ラブレター(3)

 窓際に飾った百合の花が、満開になりました。
 百合の香が部屋中に満ちて、とてもロマンチックです。
 Mひろさんのところのヒメゴトの絵のよう。(^^
 わたしもあんなふうに、美しいお話が書きたいです。





ラブレター(3)







 第九の職員全員が待ち焦がれた人事異動が行われたのは、7月の最初の日だった。
 鬼の室長が異動になった―――― のでは、もちろんない。
 待望の女子職員である。

「横川みどりです。よろしくお願いします」
 岡部の紹介を受けて、彼女は第九の面々に丁寧にお辞儀をした。
 ゆっくりと顔を上げ、にっこりと微笑む。その笑顔に職員たちは、たちまち骨抜き状態になった。
 薄茶色の大きな目に、ピンクの口紅が良く似合う小さなくちびる。白いふっくらとした頬が、つつきたくなるくらいかわいい。
 明るい栗色の巻き髪をポニーテールにまとめて、大きなピンクのリボンをつけている。身長154センチの小柄な体つき。お世辞にも肉感的とは言えないが、そこがまた愛らしさを強調する。
 笑った顔が、たまらなく愛くるしい。
 美人は見慣れている職員たちだが、薪の美貌はどちらかというと『きれい系』だ。かわいい女の子がこれほどまでに自分達の心を沸き立たせてくれるとは。

 彼女をぐるりと取り囲み、職員たちは口々に彼女への賞賛を述べた。
 男ばかりのむさくるしい研究室に、潤いを与えてくれる若い女の子。しかも美人と来れば、言うことはない。
「みどりって、可愛い名前だね。君にぴったりだね」
「本当にかわいいよね。女優の×由○子に似てるって言われない?」
「ばっか、みどりちゃんのほうがずっと可愛いって」
「ね、恋人いるの?」
「今井! おまえ、彼女いるくせに何聞いてんだよ!」
「いいだろ、聞くくらい」
「ふざけんな! 彼女持ちはみどりちゃんの半径1m以内に寄るな!」
「……おまえら、いい加減にしとけよ」

 岡部の重低音の凄んだ声が響いて、第九の職員は口を塞いだ。
 しかし、彼らが色めき立つのも無理はない。たしかに、みどりは魅力的な女性だった。
 今まで第九を訪れる女性といえば、法一の三好雪子女史ぐらいのもので、彼女は美人でスタイルもいいのだが、可愛らしいとはお世辞にもいえない。豪放磊落という形容詞がぴったりで、しかも薪と同い年だから……いや、女性の年の話はやめておこう。

「あれ? 室長は?」
 新しい仲間の挨拶の席に、室長の立ち会いがないことに気付いた曽我が、不思議そうな顔になる。職員の紹介は本来は、室長の仕事だからだ。
「仮眠室だ。昨日徹夜だったから」
「いえ、風呂です。オレ、用意しましたから」
 今年入った新人が全員辞めてしまったため、新人の仕事を継続中の青木が、岡部に室長の居所を教えてくれた。
 徹夜明けの薪が眠ったのは朝の6時ごろだったから、3時間弱の睡眠で起きてしまったことになる。相変わらず無茶をするひとだ。岡部と交代してくれる気で早く起きたのだろうが、風呂から上がったら、あと2時間は休ませなければ。

「横川さん。少しここで待ってて……あれ?」
 岡部が横を見ると、すでに彼女の姿はない。
「横川さんは?」
「黙って出て行っちゃいましたけど」
 まさかと思うが、早くも逃げ出してしまったのだろうか。
 可能性は、ゼロとは言えない。
 周りを何人もの男に囲まれて、団体で口説かれたのだ。純情そうな娘だったから、一時的にパニックになってしまったのかもしれない。

