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トライアングル(2)

 こんにちは。

 新婚さん1年目にして、イタイ薪さんMAXですみません。(^^;
 にも関わらず、お残りくださったSの天使さまが13人もいらっしゃいました!(なんつー言い草)

 鬼畜話に拍手をありがとうございますっ。二桁の方に読んでいただけるとは思ってなかったので、びっくりしました。でも嬉しいです♪♪♪
 
 見放されないように頑張ります!
  




トライアングル(2)









 嵐のような激情が去って、薪の身体に現実が返ってくる。
 局部に鋭い、痛み。
 青木が清めてくれた箇所は、薪の指によって再び血を流していた。すべらかな胸と腹に、飛び散った欲望がこびりついている。
 
 シーツで手の汚れを拭い、身体についた不実の証拠をこすり落としながら、薪のくちびるから重いため息が洩れる。昼間、新しい恋人のものになったはずの薪のからだは、日付も変わらないうちに昔の恋人に取り戻されてしまった。

 今日こそ、大丈夫だと思ったのに。
 やっと青木とまともにセックスができて、あいつとひとつになれたと思ったのに。

 ……この夢は、今までもずっと繰り返されてきた。
 青木と愛し合った後、それを塗り換えるように行われる裏切り行為。恋人と肌を重ねたすぐ後に、夢の中で薪は別の誰かのものになる。
 相手は鈴木ばかりではない。好きな相手とは限らない。貝沼だったり間宮だったり、過去の嫌な思い出に連動する男だったりする。
 恋人が宝物のように慈しみ、愛してくれたばかりの薪のからだは、彼らに穢され、めちゃくちゃに蹂躙される。

 屈辱と痛み。逃れられない苦痛と嫌悪感。
 夢から醒めた薪のからだに残るのは、恋人の優しい愛撫ではなく、悪夢の爪痕だった。
 その傷跡は、薪にこれからの現実を突きつける。

 無限ループのような、呪縛。
 逃れられない懊悩。

 仕方がない、と薪は思う。
 僕は生きることを決めたのだから。この世界で、贖罪を果たそうとしているのだから。生きながら地獄の責苦を受け続けるしかないのだ。
 恋人に慈しまれる幸せな人生なんて、僕には許されない―――。

 砂を噛むような殺伐とした心地で、薪は今の夢を思い出す。
『おまえが愛せる男はオレだけだ』
 鈴木の言った通りかもしれない。
 青木との最初のときはめちゃめちゃ痛くて。それでも相手を受け入れようと頑張って、僕はそれであいつに対する誠意を見せたつもりだった。

 ゆっくり慣らそう、と言ってくれた青木の言葉に甘えて、僕たちが本当に結ばれたのは、それから3ヶ月も経った今日。
 それまでの間、いや、多分これからも、僕が痛いって言えばやさしい青木は自分の欲望を抑えて、途中で行為を止めてくれる。セックスも上手くできる日とできない日があって、仕事で疲れているときなんかは何をされてもぜんぜん感じないし、そんなときは痛みも強い。

 でも……どうだろう。
 これが鈴木なら?

 きっと我慢できてしまう。だって昔は我慢できたんだから。痛みは強烈だったけど、それを上回る幸福感がたしかにあった。鈴木に与えられる苦痛は、僕にとっては幸せだったんだ。
 青木の時には痛覚の方が勝ってしまう。その理由は明白だ。
 僕は、鈴木ほど青木のことを好きじゃないんだ。

 身体を開くことは、僕にとっては最終手段だった。こうすればきっと、青木のことが誰よりも好きになれると思っていた。鈴木のことも忘れられると思っていた。
 でも違った。
 どれだけ肌を合わせても、心は鈴木に囚われたままだ。

 身体だけが行為に馴染んでいく。このままいくと、相手が青木以外の男でも、この身体は快感を得られるようになるかもしれない。そんな不実な恋人にしか、僕はなれない。
 青木はあんなに真剣に僕のことを愛してくれてるのに。僕のことしか見えないって、もう何年も前から一途に想ってくれているのに。

 僕はこのまま、青木の恋人やってていいんだろうか。

 きっと青木には僕より相応しい相手がいる。年も近くて性格も良くて、何より青木のことを世界一好きになってくれる女性がいるはずだ。
 そういう相手が現れたら、僕はさっさと逃げ出そう。その方が青木のためだし、僕の気持ちはこれからも変わらない。変えられない。
 僕はやっぱり、鈴木を忘れることはできない。

 僕がやってるのは、ひととして恥ずべきことだ。身体だけは青木のものだけど、心は別のひとのものだなんて――――。

 そこで薪は、昔の愚かだった自分を苦々しく思い出す。
 鈴木と別れたばかりの頃、ひとり寝の夜が淋しくて、その淋しさを紛らわせるために薪は愛してもいない女性と寝た。薪が欲しかったのは人肌のぬくもりだけだったが、女性と肌を合わせていれば自然とそういうことになって。
 だけどそのあとは、ものすごく虚しくなった。
 その後味の悪さは自分で慰めるときよりも深く果てしなく、薪のこころを落ち込ませた。自分の勝手な欲望の捌け口に他人の好意を利用しているという罪悪感が、薪を苦しめた。だから薪は、好きでもない素人の女の子とは寝ないことに決めた。

 彼女たちには本当にひどいことをした。薪は心の底から、あのときの自分の弱さを後悔している。
 彼女たちは僕のことを本気で愛してくれたのに。僕はその気持ちを、自分の淋しさを埋めるためだけに利用した。
 いま僕がやってることは、その当時のことと同じだ。自分の人生をやり直すために、青木のやさしさを利用しているだけだ。

 呆れた。
 なんて成長しない男なんだ。あれから16年も経ってるのに。またこんな間違いを繰り返して。

 僕には、あいつの恋人でいる資格はない―――――。

 闇より暗い絶望の中で、薪は涙を流し続けた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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