23日目の秘密(3)

23日目の秘密(3)







 薪がやっとの思いで報告書を仕上げ、田城の許可を得て帰途についたのは、朝の9時だった。3週間以上家に帰っていないことを知ると、田城は薪に3日間の休暇をくれた。
 後の段取りを岡部に伝えて、溜まった洗濯物や家から持ってきた資料を段ボール箱に突っ込んで研究室を出ようとすると、岡部が車で送ってくれると言う。荷物もあることだし、何よりとても疲れていたので、素直に甘えることにした。
 車で待っててください、と言われて助手席に座った途端、どっと疲れが出て眠り込んでしまった。気が付いたら家の前だ。

 何故か青木に揺り起こされた。
 いつの間に、岡部から青木になったんだろう。確かこいつは、今日から試験のための休暇に入るんじゃなかったか。

 低血圧者特有の寝起きの悪さで、薪の機嫌はすこぶる悪い。頭は重いし、足元はふらふらする。起き抜けには真っ直ぐ歩けない。薪の血圧は、体調が良いときでも上が95。今は多分80を切っている。
 青木の腕が自分を支えてくれるが、それは室長のプライドをいたく刺激する。
 岡部ならまだしも、青木はまだ24歳だ。一回りも年下の若造に手を借りるのは、何だか面白くない。自分が両手でなければ持てなかった段ボール箱を、小脇に抱えているのも癪に障る。人間でかけりゃ良いってもんじゃないぞ、と青木には罪のないことでいちゃもんをつけておいて、階段を昇る。部屋は2階だ。

 このマンションは、セキュリティー重視で選んだ。玄関のロックは瞳孔センサー方式である。第九の室長には、様々な思惑からの嫌がらせも多いからだ。
「ご苦労だったな。ここまででいい」
「いえ、今日は薪さんの手伝いをするようにと岡部さんから言われてますから」
「なに言ってるんだ、おまえ。昇格試験の勉強はどうした。もう1週間もないんだぞ」
 青木を家に上げるつもりはさらさらない。予告してから来てくれれば別に構わないのだが、今日はだめだ。
「じゃ、この荷物だけでも。かなり重いですよね、これ」
 それは確かに苦労しそうだったが。

「……玄関開けるから、息止めてろよ。間違っても鼻で呼吸するな」
「はあ?」
 大きく息を吸い込んで肺の中に溜め、鼻と口にハンカチを当てて、薪は玄関の扉を開けた。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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