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ラブレター(22)

 ここまでお付き合いくださって、ありがとうございました。
 薪さんがコーヒー飲んで泣いたり、青木くんの胸で泣き叫んだり、青木くんが悔し泣きしたり、と色々ございましたが。って泣きっぱなしじゃん。(^^;

 とにもかくにも。
「ラブレター」のラストです。





ラブレター(22)





 月曜日。
 今日も青木は、モニタールームの掃除から朝の仕事を始める。
 モニターの埃を取るためのクロスを片手に、メインスクリーンを端から拭いていく。背の高い青木は、この作業を脚立を使わずに行うことができるが、それでもけっこうしんどい。
 掃除というのは、全身運動なのだ。巷の主婦たちも、下手にダイエットと称して食事制限をするくらいなら、毎日の掃除に力を入れたほうが、よっぽど効果が上がると思うが。

「おはようございます。メール便です」
「ご苦労さまです」
 まるでホテルのランドリー係が押して歩くような大きな台車から、庶務課の年若い配達当番は、封書の束を机に置いた。こういう仕事はたいてい、新人の役目だ。部署の配置を頭に入れることができるし、職員の顔も覚えられるからだ。

「今日は、特に多いみたいですね」
 週末までに、という期限の書類が多いことと、民間人には土日も関係しないことから、月曜日のメール便は大量になる。
「第九(うち)のは民間からの書簡も多いから、セキュリティチェックも大変でしょう。ご面倒掛けます」
「いいえ。チェックは機械がやりますから。それに、ほとんどがこれ、ファンレターでしょ。相変わらず薪室長はモテますよね。ひとりぐらい僕に回してくれないかなあ」
 この手紙が薪の目に触れることもなく、シュレッターに掛けられる運命であることを、彼は知らない。しかし、それを暴露して、薪の悪評を立てることはできない。
「ムリです。部下のオレにすら回ってきませんから」
「全部独り占めですか。ハーレム作れますね」
 ……別の悪評が生まれそうだ。

 冗談に笑って庶務課の新人が去った後、青木は郵便物を分け始める。
 捜一や二課からの書簡は副室長に。警察庁の部署や上層部からのものは室長に。個人に宛のものはそれぞれの机に。室長へのファンレターは廃棄箱の中に。

「おはよう」
 いつもの澄んだアルトの声で、室長が出勤してくる。
 亜麻色の瞳が、生き生きときらめいている。いい休日が過ごせたようだ。
「おはようございます」
 青木の挨拶に軽く頷き、薪は自分宛の郵便物を取って、差出人のチェックをする。
 訝しげな顔をして薪が見ているのは、5通の封書だ。裏面には、研究室名と役職と氏名が明確に記してある。すべて室長会のメンバーだ。
 
「この頃、室長会からのメール多いですよね。何かあったんですか?」
「来週末に懇親会があるんだ。その連絡だろ」
「懇親会ですか。それは楽しみですね」
 納得したような相槌を打つが、青木は薪の嘘に気付いている。
 懇親会の通知なら、普通は事務局から来るだろう。連絡網で回すにしても複数の人物から何回も来るのはおかしい。
 どうやら、本当のことは言いたくないようだ。もしかしたら、室長会の内輪の話で、ヒラの職員には話せないのかもしれない。

「青木。それ、僕のところに回してくれ」
 薪が細い顎で示したのは、シュレッター行きの書類を入れる箱だった。そこには、可愛らしい動物や花や英文字の描かれた封書が、10通近く入っている。
「これからは、ちゃんと読むことにしたから」
 青木は、薪の言葉の裏側を読む。

 ―――― 読まずに捨てるのは、逃げることだと気付いたから。

 その勇気は、薪に現実を見せる。好意も悪意も受け止められるだけの力を養う訓練を、これから彼は重ねていくのだ。

 手紙の束を渡されて、薪はくちびるを噛む。
 微かに手が震えている。横川みどりが複数いないとは限らない。

「大丈夫ですか」
「平気だ。僕には、強力なサポーターが大勢いるから」
 強気な瞳が青木を見る。
 僅かな恐れを覆い隠す強い意志が、亜麻色の瞳を魅力的に輝かせる。
「よく効くおまじないも知ってるし」
 苦笑とともにそんなことを言って、薪は室長室へ入っていく。
 青木は手にクロスを持ったまま、細い背中を見送る。その背中は、以前の張りと強さを取り戻している。

 自分がやったことは、間違っていなかった。
 第九では、結果がすべてだ。大切なのは、薪が元気になってくれることだ。
 だれが薪を勇気付けたのか、追求することはない。それはどうでもいいことだ。

