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鋼のこころ(4)

『ナルシストの掟』というお話を書いてます。
 今朝の2時半から書き始めて、主要部分が終わりました。あとは穴埋め作業に入ります。これでやっとブログ様巡りと、コメントのお返事ができます。(^^

 朝食の支度をしようと、階下に下りて行ったら。
 お義母さんが朝食を作ってくれてた☆(うちは義母と同居)
「しづちゃん、仕事、大変なんでしょう? 夜中まで起きて、可哀想に。ムリしなくていいから、こっちはあたしに任せて!」
 ……すいません、お義母さん……何日か夢中でキーボード叩いてたのは、仕事じゃなかったの。 事務所でヘンタイ小説書いてて、ごめんなさい……。(←口が裂けても声に出せない謝罪)
 今日は真面目に仕事します。





鋼のこころ(4)





 岡部の質問に青木が答えを返してきたのは、2ヵ月後のことだった。それも言葉ではなく、行動で返してきた。
 その回答に、岡部はぐうの音もでなかった。正直、こんな答えが返ってくるとは思っていなかった。

「ったく。無茶しやがって」
 長野の市民病院の集中治療室で意識を取り戻した青木に、岡部は苦く笑ってみせた。
「すみません、ご心配かけて」
 青木は、全身を包帯でぐるぐる巻きにされている。重度の凍傷のためだ。
 こいつはもう少しで死ぬところだった。青木だけではない。普通なら一緒にいた薪もICUにいるか、下手をすればこの世からいなくなっていたところだ。

 ふたりは捜査のための遺体を引き取りに行った帰り、長野の山中で猛吹雪に遭った。極限状態の中で、青木は身を挺して薪の命を救った。つまりこれが、2ヶ月前の岡部の問いに対する青木の答えということだ。
「おまえが取った行動は、職務規定に反する行為だぞ。ああいう場合、まずは自分の身の安全が最優先だ」
 岡部でも同じことをしたかもしれないが、まだ捜査官になって2年目のこいつに、あれだけのことができたとは驚きだ。発想も体力も根性も、第九職員に必要な資質を備えつつあるということか。

「それはわかってましたけど。薪さんの命が危ないって思ったら、身体が勝手に動いちゃったんです」
 しかも、こいつの場合は他の職員にはない原動力がある。薪が室長でいる限りは、その動力源は尽きることがないと思われた。
「そんなに好きなのか? 薪さんのこと」
「あのひとが死んだら、世界が崩壊します。瓦解した世界では、オレは生きていけません。まだ青二才(ヒヨコ)ですから」
 包帯だらけのミイラ男は、雰囲気で笑ってみせた。

「薪さんには、オレがICUにいることは内緒にしてくださいね。オレがしたことも、言わないでください。きっと怒られちゃいますから」
「あのひとが怒ったら怖いからな」
「ええ。もうブリザードはこりごりです。今度こそ凍死しちゃいます」
 冗談を言う余裕があるのは、青木が薪の無事を知っているからだ。
 目覚めると同時に確認したそうだ。気分はどうかと尋ねる看護師に、「薪さんは無事ですか?」と逆に訊いて、彼女を苦笑させたらしい。
 面会を許してくれた看護師から、岡部はその話を聞いてきた。まったく、常識はずれというか青木らしいというか。薪が絡んだ途端、この男は普通の枠から逸脱してしまうようだ。

「岡部さん。お願いがあるんですけど」
「なんだ」
「今夜、薪さんの傍についててあげて欲しいんです。さっき看護師さんに聞きました、熱が高いって。うなされるようだったら、手を握ってあげて」
 2分だけと限られた面会時間の中で、薪のことばかり気にしている。本当におめでたい男だ。自分のほうが風邪をひいただけの薪より、ずっと重症なのに。

「わかったよ。薪さんのことは俺に任せろ。だから早く元気になれ。元気になって、褒美にキスでもしてもらえ」
 ミイラ男の耳元に口を寄せて、声を潜めて激励の言葉を掛ける。怪我の回復には、早く治すぞという意欲が大切だ。そのモチベーションを上げるには、これが一番だ。
「は?」
「もう一押しってところだ。がんばれよ」
「あ、あの、岡部さ……」
 青木の声を背中で聞いて、岡部は病室を出た。時間切れだ。青木がICUを出たら、ちゃんと話をしてやろう。

