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ラストカット 後編(6)

 みなさまにいただいた拍手が、6000を超えました(〃∇〃)
 ありがとうございますっ、とっても嬉しいですっ!

 読んでくださるだけでもありえないくらい幸せだと思いますのに、(いや、ここがよそ様のように、ロマンチックでラブラブなあおまきさんならそこまで卑下することもないと思うのですが、置いてあるものがモノだけに。原作のイメージぶち壊してすみません(^^;)
 ひと手間かけてぽちっと押していただける。そこに、励ましや共感のお気持ちを感じて、じーんとします。
 心が温かくなって、元気が出ます。


 うちは本当に、細かい文字ばっかりずららっと並んでる地味なブログで。
 しかも拙い小説しか置いてなくて、レビューとか考察とか、人様に喜んでいただけるような記事もなくて、こんなんでブログやってていいのかしら、と思いかけたこともありましたが。
 みなさまの励ましのお陰で、ここまで続けてこれました。
 とてもとても、感謝しております。

 これからもよろしくお願いします!

(あとでちゃんと、お礼記事書きます。リクエストの投票フォームも設置しますので、よろしかったらご参加ください)



 お礼の気持ちを込めまして。
 と、思ったらなんかビミョーな展開だな。(笑)





ラストカット 後編(6)





 雪に彩られた日本庭園はたしかに美しくて、自然が作り出す芸術を好む薪の心を捕らえるに充分な魅力を持っていた。

 1歩外へ出ると、当たり前だが気温は低い。こんなに雪が積もっているのだ。
「さむ」
 大浴場までだから、と薪は半纏を着てこなかった。青木が自分の半纏を着せてやろうとすると、おまえが寒いだろ、と手を止められた。
「オレは平気ですよ」
「部下に風邪を引かせるわけにはいかん」
「それじゃ戻りましょう。薪さんが風邪を引いちゃいますよ」
「いやだ。あそこの獅子脅しが見たいんだ」
 獅子脅しは中庭の奥のほうだ。けっこう距離がある。

「こうすればいいんだ」
 青木の半纏の片袖だけを脱がせると、薪はからだをぴったりと寄せてきた。
「な? あったかいだろ」
 亜麻色の髪から立ち上ってくる甘やかな香り。温泉のいい匂いがして、きめ細かな肌がとてもきれいで――人目もはばからず、抱きしめてしまいそうだ。

 理性を働かせるために、自分の半纏の中の人物から目をそらせた青木は、中庭に面した廊下に、さきほど部屋に来た仲居の姿を見つけた。
 ひとつの半纏にふたりで入って、中庭の散歩をする。
 これはどこからどう見ても、仲の良い夫婦か恋人同士だ。仲居の誤解はますます深まったことだろう。もう薪が男だということは、隠し通さないとヤバイ状況になってきた。

 雪の中をゆっくりと歩いて、薪は幸せそうな笑みを浮かべる。
 青木に対してこんな風に微笑んでくれたことはないが、美しい風景や動物などにはやさしそうに微笑む薪である。その十分の一でも第九の職員に分け与えて欲しいところだ。

 獅子脅しを見たいという薪の好奇心を満たしているうちに、ふたりの体はすっかり冷えてしまった。急ぎ足で館内に戻り、大浴場に直行する。
 大浴場は、意外なくらい空いていた。青木たちの他には、2,3人の客がいるだけである。この宿は全室に露天風呂が付いているから、1階にあってあまり眺めの良くない大浴場は人気がないのかもしれない。
 掛け湯を使ってから、まずは体を洗う。サルの温泉とは違うから、ここではきちんとルールを守らなければならない。薪もちゃんとタオルを腰につけている。薪は常識がないわけではなく、仲間同士というカテゴリーの中ではあまり羞恥心が働かないだけなのだ。

「背中、流してあげましょうか?」
「うん」
 薪の背中は細くて小さい。真っ白ですべすべしている。男にしてはウエストのくびれが強くて、きれいな腰骨へと滑らかな曲線を描いている。
 これを部屋の中で見せられたら飛びかかってしまいそうだが、明るい風呂場で周りに人もいる状態だと理性もきちんと働くようで、昼間のようにタオルを取ったらヤバイという現象は起きずに済んでいる。

「もういいぞ。今度は僕が、ってこれ、どう考えても僕のほうが損だろ」
 青木の背中を洗いながら、なにかぶつぶつ言っている。
 人間でかけりゃいいってもんじゃないとか、男はガタイじゃなくて中身だとか、これが薪でなかったら「たかが背中を流してもらうくらいのことで四の五言われる筋合いはない」と断るところなのだが。
 薪に背中を流してもらえるなんて、青木は天にも昇りそうな気持ちである。何日もかかってデートプランを組んだ甲斐があった。

「ほら、終わり」
「わ!」
 ざばっと頭から、盥のお湯を掛けられた。
 眼鏡も髪も、びしょびしょになってしまった。手櫛で前髪を上げ、眼鏡を外す。
 ひどいですよ、と振り返ると薪は意地悪そうに笑っている。
 ――はずだった。

