23日目の秘密(10)

23日目の秘密(10)








 薪が目を覚ましたのは夕方だった。
 片付けが途中だったのを思い出して寝室から出てみると、キッチンと冷蔵庫はきれいに片付いていて、青木はいなかった。寝室に花を活けていたら眠くなって、そのまま寝てしまったのだ。置き放しだった百合の花は、浴室のバケツに活けてあった。

 久しぶりに熟睡した。
 シャワーで寝汗を流そうと、リビングを横切って風呂場へ向かう。
 ふと、サイドボードの上の写真に気付いた。
 百合の隣に立ててある。先刻、確かにしまったはずだ。……青木か。
「なんだ、見たのか」

 それは、女性の写真ではなかった。
 仲の良い友達同士のツーショット。2人とも男だが、片方の男性は黒髪で背が高く、もうひとりは亜麻色の髪で線が細い。在りし日の薪と、その親友だった。
 鈴木がふざけて後ろから薪に抱きついている。
 第九の発足当時、これは雪子が撮ってくれた写真だ。昔から、シャッターチャンスは逃さないのが雪子の主義だ。それが原因で後々薪はひどい目に遭うのだが。それはここでは置いておこう。

 ふたりとも、極上の笑顔で写っている。
 特に薪の笑顔は最高で、それはもちろん彼の背後にいる人物が引き出したものだ。自分の首に回された鈴木の腕に華奢な両手をかけて、嬉しそうに笑っている。

 ひと目で。
 たった一瞥しただけで、薪の気持ちが分かってしまうような写真だった。

 しばらくの間、薪はその写真を手にとって見つめていたが、やがて元通りの位置に戻すと、百合の花に顔を寄せて匂いを嗅いだ。今日は、これから行きたいところがある。
 シャワーを浴びて、出掛ける準備をする。
 髪を梳かし、黒いスーツに黒いネクタイを締める。机の引き出しを開けて、奥のほうに隠すように置いてあった小箱を取り出し、中に入っていた指輪を左手の薬指にはめた。細い指にプラチナの輝きがよく似合う。
 その手に百合の花束を持って、薪は家を後にした。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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