 深い傷を残したまま、青木は心を決める。
 薪が望むなら、それでもいい。誰かの身代わりでも……それでも、薪のそばにいたい。

 室長室のドアが閉まる。
 しばらくして、ドカン! ガシャン! という金属音。「っざけんな!」という喚き声。
 青木は薪が持っていった、手紙(ラブレター)の秘密を知る。
「……男からだったんですね」

 薪の気持ちを落ち着かせるためには、とびきり美味いコーヒーが必要だ。
 室長の専属バリスタに返り咲いた第九の新人は、くすくすと笑いながら給湯室へ向かった。


 ―了―





(2009.3)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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No title

こちらに鍵拍手くださった、Mさま。

・・・・・ありがとうございます。
お待ちしております。
あなたを愛してます。(ん?)

おはようございます

青木君がちょっと大人になった‥(T_T)
薪さんもですけど
雨降って地固まっ‥た?

『色々あっても乗り越える時はいつも青木と一緒であって欲しい』なんて、前にコメントさせて頂いた気がいたしますが‥‥そうですよね、そこに鈴木さんもいるんですよね

でもいつか、青木自身が青木として薪さんの絶対的存在になれる日が‥来るといいなぁ(あくまで個人的願望ですので)

むぅさんへ

いらっしゃいませ、むぅさん。
いつもありがとうございます(^^

> 青木君がちょっと大人になった‥(T_T)
> 薪さんもですけど
> 雨降って地固まっ‥た?

はい。
つらい経験は、人を成長させます。
雨降って地固まる、ていうか、雨降って土砂崩れ?
ウソです、冗談です。
ちゃんと固まりますから!ご安心を。

> 『色々あっても乗り越える時はいつも青木と一緒であって欲しい』なんて、前にコメントさせて頂いた気がいたしますが‥‥そうですよね、そこに鈴木さんもいるんですよね。

あ、はい。
このときは、あくまで青木くん視点でしたので。
薪さんから見たら、また違った光景になっていたかも・・・・・。

> でもいつか、青木自身が青木として薪さんの絶対的存在になれる日が‥来るといいなぁ(あくまで個人的願望ですので)

きますよ!
だって、あおまき小説ですもん。
よそ様のあおまきより、ちょっと(だいぶ)進行は遅いですけど、薪さんがだれよりも青木くんを大事に思う日がきます。長い目で見守ってやっていただけると嬉しいです。(^^

ありがとうございました!!

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Kさまへ

こんばんは、Kさま。
2週間も待っていただいて、ご期待を裏切らないとよかったのですが・・・・・(かなり不安)

> この間、前のお話を読み直してる時、あることに気づいて愕然としました。

よ、読み直し・・・・嬉しいです、でも、恥ずかしい・・・・・そんな、再読の価値のあるものではないので・・・・・・でも、うれしいです(照照)

> こんなこと書いていいのかな‥‥私‥‥私‥‥
>
> 間宮にそれほど腹を立ててないみたいなんです!!
>
> 薪さんのファンとして、ありえないですよね?なので鍵コメ。

ありえなくないですよ!
書いてるわたしはどうなるんですか。(←すでに信用ゼロ・・・・・・ダメじゃん)

> そりゃあ、のぞきの件とかPホテルの件とかは許せないですよ。
> でも、それはどちらもある程度の罰を受けてるし、
> 自分を風船にした岡部さんを高く評価してちゃんと副室長就任を認めてくれたし(←これ、めちゃめちゃポイント高かったです)、
> なにより、本人としては薪さんを傷つけようとは思っていないからだと思うんです。
> アホでヘンタイだから結果的に薪さんを傷つけてることに気がつかないだけで、
> 間宮としては薪さんの素晴らしさを十分に認めた上で、
> 私の世界へさぁおいでっ、て言ってるだけなんだと思ったりして‥‥なんで私、こんなに間宮を擁護してるんでしょう?

そうなんですよ。
間宮は実は、薪さんにゾッコン惚れてるんです。
でもって、仕事はきちんとやるんです。私情で優秀な捜査官を左遷する、なんてバカな真似はしません。読み取っていただいて、本望です。(^^

> そんな状態で「ラブレター」読んだら‥‥また出てる!間宮!!
> しかも、様子がおかしい薪さんには手を出さなかったり、
> 自分が聞くべきではない会話だと思ったら席をはずそうとしたり、
> 岡部さんや雪子姐さん(しづさんとこの雪子さん素敵すぎvvv‥うっとり)が壊したものについても完璧に後始末して‥‥
> 間宮、いい人すぎやしませんか?

