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ラストカット 前編(7)

 こんにちは。

 遅ればせながら、ご紹介です。
 K24さんが、うちのお話のオリキャラの新しいイラストを描いてくださいました。
 K24さん、いつもありがとうございます(^^

 あのヘンタイキャラが、あんなにカッコよく! しづは目が点になりました。
 あの顔で、あーんなことやこーんなことしてたなんて、って、作者が驚いててどうするよ。

 うちのお話を読んでくださってる方には、ぜひご覧いただきたいです。
 こちら からどうぞ。





ラストカット 前編(7)





「大丈夫ですよ。オレたちは死にませんから」

 うつむいた薪の鼻先に、小皿に乗った蜜柑が差し出される。オレンジ色の小房に、透明な液体がぽたぽたと落ちた。
「オレも岡部さんも、殺したって死なないです。オレなんか、あれだけ雪の中にいて、風邪もひかなかったんですよ。この腕の怪我さえなければ、薪さんよりオレのほうが元気なくらいです」
「そうですよ、薪さん。俺は捜一のターミネーターって呼ばれてたんですよ」
「ターミネーターと言うよりはキングコングって感じで、痛っ!」
 後輩の尤もな見解に、岡部は遠慮のない拳を青木の後頭部に叩き込む。怪我人に対する仕打ちとは思えないが、病院のごはんをお代わりするような非常識な患者には良い薬かもしれない。

 乱暴なんだから、と青木はぶつぶつ言いながら、小皿から蜜柑を取って食べ始める。薪の涙の味の蜜柑は、少し塩辛いはずだ。
「青木。それ、僕の鼻水ついてるぞ」
「眼から出でも鼻から出ても、体液に変わりはないんですけど。印象が違うのは何故なんでしょうね」
 そんなことを言いながら、平気で食べている。こいつには汚いという観念がないのかもしれない。

「そういえばおまえ、どうやって車の中から棺を出したんだ?」
 薪の頭脳を持ってしても、その方法は解らなかった。青木の腕の怪我から察するに、リアガラスを割って棺を取り出したと思われるが、あのときスパナのような工具の類は何も持っていなかったはずだ。まさか素手で割ったわけではあるまい。人間の手で簡単に割れるようなガラスだったら、それこそ欠陥品だ。

「そのことなんですけど」
 青木は急に言い淀んだ。ひどく神妙な顔つきになって、下を向いてしまう。
「オレ、祟られるかもしれません」
「祟られる?」
「足を持って叩きつけて、リアガラスを割ったんですけど。その時に首が飛んじゃって」
「おまえ、まさか……!」
 雪に埋もれた死体を掘り起こしている、青木の姿が脳裏に浮かぶ。
 死後硬直と絶対零度の雪の中でカチカチに凍りついた死体の足を持ち、車のリアガラスに何度も叩きつける。リアガラスは割れ、その衝撃で死体の首が飛ぶ。恨みがましい目をした女の首が宙を舞い―――。
 その光景を想像して、薪は青ざめた。いくら非常事態とはいえ、人間としてそれはしてはいけないことだ。

「何て事をするんだ!」
「薪さんの命には代えられないと思ったんです」
 青木はたしかに成長した。精神的にも強くなった。
 でも、こいつはもっとやさしくて良識がある男だったはずだ。強さを求めるあまり、大切なものを失くしてきてしまったのだろうか。

「おまえがそんなことをするなんて、信じられない」
「すみません。非常識だとは思ったんですけど」
「何て謝ればいいんだ……」
 自分を信じて大切な娘の遺体を預けてくれた、あの人の良い老夫婦に、何と言って詫びればいいのだ。
 いや、遺体は今井が返しに行ったと岡部が言っていた。ここで悠長に寝ている場合ではない。室長として、謝罪に行かなければ。

「まあ、代わりのものを用意するしかないでしょうね」
「代わり!? そんなもん、どこで調達する気だ!」
 青木は人が変わってしまったのだろうか。
 薪はいつも、MRI捜査に協力してくれる遺族に対する感謝を忘れるな、と部下に言い聞かせてきたつもりだった。青木はその気持ちを一番よく理解くれていると思っていたのは、薪の買いかぶりだったのだろうか。

