜」も鈴木さんの『オレがあげた指輪どうした?』(文章曖昧ですみません)というセリフあたりから読めませんでした(>_<)

重ね重ねワガママ言ってごめんなさい

よかったです!(むぅさまへ)

ああ、よかった。
お読みになれたんですね。って、ここの節って、あの・・・・・・後悔されてませんか・・・・・?(びくびく)

> 携帯の画面表示可能な許容量を超えているみたいで、過去作「聖夜」も鈴木さんの『オレがあげた指輪どうした?』(文章曖昧ですみません)というセリフあたりから読めませんでした(>_<)

はい、こちらも後ほど分けますので、今しばらくお待ちください。
これからも、こういうことがございましたら、ぜひぜひ、お教えください。
わたしは本当に機械にはうとくて・・・・よろしくお願いします。

舞耶さまへ

こちらに拍手コメをいただきました、舞耶さまへ

とてもとても素晴らしい詩をいただいたので、こちらにコメントさせていただきます。
(拍手欄ではお返事しきれません(^^;))

>デート4~5を読んで感じたことです。

―――人は夢を見る。
生きながら死ぬ心の錆び付いた男も、夢を見る。 

向けられた眩しい微笑み、肩に乗せられた温もり。
懐かしい、愛おしいと思うには傷は未だ新しく、男は疲れ切っていた。

けれど記憶の中で絡める指から伝わった震えは海馬を中心として波打ち、意識を千々に掻き乱す。 

夢と言うものは覚えておく為に見るだとか、忘れる為に見るだとか、様々に聞いた。これほど克明に覚え続けなければならないものか、と微睡む意識の中で男は嘆く。

だが忘れたいとも思わない。
忘れられない。 
愛したことを。
殺したことを。 

今宵も良い夢を。
現実に絶望する為に。


・・・・・・・・・。
薪さんの絶望が、痛いくらい伝わってきます・・・・・なんて痛々しい薪さん・・・・・・(自分が書いてるときは、そんなことは考えない)

>記憶の中で絡める指から伝わった震えは・・・・・
という言葉があるので、これはうちの薪さんと考えていいのかしら、と思ったのですが、原作の薪さんにこそ相応しい格調高い作品だと思いました。
(うちの言動オヤジ中身お子ちゃま薪さんには、勿体無いです!(><))

きっと原作薪さんも、こうして眠れない夜を過ごされているかと思うと、心が苦しくなります。(いや、あそこまでハードな夢は見てないと思いますけど)
だれでもいいから、どんな方法でもいいから、薪さんに安らかな眠りを、と望んでやみません。(あ、でも、目隠しはちょっとイヤ・・・・)

舞耶さんは、創作活動をなさってらっしゃる方なんですか?
もしかしたらオフで詩や小説をかいてらっしゃるとか、ご自分のブログをお持ちとか。
昨日今日、文を書き始めたひとには思えない完成度なので、勝手にそう推測したのですが。
もしもブログをお持ちでしたら、教えていただけると嬉しいです(^^

感動的な詩を、ありがとうございました。
すごくすごく、うれしかったです!

(表に引用したことをご不快に思われましたら、ご連絡ください。すぐに編集させていただきます。
しかしながら、こんなに素晴らしい詩をわたしの拍手欄に置くのはあまりにも惜しいと。

すいません、ここからはわたしの勝手なお願いなので、困惑されるようでしたらスルーでお願いします。

舞耶さまがご自分のブログをお持ちでしたら、この詩はそちらに載せていただきたいです。差し支えなければ、みなさまにご紹介と、リンク張らせていただきます。
もしもブログをお持ちでなかったら、このブログの中で記事として紹介させていただきたいです。その際には舞耶様のお名前を出させていただくようになります。
胸に迫るような詩だったので、多くのひとに読んでいただきたいのです。どうか前向きにご検討ください)

お返事です

>原作の薪さんにこそ相応しい格調高い作品・・・
>感動的な詩を、ありがとうございました。
>すごくすごく、うれしかったです!

 しづさんの小説からイメージ(+自分の妄想)した薪さんをそのまんま文字にしただけだし、拍手文字数ギリギリで載せて迷惑だったかな・・・って思ってたんです。そんな喜んでいただけるなんて恐縮・・・というより満開(凄くの上級語)嬉しいです!!

>舞耶さんは、創作活動をなさってらっしゃる方なんですか?

