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トライアングル(5)

トライアングル(5)










 翌日、薪は目覚めと同時に嘆きの声を上げた。
「うええ……」

 薪はシーツに包まって、裸のまま眠っていた。
 なんだか身体中ベトベトする。自分のからだを覆っているシーツには、所々不気味なシミがついて、ごわごわに固まっている。しかも、吐き気を催す匂いがする。
 この感じは、アレだ。
 内股から尻にかけては血交じりの液体がこびりついて、固まっていた。男同士のセックスってのは、やってる最中も汚いけど、その後はもっと汚い。
 腰に触れていた辺りに大きなシミがついている。これは、下まで染み通ってしまっているかもしれない。ベッドパットの替えが必要だ。

 こんなことは初めてだった。
 後で薪に怒られることが解っていても、今までは必ず青木がきれいにしていってくれたのに。昨日はどうしたんだろう?

 そこで昨夜のことを思い出して、薪は真っ赤になった。
 何日も前からしたくてしたくて、ようやくできたもんだから、訳が分からなくなるほど感じちゃって。
 なんだか、もの凄いことを言ったかもしれない。普段なら絶対に口にしないような恥ずかしいことを。
 途中から記憶がない。前戯の最中に、頭がボーっとなって……。

 でも。
 すごく上手く出来たような気がする。
 薪のそこは受け入れたものの激しさを物語るように疼いているし、身体中についたこのベトベトは、おそらく自分のものだ。バックからは大量のスペルマが零れていたから、きっと何度もここで。
 受け入れたまま、一緒にイケたんだ。

 ようやく本当のセックスができたような気がして、薪はうれしくなる。自分の両肩を抱きしめると、胸について固まった精液がごそりと腕に当たった。
 もしかすると、掃除をしていかなかったのは、記念のつもりなのかもしれない。
「昨夜はこんなにすごかったんですよ」そう言いたかったのかも。

 10日ほど前から自分を苛んでいた欲求が、今朝はぴたりと収まっていることに安堵を覚える。恋人とセックスして、身も心も満足して、平常の自分を取り戻す。なんて充実してるんだろう。こんなことなら、10日も我慢するんじゃなかった。平日でもいいから誘えばよかった。
「うっ。痛た……」
 起き上がろうとして、薪は自身の鋭い痛みに気付く。
 局部はもちろん、身体中痛い。まともに歩ける状態ではない。だれかに手を貸してもらわないと。

「青木!」
 薪は恋人の名前を呼んだ。
「起きられないんだ。風呂場まで運んでくれ」
 自分がこうなったのはあの男のせいなのだから、このくらいは当たり前だ。薪はそう考えている。
 今日は日曜だから、あのまま青木はこの家に泊まったはずだ。きっと今ごろは朝食の支度でもしているのだろう。自分が風呂に入っている間に、このシーツの洗濯と掃除と、そうだ、ベッドパットの替えを買いに行かせて。

 あれやこれやと彼に言いつける仕事の内容を頭の中で考えていた薪は、青木が一向に姿を見せないことに気付き、首を傾げた。
 どうしたんだろう。いつもなら、僕が一声呼べば走ってくるのに。

「青木! 青木ってば!」
 いくら呼んでも返事がない。
「何やってんだ、あいつ」
 ベッドから這い出して、床をずるずると這い進む。素っ裸で、しかも身体には汚いものがベタベタついている有様で。他人には死んでも見られたくない。

 青木は、リビングにもいなかった。
 クロークに掛けておいた青木のジャケットがない。玄関に靴もない。
「買い物にでも出たのかな。肝心のときに役立たずなんだから」
 薪は四苦八苦しながら、バスルームに辿りついた。
 まったく身体が言うことをきかない。自分の家で遭難しそうな勢いだ。

「あれ?」
 蓋を開けてみて、湯船の中が空なのに驚いた。
 青木は薪の風呂好きを知っている。夏でも湯船に入らないと気が済まないことも。だから、日曜の朝は決まって薪が起きたら風呂に入れるように、準備をしておいてくれていた。
「なんで今日に限って」
 自動給湯だからスイッチを押すだけなのだが、しばらく時間が掛かる。早いところ湯に浸かりたかったのに。

 青木はとても気の利く男で、これまでこんなことは一度もなかった。
 薪は普段は早起きだが、日曜日の朝だけは10時過ぎに目を覚ます。それはもちろん、土曜の夜のスペシャルなデートの副作用だ。
 目が覚めて青木を呼ぶと、青木はすぐに飛んできて、あれこれと薪の世話を焼く。バスルームに抱えていって、風呂の中で身体を洗ってくれて。薪が朝食を食べている間に、薪専用ブレンドのコーヒーを淹れてくれて……。

 あれ?
 そういえば、今朝はリビングにコーヒーの香りがしなかった。起き抜けにコーヒーを欲しがる薪のために、必ず用意をしておいてくれるはずなのに。
 
 風呂から上がっても、青木は姿を現さなかった。
 おかしい。
 青木が自分に何も言わずに帰ってしまうなんて。薪が眠っているうちに帰るときには、必ずメモを残していくのだが、それもない。

 もしや緊急事態か、と思って携帯に電話を掛けてみたが、20回のコールの後、留守電に切り替わった。
「薪だ。すぐに連絡よこせ」
 短いメッセージをぶっきらぼうに入れて、返事を待つ。

 その日、薪は一日中携帯を手放さなかったが、青木からの電話はとうとう掛かってこなかった。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

こんにちは、Mさま。

はい、さすがの青木くんもきつかったみたいです。(^^;

残酷すぎたかしら・・・・・・いいや、元はと言えば、こいつが婚約なんかするからっ!!(←原作の恨みを創作で晴らすやつ)
泣けばいいんだ、青木くんなんか! 原作の薪さんが流した涙分、いっぱい苦しめばいいんだっ!! (←暴言&サカウラミMAX)

それでも、わたしはあおまきすとなので~、
ここをどう乗り越えてくれるか、彼の今後に期待してください。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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