「薪さん?」
 薪は、びっくりしたような眼で青木を見ていた。
 亜麻色の瞳が感傷を含む。切なげに寄せられた眉根。小さく開かれたくちびる。
「そんなに鈴木さんに似てますか?」
 はっとしたような顔になって、薪は横を向いた。黙って湯船のほうへ歩いていく。つまり、それは肯定の意味だ。
 青木はわざとその後を追わずに、髪を洗い始めた。洗髪を済ませて顔を上げると、鏡の中から青木のほうを見ている薪の顔が見えた。
 眼鏡をしていないので、表情はわからない。でも予想はつく。きっと誰かを思い出して、切なそうな顔をしているのだ。
 
 広い湯船をいいことに、青木は薪と離れて湯につかった。
 薪がちらちらとこっちを見ている。甘さと愁派を含んだ視線。
 青木は、薪の視線に気づかない振りをする。薪が今見ているのは自分ではない。だからここは知らない振りだ。

 ときどき、薪はこんな眼で自分を見る。
 死んだ親友に生き写しだと、何度も言われた。昼寝から覚めたときには、100%間違えられる。それはもはや、間違いとは言わない。
 薪は、彼に恋をしていた。いまでも夢中で恋焦がれている。
 薪が自分を突き放さないのは、その彼に顔が似ているからだ。だから薪の前で、眼鏡は取りたくなかったのに。

 青木は曇りを覚悟して眼鏡をかけ、前髪をきちんと後ろへ撫で付けた。鈴木との印象を違えるためにも、眼鏡は必需品だ。
 そのうち冷静さを取り戻したのか、薪は青木の方へ寄ってきた。
「悪い」
 俯いて、小さな声。このひとが謝るなんて、転変地異の前触れではないか。
 
「何がです? あ、まさか薪さん、オレの分もお饅頭食べちゃったんですか?」
 本当は、わかっている。
 薪は自分の気持ちを知っている。鈴木と間違えられる度に傷ついている青木の心を、わかってくれているのだ。
 でも、鈴木と自分が重ねられていることに青木が気づいていることを認めてしまうと、薪がまた自分自身を責めてしまう。

「おまえじゃあるまいし。って、ひとつしか残ってなかったじゃないか」
「あれは2人で1個なんです」
「じゃあ僕は中身のアンコで、おまえは皮だけだな」
 青木のとぼけた会話に乗ってくれる。エスプリのきいた意地悪が、薪の会話の基本である。
「ずるいですよ、平等に分けましょうよ。あのお饅頭、皮は薄くてアンコがたっぷりなんです。甘さを抑えた漉し餡で、皮には味噌の風味が」
「なんで中身知ってんだ?」
「あ」
「何が平等だ! やっぱ、食ってんじゃないか!」
 ざばざばとお湯を掛けられる。青木はもう一度眼鏡を外すが、薪の表情が変わることはなかった。

「夕飯、楽しみですね」
「おまえはホントに食うことばっかだな。色気より食い気か。子供だな」
「ここは山の中ですから、国産マツタケの土瓶蒸しが名物料理みたいですよ」
「マジでか!? よし、早く食べに行こう!」
「ひとのこと言えませんよね」
 
 薪はさっさとお湯から上がって、浴室を出て行った。
 からりと引き戸を開けたとき、すれ違った中年の男が驚いたような顔で薪を見た。浴室の入口に立ったまま、男は薪の裸を目で追っている。
「……ちっ」
 青木は舌打ちして湯船から上がり、薪の後を追いかけた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

> ここは、「最後の晩餐」で青木が顔を洗った時の雪子を思い出しますね。

そうそう、初めは「ちょっと似てるわよね、あの子」くらいだったのに、あの時がっつり重ねられてしまって、驚きました。 あ、これ、うちの薪さんだなー、やばいなー、って。(^^;

あそこで雪子さんが赤くなったのは、鈴木さんを思い出したからですよね。 
でも、雪子さんは決して青木さんを鈴木さんの代わりにしたわけではないと思います。 薪さんみたいに何度も名前を呼び違えたりしないし。

しかしですね、
うち薪さんは付き合い始めの頃は完璧に身代わりにしてて~~、
いや、本人もわざとやってるわけじゃないんですけど、でも傍から見たらそうとしか見えないんで、
恋人同士になって最初の1年くらいは地獄のようでございます、すみません。


青木さんは人間的にも優れた方なので、容姿が鈴木さんにまったく似ていなくても、薪さんが好きになった可能性はあるかもしれませんが。 恋愛感情を持ったか否か、となると、薪さんが同性愛者でない限りは否だったであろうと思います。 
こちらの薪さんは異性愛者の設定で書いてますので、鈴木さんに似てない青木さんは部下としてしか見れません。 でも、似てたら似てたで代わりにされて、この頃の青木さんはとっても可哀想です、うけけけ。


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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