間宮はわたしの分身ですから。(^^
薪さんが、本当にヤバイ状態のときに、無理矢理つけこんだりしません。
いい人ではないのですが、肝心のところはちゃんと分かってるんです。
わかってないのは、薪さんが本気で嫌がってる、という事実だけです(笑)
M 『そこが肝心なのに!』

> 前置きが長くなりましたが、本題です。
> 今日に限って夫がいつまでもいつまでも出かけず、いっそのこと彼がTV見てる横で読もうかとも思いましたが、出かけるまで待って正解でした。
> (8)で、ずっと書類を眺めて顔を上げようとしない薪さんに涙がダ~~ッ。
> その前の「そうだ」の前についている「・・・・」が切なすぎる‥‥
> そして(9)で青木のコーヒーを飲んで泣く薪さんにもらい泣きし、

泣いてくださったんですね。
ここのシーンは、薪さん的にいちばん辛いシーンだったので、その気持ちを共有してくれて、うれしいです。
ありがとうございます!(・・・・泣いてるひとにありがとうって・・・・・でも、うれしい・・・・・悪魔ですいません・・・・)


> (15)では間宮と青木の漫才にぶふふふと不気味な笑い声をもらし、
> (18)での猛獣どうしの闘い‥‥に怯える薪さんと青木に声をあげて笑う私を見られたら、
> 「最近どうも様子がおかしいと思ってたら、ついに狂ったか」と夫に思われるとこでした。

あははは!
笑っていただけるのがいちばん嬉しいです。
ギャグがわたしの真髄ですから!

> 以前、「ジンクス」でしたっけ?
> 青木だから嗚咽で我慢したけど、相手が鈴木だったら泣き喚いていた、って薪さんが考えてたことありますよね?
> あの時、もう鈴木さんはこの世にいないからそれは無理…ということはもう薪さんが思いっきり哀しみをぶつけてすっきりすることはできないのかしらと切なくなりましたが、
> 今回、たっぷり泣くことができましたね、薪さん!!
> 良かった、本当に良かった。
> いつもいつも自分で自分を責め続け、ひとりで哀しみに耐えていた薪さんが、
> やっと爆発することができて。
> 青木くん、ありがとう。薪さんの哀しみを発散させてくれて。
> 今まで呼び捨てにしてましたが、感謝をこめて今日から君を「くん」づけで呼ばせていただきます(さっき思わず間宮にも「さん」をつけそうになっちゃった。それは無い!!)。

Kさんにそう言ってもらえて、青木くんも自分のしたことに自信が持てたと思います。
普段の薪さんだったら、こんなに簡単に青木くんにノセられなかったと思いますが、このときはテンパッてましたからね・・・・・。
でも、これがきっかけで、またふたりの距離は近付きます。辛いことがあるたびに、青木くんと一緒にそこを乗り越えて、やがて薪さんにとって青木くんはかけがえのないひとになっていく。そんな風に書きたいんですけど・・・・・うまく伝わっているかしら。

> 青木くんにしたら鈴木さんの身代わりになってるだけ、と悔しく思ってるかもしれないけど、
> きっともうすぐ、薪さんは青木くんを青木くんとして見て、愛してくれると思いますよ。
> だからこれからも、薪さんをよろしくお願いしますm(_ _)m

はい。
いずれ、必ず。
15年間、鈴木さんを思い続けていた薪さんの恋心をモノにしようと思ったら、それなりの時間と試練は覚悟してもらわないと(←ドS)

> >「平気だ。僕には、強力なサポーターが大勢いるから」
> 本当ですねこちらの薪さん、しづさんワールドのなんて素敵なサポーターさん達。
> 原作薪さんにも分けてあげたい。

でしょう?
うちの薪さんは、本当に幸せなんですよ。
本人が気付いていないだけです。

> ところでこの後、懇親会の顛末もあるのでしょうか?
> ちょっと楽しみ。

ありますよ~!
それが次のお話です。お付き合いいただけると嬉しいです♪

> 今回も素敵なお話、ありがとうございました!

こちらこそ!
熱のこもったコメント、感動しました。こんなに書かれるの、大変だったでしょう?
鍵コメだったのに、引用してしまってすみません。
削除希望でしたらすぐに消しますので、ご連絡ください(^^


追伸

Mさまのブログに通ってらっしゃるんですね♪
うれしいです!わたしもMさまのところは日参しております!
あそこの鈴薪には、もう、どれだけ泣かされたか。正直に言って、溺れてます。
Mさまって、天才・・・・。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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