きみのためにできること(1)

 こんにちは(^^
 こちら、8000拍手のお礼で 間宮×薪 のSSです。
 間宮ファンの方お待たせしました!って、いるわけない。(笑)
 恩を仇で返すようなカップリングで申し訳ありません、間宮のくせにRじゃなくてすみません。(そこ?)

 どうか広いお心でお願いします。




きみのためにできること(1)





 きみのためにできること。

 あなたのために。
 おまえのために。
 あのひとのために。
 大切な誰かのために、自分ができること。

 自分には何もできないと諦める、それはきみに失礼だ。よく考えもしないで、ろくに探しもしないで、それはとても怠慢な行為だ。

 ちゃんと探してごらん。
 きみにしかできないことが、きっとあるから。




*****



 昨日、また鈴木の夢を見た―――。

 鏡の前で寝ぐせを直しながら、薪は瞳に映る男の顔を他人のように感じていた。他人より低い血圧のせいか、朝はいつも立ち上がりの悪い脳で、おぼろげな夢の断片をつなぎ合わせる。
 夢の中で、薪は鈴木と海辺を歩いていた。時刻は夕方だった。
 鈴木が薪に向かって、何か言った。波の音がうるさくて鈴木の言葉が聞き取れなかったから、薪は鈴木の口元に耳を寄せた。薪の肩が鈴木の胸に触れると、自然に抱きしめられた。顔を上げたらキスされた。薪はとても幸せな気分になって、自分から鈴木の背に手を回して、それから……。

 なんであんな夢を見てしまったのだろう。
 新しい恋人ができて、今は幸せ一杯のはずなのに。どうして昔の恋人の夢を頻繁に見るんだろう。

 恋人に不満があるわけじゃない。あいつと恋人同士になってからの毎日は、吐き気がするくらい楽しい。
 他愛ない会話や何気なく絡む視線のやりとりが、甘ったるくてこそばゆくって、それがとても幸せで。そんな自分に反吐が出そうになる。
 この年になって、なにやってんだか。
 40近い男が、12歳も年下の同性にうつつを抜かしてるなんて。他人はもとより、相手にも絶対知られたくない。

 恋人同士になって、身も心も結ばれて。いや、身体の方はまだちょっとその、かなりビミョーというか、ええと、まあ、そのうち何とかなるだろ。
 とにかく、いまは幸せの絶頂にいるはずなのに。
 それなのに、どうしてあんな精神的不義とも言えるような夢を見てしまうのだろう。
 自分は、今も鈴木に恋をしているのだろうか。いつだったかのように、青木を彼の身代わりにしているだけなのだろうか。

 無自覚のうちに。意図することなく、いつの間にか。
 そんなひどいことをしているのだろうか。

 忘れなくちゃいけない。
 だって、いま僕は、青木の恋人なんだから。鈴木のことは、忘れなきゃいけない。でなきゃ、あんなに僕を想ってくれる恋人に申し訳が立たない。

 鈴木の夢を見るたびに、薪はそう自分に言い聞かせている。翌朝は、強く自分を叱咤する。にも関わらず、夢の頻度と内容がますますエスカレートしていくのは何故だろう。
 それを鈴木への恋情と捉えるなら、青木といるときの幸福感は虚構なのか。抱き合って、相手の熱を愛しく思う、あの高揚感も嘘なのか。二心を抱くなんて、自分に限ってあるはずがないと思い続けてきたのに。

「熱っ」
 考え込んでいたらドライヤーの熱が一箇所に集中してて、髪の毛がびっくりするくらい熱くなってた。しかも、ヘンな方向にはねたままだし。
 スプレーでの修正は諦めて、薪は髪を洗うことにした。電車の時間が遅くなるとラッシュがつらいが、この髪型で人前に出るのはもっとイタイ。
 寝汗もかいてるし。ちょうどいいか。

 昨夜は蒸し暑かった。爽やかな新緑の季節は過ぎ、もうすぐ梅雨に入る。そして梅雨の時期が過ぎたら……。
 また、あの季節がやってくるのだ。

 その季節が近付くにつれて、自分が次第に余裕を失っていくのがわかる。季節の歩みを止めることなどできはしないのに、日一日と悪夢の匂いを強めていく空気に、焦り、苛立ち、終いには泣き出したくなる。
 唯一の救いは仕事だ。この時期は第九の繁忙期だから、捜査にのめり込むことで感情を制御することができる。

 いつになったら夏の到来を、冷静に受け入れられるようになるのだろう。
 薪にはまだ、それはずっと遠い未来のことに思えた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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