土曜の夜に花束を(4)

 こちら、地獄の初夜です。
 痛い薪さんがいやんな方は、ご遠慮くださいね~。
 薪さんがレイプされても許せる人だけ読んでください。(←いるわけない)
 特に、甘いあおまきさんが好きな方は、絶対に読んではいけません。不快に思われても書き直せません、ごめんなさい。
 読めない方のために、次の記事の冒頭にあらすじを入れますので、どうかご無理なさらずに。









土曜の夜に花束を(4)










 ブラインドを閉め切った寝室の中は薄暗かった。
 春先のことで、裸のままでは少し寒いが、この温度が抱き合うには最適だ。相手の体温を心地よいものに感じることができる。
 薪は一糸纏わぬ姿のまま、ベッドのふちに腰掛けて青木を待っていた。緊張を孕んだ神妙な顔つき。まるで歯医者で順番待ちをしている患者のような顔だ。
 青木はバスローブ姿のまま薪の隣に座る。肩を抱きに行こうとすると、薪は不意に青木の方を向いて話しかけてきた。

「やり方わかるのか?」
「いまひとつ分かんないです。オレ、男は薪さんが初めてなんで」
 いや、最初で最後だと思う。薪みたいな男が他にいるとは思えない。
「わかった。じゃあ、僕がリードするから」
「お願いします」

 薪の手が青木のバスローブの紐を解く。タオル地の簡単な服が青木の体から取り去られる。青木の体を押してベッドに仰向きに寝かせると、薪は上から青木の胸に頬を寄せてきた。
「おまえ、心臓破れるんじゃないのか」
 青木の胸にすべらかな頬を付けたまま、薪は手を動かし始める。しっかりした胸の筋肉を確かめるように、やさしい手が青木の肌を滑っていく。
「オレ、多分今までで一番ドキドキしてます。一応『初体験』なんで」
「あんまり期待しないほうがいいぞ」

 最近ようやく目標の形に割れてきた腹筋を伝い降りて、薪の手はその部分に辿りつく。基本的に男はここしか感じない。女のように体中に性感があるわけではないからだ。
 滑りを良くするためのローションを、その部分にたっぷりと塗ってくれる。冷たいローションの感覚と薪のやわらかい手の感触が、青木を恍惚とさせる。すごく気持ちがいい。
「おまえって……まだ何もしてないのに」
 すでに青木は臨戦態勢に入っている。だって、あの薪が自分に触れてくれる。それだけで幸せすぎて、果ててしまいそうだ。

「まあいいか。じゃ、やるぞ」
 そんなムードも何もないセリフで、薪はがばっと起き上がった。脚を広げて青木の上にまたがる。青木のそれを右手で掴み、自分の秘部にあてがう。
「ちょっと待ってください。もうしちゃうんですか?」
「他に何かやることあるのか?」
「もっとたくさんキスしたり、じゃれたりしたいです」
「そんな面倒なことできるか。女の子じゃあるまいし」
 前戯も無しで、こういうものなのだろうか。
 青木としては今まで女の子としてきたように、キスをして抱きしめて薪の滑らかな肌を吸いたい。柔らかい尻や太腿をさわりたい。お互いが肌を触れ合わせて興奮を高めていくのが楽しいのに、これではあまりにも一方的だ。
 だいたい、こんなんで感じるのだろうか。薪のそれは全然反応していないようだが、いざ始まってしまえばちゃんと気持ちよくなるのだろうか。

 まあ、薪の方がこの道に関しては青木よりずっと先輩だ。何と言っても鈴木という恋人と、あんなに激しいセックスをしていたのだ。任せておいて間違いはないだろう。
 と、思っていたのは束の間。
「いっ、痛いです!」
「がまんしろ!」
「ムリです、ムリ! 折れますってば!!」
「僕だってめちゃめちゃ痛いんだ!!」
 なんだかぬるっとした生暖かいものが、青木の下腹部に伝わってくる。女の子ではないのだから愛液が出るわけはない。男が持っている粘液といったら精液と血液だけだ。薪のそれは竦みあがっている状態だから、これは間違いなく後者だ。

「血が出てるじゃないですか。一旦止めてください」
 起き上がって細い腰を押さえつける。青木のものは先端の部分だけがようやく薪の内部に入った状態だったが、すでにそこには幾筋もの鮮血が流れ落ちていた。
「うわ、これじゃ痛いに決まってますよ。なんでこんな無茶なことするんですか」
「初めは仕方ないんだ。鈴木との時もこうだったんだ」
 薪の釈明で、青木は自分がしていた勘違いに気付く。
 先ほど薪は「覚悟を決めた」と言っていたが、あれは青木のものになるという意味ではなく、痛みに耐える覚悟を決めた、ということだったのか。

