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土曜の夜に花束を(9)

土曜の夜に花束を(9)







 薪は目を閉じていた。
 去って行ったはずの恋人が自分のところへ戻ってきてくれて、もう一度自分と愛し合いたいと言ってくれた。
 都合が良すぎる。これは夢なんだ、と薪は思った。鈴木に振られた後、何回もこんな夢を見た。今回もきっとそれだ。
 現実には、だれもいないに違いない。いまこうして抱きしめている相手の身体も、目を開けて見たら枕かなんかで、それがわかったらまた泣いてしまう。だから目を開けたくない。

「ちょっとここに座っててください。花を持ってきますから」
 自分から離れていこうとする恋人のからだを、薪はぎゅっと抱きしめる。
 この手を一度でも放してしまったら、夢から醒めてしまう。夢ならいっそ、このまま愛して欲しい。
「大丈夫ですよ。いなくなったりしません。花は重要なアイテムなんですよ。リラックスすることが大切だって」
 青木はふいに言葉を切った。不自然な途切れ方だった。

 黙ってしまった恋人に、薪はあることを思い出す。
 しまった。鈴木の写真を出したままだ。

 薪が目を開けると、青木は少しだけ怒ったような顔をしていた。メガネの奥の黒い瞳が、ベッドの上の写真立に注がれている。
 もう、駄目だと思った。
 ちょっとうまく行かないことがあったら、すぐに昔の恋人の写真を見ているなんて。ものすごく不誠実だ。12歳も年上のくせにロクな性技も無くて、その上相手に対する気持ちまでこんなに不安定で。
 ちがう、と言おうとした。でも言えなかった。
 それは本当のことだったから。青木が自分から去っていったと思って、薪は鈴木のところへ戻ろうとした。

 青木は写真立てを手に取った。
 投げつけられても仕方ないと思ったが、青木はそんな乱暴なことはしなかった。薪がいつも写真を飾っているベッドの頭部の棚にきちんと置いて、薪の方を振り返った。
「せっかくですから見ててもらいましょう。薪さんがオレのものになってくれるところ」
 鈴木の前で?
 それは……まだ、それはだめだ。

「い、いやだ!」
 長い腕に抱き取られて、身体を拘束される。迫ってきた唇を避けようと、必死にかぶりを振った。
 大きな手に頭を押さえつけられて、薪は逃げ場を失う。無理矢理くちびるを奪われて、激しく吸い上げられる。先刻のやさしいキスとはぜんぜん違う、魂まで抜かれそうなくちづけ。押し返そうとするが、手に力が入らない。

「これは、オレの鈴木さんに対する戦線布告です」
 薪の抵抗が止むまで待って、青木はくちびるを放した。眼鏡の奥の切れ長の目が、薪の瞳を捕らえる。その猛禽類のような強い眼差し。こいつはこんなに鋭い顔つきをしていただろうか。
「絶対にオレのこと好きにさせてみせますから。覚悟しててください」
 薪は息を飲んだ。
 どうしてこいつのことを、鈴木に似ているなんて思ったんだろう。鈴木はこんなことは絶対に言わなかった。僕にこんな強気な態度を取ったりしなかった。

 こいつは鈴木じゃない。まったくの別人だ。
 だけど。
 胸がこんなにドキドキするのは何故だろう。

 大きな目をいっぱいに見開いて青木を見ている薪に、青木はいつもの笑顔に戻って言った。
「これ以上は鈴木さんにバカにされそうなんで。写真はしまってもらってもいいですか?」



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

めげないですねぇ‥(^_^;)

‥それを言ったらBL小説は成り立たない‥爆死‥

しづさん、BL好きの私への宣戦布告ですか‥?(笑)
前の記事ですが一言いわせていただこうと‥ふふふふふ‥
えぐいのも好きですから、全然平気ですよ、乙女じゃございませんから
大丈夫です。
しづさんのRは現実的で、また違う魅力があるので‥大好きです。
グロいとかエグイとか、私は全く思いません。
Sに走ってる‥と言うのはものすごく分かります(笑)
S気味のRも‥というかSのRも‥大好物!!!
‥どうだ、参ったか‥(^^♪

だてに年とってないです‥自虐も好き‥
少し元気を取り戻して、こんなコメ送ってしまいまして‥すみません。

ちょっと元気無い方が冷静でいいのかも‥とか思っていいですよ、
自覚してますから(^^ゞ


それにしても青木は‥打たれ強い。
そりゃあ、薪さんも落ちる訳ですね‥(≧∀≦)えへっ!