 2ヶ月前の夜。
 岡部はふたりの仲を裂こうとして、青木にあんな話をしたのではない。青木の気持ちを確かめようとしただけだ。

 青木がどこまで本気で薪のことを想っているのか、確認しておきたかった。
 何故なら、肝心の薪の気持ちが揺らいできていたからだ。恋に落ちるのも時間の問題、というより本人が意識していないだけで、とっくに心を奪われているのではないかと思われた。
 薪は最初から青木のことをずっと気にしていたが、それは亡くなった親友によく似た男だったからだ。
 それがこの2年の間に、少しずつ変わってきている。最近では彼の中に昔の恋人の面影を見ることなく、青木本人のことを意識している。

『僕のことを一番に考えてくれて、僕を元気にしてくれる』

 薪は青木のことをそう評価している。
 青木の自分に対する気持ちも性的な欲望も、全部知った上でのこの発言は、青木の求愛を受け入れようとしているとしか思えない。
 このままだと、いずれは行くところまで行ってしまいそうだ。それは普通の男女の恋愛に比べてひどく困難を伴う関係だ。

 ふたりの仲を邪魔する気はないが、そうなったときの覚悟が青木にあるのかどうか。
 相手の人生をまるごと背負って、相手を守り通す決心をしているのか。岡部は、そこが知りたかったのだ。
 あの時はずい分きつい言い方をしたが、他人に言われたくらいで揺らぐような気持ちでは話にならない。世界中を敵に回してでも、相手を守り抜くだけの決意をしていなかったら、薪を託すことはできない。娘を嫁に出す父親の心境みたいなものだ。

 薪は、自分が思っているほど強くない。特にこちらの方面に関しては、ひどく不器用で傷つきやすい。しかも長々と引き摺る。
 薪のこころの傷を増やすと危惧される相手なら、早いうちに芽を摘んでしまったほうがいい。自分の気持ちを自覚していない今なら、立ち直ることも容易い。そう考えていた。
 しかし、青木は見事に岡部の期待に応えてみせた。
「しゃあねえな。味方になってやるか」

 岡部にとって、ふたりは大切な仲間だ。
 ふたりとも傷ついて欲しくないし、仲たがいもして欲しくない。一般的に一番ベストなのは、それぞれ女性の恋人を見つけてくれることかもしれないが、この件に関しては岡部も他人のことは言えない。岡部の相手は、青木よりもひとの道に外れている。だから相手が同性であることに対して、四の五言うつもりはない。
 青木に覚悟を促すためにさんざん脅しを掛けたが、監査は一生続くものではないし、秘密だが、警察の中にもそういう関係を結んでいるものはけっこういる。バレたら懲戒免職だ、と青木には言ったが、現実はそうはならない。それだったら、とっくに間宮は警察庁にいないはずだ。こういうことは、隠蔽されるのが常なのだ。

「あとはあの人が、どれだけ素直になれるかだな」
 薪はへそ曲がりだ。きっと先は長い。
 恋人という関係になったとしても、すれ違いは多いだろう。好きなものを好きと言えない性格ほど、誤解を招きやすいものはないからだ。

 鋼のような心の持ち主でなければ、薪とは付き合えない。
 薪が背負った十字架ごと、薪を支えてやれるだけの強い精神力。自分の罪の重さを嘆く苦しみも、身を切るような悲しみも、迸るような激しさも。薪のすべてを受け止められるだけの、剛いこころ。薪の隣を歩きたいなら、それだけの強さが必要だ。
 まだまだ鍛える必要はあるが、とりあえずは及第点だ。これからも青木は成長するだろう。

「さて。天邪鬼の顔でも見てくるか」
 薪も今回は、青木に劣らず無茶をした。よく言ってきかせなければ。
 無謀な行動に対する説教の原案を頭の中で作成しつつ、岡部は上司の病室に向かった。



 ―了―






(2009.1)



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

岡部さん‥あなたは私の‥父です。

しづさん、こんにちは。

‥あのーー、岡部さんに謝っててもらえますか(-_-;)
変な邪推してしまいました‥。

ほんとうに人を愛し、信頼なさる方なんですね‥
かのんさんのバトンじゃないですけど結婚するなら岡部さんかな?