「鈴木さんもよく我慢しましたよね」
 薪の痛みに比べたらさほどではないのかもしれないが、青木のほうもかなり痛かった。
 しかし、鈴木の脳の中の薪は、鈴木を受け入れて悦んでいたはずだ。この状態であんなによがっていたら、それは精神科の医者が必要な状態だ。
「ずっと使ってなかったから。狭くなっちゃって」
 青木の昔の彼女の中には、セックスは5年ぶりだという女性もいた。そのときは青木のほうが5年分搾り取られる感じだったが。男の場合は、こんなに固くなってしまうものなのだろうか。
「最初のときは、翌日は動けないくらい痛いんだ。だから」
「もしかして、それで週末って」

 薪のしょげきった様子を見て、青木の胸が暖かくなる。
 このひとは自分が痛い思いをするのが解っていて、それでも青木の想いを遂げさせてくれようとしたのだ。受け入れる努力をすると言ったのは、文字通りの努力だったわけだ。
 なんてかわいいひとだろう。食べてしまいたいくらいだ。

「ええと、オレ、ビギナーなんで具体的に教えてもらいたいんですけど。それをする前に女の子とするような前戯っていうのはないんですか?」
「する。手とか口で。でも、今しようとしたら、おまえ必要なさそうだったから」
「いや、オレじゃなくて。薪さんのほうにその」
「必要ない。そんなことしたって無駄だろ。女の子みたいに濡れるわけじゃないんだから」
「痛みが減るとか、気持ちよくなるとか」
「痛みは変わらない。そりゃ僕だってここを、その、されれば気持ちいいけど。でも、そのとき相手はよくもなんともない。挿れれば相手は気持ちいいけど、僕は痛い。
 つまんないだろ、男同士のセックスなんて。どっちか片方しか気持ちよくなれないんだ」
 それは青木が好きなセックスではない。
 青木は相手の悦ぶ姿を見て自分も悦びを覚えるタイプだ。相手が痛がっているのに、それ以上のことをするなんて。だから青木は彼女にするとしたら、できるだけ処女は選ばない。

 うなだれている薪の体を抱き寄せて、自分の腕の中にしまう。小さなからだはびくりと強張って、しかし抵抗らしいことはしてこない。
「無理しなくていいです。そんなに痛いんだったら、オレこのままでもいいです。薪さんの言うとおり、今のままで充分楽しいですから」
 したい。
 本当はもの凄くしたい。
 しかし、あんなに痛がる薪を見てしまっては。
 
「……本泣きじゃないか、おまえ」
 どうしても薪のようなポーカーフェイスは習得できない。青木は心の中が顔に出やすい性質なのだ。

 薪は青木の下腹部に再び手を伸ばすと、やさしくそこを扱き始めた。両手で包み込むようにして、もっと下の方にまで手を伸ばしてくる。
「そんなことしたら、またしたくなっちゃいますよ」
「そうなるようにしてるんだ」
「ダメです、我慢できなくなっちゃいます」
「我慢なんかしなくていい」
 薪の手技はそれほど上手ではなかったが、あの薪の手によるものだと思うと感度も上がるらしく、青木は痛いくらいに張り詰めてしまった。このままもう少し続けてもらったら、最後までいけそうな感じだ。
 薪もてっきりそのつもりなのかと思っていたのだが、頃合を見計らって薪は手を離した。ここでほったらかされたらたまらない。

「すいません、もう少し」
 薪はその願いを聞いてはくれず、青木に背を向けるとベッドに両手を付いて四つん這いになった。相手の視線にすべてを曝け出す屈辱的な姿勢。薪にはこの体位はあまり似合わないと思うのだが、この姿勢のほうがいくらか楽に受け入れられるのだろうか。
「痛いのは最初だけだから」
「そうなんですか?」
「うん。2回目からはとっても良くなるんだ。だから」
 本当だろうか。
 枕を抱いて腰を高く上げて、薪は青木の来るのを待っている。それは扇情的で、男の征服欲をこれでもかというほどにそそる姿だった。