「それが問題ですよね。友達にも、そんな商売に就いたやつはいないし」
「商売?」
 臓器売買は聞いたことがあるが、死体も扱っているのか。しかし、それは重大な犯罪だ。
「まあ、ネットで検索してみますよ。そうしたら同じものを用意してもらって」
「同じものなんかあるわけないだろう! 死体置場(モルグ)にも墓場にも、彼女の代わりはいないんだ!!」
「彼女? あれって女性だったんですか?」
 死んだらもう女ではないというのか。こいつはこんなに冷たい人間だったのか。
 第九での激務が、こいつの温かさを奪ってしまったのか。それとも―――僕への気持ちが、こいつを変えてしまったのか。
「当たり前だ。死んでしまっても、女性は女性だ」
 青木は、しばらくのあいだ黙り込んだ。ようやく自分がしてしまったことの罪深さに気付いてくれたのだろうか。

「……薪さん。なんか凄いこと考えてませんか?」

 突然、岡部が腹を抱えて笑い出した。病院だというのに大きな声で、涙目になるほど笑いこけている。
「さすが薪さんです。オレ、それは思いつきませんでした」
 青木も笑いを堪えている。身体に響くのか、笑いながら顔を顰めている。
 どうやら、青木が遺体でガラスを割ったと思ったのは、薪の早トチリだったらしい。しかし、あの場所に他に何かあっただろうか。
 リアガラスが割れるくらいの強度があって、足を持って首が―――。

「……地蔵か」
「そうです。石のお地蔵様です」
 あの田舎道には、ところどころに道祖神に見立てた石地蔵が祀ってあった。青木はそれを使ったのか。
「死体の首が飛ぶほど叩いたら、頭が潰れちゃうじゃないですか。MRIにかけることなんかできませんよ」
 それもそうだ。
 気付かなかったのは薪のミスだが、それにしてもこいつら。

「し、死体でガラスって……!」
「薪さんならではの発想ですよね。ぷくくくっ!」 
「突拍子過ぎるだろ、いくら薪さんでも!」
「そこが薪さんのスゴイところなんですよ。なんたって薪さんは天才ですから」
「「カンチガイの!」」
 ……何故そこでハモる。

 青木はとうとう痛みも忘れて、ゲラゲラと笑い出した。岡部に到っては、床に突っ伏してヒーヒー言っている。
「おまえらの気持ちはよーく分かった」
 地の底から聞こえてくるような上司の声に、岡部はぴたりと笑いを収めた。薪の周りの空気が、冷ややかなブルーに変わっていく。

「今回のこれは、『薪さんの勘違いベスト1』に輝くかもしれませんね。第九のみんなに話して、ランキングの順位を決めなおさないと」
 岡部は、そっとドアのほうへ後ずさった。目を逸らさずに少しずつ逃げるのは、熊に遭った時の対処法である。今回の恐怖は、それを上回るかもしれない。
「ね、岡部さ……あれ? どこ行ったんだろ?」
 岡部がドアの隙間から最後に見たのは、ベッドから下りて準備体操をする薪の姿だった。ドアを閉めた途端、ドカッ! という音とガン! という金属音、そしてドサッと何かが落ちる音が聞こえてきた。
 その後訪れた、怖いくらいの静けさ。岡部は廊下に立ち尽くした。
 そこに看護師がやって来る。食事の膳を下げに来たのだ。入院患者に明るく話しかける彼女の声が聞こえる。
 
「薪さん、青木さん。食事終わりましたか? あら? 青木さん、床で寝ないで下さいね。……なんで傷が増えてるんですか? 何があったんですか?」
「さあ。僕は眠ってましたから。寝ぼけてベッドから落ちたんじゃないですか?」
「まあ。困った人ですね。青木さん、起きてください」
 眠っているのではなく気絶しているのだ、という事実を果たして彼女に告げるべきか否か。岡部は命がけの選択を迫られていた。




*****



 リアガラスの件は解明したが、薪にはもう一つ気になっていることがあった。
 あの時、青木は自分より先に気を失ってしまったはずだ。それがどうして意識を取り戻したのだろう?
 なんとなく目が覚めたとか、都合よく木片が飛んできて青木に当たった、などということではあるまい。本人に尋ねても、よく覚えていないと言う。
 これは、自分の声を聞いた鈴木が助けてくれたのか、とついつい非科学的なことを考えてしまった薪である。

