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ラブレター(1)

 今回のお話は、第九に女子職員が配属になるお話です。

 薪さんがちょっと辛い思いをしてしまうかも、です。
 そういう薪さんが見たくない方は、読まないでください。って、これ言ったら、だれも読んでくれる人がいなくなるっ!!(わたしだって見たくないです!)

 ううう……すいません、でも、ちょっとだけだと思うので。(←すでに信用ゼロ)
 お許しいただける方のみ、お進みください。
 よろしくお願いします。






ラブレター(1)







 深夜のダイニングで、青木はコーヒーを淹れている。
 白を基調とした広いキッチンには、最新型のコーヒーメーカーが設置されていたが、もちろん青木はそんなものは使わない。彼ほどの技術があれば、手引きのミルとドリッパーのほうが、メーカーよりはるかに香り高く、美味しいコーヒーが淹れられる。

 リビングのソファでコーヒーを待っていたはずの上司が、いつの間にか隣に来ている。
 青木はこの度、晴れて薪専属のバリスタに任命された。
 よって、時計が夜の11時を回ろうというこんな時刻に、コーヒー好きの薪のために彼の家まで来て、ケトルを握っているというわけだ。

「もう少し、かかりますよ。ソファに座ってたらどうですか?」
 パジャマ姿の薪は、今日もとても可愛くて、青木はドリッパーに注ぐ湯量の調節を間違えてしまいそうだ。これが狂うと、コーヒーの味は落ちてしまう。青木は薪の姿を目に入れないようにして、ケトルから落ちるお湯の量に集中した。
 最初の注入が終わり、20秒ほど待つ。腕時計の秒針とドリッパーの中身を見比べつつ、次にお湯を注ぐポイントを見定める。

「薪さん?」
 気が付くと、ケトルを持っていた青木の手に、薪の手が重ねられている。薪が自分から青木の手に触ってくれるなんて、どうした風の吹き回しだろう。
「大きくても器用だよな。おまえの手って」
「ミルとドリップだけは、練習しましたから。他のことはそうでもないです」
 2度目の注入をしなければならない頃合だが、薪の手を自分から払うなんて、そんなことはもったいなくて、とてもできない。

「そんなことない。こないだだって……とっても上手だった」
 薪の言葉の意味を図りかねて、青木は首を傾げる。
 まさかと思うが、Pホテルの一件だろうか。あのことは薪も早く忘れたいだろうと、青木としては気を使って、これまでは一切触れないできたのだが。

 薪は両手で青木の手を掴み、自分の口許に持っていった。つややかなくちびるが色っぽく開いて、青木の指を咥える。
「この手が、忘れらないんだ」
 ちろちろと人差し指を舐められて、青木はゾクゾクするような快感を味わう。チュッと吸い上げられ、舌を絡められると、いやでもあのときのことが思い出される。
 薪の両手に左手を重ねて、その美貌に顔を近づける。亜麻色の瞳は熱を帯びて、彼の欲望をほのめかす。

「この前と、同じことをして欲しいんですか?」
 薪は恥ずかしそうにうつむいて、首を左右に振った。
「今日は……僕を全部、おまえのものにして」
 蚊の鳴くような声でそう言うと、青木の胸に飛び込んでくる。華奢な身体を抱きしめて、青木は薪のくちびるを捕らえる。
 パジャマを脱がせて裸身を露わにし、きれいな首筋から鎖骨に舌を這わせる。
 パジャマのズボンの中に右手を滑り込ませ、やわらかな尻を楽しんでから、前のほうに手を回す。薪の口からはあのホテルで聞いた、悲鳴のような喘ぎ声がピピピピと――――。

 ……ピピピ?

「あ~、ちくしょう! なんであと5分待てないんだよ、おまえは!!」
 青木の枕元で軽い電子音を響かせる小さな目覚まし時計は、謂れのない非難を受ける。この時間にアラームを鳴らすよう時計に命じたのは、自分の持ち主だったはずだが。
「ぜったいに夢だと思ったんだよ」
 青木は枕に突っ伏して、頭を抱える。ううう、と声にならない呻き声がその口から洩れた。

 何度目だろう、この夢。もう2桁は見てる。
 こんな夢を見ていることが薪に知れたら、また警戒条例が発令されてしまいそうだ。が、夢の内容を操作することはできないし、男の事情はもっとどうにもならない。
 どうにもならないが、今日はこっちは冷たいシャワーだ。岡部が道場で待っている。青木の鍛錬に付き合ってくれる先輩を待たせるなんて、申し訳ないことはできない。

 冷たいシャワーで寝汗と劣情を洗い流して、青木はトレーニングウェアに着替える。
 昨年の昇格試験が終了した頃から、青木は自主的に身体を鍛え始めた。以前、薪と一緒に走ったとき、2キロも持たずにへばってしまったからだ。
 警大では体力よりも知力を求められた為、持久走も武道も力を入れてこなかった。
 ところが、青木の上司が部下に求めるものは、『体力と根性』。個人的な事情からも彼に認められたい青木は、早朝の筋力トレーニングを自分に課したというわけだ。

 今年の1月頃から、岡部は青木に柔道の手ほどきをしてくれるようになった。
 青木も柔道は習いたかったのだが、練習の時間が定まらないのがネックになって、民間の道場に通えずにいたのだ。岡部は柔道5段剣道4段の猛者だ。教え方も懇切丁寧で、ポイントを抑えている。師匠にはもってこいの人物だ。
 何ヶ月かやってみて判ったのだが、背の高い青木は、柔道には向いていないらしい。いくら岡部がコツを教えてくれても、青木にはどうもうまくできない。
 その代わり、剣道には些少なりとも才能があると言われた。青木としては武器を持たずとも身を守れる柔道のほうをマスターしたかったのだが、これは体格的な問題なので仕方がないと諦めることにした。本音を言うと、黒帯の薪と組み合ってみたかっただけなのだが。
 そんなわけで岡部には、火曜と木曜の朝7時から、警視庁の道場で1時間ほどの指導を受けている。今日は火曜日だから、柔道のほうだ。道着をディパックに詰めて背中に背負い、アパートから第九まで2キロの距離をジャージ姿で走る。こうすれば通勤と同時にウォーミングアップを済ませることが可能だ。仕事用のスーツとワイシャツは、第九のロッカーに入れてある。

「よし、行くぞ!」
 掛け声と同時に、気合を入れる。
 6月も終わりに近づいて、暑さの増してきた霞ヶ関の街を、青木は軽快に走りぬけた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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