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言えない理由 side A (2)

 すみません、お願いです。

 しづはアタマ悪い上に家が貧乏で、大学に行ってないんです。なので、大学の授業のこととかゼミのこととか、よくわからないのです。(←だったら調べろ←調べたんだけど、よくわかんないの!)
 その辺、かなーりいい加減に書いてしまってるので、おかしいところがあったら教えてください。ストーリーに影響しない範囲で直しますので。
 よろしくお願いしますm(_ _)m








言えない理由 side A (2)






 ――昨夜の鈴木はすごかった。
 まだからだの奥がジンジンいってるみたいだ。セックスはそんなに好きじゃないけど、鈴木にしてもらうと愛されてるって気がして、すごく幸せな気分になる。
 今夜も会えるかな。……あ、だめだ。ゼミがあるんだっけ。面倒だな。
「薪くん」

 遅くなってもいいから、ちょっとだけでも逢えないかな。逢いたいな。キスだけでもいいから、したいな。
 机の下にこっそりと忍ばせた携帯で、鈴木にメールを打つ。
 ―――アイタイ。
「薪くん!」

 厳しい声に我に返って、僕は顔を上げた。
 いつも僕に目を掛けてくれる葛西教授が、渋い表情でこちらを見ていた。
「このレポート、書き直しだ。君がこんな完成度の低いものを持ってくるとは思わなかったよ。身体の調子でも悪いのか?」
「いえ」
 しおらしく答えながらも、僕はちょっと不満だった。
 今日の講義は終わって、ゼミ仲間はみんな近くの喫茶店で時間を潰してる。僕だってコーヒーぐらい飲みに行きたいのに、こうして教授に呼び出されてお説教なんて。

「この頃成績が落ちてるぞ。先月の定期試験、15位だったな。君がトップから落ちるなんて、何かあったのか」
「すみません。気をつけます」
 レポートの不可を食らったのも首席から落ちたのも初めてのことだったけど、そんなことはもうどうでもよかった。
 鈴木のことしか考えられない。他の事なんてどうだっていい。

 僕はただ、鈴木が喜んでくれることだけ、鈴木が僕を愛してくれることだけを考えていたい。鈴木のためなら何だってする。どんなことだって受け入れる。もしも鈴木が望むなら、大学を辞めたって平気だ。
 だいたい、勉強なんてもともとそんなに好きじゃない。他に面白いことがないからやってただけで、そんなつまらないことをしているヒマがあったら、鈴木の好きな料理の一つも鈴木のお母さんに習ったほうがいい。
 今夜のゼミだって、僕がいなきゃ進まないってわけじゃない。前回も休んじゃったから今週は出ようかと思ってたけど、やっぱり気が乗らない。

 てか、鈴木に会いたい。
 
 薄い携帯が手の中で震えて、メールの着信を知らせる。そこに彼の名前が表示されるだけで、無機質な金属の塊が、まるで宝石のようにキラキラして見えるのはどういう作用なんだろう。

「あの、教授。今日のゼミなんですけど、ちょっと用事があって。抜けちゃダメですか?」
 他の学生から非難の声が上がるほど僕に期待を掛けてくれていた教授が呆れた顔をしていたけど、そんなことは気にもならなかった。
 教授の承諾をもらう前に、僕は研究室から出た。教授は追いかけては来なかった。
 こんなことを繰り返していると見放されてしまうかもしれない、と頭の隅にちらりと浮かんだけれど、そのときの僕には今夜の夕食のメニューの方が大事だった。

 とにかく、鈴木に逢いたくてたまらない。
 今夜は鈴木の好きなハンバーグにしよう。ケチャップとソースで煮込んだやつ。鈴木の味覚は子供に近いから、ケチャップ多めが好きなんだ。人参は少なめに、玉ねぎは細かく、挽肉は潰しすぎないで荒く食感を残して。
 足取りも軽く夕食の買い物をし、鼻歌交じりで料理を作る。鈴木のために何かできることがうれしくて、ひとりでいても自然に笑顔になる。端から見たら、何をそんなに浮かれてるんだと呆れられそうだが、約束の時刻が迫るにつれて踊りだす心を止めることはできない。

 チャイムが鳴って、鈴木の声がする。
 走って行ってドアを開ける。ドアを閉めると同時に、玄関口で鈴木に抱きついてキスをねだる。鈴木はやさしくキスしてくれて、僕をぎゅっと抱きしめてくれる。その瞬間、僕は世界でいちばん幸せな男になる。

