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岡部警部の憂鬱Ⅱ(3)

 8/23(日)、プチオフ会に参加させていただきました。
 メンバーは、原麻めぐみさん、第九の部下Yさん、みちゅうさん、花咲蕾さん、おまけのしづ。
 夢のように楽しい一日でした!
 みなさん、本当にありがとうございました!!

 わたしは小説モードにならないと全然文章が浮かばない人間なので、レポートはすみません、みなさまにお任せします(^^;

 興味がある方は、めぐみさんの『薪rulez』、イプさんの『いつもあなたを守ってる』を覗いてみてください。記事がアップされてます。(リンクから飛べます)






岡部警部の憂鬱Ⅱ(3)





 昼休みが終りに近付いたころ、岡部は給湯室に顔を出した。
 この時間、青木は室長の専属バリスタに変身する。『第九の眠り姫』を目覚めさせるのに必要なのは王子様のキスではなく、美味いコーヒーなのだ。
 岡部の顔を見ると青木はにっこりと笑って、「岡部さんも飲みますか?」と声を掛けてきた。コーヒー豆を追加して、ゴリゴリとミル挽きを始める。とてもいい匂いだ。
 
「あの後、大変だったみたいだな」
 くどくどと説明しなくても、先週の金曜日の事件のことだと青木には解るはずだ。大まかな話は薪から聞いたが、青木が薪をどうやって元気付けたのかは謎だ。
 岡部としては、ぜひ知っておきたい。気難しい上司を懐柔する方法は、いくつ知っていても困らない。

「地球の裏側まで落ち込むだろうと予想してたのに、あのくらいで済むとはな。おまえ、よっぽどうまくフォローしたんだな」
 その話になると、青木は妙に暗い顔つきになった。
 おかしい。
 薪が元気だと聞けば、こいつは喜ぶはずだ。いったい、どうしたのだろう。
 訝しく思いながらも、岡部は話の穂を継いだ。
 
「薪さんに、なんて言ったんだ?」
「オレは一言も喋ってません」
「喋ってない?」
 どんな言葉も、あの状態の薪を傷つけずにはおかなかった。そういうことか。

 『あなたのせいじゃない』
 『気に病まないで』
 『あのことはもう忘れて』

 そんなやさしい言葉のひとつひとつが、薪の胸を抉る。許しの言葉は、決して薪のこころを安らがせない。なぜなら、薪自身が自分を許さないからだ。それを受け入れることを拒否する為に、自らを追い詰めるからだ。
 言葉以外の方法で薪を元気づけたとすると、もしかして。
 いや、それだったら正直な青木のことだ。めいっぱいニヤけた面になるに決まっている。この陰鬱な表情は、その可能性を完全に否定している。それに、薪は『あいつも辛かったと思う』と言っていた。どうやら以前、岡部が室長室で目撃してしまった類のことではないようだ。

「薪さんを元気にしたのは、オレじゃありません。オレは何もしてないです」
 青木のほうが、地の底まで落ち込んでいるような感じだ。まるで、薪の落ち込みを吸い取ってきたみたいだ。
「薪さんは、おまえに礼がしたいって言ってたぞ」
 ひどく落ち込んだ様子の後輩が気になって、岡部はついお節介を焼いてしまう。
 薪に伝言を頼まれたわけでもないのに、余計なことを言ってしまった。でも、こう言ってやれば青木は喜ぶだろう。好きなひとに感謝されて嬉しくない人間はいない。
 ところが、青木はさらに悲しそうな顔になってしまった。
「礼を言われる筋合いはないです。オレ、本当に何にもしてませんから」
「どうしたんだ?何があった?」
 水を向けても、青木は事情を話そうとはしない。何でもないです、と言ったきり、黙ってドリッパーにお湯を注ぎ始める。

 コーヒーを落とす間、青木は口を開かなかった。いつものようにドリッパーの状態と腕時計の秒針を見ながら、バリスタの仕事に集中しているようだ。
 サーバーから温めたカップにコーヒーを注ぎ、ひとつを岡部に手渡してくれる。どうぞ、と微笑みを添えてくれるが、その笑顔は明らかに無理がある。青木は薪のように、ポーカーフェイスが得意ではない。

