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フラッシュバック(3)

 本編の前に、ご挨拶です。

 昨日、カウンタが4000を超えました。
 いつも訪問してくださるみなさま、そして不幸にも何かの間違いでこのヘンタイサイトに来てしまった方々(笑)、ありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

 それと、ここ4日くらいで、たくさん拍手をくださった方。
 ありがとうございます。すごく励みになります。
 最初の方から順に読んでくださってるみたいで、どこまで読んでいただけるのかしら、とドキドキしています。ファイヤーウォールあたりでドン引きされるのかしら。(笑)

 さらに、リクエストをたくさんいただきまして。とても嬉しいです。
 でも何故かみなさん、鍵コメで。(笑)
 いただいたリクエストは追記に記載していきますので、よろしくお願いします。(リクは9/20まで受け付けます。お待ちしています)


 では。
『フラッシュバック』のつづきです。




フラッシュバック(3)









 夕刻のスーパーマーケットは、家族連れで賑わっている。
 子供の喧騒と、主婦たちのお喋り。威勢のいい売り子の声。
『鮮魚コーナーからタイムサービスのお知らせです。三陸沖でのびのび育った肉厚のワカメが1束200円。味噌汁に、酢の物にいかがでしょうか。また、青果コーナーからは……』
 今日の目玉は三陸産のワカメと、栃木県産の高原レタスらしい。
 日常的で平和な光景。そこには恐れを抱くものなど、なにひとつないはずだ。

 薪の肩の強張りは徐々に解けて、青かった顔色も平静に戻ってきた。ぎこちなかった足取りもしっかりしてきて、商品を見る余裕も出てきたようだ。
 敷き詰められた氷の上に、見事な鯛が何匹も置いてある鮮魚売り場の前で足を止める。今日の目玉商品の塩漬けワカメが、特設ブースに山と積んであるのを眺め、その流れに見せかけて振り返る。
 薪の眼は青木を通り過ぎて、その先の惣菜コーナーを見ている。
 亜麻色の瞳が苦痛を宿している。ふっくらした下唇が、ぎゅっと噛み締められた。

 4年前。
 あの事件はここから始まった。薪はこの場所で、貝沼に会ったのだ。

 貝沼が万引きをした商品は、惣菜と即席飯だった。たぶん、あちらの方から保安員に連れられて、ここにいた薪のところへ来たのだろう。おそらく、薪の眼にはそのときの光景が映し出されているに違いない。

「薪さん。お刺身買って行きましょうか。とっても美味しそうですよ」
「そうだな。鯛が美味そうだ」
 青木が顔を覗きこむようにして話しかけると、薪は落ち着いた声で応えを返す。まだ表情は固いが、取り乱してはいない。

 PTSDの治療法に、ショックを受けた場所に出向いて別の記憶を上書きする、という方法がある。何回か試みるうちに、ショックそのものが薄れていくという。
 薪にとって、ここは貝沼と会ったスーパーではなく、美術館の帰りに青木と寄ったスーパーになったはずだ。
 実際の治療はそんなに単純なものではないし、薪の中ですり替え作業が行われた確証もない。しかし、亜麻色の瞳は冷静だ。人差し指をくちびるに当てて、どの鯛を刺身にしてもらおうか迷っている。

「よし、決めた。すいません、左から二番目の鯛を」
「キャ――ッ! タッくん!」
 薪のうしろを女性の悲鳴とともに、ガラガラガラッと派手な音を立てて買い物カートが走っていく。ドガガッ!という轟音が響き、ついで子供の泣き声と男の悲鳴が上がった。
「?」
 薪が右を向くと、さっきまで自分の隣にいた長身の部下が、カートごと子供を抱えてワカメの束の中に埋もれている。青木が子供を抱いて起き上がると、頭や肩に乗ったワカメがまるで髪の毛のようで。

「オバケだ! ワカメのオバケ!」
 今まで泣いていた子供が、青木の情けない姿を指差して笑い出す。
「タッくん! そんなこと言っちゃいけません!」
「ぷ――っ、くくくくっ!」
 思わず、薪は噴き出してしまった。
 青木には悪いが、笑い出したら止まらなくなってしまった。
 周りの買い物客もこちらを見てくすくすと笑っている。店員も出てきたが、お客様大丈夫ですか、という声が震えている。明らかに笑いをこらえている声だ。
「ワカメ! ワカメ星人だ! きゃははは!」
「あははは!」