「鈴木。今日は何時ごろまでいられる?」
「おまえが泊めてくれるんなら、明日の朝まで」
「僕はいいけど、鈴木のうちのひとに怒られないか?」
「薪と一緒だって言えば大丈夫。薪は絶対の信用があるから。オレの言うことよりおまえの言うことを信じるもんな、うちの親」
 たしかに。
 鈴木とこうなる前は、鈴木が彼女と夜を過ごすときのカモフラージュに、僕は何度も利用されていた。僕が1本電話を掛ければ、鈴木は無罪放免になるらしかった。

 鈴木と朝まで過ごせるのが嬉しくて、僕は自分でも恥ずかしいくらいはしゃいだ気持ちになる。食事もそのあとのことも、すごく楽しみだ。
「あ、ダメだよ。料理が冷めちゃう」
 背中から下方に下りていく手に、僕はストップを掛けた。いくらなんでもこの場でなんて。まだ外が明るいのに。
「こっちが先。もう我慢の限界」
「なにが我慢だよ。昨夜あんなにしたくせに」
「そんなにしたっけ?」
「したよ。僕がイヤだって言ってるのに、3回も」
「おまえ、嫌だなんて云ってた?」
 言ってない。
 だってイヤじゃなかった。

 恋人同士になって10ヶ月。ようやくベッドの方も慣れてきて。痛み以外のものもそこはかとなく感じられるようになって。そんな状態で大好きな恋人が自分を求めてくれることが、嬉しくないはずがなかった。
 だから今の「ダメ」はただのポーズに過ぎなくて。一応、言ってみたというかお約束というか。鈴木もそれは解っているからこっちの言うことなんかお構いなしに、その場で僕の服を脱がせ始めた。
「や、やだよ、こんなところで。ベッドに行こうよ」
「相変わらずお堅いやつだな。明るいところでするエッチも楽しいぞ」
「いやだ。絶対に嫌だ」

 以前ネットで見た男同士のセックスの映像は、僕の中でかなりのトラウマになっていた。部屋を暗くしなかったら、あんなことはできない。自分の身体も相手の身体も、あまりよく見えないほうがいい。
 苦笑とともに鈴木は僕のわがままを聞いてくれて、寝室に移動してくれた。カーテンを閉め切って、明かりは点けない。薄暗い闇の中に、ふたつの影が蠢き始める。
 性急に抱きしめあい、求めあう。せわしなく手を動かして、互いに相手を快楽に導こうとする。ふたつの呼吸が激しさを増していき、二種類の声が互いの名を呼び合う。その声には溢れるほどの愉悦が滲んでいる。
 やがてふたつの影はぴったりと重なって、ひとつになった。

「鈴木、鈴木。ね、気持ちいい?」
「うん。おまえは?」
「僕もすごくいいよ」
「ウソつけ。痛いくせに」
「大丈夫だよ。最初のときに比べたらぜんぜん平気。だからもっと」
 本当は、まだかなり痛い。
 でも、鈴木が僕を求めてくれる。鈴木が僕を愛してくれる。
「あっ、あっ、すずきっ!」
 そのよろこびが、痛みを消してくれる。愛される幸せが、僕のすべてになる。
「大好き、大好きだよ。僕、鈴木の他は何にも要らない……いっ!」
「いたい?」
「平気。だから止めないで」
 僕は夢中で腰を振る。鈴木が悦んでくれるなら、この痛みさえも幸福感に変わる。
「もっと、もっと! 僕のこと愛してっ……!」

 最高に幸せな時間を共有したあと、僕たちは空腹に気付く。情事の余韻の中で身体をつなげたまま、ぐう、と鈴木の腹が鳴って、僕は思わず吹き出した。
「鈴木ってば、ムードが台無し!」
「やっぱ色気より食い気だな。オレの場合」
「まったく、お子ちゃまだよな。鈴木は」
 笑いながらベッドを出て、手探りで服をさがす。鈴木と早くひとつになりたくて床に脱ぎ散らかしてしまったから、下着を見つけるのも一苦労だ。

