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鋼のこころ(1)

 リクエストの記事に、投票フォームを追加しました。
 途中経過なんですけど、『スナックで女装、捜一or第九を接待』に7票、って!!(爆笑)
 なんてこのブログに相応しい結果なんでしょう。

 そうですよね。
 みなさん、楽しくて笑える話が読みたいんですよね。
 原作が辛いから、二次創作では笑いたい。当然のことだと思います。

 …………。(←不吉な沈黙)
 この話、アップするの止めたほうがいいかしら。





鋼のこころ(1)





 月に2回から3回の割合で、岡部は金曜の夜に室長の自宅を訪れる。
 定例会と称されるこの飲み会は基本的には自由参加だが、せっかくの金曜の夜に上司の自宅に来たがる部下はいない。ましてやこの上司には、仕事でさんざん苛められている。プライベートの時間まで、室長の嫌味と皮肉を聞く気にはとてもなれない、というのが彼らの率直な意見だ。
 さらに付け加えるなら、一人暮らしの男の家に楽しいことがあるとは思えない。年頃の娘さんがいるとか、料理上手な奥さんがいるならともかく、出来合いの惣菜やつまみで男ばかりで酒を飲むなんて。だったらいつもの居酒屋で、気の許せる仲間と上司の悪口で盛り上がったほうがはるかに楽しい。

 部下たちはそう考えているのだろうが、実際は少し違う。
 仕事中の室長はたしかに怖いが、プライベートではそうでもない。私服姿の薪はスーツを着ているときよりずっと親しみやすいし、態度も言葉もくだけていて話も面白い。なによりも、その料理の腕前は素晴らしい。壊滅的な味覚の持ち主である母親と二人暮らしの岡部には、薪の家庭的な料理はとても魅力的だ。

 今日は岡部のリクエストで、鯛めしを作ってくれた。先日、岡部の母親が作った猫の餌のような代物とぜんぜん違う。岡部はもう少しで、家庭での鯛めしはこういうものなのだ、と思い込まされるところだった。
 出汁の効いた鯛めしに、季節に合わせた冬瓜の吸い物と茄子の揚げ浸し。牛肉のごぼう巻きと口直しのきゅうりの酢の物。その辺の料理屋より遥かに美味い。これを食べる機会を逃すなんて、バカな連中だ。

「何杯食うんだ、おまえ」
 薪の険悪な口調は、岡部に対して向けられたものではない。もうひとりの部下に対してのものだ。
「だってこれ、すっごい美味しいんですもん。釜ごと抱え込みたいくらいです」
 岡部と低レベルのケンカに発展しそうなことを言っている男は、第九のいちばん若い捜査官だ。岡部よりも身体が大きく、年は13歳も下だ。部下の中でこの飲み会に積極的に参加してくるのは、この青木という男だけである。
 青木は岡部以上に薪の料理に魅力を感じているらしく、この金曜日の定例会以外にもしょっちゅうこの家に出入りしては食事をしていくようだ。
 いつの間にか食器棚には、青木の専用の茶碗や箸が置かれているし、大きな体格に合わせたエプロンまである。食事の用意を手伝ったり後片付けをしたりは青木の仕事だから、そのときに使っているのだろう。

「岡部のお母さんの分もあるんだぞ。野菜をもらったお礼に、持って行ってもらおうと」
「最初に取り分けて置いてくださいよ。もう手遅れですよ」
「手遅れって……嘘だろ」
 釜の蓋を開けてみて、薪はがっくりと肩を落とす。自分は最初の1杯しか食べていないのに、知らないうちにお釜が空になっているのはいつものことだ。

「悪い、岡部。お母さんへのお礼、別のものでもいいか?」
「気を使わんでくださいよ。家庭菜園はお袋の趣味なんですから。逆に助かってますよ。自分の家だけじゃ食べきれないですから。精魂込めて作ったものを畑で腐らすのは忍びないですしね」
「こないだもらったカボチャで、雪子さんにパンプキンパイを焼いたんだ。冷凍してあるから、よかったらそれで」
 薪は料理も上手だが、パイやケーキも作れる。日本舞踊と生花はウソだったが、料理教室は通っていたのかもしれない。口に出したら殴られるだろうが。

「喜びます。お袋も甘いものは大好きですから」
「薪さん。オレも甘いもの、大好きなんです」
 岡部の母親に便乗して、後輩がデザートを要求している。まったく、こいつはいつの間のこんなに図々しい男になったのかな、と岡部は首を傾げた。
「砂糖でも舐めてろ」
 青木の言葉に、薪はムッと眉をひそめて、とびきり意地悪な表情で切り返す。すっかり見慣れた光景だ。
「イヤですよ、カブトムシじゃあるまいし。せめてガムシロップにしてください」
「ぷっ。変わんないだろ、それ。砂糖とどこが違うんだ」
 青木のとぼけた答えに吹き出しつつ、冷蔵庫からパイを取り出す。
 このひとは、言ってることと正反対の行動をとるのが得意だ。今日だって甘い物好きの部下のために、準備万端整えていたのだ。

「岡部も食べるか?」
「はい、ぜひ」
 市販のケーキは買ってまで食べたいとは思わないが、薪の作る菓子は甘さが抑えてあって美味い。作る本人がバターや生クリームが好きではないから量を調整しているそうで、その分軽くてくどくない。日本人好みのスイーツだ。

 パイを持ったまま、薪はじっと青木を見る。
 青木は黙って席を立って、コーヒーの用意を始める。この辺は以心伝心というかよく仕込まれているというか、もともと青木はよく気が利く男だが、薪に関してはその才覚を遺憾なく発揮しているようだ。
 ほんのさりげない仕草からも、薪が欲しがっているものを見事に当ててみせる。最近は、付き合いの長い岡部でさえ読み取れない細かいニュアンスを肌で感じ取っているようで、岡部は薪のいちばんの理解者というお株を奪われつつある。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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