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スロースロースロー(14)

 薪さん、がんばってます。




スロースロースロー(14)












 激しく打ち付けられる熱い欲望に、薪は悲鳴を上げている。
 今日はいけるかもしれないと思っていたが、やっぱり泣き叫んでしまった。

 途中までは、いつもよりずっと上手くいった。悔しいが、あのマセガキのアドバイスのおかげだ。
 感じたままに声を上げて、恥ずかしがらずにして欲しいことをねだって。それは薪と恋人の両方を昂ぶらせて、スムーズな結合を可能にした。
 しかし、そこからが問題だった。
 青木が動き始めたのはいいが、いつもより動きが大きい。薪が痛いと叫ぶと途中で止めてくれるのに、今日は止まってくれない。

「痛い! 痛い痛い!」
「もう少し、もう少しですから頑張ってください!」
「無理だ! 死ぬほど痛い!」
「ごめんなさいっ、我慢してください!」
 
 ――相手の目を見て、呼吸に合わせるといいですよ。
 修一の言葉を思い出すが、そんなことができる状態ではない。何とか目を開けるが、相手の呼吸を把握できるほどの余裕はない。
 
 せめて、恋人の目を見る。
 青木の眼は、薪と同じ痛みを味わっているかのように辛そうだった。
 薪が悲鳴を上げる度、自分を抑えようとしてか、ぎりっと歯軋りをしている。すいませんと繰り返しながら、今にも泣きそうな顔をしている。

 気がつかなかった。
 こいつは今までこんなに辛そうに、僕を抱いてたのか。
 引き裂かれる苦痛に捕らわれて、青木の様子を見る余裕などなかった。考えてみたらあの状態で途中で止めるのは、男にとっては生殺し、いや、生き地獄だ。相手を押さえつけてでも最後までしてしまうのが普通じゃないだろうか。

 でも、こいつはやさしいから。
 僕のことが大好きだから。
 僕を愛してるから。こころの底から大切に想ってくれるから。
 
 だから。
 僕もその想いに応えてやりたい。

「あひいっ!」
「薪さん、薪さん!」
「や、止めるな、続けっ、いーーったいいい!!」
 激痛は、何時間も続いたような気がした。生存本能のままに叫び、泣き、言葉とは反対に相手を押しのけようともがき。
 後で時計を見たらすべてのことが30分にも満たない間だったから、青木が薪の中で動いていた実質時間は5分くらいだったと思う。しかし薪にとっては、長い長い時間だった。

「あっ、あおっ、あああ――ッ!!」
 ことさら深く打ち付けられた昂ぶりに、薪は絶叫した。その瞬間、身体の奥に暖かい飛沫を感じる。
 薪の中で男は、突如として動かなくなった。段々に痛みが和らいでいく。
 荒い息遣いだけが聞こえる。抱きしめた背中に、汗が流れている。薪の身体も汗だくで、抱き合ったりしたら気持ち悪いはずなのに、何故か不快ではない。

「イッた? イッたか、いま」
 色気も何もない直接的な薪の質問に、青木は苦笑いで答えた。
「はい」
「……やっとできた~」
 体中の力が抜けて、思わず本音が出てしまった。青木がクスクス笑い出す。
 修一がしてくれた具体的なアドバイスは、ほとんど役に立たなかった。やっぱりこの痛みに耐える術は――――根性だ。

「どうだった?」
「最高です」
「僕はすごく痛かった」
「……すみません」
「謝るな。僕がそうしろって言ったんだから」

 青木が薪から離れていく。抜かれる痛みはそれほどひどくなかった。身体の力が抜けていたせいかもしれない。
 ぬるるっと厭な感触が内股を濡らす。薪は慌ててティッシュを取ろうと、枕元に腕を伸ばした。
 つもりだった。