「なんか知らんが、元気出せ。おまえの気持ちは、あのひとにちゃんと届いてるよ」
「ありがとうございます」
 岡部に一礼して、青木は給湯室を出て行った。室長室の眠り姫に目覚め薬を届ける為だ。

 バリスタの大きな背中を見ながら、岡部は立ったままコーヒーを飲む。
 岡部は、青木の薪に対する特別な気持ちを知っている。
 薪からそのことを打ち明けられるまでもなく、とっくの昔に気付いていた。多分、薪が青木の気持ちを知るより早い時期に、岡部はそれを見抜いていた。
 もちろん、そんなひとの道に外れた恋路を応援するつもりはない。
 ああいうものは一時の気の迷いであることが殆どだし、青木の場合は憧れと恋愛がごっちゃになってしまっている可能性のほうが高い。
 薪も、相手のことは憎からず思っているようだが、それは青木本人を見ているわけではない。かつての恋人を重ねているだけだ。そんなあやふやな気持ちのままそういう関係になってしまったら、おそらくふたりとも後悔する。

 薪は、ようやく立ち直りつつある。
 一年前に比べて格段に笑顔も増えたし、精神的に余裕も出てきたようで、追い立てられるように職務に没頭して挙句の果てに倒れてしまう、といったことも減ってきた。
 薪にとっては良い兆候だ。この調子で完全に立ち直って欲しい。そして、愛する伴侶を見つけて、充実した人生を送って欲しい。岡部は心からそう願っている。
 青木は泣くかもしれないが、それは仕方がない。それに、青木は若い。すぐに新しい恋をするだろう。薪とはいい友達のまま、薪もそれを望んでいる。

 ……はずだったのだが。

 薪のさっきの様子を思い出すと、どうもそれだけでは済まなくなりそうな気もする。あれは、ただの友人を庇う口調ではなかった。
 今年の春ごろだったか、薪は『青木とは友だちでいたい』と言っていたが、果たしてそれは本心なのだろうか。わざと嘘を吐いたとは思わないが、自分の本当の気持ちに自分で気付いていないだけだった、とは考えられないだろうか。
 いま、薪は青木のことを『自分を一番に考えてくれて、自分を元気にしてくれるひと』と言っていたが、それは友だちの定義ではない。むしろ恋人とか伴侶の定義に近い。

 薪の気持ちに変化があったとも考えられる。
 4ヶ月ほど前、薪は青木の自分に対する劣情を知って、ひどく立腹していた。あいつとは絶交だ、と息巻いていたのだ。
 しかしその怒りは長くは続かず、1ヶ月も経たないうちに青木は薪の家に出入りするようになった。一時的に距離を置いたことで相手の重要性に気付くのはよくあることで、あれがきっかけで薪にもそれが訪れたのかもしれない。

 どちらにせよ、岡部は薪が幸せになってくれればそれでいい。相手が男だろうと女だろうと、こころの支えになってくれるひとがいれば、人生は充実するものだ。前者の場合は多少の困難が付きまとうから、本音ではあまり勧めたくないのだが。

 カップの中の魅惑の液体を飲み干して、岡部はため息を吐く。
 第九のバリスタがブレンドしたコーヒーは、いつもよりほんの少し苦味が強かった。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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なんだかとってもいい感じ(*^-^*)
まるで皆既日食みたい
ドキドキ☆

むぅさんへ

いらっしゃいませ、むぅさん♪

> なんだかとってもいい感じ(*^-^*)
> まるで皆既日食みたい
> ドキドキ☆

ありがとうございます。

えっと・・・・・皆既日食・・・・・・
ドキドキする、という意味かしら・・・・もしかして、太陽が青木くんで薪さんが月で、岡部さんが地球からそれを見てる感じ・・・・?いや、そんな大層なもんじゃないですね、この話は(笑)