「あ!」
 床にしゃがんで下着を探していたら急に部屋が明るくなって、僕は慌てて床に落ちていたシャツでからだを隠した。鈴木は裸のままでも恥ずかしくないみたいだけど、僕はダメだ。鈴木とこうなる前は平気だったけど、今は恥ずかしい。
「鈴木! 電気消せよ!」
「だってこんなに暗くちゃ、何にも見えないだろ。おまえのパンツ間違えて穿いてっちゃったらどうすんだよ」
「鈴木が僕のパンツ穿いたら破れちゃうだろ。無駄にでかいんだから」
「無駄ってことはないだろ。そのうち、この大きさが良くなるって」
「なんの話だよ!」
 いやらしいことを言うから、顔めがけて下着を投げつけてやった。それは見事に鈴木の顔にヒットして、ふたりしてゲラゲラ笑った。
 笑ったらおなかが空いた。

 台所から居間に料理を運んでいくと、鈴木はなにやら難しい顔をして机に向かっていた。右の手に数枚のレポート用紙を持っている。その表紙には大きく赤い文字で『不可』と書かれている。あまり他人には見られたくない代物だ。
「薪でもレポートに不可なんてつくことあるんだな。あれ? これ提出期限、明日までじゃん。いいのか? こんなにのんびりしてて」
「いいよ。それ、そのまま出すから」
 昼間、葛西教授に返されたレポートだ。今夜書き直す予定だったが、鈴木が泊まれるって言うから、そっちはどうでもよくなってしまった。
「そのままって。不可ついてんぞ、これ」
「じゃあ、読んでみろよ。そんなにひどくないから」
 鈴木は素直にレポート用紙を繰り始めた。鈴木がレポートを読んでいる間に、僕は食事の準備をする。テーブルに湯気の立つ料理を並べ、缶ビールを開ける。季節はもうとっくに秋に入っていたけど、今日はとても天気が良くて昼間は暑いくらいだった。鈴木はこういう日にはビールを飲みたがる。

「本当だ。なんで不可なんだ? これくらい書けてりゃ、オレなら可だな」
「だろ? あの教授、意地悪なんだよ。いいよ。これこのまま出して、これ以上のものは僕にはムリですって突っぱねるから」
 鈴木はレポートの出来と評価の差に首を傾げていたが、思慮深げにうがった意見を述べた。
「でもさ、きっと教授はおまえならもっといいものが書けるって思って、わざと不可にしたんじゃ」
「買いかぶりだよ、そんなの。迷惑」
「もしかしたら、論文コンクールに出すつもりなんじゃないのか? おまえ、たしか去年はグランプリ獲っただろ? 葛西教授は今年もおまえに賞を取らせようと」
「要らないよ、あんなもの」

 大学連盟主催の学生論文コンクールのグランプリは、たいして魅力のある賞じゃなかった。もらえるものは、賞状と盾と報奨金。奨学生の僕にとって賞金は魅力だったけど、論文作成に費やす時間をバイトに当てたほうがずっと見返りは大きかった。
「僕は鈴木とこうしていられたら、何にもいらない」
 シラフのときに言うのはちょっと照れくさかったけど、僕は本音を白状した。こう言えば鈴木はきっと『かわいいやつ』とか言って、僕を抱きしめてくれるんじゃないかと思った。
 でも、鈴木はそうしてはくれなかった。
 
「それはちょっとまずいだろ。オレたち学生だぞ。本分は勉強だろ?」
 今からでも大学の図書館に行ってレポートの手直しをした方がいい、と言い出した鈴木を、僕は子供じみた不満顔で睨んだ。
「鈴木は僕との時間が減っても平気なのか? 僕はいやだ」
「そういうんじゃなくてさ」
「つまんない話はおわり。さ、ごはん食べよ。今日は鈴木の好きなケチャップ味の煮込みハンバーグだよ」
 鈴木の母親に習ったハンバーグはとても好評で、その夜はすごく楽しかった。食事のあとは当然のようにもう一度ベッドで愛し合って。一緒に眠りに就いて、一緒に朝を迎えて。
 寝ても覚めても鈴木と一緒にいられることの幸福感が、僕の愛情を膨らませていく。こうして鈴木に抱かれるたびに、同じベッドで朝を迎えるたびに強まっていく愛情を、僕はこころから歓迎した。

 翌日、僕はレポートをそのまま提出した。
 教授はため息を吐いたが、なにも言わずにそれを受け取った。彼はとても悲しそうな目をしていたが、そのときの僕にはその意味が解らなかった。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは~。