ああ‥残念‥写真の前でするのもまた一興‥
元気になっておかしくなってる私をお許しくださいませ<m(__)m>

あっ、レスは全く気にしないで下さい。
通っては来ますが、平気ですから。
それよりお仕事‥大変ですね、
睡眠とって下さいね~(^-^)

ruruさんへ

ruruさん、お返事おくれましてすみません。
昨日、ようやく担当現場の書類検査が終わったんですよ~。検査はあと2本残っているので書類地獄はまだまだ続くんですけど、もうわたしが矢面に立つ現場はなくなったので、少し肩の荷が軽くなりました。


> ‥それを言ったらBL小説は成り立たない‥爆死‥

あはははは!!!
爆死、ちゅどーんっっ、ってカンジですか?


> しづさん、BL好きの私への宣戦布告ですか‥?(笑)
> 前の記事ですが一言いわせていただこうと‥ふふふふふ‥

『それを言ったら・・・』のセリフを叫んだであろう複数の候補者に、もちろんruruさんも入ってましたよ!
BL好きの夢を砕くなって?
えへへ~、ごめんなさいね~。
だけど、普通の男の反応ってこうだと思いますよ。オットも義弟もこう言ってました。(聞いたんかい!)



> えぐいのも好きですから、全然平気ですよ、乙女じゃございませんから
> 大丈夫です。

そうなんですか?
わたしはオトメなので、えぐいのは苦手です。自分の書いたRが一番苦手かも(^^;


> しづさんのRは現実的で、また違う魅力があるので‥大好きです。
> グロいとかエグイとか、私は全く思いません。

リアルは目指してます。だから最初はうまくできなくて、とか、3年目くらいから感じるようになって、とか、そういう設定にしてるんですよ。

ruruさんのはエロ美しいですよね~。
ああいうの書きたいとは思うんですけど、真面目に書くとカユクなっちゃうんですよ(^^;
第一、うちのはギャグだし。


> Sに走ってる‥と言うのはものすごく分かります(笑)
> S気味のRも‥というかSのRも‥大好物!!!
> ‥どうだ、参ったか‥(^^♪

SのRって(笑)
レ○プとか強○とか輪○とかですか?
う~ん、さすがruruさん、守備範囲広いです。参りました。(冗談ですよっ!)


> だてに年とってないです‥自虐も好き‥

自虐ネタは~~、わたしも大好きですっ!
もちろんそのあと、青木くんが薪さんを救うというオチがあってこそですけど。わたし、ハッピーエンド主義者ですから(^^


> それにしても青木は‥打たれ強い。
> そりゃあ、薪さんも落ちる訳ですね‥(≧∀≦)えへっ!

うちの青木くんのしつこさは、もろストーカーだと思います。(犯罪やん・・・・)
とにかく、何を言われても何をされても諦めない。ものすごくウザイやつです(笑)


> ああ‥残念‥写真の前でするのもまた一興‥
> 元気になっておかしくなってる私をお許しくださいませ<m(__)m>

それをしたら、鈴木さんに呪い殺されそうです。(@@)
うちの鈴木さんはけっこう腹黒なんですよ。(てか、みんな根性腐った連中ばっかだ、うちのキャラって)


> あっ、レスは全く気にしないで下さい。
> 通っては来ますが、平気ですから。
> それよりお仕事‥大変ですね、
> 睡眠とって下さいね~(^-^)

ありがとうございます~~。
仕事が詰まって睡眠不足がピークに達しているせいか、先日、あおまきさんがお昼寝をする話を書き出しましたよ・・・。(←寝ろ)
早く仕事を終わらせて、ruruさんのブログにお邪魔できるように頑張ります。(仕事が混んでるときは表面だけ読んでしまうので、落ち着いてから読ませていただきます)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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