土曜の夜に花束を(12)

 この章と次の章は、全部まるっとRです。
 苦手な方はご遠慮ください。






土曜の夜に花束を(12)













 長い長いキスから解放すると、薪は荒い息をついた。
 つややかなくちびるから、赤い舌が覗いている。口を塞がれていたから呼吸が苦しいのか。
 ちがう。目が蕩けている。
 こんなに情を含んだ薪の目は初めて見た。彩華の言ったことは本当だ。
『キスはとっても大切よ』
 大した快感もないからおざなりにしがちだけど、実は肝要なのだ、と彼女は言った。
「大好きですよ」
 愛の言葉を織り交ぜながら、何度もキスを重ねる。ぎゅっとシーツを身体に巻きつけていた手はいつの間にか青木の背に回されて、薪のきれいな裸が見える。

 反射的に沸き起こる衝動を、青木は必死に押さえ込む。
 焦ってはいけない。無理強いは絶対に禁物だ。

『女の子にするときみたいに、大切にしてあげなさい。女性のように扱われることで女の部分が目覚めるから』
 個人差はあるが男性の中にも女性の部分というのはあって、その逆もまたある。雪子と彩華を見ているとそれが納得できる。薪もかつては鈴木の恋人として彼を受け入れていたのだから、その部分は眠っているだけで呼び覚ますことは可能なはずだ。
 そのためには甘い言葉と、前戯をたっぷり。
 男だから局部が濡れることはないが、弛緩はする。つまり力の抜けた状態だ。そうなればいくらかは楽に受け入れられるはず、とアドバイスを受けた。その状態に持っていく具体的な方法は、やっぱり女性にするのと同じだ。

 感じやすいと知っている首筋に舌を這わせる。耳たぶを口唇に挟み、甘噛みして耳の中を舌で舐める。ぎゅっと眼をつむって肩を上げる仕草が、かわいくてたまらない。
 舌先で白い肌を濡らしながら、徐々に下方に這わせていく。白い胸にぽつんと赤い乳頭が、硬く膨らんでいる。それを舌と指で嬲りながら、相手の様子をうかがう。
 薪はくちびるを噛んでいる。声は出してくれない。でも、ちゃんと反応している。いつになく上気した頬が、その証拠だ。
 手を腰に回し、下のほうから潜り込ませる。びくり、と薪の肢体が反り返った。
 自分の愛撫に感じてくれているたしかな証拠。それを手のひらに包み込み、上下にしごく。薪は細い腕を後ろについて上体を支え、背中を仰け反らせて耐える。座ったままの姿勢では辛そうだ。
 華奢な腕ごと薪の背中を抱き、仰向けに寝かせる。
 白いシーツの上に横たわった可憐な生き物。自分の手が動くたびに、滑らかな背中が浮き上がる。素直な反応と声を殺す様子が、彼の相反する心の動きを露呈している。
 彼自身への愛撫を続けながら、もう一方の手と舌で胸のつぼみをやさしくなぶる。舐め上げ、しゃぶり、吸い上げて、そのたびに下のほうも追い詰められた状態になっていく。

「――っ!」
 脇下から指の腹を滑らせて、逆に爪で撫で上げる。びくっと薪の身体が反り返って、腰が跳ね上がった。腰から少し上のわき腹。ここが薪くんは弱いのよ、と雪子が情報をくれた場所だ。
 普段でもつっつくと面白いのよ、と雪子は笑いながら他にも色々と教えてくれた。まったく困った先生だ。でも、とても感謝している。雪子の励ましがなかったら、きっとここまで漕ぎ付けることはできなかった。
 薪の声が愉悦を滲ませる。くびれたわき腹を舐めていた舌をもっと下のほうへ、右手の中で脈打っている薪の分身へと移す。
 昂りの先端にくちづける。咥えこもうとしたとき、ふいに頭を掴まれた。

「な、なにす……やめろ、バカ!」
「いたっ!」
 蹴られた。
 女の子ならこんなことはない。たぶん、薪以外の男のひとでもこのシチュエーションなら蹴られないと思う。
「風俗じゃあるまいし、そんなことしなくていい!」
「薪さんだって」
 鈴木さんにしてたでしょう、と喉まで出かかった言葉を危うく飲み込み、
「女の子が相手なら薪さんだってするでしょ?」
「するはずないだろ! おまえAVの見すぎだ。あの人たちだって職業柄仕方なく」
「そんなことないですよ、普通ですって」
「えっ、そうなのか!? みんなしてるのか!?」
 心底驚いたときにするように、薪は大きな声で早口に言った。大きな目を更に大きくして視線を宙にさ迷わせ、口の中でずっと「ふつう、ふつう……」と繰り返している。カルチャーショックだったらしい。

「まさか。だってそんな、気持ち悪い。汚いし」
「キタナイって」
 鈴木にはあんなに積極的にしてたくせに。それだけ彼が特別だったということか。
 それにしても、今までどういうセックスをしてきたんだろう、この人は。こないだ薪がリードしてくれたときも感じていたのだが、前戯も何もなしでいきなりなんて、なんだか風俗みたいで。
「薪さんてもしかして、素人童貞なんじゃ」
 薪の目が点になる。冗談で言ったつもりなのだが、まさかビンゴじゃ。
「バカにするな! 僕のほうが年上なんだぞ!」
 声が裏返っている。瞳があちこちに動いている。
「いくつ違うと思ってんだ、12歳だぞ! おまえが小学生のとき、僕はもう警部だったんだぞ!」
 薪の主張は、青木の疑念を完全否定するものではない。

「と、とにかく。よけいなことしなくていいから、ローションを」
「今日はローションは要らないです」
「無理だ。あれがなくちゃ入らない」
 薪は枕もとの引き出しからボトルを取り出して青木の方へ放り投げると、こちらに背を向けて四つん這いになろうとした。
「あ、できれば仰向けのままでお願いします」
 青木が希望の体位を告げると、薪は困った顔になった。正常位は嫌いなのだろうか。
「バックのほうがいいんですか?」
「ていうか、あの格好がいちばん長く我慢できるから」
 そんなことだろうと思った。
 後背位が好きなわけではなくて、痛みに耐えやすい姿勢なのだ。痛みをこらえるとき人間は自然にあの体勢を取るし、枕に顔を埋めて悲鳴を殺すこともできる。鈴木との経験で学んだことなのだろう。

「今日は我慢しなくていいです」
「反射的に投げ飛ばしちゃっても知らないからな」
「いいですよ。痛かったら遠慮しないでやっちゃってください」
 薪はため息混じりに仰向けになる。目を閉じて、青木のことを待っている。
 綺麗な身体の中心に手を伸ばす。足を開かせて腰を持ち上げる。
 薪の両手は予測される痛みに耐えようと、ぎゅっとシーツを握り締めている。なるほど、この前もこの状態だったわけだ。体中に力が入っている感じだ。これでは子供の指も入らないだろう。
 この間は本当に可哀想なことをした。2年越の想いが叶うことに舞い上がって、薪のそんな様子にちっとも気付かなかった。注意して見れば、薪の膝はこんなに震えていたのに。苦痛の悲鳴を上げるまいと、歯を食いしばっていたのに。

 青木はついさっき拒否された行為を、もう一度試みる。痛みを予想していた薪の身体は、思いもしなかった快感に驚きの声を上げた。
「んあっ!」
 こんなふうに薪の身体に触れるのだって、自分にとっては奇跡みたいなものだ。痛い思いなんかさせない。
「や、やめ……!」
 イヤだとかダメだとか、さっきからやたらと否定の言葉が多いが、もしかすると薪の喘ぎ声は否定系なのかもしれない。ダメダメ、と言いながら悦ぶタイプだ。それは天邪鬼な薪の性格に似つかわしい。羞恥心のカケラもない悲鳴系よりずっと似合っている。

 口の中で再び大きさを増していくそれを、締めた唇でしごく。口唇が擦れる音が唾液の水音と絡まって、淫猥な響きを奏でる。
 華奢な右手が亜麻色の髪をかきあげる。そのまま上方に伸ばされて、頭上のシーツを掴む。薪の両手は先ほどと同じようにシーツを握り締めているが、それは痛苦に耐えるためではない。
 ローションをたっぷりと塗った右手の人差し指で、広げた足の間を下からなぞり上げる。ここからが今日のメインイベントだ。
「あっ!」
 その周辺をゆっくりとほぐしてから、そっと内部に挿れる。薪の全身がわなないた。
 たった1本の指でもきつい。こんな狭いところにあんなものが入るわけがない。この指の3倍はある。

 女とのセックスには興奮が大事だが、薪とのセックスには冷静な観察力が不可欠だと知った。相手の様子を見ながら徐々に慣らしていかないと、この華奢なひとは壊れてしまう。
 挿れた指は動かさない。つい中で動かしてやりたくなるが、この締め付けでは痛いだけだ。その代わり、前の方に熱を入れる。舌を絡めて吸い上げ、左手で会陰部を責める。
「あっ、あっ!」
『指は挿れたままで、イかせてあげるのがポイントよ』
 バックに挿入した状態で達せるように仕込むこと。その部分を開発するにはこれが一番早くて確実な方法だと教わってきた。今日はこれを実践したくてここに来たのだ。

 段々に、そこの締め付けが強くなってくる。中の指が痛いくらいだ。これがもしも自分のものだったらさぞ気持ちいい―――いや、多分ものすごく痛い。
「は、放せっ、も、出るっ」
「いいですよ」
「何がいいんだ、バカ! はなせ! はなっ、あ、うっ!」
 がくがくと薪の太腿が震えだし、平らな下腹が脈打ち始める。腰が勝手に浮き上がって淫らに振られる。
 ここまでくれば止まらないはずだ。男の生理はよく分かっている。
 口の角度を調整して、上顎に当たるようにして受け止める。喉の奥に当たると咳き込んでしまうから気をつけてと、これも彩華が教えてくれた。とても赤裸々で具体的なアドバイスだった。もしかするとあのとき雪子に席を外すように言ったのは、女の雪子にこの内容は刺激が強すぎると思ったのかもしれない。

 それほど時間は掛かっていない。薪は感度も低いが、持ちもよくない。女の子ではないから可愛らしい喘ぎ声なんか上げてくれないし、大したテクニックも持ってない。総合的にみて、レベルは普通より下だ。10段階評価で3点がいいところだ。
 でも、達したあとの薪はすごく可愛い顔をしている。柔らかそうな頬が薄紅色に上気して、目の縁にはうっすらと涙の跡がある。これは苦痛による涙ではない。

「ば……吐き出せ! 汚い!」
「もう飲んじゃいましたけど」
「そんなもん飲んだら、胃の中でヘンな生き物が生まれてくるんだぞ!」
「生まれませんよ。どっから仕入れてくるんですか? そのわけのわかんないネタ」
 薪は眉根を寄せて顔をしかめた。なにか嫌なことを思い出している表情だ。
「ものすごい味じゃなかったか?」
「期待してたのとはちょっと違いました。薪さんのはきっとミルクみたいに甘くて美味しいのかと思ってたんですけど」
「アホか。おまえのと同じだ」
 同じと言われても、自分の精液を飲んだことなどないからそれがどんな味かは分からない。試してみる気にはならないが。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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