SideBの前にこちらを、とのお気遣い、ありがとうございます。
一応、対の話になってますので、別れのシーンのセリフなどはsideAと同じです。 エピソードも被ってて、それを鈴木さんの視点で書いてます。
あの頃、薪さんはこんな風に鈴木さんの気持ちを想像していたけれど、本当は鈴木さんはこう考えていたんだよ、という話です。


>鈴木さんと恋人同士になった時、失敗した教訓から薪さんは青木には夢中にならないように気をつけたのですね。

男同士は一生一緒にはいられないんだな、って思っちゃったんですね。 いつかは別れなきゃいけないなら、その時にお互いが最小限の傷で済むように、予防線を張っておこうと。
そんなのおかしい、と言われそうですけど、
あのねっ、
原作の展開があおまきすと的にどんどん厳しくなっていって、期待すれば期待するだけ裏切られて、だからもう期待するのはやめよう、って考えませんでした? 期待が大きいほどに落ち込みもキツイから、なるべく希望を抱かないようにしようって。
それと同じです、と言えば、ちょっとは共感してもらえるかしら。


>20歳の薪さんは本当に女の子みたいに鈴木さんに恋してたんですね。

鈴木さんの前では限りなくオトメな薪さんです。 もうメロメロ。 若かったしね。


>鈴木さんは薪さんの優秀なところにも惹かれていたのに。恋で自分をダメにする典型的な例ですね(´`)まるで、BLの普通の受のような薪さんですね(笑)

BLの普通の受って、こんななんですか? これは、やっちゃダメなことの例として書いたんですけど、これが普通?
わたしはBLは小説も漫画も読まないので、今一つスタンダードが分からないのですが。 (薪さんが特別なの~、薪さんだけがわたしを腐らせるの~)
そう言えば、『好きな人は殺されても離さすな』って、他の方にも言われました。 なるほど、恋に命を懸けるのがBL界の標準仕様なんですね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・疲れそー。(笑)

わたしはもういい年なので、世界を恋だけで埋める話は書けないな~。 ギャグで埋める話なら書けますけど。
わたし自身、人生において、恋が一番大事だとは思えないのがその理由です。 わたしには、もっと大事なものがたくさんあるので。 思ってもいないことは書けません~。 
なので、これからも微妙な感じで・・・・・よろしくお付き合いください。(^^

Aさまへ

Aさま、こんにちは!

「普通の受」に対するわたしの疑問に丁寧にお答えくださって、ありがとうございます。
てか、わたしが、BLと銘打ってSS書いてるくせに読まないってどういうことだ、ですよね。(^^;


「相手のことしか見えなくなっちゃう女々しいタイプ」 は、
昔のBLはそうでしたよね。 今は、色々なタイプのBLがあるみたいですね。 
受も美少年とは限らないし、(いや、少年ではない時点でBLではないのか?) 普遍的ではないのかもしれませんね。


わたしも、20年前は読んでましたよ~。 あの頃は、耽美系小説、って言ってた覚えがあります。
うん、今思うとあれは、恋に溺れる女性? の話のような気がします。 男性と言う生き物をまだよく知らない少女が妄想する男性同士の恋物語、なのかな。 この年になると、(容姿だけじゃなくて考え方とか行動とか) こんな男、この世にいねえよ、いたらわたしがぶちのめす、とついつい突っ込んじゃいます。 
正直に言って、彼らは男から見て、魅力的には映らないと思うな~。 少なくともわたしの男脳は反応しません。(笑)

今は、男が惚れる男、に惹かれますね。 薪さんはその代表です。
見かけはああですけど、中身はがっつり漢!! ですものね。


>私も秘密にハマッてからBLとかやおいを読まなくなってしまいました(^^;)

『秘密』って、薪さんの外見からそっち系かと思われがちですが、ぜんぜん別物だと思います。 
BLはボーイズラブ、つまりは恋愛メインの話でしょう? 清水先生は、そこをメインには持ってきてないですよね。 だからわたしは原作では、キスシーンとか期待してないんです。
そういう生々しいものは二次創作に任せて、原作は切っても切れないふたりの絆を描いてほしいな・・・・・一期一会とか、6月号みたいなのとか、ああいうラストにしてくれないかな。

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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