 Noです。というより創作活動したことないし、気まぐれで移り気な性質なんでブログ運営できないです。

>昨日今日、文を書き始めたひとには思えない完成度・・・

 驚いてドリフのコント並みにズッコケました(笑)
 私は小説や詩より絵専門でして、この詩はしづさんの小説読みながらイメージした映像、その時の薪さんの心情など感じたことを単語で紙に書きまくり、それをどれだけ絵で表せるか生かせるかを考えてたついでに生まれたものです。
それをよさげに見えるよう並べただけで、そんな凄いもんでもないですよ~。

>もしもブログをお持ちでなかったら、このブログの中で記事として紹介させていただきたいです。その際には舞耶様のお名前を出させていただくようになります

 \(゜ロ\)(/ロ゜)/←声にできない喜び。ホンマええん!?こんな拙いアッパッパなネガティブ詩でええんやったら、名前でもなんでも紹介してつかーさい!ありがたや~今夜は赤飯じゃ~(あ、方言が…)

 最後に、言動オヤジ中身お子ちゃま薪さんでも私は大好きですよ?喜怒哀楽(花が咲くような笑顔がポイント)があり高根の花って感じがしなくて、いろんな側面が小説内で見られて人間味があり親しみやすいです。筋違いな勘違いが多いですけど可愛らしくて面白い。新人騒動や事件時の男っトコ前な大人なセリフや言動には何度も惚れた!って思いました。それに任侠を志とした男気がある岡部さんは、ゴリラ→オカン並みの寛容さ→大岡越前にランクアップするほど恰好いいと感じたし惚れました!青木は、青木は……

常に、人生崖っぷち
そこをあえてナナメ飛び
着地点なくても
気にしな~い。

青木に送るみやびな風、心染みいる不憫な歌。
妙に長いお返事失礼しました(>_<)お詫びにこの歌を送らせてくださいませ。

舞耶さまへ

お返事、ありがとうございます。
レスが遅くなって、申し訳ありません(><)

>  私は小説や詩より絵専門でして、この詩はしづさんの小説読みながらイメージした映像、その時の薪さんの心情など感じたことを単語で紙に書きまくり、それをどれだけ絵で表せるか生かせるかを考えてたついでに生まれたものです。

舞耶さんは、絵を描かれるんですね。
どんな絵なのかしら・・・・・拝見したいです!

詩はとっても素敵でしたよ!
わたし、詩は壊滅的なので、スゴイ!と思いました。
説明っぽく書く小説と違って、言葉の選び方が命、というか。誤魔化しが効かないので、その分、厳しいです。

記事にすることを快諾していただきまして、ありがとうございます!

>  \(゜ロ\)(/ロ゜)/←声にできない喜び。ホンマええん!?こんな拙いアッパッパなネガティブ詩でええんやったら、名前でもなんでも紹介してつかーさい!ありがたや~今夜は赤飯じゃ~(あ、方言が…)

すいません・・・・舞耶様、面白い方だったんですね(>∇<)(笑い転げた←失礼なやつですいません)


>  最後に、言動オヤジ中身お子ちゃま薪さんでも私は大好きですよ?

わーい、本当ですか?

>喜怒哀楽(花が咲くような笑顔がポイント)があり高根の花って感じがしなくて、いろんな側面が小説内で見られて人間味があり親しみやすいです。筋違いな勘違いが多いですけど可愛らしくて面白い。
そうですね。
うちの薪さんは高嶺の花じゃないですね。道端の雑草のように逞しいですね。
カンチガイは天才的ですしね。カンチガイ男爵とかって、あだ名までつきましたからね(笑)読者の方にあだ名で呼ばれる薪さんは、きっとうちだけでしょうね(^^;

>新人騒動や事件時の男っトコ前な大人なセリフや言動には何度も惚れた!って思いました。

ありがとうございますっ!
はい、うちの薪さんも仕事のときだけは、カッコイイんです!
プライベートはダメダメですけど(笑)

>それに任侠を志とした男気がある岡部さんは、ゴリラ→オカン並みの寛容さ→大岡越前にランクアップするほど恰好いいと感じたし惚れました!

嬉しいです!
岡部さんと雪子さんは、うちの二枚看板なんです!(って、おかしいだろ、そのあおまき小説)


>青木は、青木は……
>
> 常に、人生崖っぷち
> そこをあえてナナメ飛び
> 着地点なくても
> 気にしな~い。

すいません・・・・・舞耶さま、面白すぎです・・・・・ハライテー・・・・・。(^∇^)


> 青木に送るみやびな風、心染みいる不憫な歌。
> 妙に長いお返事失礼しました(>_<)お詫びにこの歌を送らせてくださいませ。

ありがとうございます。
きっとうちの青木くんも、泣いて喜ぶことでしょう。不憫(笑)

現在、ちょっと仕事が立て込んでおりますので、舞耶さまの記事のアップはもう少しお待ちくださいね(^^
ありがとうございました!!

Aさまへ

Aさま、こんにちは。

だから読んじゃダメって言ったのに。(笑)

青木さんと恋人同士になってからは、というか、
ラストカットで鈴木さんの気持ちが分かってからは、こういう夢は見なくなりましたので。 ご安心を。(^^


それと、あの件、解決されて良かったですね!
ずっと気に掛かっていらしたことと思います。 本当に、ああいうのは気が重くなるんですよね。 相手がいることですから・・・わたしにも経験があるので、よく分かります。

それにしても、その夢見は、虫の報せだったのでしょうか?
となると最近ご覧になられたというカマキリも、虫つながりで、危険予告かも、と一瞬思ったのですが、
古代中国でカマキリと言えば、多産の象徴。 結婚式のお祝いにはカマキリの卵が有難がられたとか。
だからきっと、いいことありますよ♪ 
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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