「おまえらが、あんまりワイワイ騒ぐから」
「岡部さんが恐い顔するからですよ。びっくりして逃げちゃったんですよ」
「そうですよ。なんでそんな、コワイ顔なんですか?」
「悪かったな!」
 岡部の顔はたしかに怖い。
 警察官というより、完全にヤクザだ。何人か殺してる感じだ。
 短くて固い頭髪と、狭い額。細い眉と目の間はひどく狭くて、捜査官特有のキツイ目をしている。ボクサーのように曲がった鷲鼻と、薄い唇に無精髭。
 しかし、筋者にしか見えないこの男が、美貌の室長より遥かにやさしくて気配りが上手な人格者だと、第九の人間なら誰でも知っている。部下からも上司からも人望の厚い彼は、警部でありながら、今年の春第九の副室長に就任した。

「青木、横川さんを探して」
「きゃ―――っ!!」
 一番年が若くて人畜無害の顔をしている職員に、彼女の探索を依頼しようとした岡部の言葉は、女性の甲高い悲鳴に遮られた。
「女性の声ってことは、みどりちゃん?」
「どうしたんだろう。――― って、うわわっ!!」
 小池の驚愕は、モニタールームに駆け込んできた人物に向けられたものだった。

「お、女の子が、ロッカールームにっ!」
 薪の姿を見て、第九の捜査官たちは、彼女の悲鳴の理由を知った。
 一糸まとわぬ素っ裸。よほど慌てていたのか、手にネクタイを持っている。髪を乾かしたばかりとみえて、前髪が全部額に落ちた幼い顔になっている。
 薪は風呂から上がった後はいつも、身体の湿気が飛ぶまでロッカールームをはだかでウロウロしている。その状態で、彼女と鉢合わせしてしまったのだろう。

「し、室長っ!」
「ああああ!」
「見たいけど見たくなかったのに!」
「せめて後姿ならって、そうじゃなくて!」
 この部屋で薪のはだかを見るのは、これで二度目だ。しかも今日は、腰タオルもつけていない。おかげでモニタールームは大恐慌だ。
「……青木。毛布持って来い」
「はい……」

 岡部は新しく配属された女子職員の不幸に、心を痛める。
 配属の初日から、何人ものムサイ男に囲まれて、セクハラまがいの言葉を投げつけられた挙句、あろうことか彼らの上司からは、ワイセツなものまで見せられて。

 こりゃ、今日にでも辞めちまうかもしれない。

 救いようのない上司と部下たちに、岡部は大きくため息をついた。





*****


 アホだ……アホばっかだ、この話。
 百合の花、何の役にも立たねえ(笑)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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やってしまったか・・・(@@;

しづさま

素っ裸でうろうろしているから、いつかはやるだろうと思っていましたよ。小柄痩せ気味なのは良いとして、ポニーテールにピンクリボンとは如何なる女でしょうか? 今のところ、可愛い可愛いと言われているけれど、年齢は不明ですね。

薪さんが辛い思いをってことは、薪さんと恋仲になるわけではなさそうですね。青木くんラブですか? (^^)  それならいいや。どんどん行けー!! 

いやいや、女って結構しぶとい生き物ですからね。きゃーとか言ったのも最初だけで、次は室長を風呂から引きずり出すかもしれませんよ。

それにしても、ロッカールームって1つしかなかったんですか? 彼女はなんのために、そんなところへ? この女、案外食わせ者かもしれんな。ふっふっふ・・・なんちゃって(@@

ああ、薪さんも、もう、おムコにいけませんね。行く気なさそうだから、まあいいですけど。
あ、薪さんのつらい思いって、「見られちゃった、見られちゃった・・・」ってショックですか? あははははははははバキっ! ・・・室長に殴られました。

しづさん、第九をもっと恐慌に陥れてくださいね♪

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イプさまへ

いやっしゃいませ~、イプさま。
第九のロッカールームへようこそ(笑)

> 素っ裸でうろうろしているから、いつかはやるだろうと思っていましたよ。

やっぱり?
これがやりたくて、そういう設定にしたんです。
もー、笑いを取るためなら、彼にはどこまでも崩れてもらいます(ヒドイ)
だって、ギャグ小説だもん。(^^

>小柄痩せ気味なのは良いとして、ポニーテールにピンクリボンとは如何なる女でしょうか? 今のところ、可愛い可愛いと言われているけれど、年齢は不明ですね。

常識も良識もない女だと思ってください(笑)
年は・・・・・26,7だったかな・・・・・。(すでにうろ覚え)

> 薪さんが辛い思いをってことは、薪さんと恋仲になるわけではなさそうですね。青木くんラブですか? (^^)  それならいいや。どんどん行けー!! 