 子供と薪が指を指して青木を笑うものだから、周りも笑いをこらえるのが辛くなってきたらしい。こういうときは、周囲の空気に合わせてしまうしかない。
「三陸沖で、こんなに大きく育ちました。味噌汁に酢の物に、いかがでしょうか」
 青木のセールストークに、店内は爆笑の渦に包まれた。あんなに怒っていた子供の親まで笑っている。

 長身のメガネ男の体を張ったパフォーマンスのおかげで、タイムサービスのワカメは10分で完売したのだった。



*****



 スーパーの中で薪さんと貝沼が出会うという設定は、アニメのものです。
 ご了承ください。

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

No title

しづさん、おはようございます。
そして、4000打おめでとうございます。
実は朝イチで拍手コメを入れた筈なんですが、何が悪かったのか私のコメがどこにも見当たりません。
大変申し訳ありませんが、どこかヘンなとこに入り込んでたら消去して下さい、お願いします。

あのスーパーで薪さんが笑っている‥‥
クララが立った時のように心が震えました。
ちょっと荒療治っぽかったけど、青木くんありがとう!タッくんにも感謝!!

No title

すいません、今見たら復活してました。
なんだったんだろう‥‥???

お騒がせしました。

歓喜の歌さまへ

いらっしゃいませ、歓喜の歌さま♪

> 4000打おめでとうございます。

ありがとうございます!
うちのブログは決して万人受けするブログではないので、決まった方が毎日訪れてくださっているのだと思います。とても感謝しています。

> あのスーパーで薪さんが笑っている‥‥
> クララが立った時のように心が震えました。
> ちょっと荒療治っぽかったけど、青木くんありがとう!タッくんにも感謝!!

クララ!
すいません、とても感動的なコメをいただいたのに、わたし今・・・・つい、ハイジ=青木くん、クララ=薪さん、の場面を頭に浮かべてしまいました・・・・・・。
『薪さんの、弱虫!』
『青木!』

・・・・・おなかが痛いです・・・・・笑いすぎ・・・・・。

あ、拍手はいったん消えて、また復活したみたいですね。コハルさんのところの記事を見て、消えたことを知りました。以前にも消えてしまったことがあって、そのデータは消失してしまいました。今度は復活して良かったです。
いただいたコメはデータを残してありますので、もしも今後、このようなことがあった際には、ご連絡ください。お返事させていただきます(^^

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Kさまへ

うひゃー、全然知りませんでした。
むかし、そんなことがあったんですか・・・・・・勧告、削除・・・・・・こわい・・・・・・。
うぎゃあ、うちも気をつけないと・・・・・てか、すでにやばくないか?アレとかソレとかコレとか。

貴重な情報、ありがとうございました。
わたしも気をつけます。
・・・・・・と言いつつ、思いついたら多分書いちゃう・・・・・・えへへ。
勧告があったら、連絡しますね。参考にしてください(^^

Sさまへ

熱心に読んでくださって、すごくすごく嬉しいです!
ありがとうございます!!
Sさまにはもったいないお言葉をいただいておりますのに、月並みな言葉しか出てこなくて、すいません(←小説モードに入らないと、文章が浮かばないタイプ。頭悪いので語彙も貧困・・・・・恥ずかしいです(//><//)

で、あの・・・・・睡眠時間を削るのは・・・・・・ちょっと・・・・・嬉しいけど、申し訳ないので・・・・・ゆっくり読んでいただけたら、って思います。(^^;
わたしも年で、10時くらいになると眠くなっちゃうんですよ。この頃、仕事が混んできて、事務所から出るのが9時ごろだから・・・・・最近、アップ数が少ないのはそのせいです。
なので、Sさまのご都合に合わせて楽しんでいただけたら、と思います。
これからも、よろしくお願いしますm(_)m

Aさまへ

Aさま。

DVDで確認、お手数でした。
原作では薪さんは店の外にいらしたんですけど、アニメでは店内でしたよね。 「俺」という一人称も違和感アリアリでしたけど、スーパーもなあ。 一度も食事をしているシーンが無かったのは、原作を尊重していたのかな? もう少し別の所を尊重して欲しかった、絵のレベルとか、いえその。


> 貝沼→ワカメ星人。すごい記憶の書き換え(大笑)

やれることは何でもやってみようという、青木さんの無鉄砲振りを書いてみました☆
これ、本来はすっごく危険な行為なんですけどね、
MRI画像に貝沼が出てきたくらいでぶっ倒れて入院した薪さんに、鈴木さんの脳を見せた青木さんならやりそうじゃないですか? あの時の青木さん、第九に入ってまだ1週間くらいでしたよね? すごくね? 
原作青木さんの無鉄砲振りにはとても及びません。(笑)

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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