 細い腰を摑んで、そこに自分の怒張をあてがう。先刻よりずっと硬くて大きいその質量感に、薪の背中が強張る。
「いいですか?」
「うん」
 自身を押し当てると、まだ血に濡れた秘部はぬるりとして、その感覚が青木の男の部分をひどく刺激する。
 とても我慢できない。
 ずっとずっと欲しかったのだ。ゆっくりと相手の様子を見ながら、などという悠長な真似はできなかった。
 薪は、痛いのは最初のときだけだと言った。今回だけ我慢してもらえれば、本当に2度目からは良くなるのかもしれない。女の子だって最初のときはあんなに痛がるが、回数をこなせば次第に悦ぶようになるではないか。薪だって同じかもしれない。
 頭の片隅でそんな言い訳を繰り返し、青木は捻じ込むようにして薪の身体に自分を埋めた。

 その、信じられない快感。
 固くて狭い肉を割って進む感覚。みしみしと音を立てて、まるで生木を裂くように開かれていく薪の身体。
 
「がっ、ぐっ!」
 目の端に、必死で枕に顔を埋めて苦痛に耐える愛しいひとの姿が映るが、初めて味わう目も眩むような快感に飲み込まれて、青木は何もわからなくなる。
「も、もうちょっと、ゆっくり、ひいっ!」
 獣の姿勢に相応しいケダモノと化して、青木は無我夢中でその肉に溺れた。自分から離れようともがく細い身体を無理やりに押さえつけ、華奢な肩が壊れそうな勢いで自分に引き寄せる。深い部分まで一気に入ると、薪の口から劈くような悲鳴があがった。
「ひぎい――っ!」
 断末魔のような叫び声に、青木は我に返った。
 気がつくと自分の下で、華奢な身体が激痛にもがき苦しんでいる。蒼褪めた美貌を冷たい汗と苦痛の涙が濡らしている。
 青木は狼狽し、慌てて薪の身体から自分を引き抜いた。うぐっ、という薪の押し殺した叫びのあと、寝室には薪の荒い息だけが残った。

 青木は身じろぎもできなかった。自分の前の光景が信じられなかった。
 うつ伏せになった薪の細い身体。その優美な腰が血だらけになっている。
 これは自分がやったのか?
 こんなふうに、ひとを傷つけてしまったことはない。無抵抗な人間を、自分より弱い生き物を迫害したことなど一度もなかった。
 生まれて初めて加害者の気持ちを味わって、青木はそのいたたまれない焦燥感に身を焼かれる。
 どうしていいのかわからない。相手は怪我をしているのだから、謝らなければ、手当てをしてやらなければと思うが、身体も動かせないし声も出ない。

 息を整えて、薪は涙を拭う。呆然としている青木のほうを見て、青木がまだ想いを遂げていないことに気付くと、軽くくちびるを噛んだ。
「いいぞ、続けて」
 薪は再び後ろ向きの姿勢に戻って、小さな尻を突き出す。先刻と同じ姿勢だが、今度は青木の情欲をそそることはない。その部分からは真っ赤な血が滴り、白い太腿を伝い落ちている。痛々しくて、正視に堪えない。
 震える口唇を動かして、青木はようやく言葉を発する。
「できません」
 白い背中で青木の言葉を聞いて、薪は乾いた笑いを洩らした。
「はは……嫌だよな、こんな汚い所に挿れるの」
 違う、そんな意味ではない。
 否定したかったが、青木は応えを返すことができなかった。薪の身体の傷は、そこだけではなかった。肩や腕や背中に、無理矢理押さえつけられた痕跡が赤く残っていた。
 どんな危険からも守ると心に決めた人を、当の自分がこんなに傷つけてしまった。自責の念が青木の口を重くして、どんな言い逃れもできない。

「ほら。幻滅しただろ」
 幻滅なんかしてない。でも、これ以上薪を傷つけたくない
「僕だって気持ち悪いよ。男の身体なんて」
 薪はシーツを手繰り寄せるとその中に傷ついた身体を隠し、背中を向けて顔を隠した。吐き捨てるような口調で気持ちも隠すと、全身で青木を拒絶した。
「これで分かっただろ。男同士のセックスなんて、そんなにいいもんじゃないって」
 薪はベッドから下りようと腰を上げたが、うっ、と呻いて背中を丸めた。痛みが強くて動けないのだ。
 こんなに酷いことをして、薪が怒るのも無理はないと思った。嫌われても仕方ない、と絶望に包まれた。

「傷の手当を……」
「大丈夫だ。自分でできる。おまえは帰れ」
「でも」
「帰れ」
 もうおまえに触られたくない。青木の耳にはそう聞こえた。
 薪の傷ついた姿を見るのが辛くて、青木は寝室を出た。あの小さな尻にひどい裂傷ができて、白い腿が血に汚れて。青木の脳裏にその惨たらしい画が焼きついて離れない。とても平静ではいられなかった。
 自分が犯した罪から逃げるように、青木はそのまま薪のマンションを後にした。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: