ラブレター(10)

 今日から新盆に入ります。(今日はお坊さんが来ます)
 準備やら何やらで、更新が遅くなってしまいそうです。
(昨日いただいたコメのレスも未だでごめんなさい! でも、コメレスは大好きなので、じっくり考えて書きたいし、まとまった時間が取レてから……すいません!)

 次の章まで推敲が済んでいるので、それを明日の朝アップして、2日ばかりお休みをいただきたいと思います。ちょうどみなさん、夏コミですし。
 お話の途中で申し訳ないのですが、どうか、ご了承ください。m(_ _)m


 それと、昨日(8/11)に、たくさんたくさん拍手をくださった方、ありがとうございました!
 初めのころから読んでいただいてるみたいで、記事ごとに1つずつ拍手が増えてたから、一人の方だと思うんですけど、
 とっても励みになります!!
 自分で書いててなんですけど、うちのお話は、規格外と言うかズレてるというか。 オヤジでお子ちゃまの薪さんに、ヘタレの青木くん。カッコイイのは雪子さんと岡部さん、ってどーゆーあおまき小説?
 薪さんを愛してる方には、読みにくい話なんじゃないかと思うんですけど、それを寛大に許してくださって。「秘密」を愛してる方々は、本当にやさしい方ばかりですね。(^^





ラブレター(10)






 岡部が給湯室へ行くと、失業中のバリスタが商売道具を片付けていた。
 シンクの前に立っている長身の横から、ボーンチャイナのマグカップを突き出し、中に残っていた液体を捨てる。青木がそれに気づいて、岡部を不満そうに見る。
「オレは、岡部さんのためにドリップしたんですよ。室長のお気に入りのブレンドを試してみたい、って言うから」
 薪のマグカップを持ってきたことから、岡部の行動を見抜いたらしい。
 青木はバカではない。目の付け所もいいし、カンもいい。もう、新人ではないのだ。
 第九の仲間たちも、それを認め始めている。青木をバカだと思っているのは、薪ぐらいのものだ。

「飲んださ。泣くほど美味かったぞ」
「なんですか、それ」
 パチクリと瞬きをする後輩にマグカップの洗浄を任せて、岡部は研究室に戻った。
 さすがに岡部も、本当のことは言えない。青木も信じないだろう。
 コーヒーを飲んだくらいで、あの薪が泣くなんて。

 薪は、かなりのところまで追い詰められている。精神的な均衡を崩し始めているのだ。
 ここまで薪のこころを乱すのは、あの事件のことをおいて他にはない。もしかするとみどりは、あの事件と何か関わりがあったのかもしれない。
 みどりは不正規職員なので、細かい個人情報は人事部のデータバンクにはない。ただ、警察にパートタイマーとして雇われる人間というのは、以前ここに勤めていたものが殆どだ。職務内容からも機密漏洩の観点からも、経験者がベストなのだ。
 あの事件に関わっていたとしたら、2年前までは警察に勤務していた可能性が高い。人事部で個人データを何年保存しているかは知らないが、調べてみる価値はある。

 薪に『おまえには関係がない』と言われてしまったが、とても放っておけない。
 世話焼きでお節介。それは自分の欠点だと解ってはいるが、持って生まれた習性は、なかなか直らない。薪に関しては、改める気もないが。
 あのひとを放っておいたら、どこまで落ち込んでいくかわからない。薪は墓穴を掘るのが得意だが、今回は地球の裏側まで突き抜けていきそうな勢いだ。

 一日の職務が終わった後、岡部は第九を出て研究所の管理棟に向かう。
 目的の場所は、警察庁警務部人事課。警視庁と並んだ建物は、研究所の管理棟と地下通路で繋がっていて、徒歩5分で辿り着くことができる。

 過去の人事は、研究所内のデータベースにはない。人事部の端末でないと、引き出すことができない。一般の職員にはデータの閲覧は認められていないが、副室長の役職に就き、人事権を持った岡部にはそれが可能だ。

