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ナルシストの掟(7)

 ちょっと私信です。

 K24さん。
 あのネタ、使っちゃいました。事後承諾になりまして、ごめんなさい。
 でも、サプライズのほうが喜んでもらえるかと(^^
 お怒りでしたら幾重にも膝を折りますので、どうかお許しを。




ナルシストの掟(7)






「3番のひと。5番のひとの手にキスする!」
「4番! 6番のひとを肩車!」
「2番の人! 4番のひとを膝枕して、耳掃除をしてあげる!」
「5番! 1番のひとをお姫様抱っこして20回転!」
「4番のひと! 3番のひとの胸に顔を埋める。3番はそれを抱きしめる!」
「1番のひと! 2番の人とメリージェーンを踊って!」
「6番! テーブルの上で女豹のポーズ!」
「6番のひとは5番のひとの太腿にキスを」
「ちょっと待てえ!!」
 棒が引かれるたびに、何故かずっと同じ人物が奴隷になっている。

 曽我の手にキスをさせられて、青木に肩車をされて天井のライトに頭をぶつけた。
 小池の耳掃除をさせられて、腰の辺りを撫で回された。
 今井に抱き上げられてくるくると回り、アルコールの作用もあって一緒に床に倒れこんだ。
 宇野の頭を胸に抱きしめたら、何故だか鼻血を出されて、スパンコールの蝶が一部赤くなった。

 ぴったりと身体を合わせるチークダンスを竹内と踊りだすと、気を利かせた店のスタッフがミラーボールを回してくれた。おかげで店中の客に注目されてしまい、恥ずかしさに悶死しそうになったので、防衛本能に基づいてフェラガモの靴を5回くらいヒールの踵で踏んでやった。ザマーミロ。

 テーブルの上に四つん這いになって、背中を反らせるケモノのポーズをとらされたあと、小池にスカートの中に顔を突っ込まれそうになって、とうとう薪は叫んだ。

「なんで僕ばっかり!?」

 もちろん、この百発百中の指名には裏がある。
 あらかじめ、第九の全員で合図を決めておいたのだ。1を引いたら右の耳、2だったら左耳。3だったら鼻を触り、4だったら顎を触る。王様になった人間は、それらの情報をもとに薪の番号を推測する。部外者は竹内だけだからその確率は二分の一だが、彼の隣に座った小池がこっそりと竹内の番号を盗み見て、その番号に該当する場所を左手で示す。最終的には、薪にすべての指名が行くようになっているのだ。

「やった、俺、王様!」
「あんまりえげつないこと言うなよ、小池」
「酒の席は無礼講だろ。じゃあ2番のひと! 上半身ハダカになって!」
「えっ」
「あれ? もしかして、薪さん?」
「かわいそー。でも、これはゲームですから」
「そうそう。思い切って脱ぎましょう」
「だ、だって、脱いだらバレ……」
「上半身がイヤなら、下半身でもいいですよ」
「おまえら、いい加減に……!」

 カンのいい薪のこと、これくらいのカラクリはすでに見抜いているだろうが、自分の正体をバラすわけにはいかないから、こうして言いなりになっているのだろう。第九の面々にもそれは分かっているが、とりあえず今が楽しければいい。後でどれだけ苛められてもいいから、今までの恨みを晴らすことで、彼らの意向は一致したらしい。

 アイコンタクト3。
 青木。おまえもグルだったんだな。
 すいません。先輩たちに言われて、仕方なく。
 言い訳無用! おまえとは別れる!
 そ、それだけは~~~!!
 じゃあ、なんとかしろ!
 ムリですよ~~!

 ここに岡部がいれば、連中を諌めてくれたはずだが、ストッパーのない状態でアルコールの入った彼らを止めるのは、青木には不可能だ。

「薪室長。滝渕です」
 竹内の囁きに、薪は視線だけを店の入り口に走らせる。
 被疑者の確認は一瞬で済んだ。脇田から預かった資料の中の写真によって、薪の脳裏には、はっきりと彼の顔が焼き付けられている。街中の雑踏ですれ違っても見つけ出せるくらい、明瞭に。
 滝渕謙三は53歳。白髪交じりの頭髪は短く、額に斜めに走った傷がある。いかにもヤクザ者、といった顔つきだ。身体は大きく、かなり太め。ずんぐりむっくりとした体型で、狸を思わせる。
 滝渕は両側に女をはべらせて、ウイスキーをロックで飲み始めた。両手とも4本しかない太い指には、金無垢の角ばった指輪。毛深い手首には、これ見よがしのロレックス。スーツもネクタイもブランド物だが、着ている人間は三流どころか最下層だ。

「おまえら、そろそろ帰れ」
 突然、口調を変えて、薪は言った。眼つきが、捜査官のそれになっている。
「なに言ってんですか。脱ぐのが嫌だからって」
「手品師の常套手段くらい、僕が知らないとでも思ったのか?」
 ソファの背もたれに背中を預け、薪は優雅に足を組む。細い顎を上げて周りを睥睨し、冷たい声で言い放つ。周りの空気の温度を自在に下げるのは、薪の得意技だ。
 アイメイクによって強調された眼力が、第九の部下たちに襲い掛かり、彼らの酔いは一気に醒めた。

「ヤバイです。薪さん本気で怒ってます。これくらいにしておいた方がいいですよ」
 青木が怯えきった口調で、皆の恐怖を煽る。青木の怖さが伝染した形になって、第九の面々は次々に席を立った。
「そ、そうだな。ぼちぼち引き上げるか」
「じゃ、竹内さん。俺たち、これで」
 そそくさと席を立つメンバーを見送るために、薪は立ち上がって出口の方へ歩いていった。レジの隣に立ってこちらを向いている薪の眼が、じっと滝渕に注がれているのを見て、竹内は微かな不安を抱く。

「青木。みんなと帰る振りして、おまえだけこっそり戻ってきてくれ」
「はい。そのつもりです」
 素早い返答に顔を上げると、青木は竹内と同じものを見ていた。青木も、薪の視線の意味に気付いたらしい。やっぱり、こいつは捜一向きだ。

 表面上はにこやかに第九の職員たちを見送って、薪はもう一度、滝渕のほうを見る。それを竹内は見ていた。
竹内の視界で、女の肩を抱いた滝渕の目と薪の視線が一瞬だけ、絡んだ。





*****


 作中のメリージェーンは、K24さんのアイディアです。
 K24さん、ありがとうございました。(^^

 『スナック女装』と『王様ゲーム』はこれでおしまいです。お楽しみいただけましたでしょうか?
 次の章からは、しづのシュミに走らせてもらいます。
 ええ、うちのお話は、ハラハラドキドキしなきゃつまんないでしょう?(笑)



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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