薪さんは‥一番好きな人とは結婚しないほうがいいっていいますもんね。

‥なーに妄想してんだ‥ですか?(笑)

近頃岡部さんのこと考えたりするとき何故か‥ヒュー・ジャックマンが
ちらつきます‥似てない‥似てないぞぉ‥似てませんよね(笑)


しかし、青木を岡部さんが認めても‥薪さん自身が認めていない‥

北アルプス‥いえ、ヒマラヤ山脈級の障害がありますねぇ‥
凍傷にかかり放題!

岡部さんは私の父だとのたまいましたが‥
‥すみません‥ずうずうしくも年下を捕まえて父などと‥


それから‥大丈夫ですか‥しづさん‥体壊さないでくださいよ。
出来れば点滴して差し上げたいくらいです。

実は点滴するの大好きなんです!で、自分で言うのもヘンですが、
上手です‥痛くないですよ♡私が刺すと。

何もしてあげられないので、しづさん専属のナースに就任いたします。勝手に(笑)

では、また。失礼しました。
ruruでした。

追記です。大丈夫ですかと言いながらまたコメしてしまって‥
ごめんなさい‥お忙しいのに。
私へのレスなんか気にしないでくださいね(^-^)


管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

ruruさんへ

ruruさん、いらっしゃいませ~。

> ‥あのーー、岡部さんに謝っててもらえますか(-_-;)
> 変な邪推してしまいました‥。

大丈夫!
岡部さんは、こころが広いですから。気にしてませんよ!
どっかの狭量な警視正とは大違いです!

> ほんとうに人を愛し、信頼なさる方なんですね‥
> かのんさんのバトンじゃないですけど結婚するなら岡部さんかな?
>
> 薪さんは‥一番好きな人とは結婚しないほうがいいっていいますもんね。

あ、ライバル(笑)
わたしも結婚相手は岡部さんです♪
薪さんはイヤです。疲れそう(笑)
青木くんとイチャイチャしてるのを、見ていたいです(^^

> 近頃岡部さんのこと考えたりするとき何故か‥ヒュー・ジャックマンが
> ちらつきます‥似てない‥似てないぞぉ‥似てませんよね(笑)

かっこよすぎじゃないですか?
ruruさん、目、悪い?(笑)

> 実は点滴するの大好きなんです!で、自分で言うのもヘンですが、
> 上手です‥痛くないですよ♡私が刺すと。
>
> 何もしてあげられないので、しづさん専属のナースに就任いたします。勝手に(笑)

わーい、専属看護師!
うふふ、岡部さんと薪さんの関係ですね(^^)

>追記です。

ruruさん、気を使いすぎですよ(^^;
しづはコメと拍手を栄養にして生きてるんです。(笑)
ありがとうございました。

Mさまへ

> 青木君・・・ワカメ星人のあとはミイラ男・・・ですか・・・。(笑)

受難、受難の日々です(笑)
わたしに目をつけられたのが運のツキだと思って、諦めてもらうしかないですね(←鬼)

> って・・・何の話?

えーっと、これは最終話の前編に出てくるエピソードなんです。
もう少し、お待ちください(^^

> 青木君の想い・・・岡部さんにも認められたられたんですね!
> あともう一押し・・・ですか!?

押せ押せ!
って、通勤電車ラッシュみたいですね(^^;

> 岡部さんはやっぱり薪さんの近くでよく見ていらっしゃるんだなぁ・・・と。
> これからも活躍させてくださいね!

ありがとうございます!
うちは岡部さん主役ですから(笑)


> ・・・でも、書きたいものがあると一気に書かないと・・・っていう気持ちになるの、わかります!
> (書きあげないとその世界に支配されちゃいますよね?)

そおなんですよお!
今回の話は、めちゃめちゃわたし好みの話で、止まんなくって!
肝心なシーンだけでも書いておかないと、色が褪めるというか温度が下がるというか・・・・・時間をおいてしまうと、出てくる言葉が違ってきてしまうんです。細かいところは後からでもいいんですけどね。Rだけは書いておかないと、ってそこ!?

ありがとうごさいました。
残りの部分は、Mさまのブログにお邪魔します(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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