ビアガーデン(1)

 ギャグポイント、溜まりました。
 久しぶりに(?)オヤジのアホな薪さんが出てきます。
 笑っていただけたら嬉しいです。







ビアガーデン(1)











 この世にビールがなかったら、夏はもっとつまらないものになっていたに違いない。ビール党の青木は、夏が来るたびにそう思っている。

 青木は真面目な学生だったが、飲酒に関しては少しだけ素行不良だった。
 ビールの苦味を美味いと感じたのは、なんと中学2年のときだ。それから親に隠れて飲むようになり、自分の部屋で飲んでいた所を見つかって、めちゃめちゃ怒られるかと思いきや、父親が晩酌の相手が出来たとばかりに喜んで、一緒に嗜むようになってしまった。変わった親である。
 そんなわけで、青木のビール歴は11年。計算が合わないので、他人には内緒だ。

 どんな状況で飲んでも美味いビールだが、最高の一杯といったら、やはりビアガーデンではないだろうか。
 冷房の効いたホテルのバーで、グラスビールを品よく傾けるより、ムシムシした熱帯夜の暑い空気の中で、冷たいビールをジョッキでガーッと飲むのが美味いのだ。ビールは勢いが命だ。ちびちび啜ったのでは、飲んだ気がしない。

「ということで、ビアガーデンに行きましょう」
「……何が『ということで』なんだ」
 報告書の向こうから、思い切り不機嫌な声を返される。形の良い亜麻色の眉が、不味いものでも食べたときのように顰められる。
 相も変わらず、仕事中の室長はシビアだ。

「室長も連れて行くって、先輩たちに言っちゃったんですよ。いいじゃないですか。たまには付き合って下さい」
「僕は、騒がしいところは嫌いなんだ。軍資金は出すから、それで勘弁してくれ」
「お金は要りませんから、室長に来て欲しいんです」
「忙しいんだ」
 忙しいと言うが、室長の机を見るとそうでもない。いつもはこの広いデスクの大半が書類に埋まっているのに、今日は全体の5分の1くらいだ。しかも、至急扱いの赤いスタンプが押された案件は、ひとつもない。
 その常套句が、誘いを断る口実であることは明らかだ。ここはもう一歩、押してもいいだろう。

「今日は、オレの誕生祝なんですよ。なのに室長は、顔も出してくれないんですか?」
「雪子さんにでも声を掛けたらどうだ。彼女はアルコールさえ入っていれば、消毒用でも飲むぞ」
 すぐに雪子の名前を出してくるところを見ると、まだ例の件を諦めていないらしい。まったく、見かけによらず頑固なのだ。
「いいです。悪酔いしそうですから」
 しかし、粘り強さならこっちも負けない。
「お願いします、室長。ちょっとでいいですから」
「僕は、ビールはあまり好きじゃないんだ」
 取り付く島もない。
 が、このくらいで引き下がっていたら、室長の忠犬役は務まらない。

「じゃあ、ビールでなければ付き合ってもらえるんですね?」
「そうは言ってないだろ! なんでおまえはひとの言葉を、自分の都合の良いように拡張解釈するんだ」
「薪さんが好きだからに決まってるじゃないですか」
 当たり前のことを聞かないで欲しい。

「……そういうことを職場で言うな」
 青木のさらっとした告白に、はっとした目になって、薪は長い睫毛を伏せる。ほんのわずかだが、頬が赤くなっているようにも見える。
 このセリフは、いくらか効果があったようだ。
「すみません。でも」
「……ちょっとだけだぞ」
「はい!」
 薪のしぶしぶの承諾に、青木は満面の笑みを浮かべた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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