 人事部で閲覧簿に氏名を記入していた岡部は、意外な人物と顔を合わせた。第九の女子職員、自称薪の恋人である。
 部長室から出てきた彼女を見て、受付の女性が嫌悪感を露わにする。閲覧簿に顔を伏せてその場をやり過ごした岡部は、みどりがいなくなると同時に探りを入れることにした。

「相変わらず間宮部長の周りには、美人が多いんですね」
「ああ、さっきの娘ね」
「いいえ。あなたのことですよ」
 女性の口を軽くするには、まずは褒めることだ。受付の女性は少しトウが立っているようだが、実際なかなかの美女だ。
「俺ぐらいの年になると、女性を見る目も肥えてきましてね。外見も大事ですけど、知性とか女らしさとか、全部備わっていないと、美人とは思えなくなってきて」
 ウソとおべんちゃらは苦手な岡部だが、必要とあらばこんなことも言えるのだ。捜査官には、演技力も必要だ。

 そんな、あたしなんて、とまんざらでもない様子の彼女は、岡部の質問にすらすら答えてくれた。
 彼女からの情報によると、みどりは今年の3月くらいから間宮のところに出入りしていると言う。4ヶ月も前から警務部長と知り合いだったということは、もしかすると第九への人事も、彼女の希望を間宮が叶えた形になったのかもしれない。
 岡部の賞賛(オダテ)がよほど嬉しかったのか、彼女は人事データの引き出し作業までしてくれた。人事部のデータバンクに残されている過去データは10年分。2年前の8月までの間に『横川みどり』の名前でヒットした女性は21名。その中で7名の女性が現在臨時職員として勤務している。
 しかし、彼女が画面に引き出してくれた7枚の履歴書の中に、第九の天使はいなかった。同姓同名の別人ばかりということだ。
 こうなったら、間宮から事情を聞き出すしかない。
 どこか人気のない場所に呼び出して力ずくでも、などと物騒なことを考えていた岡部の肩を、当の本人が気安く叩いてきた。
 
「やあ、岡部くん。人事部へようこそ」
 めちゃくちゃ機嫌がいい。気分が良くなることを、彼女としたところなのかもしれない。

 間宮は右手に白いカードキーを持っている。数字が見て取れるから、多分ホテルの部屋の鍵だ。それを見ながらニヤニヤしている。
 今からその部屋で、だれかと会う約束でもしているのだろう。それで機嫌がいいのだ。

「さっき、うちの女子職員が、あなたの部屋から出て行くのを見ました。彼女とはどういう関係なんです?」
「彼女とは、君が思ってるような間柄じゃないよ」
 白々しい言い逃れだ。みどりのような愛くるしい女性に、この男の食指が動かないはずがない。しかし、岡部の予想は外れた。
「俺は、作り物には興味ないんだよ」
 間宮は岡部を自室に招き入れると、さらりと彼女の秘密を暴露した。その事実に、岡部は驚愕する。
 みどりは整形手術を受けている。ではこの7人の中に、やはり彼女はいるのか。

「この娘だよ」
 協力的な態度に感謝すら覚えて、岡部は間宮が指した一枚の履歴書を見た。こんなふうに素直に喋ってくれれば、殴る気などない。
「いくら今の顔がきれいでも、元の顔がこれじゃね。そこへいくと薪くんは完璧だよ。顔から身体から、感度の良さや喘ぎ声まで。彼は最高だよ」
 ……やっぱり殴っておこう。情報を全部絞った後に。

 その書類を見て、岡部はあることを思い出した。
 みどりは書道を習っていると言っていたが、特技欄には確かに書道3段の記載がある。
 それをみどりから聞いたときの記憶が戻ってきて、岡部は憂鬱な気分になる。
 実はあの後、水谷副室長に連絡を取ったのだが、彼の誤解の根は深く、岡部の必死の弁明を本気にしてくれなかったのだ。懇親会まであと3週間。それまでには、皆に真実を知らせなくては。

