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ラブレター(13)

 昨日は、オットの誕生日でした。

 しかし、わたしの頭は一日中、夏コミ&オフ会のことで一杯でございました。
 ああ、きっと今ごろ、コハルさんの「秘密日和2」がバンバン売れて。ああ、みなさん今ごろ、カラオケボックスで『薪さん、きゃー!』『すてきっ!!』『あああ、愛してるーー!!』って、叫んでるんだろうな。(叫ぶ内容を考えると、カラオケボックスはベストな選択ですね!)

 オットの誕生日なんて、カケラも思い出しませんでしたっ!(←ヒドイ)
 そういえば、まだ「おめでとう」も言ってないや。よし、これから言いに行こう。
 思いついたときに言っておかないと、また忘れちゃうから。(笑)




ラブレター(13)






 Mホテルのロビーで、青木は新聞に顔を伏せている。
 その長身から張り込みや尾行の類は不得手な青木だが、今日は隣に雪子がいる。たとえ見咎められても、雪子とデート中だと言い張ればいい。ただし、それは薪以外の相手に対してだが。

 予定には大分早い6時半ごろ、薪は姿を現した。
 第九にいたときと同じ、青灰色のスーツに薄紫のネクタイ。職場からここに来たと見えて、通勤用の鞄を持っている。
 せっかくのデートなのだから、時間が許せば一旦は家に帰って、服装を整えてくるのが普通だと思うが。それとも早く彼女に会いたくて、居ても立ってもいられなかったのだろうか。そんなに彼女のことが好きなのだろうか。
 ……当たり前だ。結婚まで考えているのだ。
 青木の脳裏に、みどりと愛し合う薪の姿が浮かぶ。
 薪がそれを望むなら。
 本当に薪のことが好きならば、彼の恋の成就を喜ぶべきではないか。

「三好先生、もういいです。やめましょう」
 どんなにつらくても、どんなに泣いても。かつて薪が鈴木と雪子を祝福したように、自分も薪とみどりのことを応援しよう。

「なに言い出すのよ。ここまで来て、怖気づいてんじゃないわよ」
「そうじゃなくて。オレは薪さんが幸せなら、それを喜ぶべきだと」
「あんた、メガネ変えたほうがいいわよ」
 メガネは今年の冬に新調したばかりだ。岡部と柔道の稽古をしていたときに割ってしまって、それからスポーツタイプのものに替えたのだ。
「薪くんの今の顔の、どこが幸せそうなの? あれがこれから好きな女とよろしくやろうっていう男の顔なの? 今にも泣き出しそうだったじゃないのよ」
「え?」
 ホテルのロビーを横切っていった薪の表情を、青木は思い出せなかった。自分を抑えるのにいっぱいいっぱいで、薪の表情を見る余裕などなかったのだ。

「しっかりしなさい! そんな根性で、薪くんの恋人になれるとでも思ってんの。あの複雑怪奇な男と付き合おうと思ったら、死ぬ気で行かなきゃダメよ。薪くんに投げ飛ばされても蹴り飛ばされても、逃げちゃだめ!」
 そこまで覚悟しないとならないのだろうか。命を賭けた恋、というのは聞いたことがあるが、こういう意味ではないような気がする。

「部屋の番号、覚えてる?」
 メモに書いてあったかもしれない。なかったかもしれない。いや、確かカードキーが置いてあった。それに番号が書かれていたはずだ。
「えっと、あれ? いくつだったっけ」
「この役立たず!!」
 ひどい。雪子の罵倒は、時々とても辛辣だ。
 青木だって自分の記憶力の無さが、泣きたくなるほど悔しい。ここにMRIがあったら、自分の脳を取り出して記憶を検証したいくらいだ。

 慌てて薪の後を追うが、彼の姿はすでに消えていた。エレベーターに乗るのが見えたから、部屋に向かったものと思われるが、どの客室かはわからない。
「どうすんのよ」
「たぶん、10階より上だと思うんですけど。それ以下だったら薪さんは階段を使いますから」
「このホテル、20階まであるのよ」
 虱潰しに当たるには多すぎる。こんなことで手帳を使うわけにはいかないし、バレた時には薪に迷惑が掛かる。それは避けたい。

「仕方ない。15年前と同じ方法でいくか」
「15年前って?」
 雪子はフロントに向かうと、受付の女性に話しかけた。
 しかし、フロントから薪の部屋を聞き出すのは難しいだろう。ホテルはプライバシー重視の接客業だ。フロント係がペラペラと顧客の情報を喋ってしまうようなホテルなど、青木だって利用したくない。
 案の定、受付の女性は困惑した表情になって雪子に応対している。丁寧な返答を心がけているようだが、雪子の期待した答えはくれそうにない。
 しばらくの押し問答の末、雪子はとうとう大きな声で叫んだ。

「ここであたしの亭主が女と逢ってるのよ! さっさと部屋の番号を教えなさい!!」
 ロビーどころかホテルの外まで聞こえそうな声量に、受付の女性が青くなっている。
 青木は慌てて雪子を止めに入った。他の客の迷惑になる。
「三好先生、まずいですよ!」
 自分の目的のためには他人の迷惑を顧みない人間もこの世にはいるが、青木にはそれはできない。これは持って生まれた性格で、どんな局面になってもこんな風にしか動けない。雪子のような無鉄砲な性質が、少し羨ましくもある。

「薪くんは、彼女との関係を望んでない。なのに、なんで彼女の言いなりになってるか、考えてみた?」
 確かに薪らしくない。好きでもない女とそんなことをするひとではないし、誘惑や強制に屈することは、もっと考えられない。
「薪くんがバカな真似をするときは、鈴木くん絡みって相場が決まってんのよ。あのひとは昔からそうなの」
 それで雪子は、こんな無謀な行動をとったのだ。考えてみれば雪子は男勝りだが、決して思いやりのない人間ではない。

 青木は生まれついての自分の性分に、今だけは逆らうことにした。
「すみません、ひとの命に関わることかもしれないんです。お願いします!」
 二人に増えたクレーム客に、フロントの女性は困惑を深めたのだった。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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