 薪がその本当の訳を知ったのは、それから半年も後のことだった。




―後編へ続く―



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

鍵拍手いただきましたAさまへ。

>勘違いしたまま進んでいく会話、が読んでいてとても面白いです(^o^)

ありがとうございます(^^
なんたってギャグなんで。笑ってもらえたら本望です。

しかし、このカンチガイは・・・・うちの薪さんて、本当は頭悪いんじゃ・・・・(^^;


>この勘違いを笑われたら…薪さん怒りますよね

いや、ていうか、薪さんがアホすぎるんで。逆恨みでしょう(笑)

>気絶してしまった青木は大丈夫でしょうか?続きも楽しみにしています!

大丈夫ですよ。
ギャグですから♪(この言い訳、すっごく便利だ)

Sさまへ

鍵コメいただきましたSさまへ。

初めまして。
拙作を読んでいただいて、ありがとうございます。(^^

(お許しをいただいてるので、一部引用させていただきます。)

>あおまきファンというわけではないのですが、薪さんの幸せを祈りつつ『秘密』を読み続ける一人です。

わたしもです!
わたしは、二次創作ではあおまきすとなんです。でも、原作ではそれは望んでません。もう、だれでもいいから薪さんを安らがせてあげて欲しい、昔のように笑って欲しい、と願っています。
でも、わたしの腐った目には、どうしても薪さんが青木くんを必要としているように見えてしまって、結局、あおまきすとなんです(笑)

>ずっと読み逃げしていてすみません。

そんなこと、お気になさらず!
読んでいただけるだけで、充分幸せです。
あ、でも、これからはSさまも読んでくださってるかしら、と思えますので、嬉しさ倍増です(^^

>さて、いよいよクライマックスですね。薪さんが落ちる瞬間を楽しみにお待ちしております。

落ちる・・・・落ちるんでしょうか、このひと・・・・。
なんかね、今、後編を読み直してるんですけど、ぜんぜんその気配が・・・・・ううーん。

>時節柄、風邪などお召しになりませんよう。

お気遣い、ありがとうございます。
はい、わたしは元気です。ホント、バカは風邪引かないを地で行ってます。何年前かしら、風邪で寝込んだの・・・・懐かしいわ・・・・・。


Sさま、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m

No title

徹夜明けで‥やっと参ることができました(^_^;)

しづさん、おはようございます!‥何故かHIGHでございます‥ふふふ‥

これこそ‥しづさんの作品だぁ‥と思いました。
しづさんらしい‥しづさんの‥勝手にそんなこと申しまして‥すみません。
間違ってたら‥違うよ!って言ってね(-_-;)

ギャグの中に織り込まれた薪さんの暴力的な行動が‥
たまりません!
これぞ青木いじめの真髄!

‥勿論、愛情の込められた‥‥うっ‥ですよね?
青木の相変わらずの間抜けさ加減が‥涙を‥さそう‥もう‥あんまり可笑しくて‥。

でも‥薪さん、武器はなんでしたか?
なにで青木を殴ったのでしょうか‥?
それが知りたいです!

‥まさか‥素手?いやいやいや‥青木の石頭を素手でなぐったりしたら、
キレイなお手に傷が‥
いけません!
しづさん、武器を持たせてあげて下さい!

私の大好きな‥ええ、大好きな‥マッドサイエンスティスト薪様でした。
ありがとうございました!