「あ、ああ、くそっ」
 身体の力が抜けているのではない。力が入らないのだ。
 背中が痛い。足も腰もガクガクしている。指先は強張って物を掴むこともできないし、膝は閉じることもできないほど震えている。
 痛みに耐えようと力を入れすぎた反動が、身体に返ってきている。身体中の筋肉が痙攣を起こしているみたいだ。

「なにすんだ! バカ、やめろ!!」
 尻の下にタオルをあてがわれて足を開かされ、薪は焦る。青木が何をするつもりなのか、経験者の薪には解っている。が、それは死んでも厭だ。
「きれいにしてあげますから」
「いらん! 自分でする!」
「だって薪さん、動けないんでしょ?」
「いやだ、やめろ! ―――痛っ!!」
 膝を閉じようとしただけで、体中に信じられないくらいの痛みが走った。
「うっ……」

 蒸しタオルとティッシュが、薪の秘部にそうっと当てられる。血を拭き取った後、薪の中に指が入ってきて、欲望の残滓を掻き出していく。その恥ずかしさたるや尋常ではない。まるで下の世話をされているみたいで、もう死にたいくらい恥ずかしい。
「やめろ、やめろったら!」
「だって、このままじゃ寝めないでしょう?」
「余計なお世話だ、触るなバカ!! これ以上する気なら、腕の1本や2本、へし折られる覚悟を決めとけよ!」
「はいはい」
 何を言っても暖簾に腕押しという感じで、青木には怯む様子もなかった。 ちくしょう、バカにしやがって、身体が動くようになったら大外刈り決めてやる!

 やっと清めの作業が終わって血止めの薬を塗られた後、ゆっくりと両足が伸ばされる。それから2枚目の蒸しタオルで体を丁寧に拭かれた。
 やがてすっかりきれいになった薪の身体は清潔なシーツに包まれ、一旦床に下ろされた。まさかこのまま放置されるのかと思い、それならば大外刈りはやめて巴投げにしよう、場所は道場じゃなくて第九のエントランスのコンクリートの上で、と復讐計画を練る薪の目の前で、青木は手早くシーツを交換し、薪の身体を再びベッドに横たえた。湿った亜麻色の髪を大事そうに幾度も撫でて、むっとふくれた頬にキスをする。

「シーツは洗濯しておきますから。今日はゆっくり休んでくださいね」
 薪はぎゅっと目を閉じていた。恥ずかしくて青木の顔が見られない。

 あんなにイヤだって言ったのに、とうとう最後までやりやがった。親切のつもりかもしれないけれど、やられるほうは堪ったもんじゃない。
 たしかに血と精液がこびりついて固まったら、えらいことになる。つまり用を足すときにその……だからってあんな。

 薪が休めるように、青木は寝室のブラインドを下ろした。それから、薪の額にキスをして部屋を出て行った。
 こころの中でお節介な恋人を呪いながら、薪は眠りに落ちた。




*****


『運命のひと』(18)で青木くんが「スウェーデンの中学生に、自慢話でもされたんですか?」って言ってるのは、この時のことを皮肉ったんですね。 けっこうイジワルですね☆



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Oさまへ

Oさま。
こちらにもコメントありがとうございます。

>感動して泣いてたのわたしだけですか。

うん、多分そう(笑)

この話はとりあえず、
4巻の特別編の影響で、薪さんはエッチ上手だと思う、というのと、
薪さんが痛い思いするのは可哀想、というご意見が多かったです。←当たり前!

わたしも薪さんを幸せにしてあげたくて、この話を書いてたはずなんですけど、いつの間にかこういう展開に……わたしの中に流れるSの血がいけないんだと思います (^^;
ただ、こんな風に、誰かと結ばれたいと強く願って、身を呈してでもそこに横たわる障害を乗り越えようとするの、可愛いなあ、健気だなあ、って思う。
そして、そういう状況が描けるのは、付き合い始めのこの時期しかない(ドS理論)

何年か経つと、上手くできるようになりますので、ご安心ください (・∀・)/ 

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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