うふふ。
先のお楽しみです(^^

> いやいや、女って結構しぶとい生き物ですからね。きゃーとか言ったのも最初だけで、次は室長を風呂から引きずり出すかもしれませんよ。

あはははは!
それ、面白そう。書けばよかった(笑)

> それにしても、ロッカールームって1つしかなかったんですか? 彼女はなんのために、そんなところへ? この女、案外食わせ者かもしれんな。ふっふっふ・・・なんちゃって(@@

ぎく(--;)・・・・・なんちゃって。
深読みしてください♪

> ああ、薪さんも、もう、おムコにいけませんね。行く気なさそうだから、まあいいですけど。
> あ、薪さんのつらい思いって、「見られちゃった、見られちゃった・・・」ってショックですか? あははははははははバキっ! ・・・室長に殴られました。

そうです、それです!
「見られちゃった」です。
みなさん警戒しすぎなんですよ(←白々しい)

きゃん、うちの薪さんが乱暴な真似を!
申し訳ありません、イプさん。仇はとりますからね!

> しづさん、第九をもっと恐慌に陥れてくださいね♪

はい、よろこんで!
室長ともども、地獄に叩き込んであげましょう!!(←追放だな・・・・決まったな・・・)

Mさまへ

Mさまの寛大なおこころと、的確な判断に感謝いたします。

あとでまた、Mさまのブログにお邪魔しますね~!

Wさまへ

いらっしゃいませ、Wさま。

相も変わらず、鋭いです!
もちろん、雪子さんも絡んできますよ~~!

> ところで前回、おいしい目にあってた竹内・・。
> 今まで「竹内、本当はいい奴なのに可哀そう」と思ってましたが、よく考えたら本当はいい奴だろうとあそこまで男のプライドをズタズタにされたら(女装の件)、許せるかどうかは別問題ですよね!!(>_<)

そうですね。
女装も、第九への誹謗も、許せなかったんです。
うちの薪さんは、とっても狭量で。しかも思い込みが激しいもんだから、いつまでもその恨みを忘れないんです。友だちになりたくないタイプです(笑)

> 大げさなたとえですが、薪さんにあんな格好させるなんて女の子を五分刈りにするぐらいの酷い仕打ちやったのかも・・・。(後の被害の大きさが全然違うけど)
> もう竹内なんて可哀そうなままでいいです(鬼)。

はい。
かれはずっと、可哀相なままです(さらに鬼)

> それから・・・
> 最近「薪さん元ヤン疑惑」が浮上して困ってるんですが・・・。
> 「新人騒動」の時も『あん?』って言ってましたよね・・・。実は高校時代裏番はってたり・・・?

あはははは!
これっ、考えつくの、たぶんWさんだけだ!

うちの薪さんは、中身は普通の男のひとなので、なるべく普通の言葉を喋らせるようにしてるんです。TPOに合わせて、仲間内くらいは、ね。

コメント、ありがとうございました!
またのご来訪を、お待ちしております!

Aさまへ

Aさま、こんばんは。(^^


> 天地さん以外の女子職員が入るとは!しかも、薪さんより小さくて可愛らしい女性。
>
> 超いや~な予感がします(><)

ふふふふー、今回は核爆弾ですー。
彼女の正体はですね、………お楽しみにっ。(>∀<) ←楽しそう。



> ああ、でも薪さんは全裸を女性に見られて恥ずかしくないのか!?

恥ずかしいですよ~。
だから驚いてモニタールームに駆け込んできちゃったんですよ。 でも、右手にネクタイ握り絞めて全裸って、どう考えてもギャグ……我ながらアホなこと書いてるなあ。(--; 


> みどりは全裸を見たのに女の子に見えたの?ああ、なんかむかつく~~!!!

いえ、ちゃんと薪さんを男の人だと認識してますよ。
薪さんのハダカを見た女の子ですからね、ムカついていいですよ。 てか、この先、殺したくなっちゃうかも~。(笑)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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