‥転がしてましたねぇ‥おやじじゃありませんでしたが‥青木をリアルに転がして‥(爆笑)
こんど、しづさん‥誰か‥おやじを転がしていただけませんか?‥ふっふっふっ‥
さようなら‥

会話のテンポが神すぎるwww

あ~おかしい~~めっちゃ笑いましたwww
青木がかわいそーwww
私、こういうギャグ大好きなんです(*^o^*)♪

しづさん、先日うちとこのゲームネタに、
「こういう言葉のお遊び(読者がカンチガイして、えええ~、ってなるやつ) が大好きで。」
というコメントをくださいましたよね!
で、このお話がま・さ・に!な感じで!
改めてしづさんとコハルの好み「似てる~♪」と嬉しくなっちゃいました(笑)

でも薪さんが泣き止んでくれて良かった!!
青木のおかげかな?
いや、薪さんのカンチガイのおかげかwww(ぷくくっ)
ふふふ、さすが岡部さんはいち早く脱出できましたね~♪
薪さんとの付き合いの長さでは青木より上ですからね~♪
てか青木がにぶいだけ?(笑)

とーっても面白かったですvvv
早くあと一つの謎が知りたいです!
あ、でもご無理なさらず!
お仕事めっちゃお忙しそうですから(><;
レスもお気遣いなく!放置歓迎!

ではでは★

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ruruさんへ

こんにちは、ruruさん(^^

> 徹夜明けで‥やっと参ることができました(^_^;)

え?徹夜ですか?
お仕事かしら・・・・大変ですね。


> これこそ‥しづさんの作品だぁ‥と思いました。

> ギャグの中に織り込まれた薪さんの暴力的な行動が‥
> たまりません!
> これぞ青木いじめの真髄!

うちのはドツキ漫才ですから!(爆)
楽しんでいただけたら嬉しいです(^^


> ‥勿論、愛情の込められた‥‥うっ‥ですよね?
> 青木の相変わらずの間抜けさ加減が‥涙を‥さそう‥もう‥あんまり可笑しくて‥。

愛情あるのかしら(笑)
てか、これって薪さんが間抜けじゃ(^^;


> でも‥薪さん、武器はなんでしたか?
> なにで青木を殴ったのでしょうか‥?

素手です。
うちの薪さんは空手の有段者ですから。それで、白魚のような手?・・・・いいのよ、ギャグだから。(--;)

> しづさん、武器を持たせてあげて下さい!

いや、それ、犯罪になっちゃいますから。
青木くん、ICUに逆戻りしちゃいますから。(笑)


> ‥転がしてましたねぇ‥おやじじゃありませんでしたが‥青木をリアルに転がして‥(爆笑)

すぎさんのとこの、オヤジ転がしですね!
もー、サイコーおかしかったです、あの命名!!(>∇<)


> こんど、しづさん‥誰か‥おやじを転がしていただけませんか?‥ふっふっふっ‥

うちの薪さんが転がすとしたら、間宮ですね。
ええ、もう物理的に投げ飛ばしますね(笑)

ありがとうございました(^^

コハルさんへ

いらっしゃいませ、コハルさん!

> あ~おかしい~~めっちゃ笑いましたwww

ありがとうございます!
結局、この話もギャグなんですね。最終話までギャグ(笑)


> 改めてしづさんとコハルの好み「似てる~♪」と嬉しくなっちゃいました(笑)

コハルさんのゲームネタ、面白かったです!!!
三国志と戦国無双でオチが反対、というのに思い切り引っかかっちゃいました。笑いました~!


> でも薪さんが泣き止んでくれて良かった!!
> 青木のおかげかな?
> いや、薪さんのカンチガイのおかげかwww(ぷくくっ)

一応は青木くんの言葉で泣き止んだんですが、その後の展開で見事に余韻が払われましたね。
青木くん、せっかく決めたのに。(笑)


> 早くあと一つの謎が知りたいです!

はい。
こちらがメインなので、後編の終わり近くに出てきます。
そんなに大層な謎じゃないんで、あんまり期待しないでください(^^;

> あ、でもご無理なさらず!
> お仕事めっちゃお忙しそうですから(><;
> レスもお気遣いなく!放置歓迎!

いつも気を使わせてしまって、すみません。(と言いつつ『放置歓迎』に爆笑)
ありがとうございました(^^

Sさまへ

鍵コメントいただきました、Sさまへ


> こちらの王様薪さんが忠犬青木に「落ちた」素振りを見せるはずないですね。(←コラッ!他人様のキャラに何てことを!)

はい!
うちは女王様とドレイですから!(なに、そのヘンタイみたいな関係)



> もう師走ですね。
> 何かとせわしくなりますが、ご無理をなさいませんよう。

ありがとうございます。
Sさまも、お体に気をつけて。ご自愛ください。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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