ところで、ずっと気になってたんですけど。
むぅさんのHNの由来は・・・・・?
まさか、手塚治虫のMWじゃないですよね?言葉の響きは一緒でも、イメージがまるで違うから・・・・。
機会があれば、ぜひ教えていただきたいです(^^)

ありがとうございました。

いつもご丁寧なお返事ありがとうございます
突然、何の脈略もない事書いて申し訳ありません(B型の得意技?)
以前、他ブログ様で(すみません)記載があったのですが、太陽(青木)月(鈴木)地球(薪)という例えをされていたんです
…という前提がありまして。しづ様のお話を読んでいると、私にはまるで三人の関係が皆既日食の模様を呈しているように感じる事がありまして(特に今回)…すみません、勝手気ままな解釈を述べて(-o-;)

ところで私のHN気にして頂いてありがとうございます
別に深い意味がなくて逆にお恥ずかしいですが‥私の本名から周りがそう呼ぶので(ただそれだけ)
失礼いたしました

むぅさまへ

いらっしゃいませ、むぅさん。
返信していただいて、恐縮です(^^;

> 突然、何の脈略もない事書いて申し訳ありません(B型の得意技?)

むぅさんもB型なんですね!わたしもです!

> 以前、他ブログ様で(すみません)記載があったのですが、太陽(青木)月(鈴木)地球(薪)という例えをされていたんです

はい。
あの例えは素敵ですよね。
やさしく薪さんを見守る鈴木さん。太陽のように薪さんの未来を照らす青木くん。
まあ、うちの「遊び人の鈴木さん」と「ヘタレの青木くん」にはムリですけど・・・・・・
うちの場合、岡部さんが月で雪子さんが太陽?
なんでしょう、このあおまき小説は。(笑)

> …という前提がありまして。しづ様のお話を読んでいると、私にはまるで三人の関係が皆既日食の模様を呈しているように感じる事がありまして(特に今回)…すみません、勝手気ままな解釈を述べて(-o-;)

ああ、なるほど!
月(鈴木さん)が太陽(青木くん)を完全に隠している、と!
うまいです、むぅさん!!

そうですね、まさに皆既日食です。
皆既日食は長く続くものではないですから、そこもぴったりの例えですね。(^-^)

> ところで私のHN気にして頂いてありがとうございます
> 別に深い意味がなくて逆にお恥ずかしいですが‥私の本名から周りがそう呼ぶので(ただそれだけ)

そうでしたか。
むぅさん、なんて呼ばれ方をしているということは、きっとかわいい方なんですね。
教えていただいて、ありがとうございました(^^

Aさまへ

Aさま、こんにちは。

> 原作の岡部さんは薪さんの青木への気持ちには気づいていたようですがやはり、鈴木さんに似ているから気になるのだと思ってたのかしら。

そうですね。 最初に、「おまえ、あの人に似てるんだよ」と青木さんに言ったのが、他ならぬ岡部さんですからね。
まあ、うちの岡部さんは、薪さんが鈴木さんに恋をしていたことを知ってるので、余計にそう思ったんでしょうね。

岡部さんは薪さんの気持ちに気付いて、
ええ、複雑だったでしょうね。 全面的に応援する気にはなれなかったと思います。 でも最終的にはうちと同じで、「まあいいか、薪さんさえよければ」に落ち着くんじゃないでしょうか。(^^


>青木は薪さんと離れてしまったことでより、薪さんを求めるようになった。

そうなんですよね。 
自分にとって薪さんがどれだけ重要な人かを知るには、青木さんは一旦、薪さんから離れる必要があったんですね。 大事なものは失くしてから気付くってやつですね。
そう考えると、最終回の別離は必須だったんですね。 

薪さんも、同じなのかな?
「心に秘密がある=守りたい人がいる=幸せ」 
この方程式に気付くためには、一旦、気持ちの整理を付ける必要があった?
薪さんが恋心を昇華してしまった時にはすごく悲しかったですけど、そういうことなら受け入れられます。 いずれにせよ、今だから言えることで~、このエピローグあってこそ、ですね。 偏屈な読者で申し訳ないです。(^^;
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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