 そういえば、あれ以来薪は、そのことについて岡部に何も言ってこない。
 薪は、水谷副室長の誤解に気付いたはずだ。
 室長会の懇親会のこともメモにあったのだから、火元は岡部だと解りそうなものだ。それなのに、あの薪が岡部に事情も聞いてこないなんて。聞かれても困るから自分からは言わずにいたが、何事にも抜け目のない薪らしくない。

 だが。
 よくよく思い出せば、あの時の薪は、様子がおかしかった。自分が日本舞踊の名手だとの誤解を受けていることに青ざめていたのではなく、もしかしたら。
 みどりのメモの内容ではなく、メモそのものに驚いていたのではないだろうか。

 あれは第九に備え付けの、普通のメモ用紙だった。紙に特徴がなければ、残るは文字だ。現物を見たわけではないから、暗号めいたものが書かれていたとしたら岡部にはお手上げだが、考えられる可能性があとひとつだけある。
 それを確かめるのは難しいし、倫理に反することだ。しかし、薪に訊いても本当のことは言わないだろう。

 岡部は第九に戻った。
 研究室では職員たちが、岡部を待っていた。みどりを薪に奪られた残念会をやるから、一緒に来ませんか、と言われた。
「俺は初めから人数に入ってなかったんだろ?」
 以前、言われた皮肉を返してやると、小池はバツが悪そうに頭を掻いた。
「室長は? もう帰ったのか」
「ええ。ついさっき」
「青木は?」
「さあ。カバンがここにあるから、まだ研究所のどこかにいると思いますけど」
「そうか。俺は今からやることがあるから。残念会は、おまえらだけで行って来い」

 飲み会の誘いを断り、岡部は室長室へ入っていった。
 そんな岡部に、職員たちは去年までとの違いを感じる。やっぱり、副室長という役職は大変なのだ。
 セキュリティを副室長に任せて、職員たちは研究室を出た。行きつけの『どんてん』まではゆっくり歩いて15分。道すがら、話す話題はやはりみどりのことだ。
 
「あ~あ。結局、薪さんのものかあ」
「しょうがないよ。あのひとが相手じゃ。勝ち目ないって」
「みどりちゃん、初めから室長狙いだったもんな」
「そうそう。青木のこと、やったら敵視しててさ。あれってヤキモチ妬いてたんだろ。薪さん、青木のこと気に入ってるから」
「気に入るって言うのか、あれ」
「あんなに苛められるんだったら、俺はこのままでいいな」
「うん。俺たち、青木みたいに神経太くないから。とても耐えられないよ」
 上司の覚えがめでたいのは普通なら歓迎するところだが、第九には一般の常識は通用しない。特に、薪には当てはまらない。普通という言葉がこれほど似合わない男はいない。
 
「みどりちゃんと付き合いだしたら、薪さんも丸くなったよな。青木のこと、苛めなくなったし。やっぱり彼女の存在って大きいのかな。……でもさ」
「薪さんらしくないんだよな」
 太い首を捻って、曽我がずっと気になっていたことを口にする。それは曽我だけでなく、第九職員全員の疑念だった。
「おまえもそう思う?」
「みどりちゃんと付き合いだしてからの薪さん、妙に元気がないんだよな」
「あれが、彼女ができたばかりの男かね」
「青木をかまってた時のほうが、数段生き生きしてたよな」
「仕事中は、顔に出さないようにしてるのかもしれないけどさ。それにしたって」

 彼らの気分そのままに、職員たちの歩調は次第にゆっくりになる。せっかくの週末に、こんなつまらない気持ちで店の暖簾をくぐるなんて。
 今日の題目「残念会」に相応しい表情で、職員たちは店の中に入っていった。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Wさまへ

こんにちは、Wさま。

> 今日からお盆休みでアフォガードアイスをお供に、
> 家におります。けっして会社でコメを書いてるわけではありません!!

アフォガード(笑笑)
はい、わたしの話は、会社では読まないほうがいいです。
でないと、今度はアイスを吹きますよ(^^;

> いきなりですが、しづさん 凄い です・・。
> 幾重にも張り巡らされた伏線が・・・(°Д°;;)))
> そうでした!!薪さんの様子が急に変わったのは、あのメモからでした!!
> 岡部さんを外させたり、セクハラ疑惑のフォローしたり・・・・。
> 気付かなかった・・・てっきりラウンジから何かがあったのかと・・・。
> あのメモに書かれていたのはもしかして・・・。アレ・・・?

