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ラブレター(16)

ラブレター(16)





 
 長身の新人と法一の女医は、Mホテルの廊下で息を潜めていた。
「大丈夫ですかね。二人にして」
「仕方ないでしょ。薪くんが、どうしてもって言うんだから」
 部屋の中には、薪がみどりと二人きりでいる。みどりと話がしたいから、青木たちはロビーで待つように言われたのだ。
 が、薪の言うことを、素直に聞くような彼らではない。階下に下りる振りをして、岡部が壊したドアの影に身を潜めているのだ。

 先刻、岡部は間宮を連れて部屋を出て行った。
 間宮はいわば、部外者だ。薪の弱点の詳細を知られないように、との配慮からだ。
 立ち去る前に岡部は、横川みどりの正体と、その目的を教えてくれた。ピンクの便箋と履歴書のコピーを青木に預け、間宮を引き摺るようにしてエレベーターに乗り込んだ。
 薪のことを青木に託して現場を離れた先輩の期待に応えるためにも、何かあったらすぐに対処ができるよう、ここで待機するのがベストだ。ここにいれば、野次馬が集まってきたときの防波堤にもなれる。

「横川さん。多分、これが最後の機会です。僕に言いたいことがあったら、言ってください」
 薪の穏やかな声が聞こえてくる。ドアが壊れているから、中の会話は筒抜けだ。
「言いたいことなんかない。わたしはあなたが許せないだけ」
 みどりの声は、ひどく刺々しい。あの甲高い甘え声が、口調次第でこんなに怖いものになるのか。
「許してもらおうとは思ってません。言いたくないなら、言わなくていいです。でも、教えてください。あなたは鈴木とはどういう関係だったんです?」
「鈴木さんは、わたしの憧れだったの」

 それは手紙にも書いてあった。が、詳しいことは解らない。
 話してくれれば、彼女に詫びる方法も見つかるかもしれない。薪はそう思って、みどりと話したいと言ったのだ。
 自分を陥れようとした相手にまでやさしくしなくても、と青木は思うが、鈴木の関係者となれば、放ってはおけないのだろう。

 薪の限りないやさしさが、いつか彼を滅ぼすことになるのではないか。
 青木はそんな不安を覚えた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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