トライアングル(9)

 こんにちは~。(暗い話の最中に、間延びした挨拶ですみません)

 気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが~、前作の『スロースロースロー』と付き合わせると、この年の7月、60日くらいある……。
 いい加減ですみませんっ、スルーで、スルーでお願いしますっ。






トライアングル(9)








 捜一からの資料を携えて、青木がモニタールームに帰ってくると、小池が曽我と一緒に書類の手直しをしながら薪の噂話をしていた。
「最近の薪さんて、ちょっとおかしくないか?」
「おかしいのはこの付箋の数だろ。うっ、こんな細かい数字まで」
 相変わらず、薪のチェックは厳しい。少し大雑把なところがある曽我には余計に細かいところまでチェックを入れる。曽我の欠点を矯正してやろうという、これは室長の親心だ。

「情緒不安定っていうの? 先週の月曜日だっけか、ドアのとこで蹲っててさ。真っ青な顔して、涙目になってたんだぜ」
「身体の調子でも悪いのかな。この暑さだし」
「でも、そのあとすぐに笑ってて。平気だって言って風呂に入ってった」
「あのひとってホントに風呂好きだよな。今も入ってんだろ?」
「ほとんど、ドラ○もんのヒロイン状態だな」
 薪の暴君ぶりはどちらかというと、ジャイ○ンのような気もするが。

「そういえば、薪さんこの頃、服を着て風呂から出てくるようになったな」
「そうそう。前は素っ裸でロッカームールをうろうろしてたのに」
「あのひとも極端だよな。何もワイシャツまで着なくたってさ」
「そうだよ。この季節、俺だって腰タオルだよ」
 ぎくり、と青木の肩が強張った。
 風呂上りは素っ裸で涼みたい薪が、ワイシャツのボタンをきちんと首まで締めて脱衣所から出てくるわけは、青木が薪につけた印のせいだ。
 痕を残すな、といつも薪に叱られるのだが、あの白い肌を見ると愛さずにはいられなくて、夢中で吸い上げてしまう。優雅な首とやさしい胸、しなやかに反り返る二の腕にやわらかい太もも。きゅっと上がった丸いヒップの下に息づく黒子までが愛しくて愛しくて。数え切れないほど繰り返しキスをした。

 ……あの夜が訪れるまでは。
 眼鏡の奥の黒い瞳が、苦痛に歪む。あの痛みは、そう簡単には消えてくれない。

「一昨日も、その前も。しかもワイシャツは長袖だぜ」
 腕にまで痕をつけてしまうから長袖を着なければならなくなる――――プリプリと怒っていた、薪のかわいらしい顔を思い出す。
 おまえのせいで汗疹になりそうだ、とくちびるを尖らせていた。あんな楽しい会話は、もう二度とできない。
 
「……おととい?」
 小池の言葉に、青木は引っかかりを覚える。
 薪の身体に触れたのは、あれが最後だ。1ヶ月近くも前のことだ。痕が残っているはずはないのに、薪は今日も長袖を着ていた。
 先々週の、薪の様子を思い出す。挑発的な行動。青木の身体に伸びてきた手。薪に限ってそんなことはないと思うが、あの夜、青木の代わりを誰かに求めたのだろうか。
 それとも。

「青木?」
 突然席を立った青木に驚いた小池が、声を掛けてくる。応えを返す余裕もなく、青木はバスルームに走った。
 ノックもせずに、脱衣所のドアを開ける。シャワーの音が大きく響いている。
 無言で押し戸を開く。シャワーの下の美しい肢体が、びくりと振り返った。
「薪さ……!」
 薪は両手で身体を隠すようにして、青木に背中を向けてしゃがみ込んだ。
「見るな! 出て行け!」
 薪の狼狽した声が、バスルームに響く。
 秀逸な色香を持ったうなじと、それに続くきれいな背中。細いウエストに華奢な腰。何度もこの腕に抱いた、この手の中で悦びに震えた類稀なる美貌。その前半身に、青木以外の誰かがつけた徴が残っていた。

 青木は靴を履いたままバスルームに入って、薪の腕を力任せに開いた。薪は抵抗したが、力は青木のほうが強い。壁に押さえつけられる格好になって、薪はそのすべてを青木の目に晒した。
「薪さん。これは」
 観念したように、薪は目を閉じて横を向いた。
 その美しい横顔は、この事実を青木に知られたくなかった、と言わんばかりの悲痛な表情をしていた。

 薪の首から下に散らされていた刻印。
 赤く、鋭く、痛ましい傷跡。幾筋にも付けられ、何重にも刻み込まれた蚯蚓腫れ。
 それは薪の弱さの証―――――自傷行為の痕だった。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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