うふふふふ。
わたし、こんな風にフェイクを入れるのが好きなんです。
もともと、このメモのシーンのカモフラージュのために、「新人騒動」で岡部さんを副室長にして、室長会に引っ張り出したんです。

> そしてそもそもなぜ彼女が都合よく、第九に来たのか・・・。
> 間宮も誘惑したのかなと思ったことこもありましたが、まさかこう来るとは夢にも・・。

す、鋭いです・・・・・Wさん、さすが・・・・・。

> そして岡部さんの推理力と演技力すげえ・・・(@_@;)
> 惚れ直しました!!!!(>_<)

そりゃあ、もう!
うちでカッコイイのは、岡部さんと雪子さんですから♪(あおまきすとを名乗るな、って抗議がきそう)
今後のふたりの活躍に期待してください(^^
(って、主役のふたりは?(笑))

> >間宮は右手に白いカードキーを持っている。数字が見て取れるから、多分ホテルの部屋の鍵だ。それを見ながらニヤニヤしている。
> 今からその部屋で、だれかと会う約束でもしているのだろう。それで機嫌がいいのだ。
>
> (°Д°;;))))ガクガクブルブル ガクガクブルブル
>
> あべしっ 
>
> °(   )° ぱーーんっ
>   Д
>
> ま、ままままままままま
> まさか・・・まさか・・・・  (°Д°;;)~  ~  ←抜け毛
>                        ~

あああ!
Wさんの美しいおぐしがっっ!!

(しかし、この顔文字を出してしまったら、お名前をイニシャルにしても、なんの意味もないような・・・すいません。
だって、面白いんだもん。(^^;))

と、ここまで引用しておきながら。

こ、これは・・・・・・!
Wさん、もしかして、しづのPCハッキングした・・・・・?
こわいくらい、読まれてます・・・・・・・
うちの岡部さん並の推理力です。(薪さんはダメです。こーゆーことは、青木くんよりダメダメです)
すいません、ここはスルーで・・・・・すいません!


> しかも薪さん・・・「鈴木の代理」って・・・・。またスットコドッコイなことを・・・!!??
> 目を覚ませっ    Σ〃\(°Ⅲ°;) ビシ バシ ビシ

ああ!薪さんがムチ打たれて!
べつのことに目覚めてしまったら、どうしましょう!(爆)

> しづさんの世界は本当に薪さんにとって「幸せな世界」やというのに・・・!!
> 男なら「嫌だ!助けて!!」と誰かにはっきり助けを求めてみせてみやがれ!!
> (言ってることが無茶苦茶に…)
>
> ぜーはー  (;一Д一)==33 ぜーはー 失礼しました・・・。

そうですよ!
コーヒー飲んで泣いてないで、岡部さんに事情を話せばいいんですよ。
でもうちの薪さんは、溜め込むだけ溜め込んで、自滅するひとだから・・・・・このあとは、岡部さんの働きに期待です。

> みどりちゃん、なんか憎みきれないんですが・・。
>青木が「ああ露骨だとバカにされてるみたいだ」って言ってましたが・・・、

つはっ!
またもや読まれてる!!
やっぱりWさん、ハッキング・・・・・でなかったら幽体離脱・・・・・?

> お忙しい時に長々とすみません。レスは気になさらないでください。
> お盆、大変ですが御無理をせずに頑張ってください。
> では m(__)m 

お気遣い、ありがとうございます。
あまりに鋭すぎて、レスが半端になってしまって、申し訳ありません。
でも、きっとWさんのことだから、ネタバレの可能性を考えて、わざと鍵をつけてくれたのだと思います。

ありがとうございました(^^

(Wさんの思惑と違ってたら、ごめんなさい。ご連絡いただけれは、訂正or削除いたします)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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